性転換系異世界勇者配信者が性転換して異世界の勇者になった話 作:たま
「ついたよミルキーちゃん」
勇Padを作った人がいるという国まで来た、疲れはしたもののそれほど時間はかからなかった。
僕のスマホを充電できる可能性のある人がここに居る、これからその人に会えるかもしれない。そういう実感が少しずつ湧いてきた。
まず目に飛び込んできたのは、高い壁に入口らしき大きな門。そこから多くの人が出入りしているので、この国が栄えていることがわかる。
門の左右に門番らしい人が何人か立っているが、検問のようなことはしてないようだ。
「ここからはフードを被ってね、勇者ミルキー・スターがいるって気づかれるとたいへんだから」
僕は言われた通りに、家を出るときにもらったローブのフードを被る。これはこれで怪しいのではと思ってもしまうけど、ミルキー・スターだと気づかれるよりはずっといいのだろう。
「中は人が多いからはぐれないでね、手繋ご?」
「大丈夫だよ、僕はそんなに子供じゃないから」
「本当に大丈夫?離れたら駄目だよ」
「もちろん、わかってるよ」
手を繋ぐことを頑なに拒否した、僕はそこまで子供ではないのだ、だから手を繋いで歩くのは少し恥ずかしい。
「そっか、じゃあ行こっか」
手を繋げなかったからなのか、
街の中を進むにつれて人の数がだんだん増えてきた。
それに、人多くて周りを見渡すことはできないけど、そこら中から美味しそうな匂いが漂ってくる。どこかお祭りのような雰囲気があり、気分が高揚した。
きょろきょろと見ていたら、分厚いお肉や見たことのないフルーツなどが目に入ってくる。
「愛笑ちゃん!あのお肉美味しそう!」
愛笑ちゃんからの返事はなぜか帰ってこなかった。まさか、
「……愛笑ちゃん?」
不安を感じ、ゆっくりと振り返ってみたら、そこに愛笑ちゃんの姿はなかった。あれだけ釘を刺されていたと言うのに、一瞬で僕は迷子になってしまったのだ。
「……どうしよう」
見栄を張らずに手を握って置けばよかったと、今後悔した。
一旦冷静になるために、人の波をどうにかかき分けて、人通りのない路地まで来ることができた。
ここで愛笑ちゃんを探す方法を考えようと、そう思った矢先に、
「おや?こんなところにひとりで、何をしているのかな?」
背筋に冷たいものが走る。こんな時に出会う相手は大体相場が決まっている。
声を掛けられた方に振り返り、声の主を確認してみると、赤い髪の女が背後に二人の男を引き連れて立っていた。黒一色のその格好はこれから悪さをすると言っているようなもの、特に遭遇したくない相手だ。
「だ、誰なんですかあなた達」
「ん〜?その声は女の子なのかな?ほら、そのフード脱いで顔をみせな」
僕の質問には聞く耳も持たず、赤い髪の女はどんどんと距離を詰めてきて、フードに手を伸ばしてくる。
逃げようとはしてみたが、そう思ったときには男に手を掴まれていて逃げられなかった。
「さぁ、見せてもらおうか!」
必死に抵抗をしてみたが、赤髪の女と僕の力の差は大きく、簡単にフードを脱がされてしまった。
「ふ〜ん、悪くない顔だねぇ、これは高く売れそうだ」
「あ、姉貴!もしかしてそいつ!」
「どうした?」
ひとりの男が慌てた様子で女に耳打ちしている、
「……こいつ……かも……」
「これが……な訳が……行方不明……」
「もし……だったら……すよ……関わらない方が……」
断片的にしか聞き取ることはできなかったが、僕のことを話しているような気がした。顔を見られてミルキー・スターだと言うことを気づかれてしまったかもしれない。
そのとき、
「あ!ミルキーちゃん!」
愛笑ちゃんだ、遠くから愛笑ちゃんの声がする。あれだけはぐれないよう言われたのにも関わらず、美味しそうな食べ物に気を取られて迷子となってしまった哀れな僕を探しに来てくれた愛笑ちゃんの声だ。
見つけてくれた喜びで泣きそうだった。
「ミルキー、本当にそうなのか……まずいな、ずらかるぞ!」
「へ、へい!」
三人組は一目散に離れていった、愛笑ちゃんが見つけてくれなければ、どんな酷ことになっていたか分からない。
「怪我はある?何かされてない?」
「怪我はないから一応大丈夫、なのかな」
「よかったぁ……、もう!心配したんだからね!」
「ご、ごめんなさい」
「もう、着くまでこの手は離さないから」
また迷子になって愛笑ちゃんに迷惑を掛けてしまうなんて事は避けたい、少しくらい恥ずかしくても大人しく手を繋いで横を歩こうと決めたときに、それは起こった。
「今の音……ミルキーちゃん?」
お腹が大きく鳴ってしまった。
少しの間が空いた後で、愛笑ちゃんがくすくすと笑いはじめた。僕も照れを隠すように笑うが、本当に恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
「はぐれたのもこれが原因かも……なんてね……」
「まぁ私もお腹空いてたし、何か食べよっか!」
恥ずかしい思いはしたが、気になっていたあのお肉を食べられることになった。お肉は串に刺さっており、スパイスが効いていて味は牛肉に近い感じがした。
「愛笑ちゃん、食事のときくらいは手を放さない?」
「また居なくなったら嫌だから」
その声は妙に力強かった。