落ちこぼれうちはの鬼狩り戦線   作:酉野笹実

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鬼滅の世界

俺は 、気がついたら妹の亡骸を抱えたまま見知らぬ山の中にいた。

 

あたりは雨の後なのか湿った土の香りと、冷んやりした空気に意識が鮮明になる。

 

嗚呼、なんで俺はここにいるのだろうか。

 

悪夢なら良かったのに、腕の中で温かみがほんのり残る妹の亡骸が現実だと告げていた。

 

「あの、時 。火柱が、落ちてきて?」

 

何で俺は生きているんだ?

 

振り返って思い出す。

 

燃え盛る家の中、イタチと俺は対峙していた。

 

俺は原作通りにイタチがうちは一族を滅ぼした事に、自分の家族や俺の家族、俺を殺そうとしたことにショックを受けていた。

 

彼はそれほど優しい人間だったから、いや、優しすぎる人間だったから、その選択に至ったのかもしれない。

 

落ちこぼれと言われ、写輪眼の開眼もできず医療忍者の道を選んだ俺をイタチは決して馬鹿にしなかった。忍術の手ほどきもしてくれたし、彼から教わった忍術も多い。

 

友達だと、思っていた。

どこか、俺は楽観視していたのかもしれない。原作の時期もあまり知らなかったし、何かあったら俺は家族を逃してやれると

 

でも、違ってた。俺の目測や認識が甘かった。あの、暗部のクソジジィがそんか甘っちょろい事を考えるはずがない。

 

 

決行されたのは俺が木の葉病院に宿直の日だった。よりにもよって、何であの日だったのか…、何で俺はもっと原作をしっかり読み込まなかったのだろう。その後悔ばかりする。

 

 

なんで、俺は家族を守る努力をもっとしてこなかったのだろう。

 

なんで、俺は知ってたのに防げなかったのだろう、

 

 

なんで、なんで、なんでっ!

 

 

だから、俺はイタチに何故だと問いただした。

 

あの優しいイタチが何も思わないわけないのに、家族を失い、守れなかった自分の責までぶつけるように、アイツを詰った。

 

その報いなのか、燃え盛る我が家の大黒柱が音を立てて崩れてきて…そこで俺は意識を失った。

 

気がついたら、見知らぬ山の中で妹の亡骸を抱えて座り込んでいた。

 

 

「っ…ユズっ」

 

 

痛かっただろう、怖かっただろうに。

 

ごめんなぁ、兄ちゃん早く帰ってやれなくてっ…

 

まるで眠っているようだ。何度も心音を確認するように抱きすくめるが、体温も冷たくなりはじめている。

 

兄ちゃん知ってるんだぞ?イタチを家に連れ帰るたびにモジモジして、お気に入りの髪留めつけて、おしゃれして…っ

 

ダメだ、感傷に浸るな。涙を流すなっ。俺にそんな資格なんてない。

 

 

早く、現状を確認しろ。ここはどこだ?イタチの術で飛ばされたのか?

 

木の葉に戻らなきゃ。父さん母さんが家にいる。ここにいたら葬いすらできないではないか。

 

「…っ誰だ!」

 

 

見知らぬ気配に後退すると、そこには知らない男が立っていた。

はだけた着物とギラつく口、黒く染まった目が異形の者だと告げていた。

 

 

「美味そうな匂いがすると思ったら、希血の餓鬼が二匹たぁついてるぜ。一匹死んでるがまぁいい。死にたてでも構わないよなぁ?」

 

 

ニヤニヤしてと、酷い口臭を撒き散らすそれに、俺は恐怖よりも怒りがこみ上げる。

 

神はここに来てまた奪うのか。

 

平凡な人生を、転生した世界の家族の命も

 

喪失した悲しみさえ抱くのが罪だというのか?

 

妹を弔う遑さえくれない世界に純然たる憎悪と怒りに目が熱くなった。

 

 

 

 

男は腹を空かせていた。人間を食べていたら鬼殺隊がきて命からがら逃げ出したら、人も寄り付かない山の中にいた。

 

麓の村はないかと探していたら、類い稀な血の匂いに惹かれて二人の子供の姿に、ゴクリと喉をならす。

 

柔らかそうな肉の匂いと血の匂い。

 

間違いない、あの二匹とも希血だ。

 

ここに来て、とんだご馳走にありつけるなんてついてる。

 

にまりと近づけば、男の子供が男の気配に気がついて後退した。

 

チッと男は小さな舌打ちをした。もうひとりの希血の女の子供は死んでいるようだ。生暖かい生き血を啜りながら殺すのが好きだが、多少冷めても希血は希血だ。

 

まずは、男の子供を捉えようと男が爪を伸ばそうとしたとき、何か這い上がる恐怖を感じとった。

 

良く見れば、男の子供の目が煌々と赫くなっているのに気がつく。それだけではない。

 

「…っな、なんだ。その眼。」

 

黒い文様が浮かび上がっいるのである。三つ巴の紋様。

 

なんなんだこいつ、こいつも鬼なのか?

 

「失せろ。」

 

その瞬間、男の頸が宙に舞った。

 

 

いつ斬られた?

 

痛みすら感じなかった。

 

だ、大丈夫。再生できる。

 

男は日輪刀で斬られたわけではないと分かりニンマリと笑うが、その瞬間大きな杭のような物に貫かれ、地面に縫いつけられる。

 

 

「…てめぇっふざっ」

 

足で頭を踏みつけられる、頭骨が砕かれ、脳味噌までぐしゃりと潰された。その激痛に再生が追いつかず男は汚い悲鳴をあげた。

 

とてもじゃないが、13歳そこらの子供のなすことじゃない。

 

 

「……。」

 

 

男は鬼から興味を失ったのか。汚いものを触ったと言わんばかりに、地面に足をこする。

 

 

「っ今度は鬼滅かよっふざけんなぁああっ!!どんだけ、生存確率悪くさせりゃ気がすむんだクソやろぉぉ!!」

 

 

何故か天に向かって叫ぶ子供の声を最後に男の意識はなくなった。

 

鬼滅ってなんだ?生存確率ってなんだ?と言う疑問は解消されないまま。朝日を浴びた男は灰になって消えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




前半のシリアスどこいった。
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