Journey Through The Rainbow   作:がじゃまる

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大学の授業用に新調したパソコンが使い勝手良すぎて震えてます


12話 真実を映し出せ

 

 

 

『ア˝ア˝ァァァァッ!!』

 

 瘴気が人影に集約し、膨れ上がる。

 ˝幾度目かの˝誕生を果たした異形の者は、その思考に唯一残された怒気を纏って目の前の男へと突撃してゆく。

 

「・・・・・・そろそろか」

 

『グッ・・・オオォォォッ・・・・・・!?』

 

 だが男に焦る様子はなく、逆に発生させた衝撃波で自ら怪物へと変貌させたそれを薙ぎ払う。

 衝突音と共に地面へ打ち付けられた怪物が元の姿へと戻り、転げ落ちた黒い円形の物体がアスファルトを叩いた。

 

「・・・何回やるのさ、それ」

 

「・・・そろそろ、飽きた」

 

 青年と少女が漏らした不満の声に男がゴキゴキと首を鳴らす。

 秘めたる感情を全ては伺わせないまま、拾い上げたアナザーウォッチを枷から解放されたばかりの˝彼女˝へと向け―――、

 

「まあ見ていろ。・・・・・・この世界には面白い場所もあるようだからな」

 

「・・・・・・や、ぁ・・・!」

 

 ボロボロに乱れた髪や衣服を引き摺り、少女は衰弱し切った身体を必死に動かして抵抗を試みる。

 だがそれが何かを成す事はなく、非情にも男の手によって彼女の身体へとウォッチが埋め込まれた。

 

『ア・・・・・・ウアアアァァァァァァァァァッッ!!!』

 

 水平線から差す黄昏の陽が沈み切ると同時に、全てを侵食するように少女を包み込んだ瘴気の中から再度怪物が生まれる。

 

 長い夜はまだ、始まったばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・本場さんが・・・・・・仮面ライダー・・・?」

 

「あぁ。仮面ライダーの内の一人・・・だけどな」

 

 王蛇の襲撃後、一旦歩夢達の元に戻った俺は小原には聞かれぬよう小声でそう耳打ちする。

 一応、コイツともその情報は共有しておいた方がいい。

 

「・・・でも、またなんだ。前の世界でも穂乃果さんと梨子さん、仮面ライダーと一緒にいたよね?」

 

「・・・多分、そこが何か俺達の世界と関係あるんだろうな」

 

 これまでも・・・いや、恐らくこの先も仮面ライダーの傍には彼女達がいるのだろう。

 俺達の世界でμ‘sやAqoursである少女達が別の世界では仮面ライダーを支える者・・・・・・偶然とは考えにくい。

 

 なにか、何か繋がりが―――、

 

「なんなのそれ・・・・・・二人のことは諦めろって言うのッ!?」

 

 答えを模索する俺の傍らで上がったヒステリックな声に思わず顔を顰めた。

 痴話喧嘩か。一瞬そんな呑気な事を考えるが、どうやらそんな甘いものではないようで。

 

「そうじゃない。誰もそんなこと言ってないだろ」

 

「じゃあなんで事件にはもう関わるななんて言うのよ!」

 

 火花を散らしているのは真司と小原。といっても後者が一方的に燃え上がっているようにも見えるが。

 歩夢に耳打ちした俺とは別に小原に話す事があると言っていた真司だったが、どうやら地雷を踏んだらしい。

 

「二人の事は俺が突き止めるから、お前はこれ以上深く関わろうとするな。これはお前が踏み込んでいい領域じゃないんだよ」

 

「その領域って何・・・? 真司は何を知ってるの?」

 

「それは・・・・・・」

 

 答えられずに真司が黙り込む。当然だった。

 ミラーワールドは表立って知られてはいけない世界。それは例えライダーの傍にいる彼女であってもだ。

 

 更にそれを話してしまえば彼女は、最も非情な現実を知ってしまうから。

 

「・・・ねぇ真司、なんか最近変だよ? ・・・・・・何か隠してる?」

 

 だがそれを知らない小原は真司を問い詰めるばかりだ。彼女のための行動なのに、伝えられない、それが故に理解されず、彼を苦しめる。

 

「・・・別に何も」

 

「・・・それでバレないと思ってるの?」

 

「ホントに何でもねぇよ! いいからお前は引っ込んで―――」

 

「いい加減にしてよッ!!」

 

 怒声に続いて響いた乾いた音。

 小原が手を出したことを理解するのにそう時間はかからなかった。

 

「・・・・・・関係ない関係ないって、ずっとそれじゃない・・・!」

 

 龍騎となってからずっと、真司が自分の行動を小原に隠し続けていたのは想像に難くない。

 彼女にそれがどう映ったのかは知る由もないが、少なからず・・・・・・、

 

「・・・・・・馬鹿」

 

 何かに耐えきれなくなったように小原が走り去ってゆく。

 地面を叩く音すらも遠くへと消えた後、残されたのは重い静寂だけだった。

 

「お嬢様どちらに!?」

 

「・・・・・・悪い歩夢。お前も行ってくれ」

 

「・・・う、うん。わかった・・・」

 

 数刻遅れて後を追って行った使用人に続かせ、歩夢を小原の元へ送る。この場合の適任はコイツだろうから。

 

「・・・派手に引っ叩かれたもんだな」

 

「・・・いいんだよ・・・・・・悪いのは俺だから」

 

 赤くなった頬を抑えてそう呟く真司。

 一概にどちらが悪いとは言い切れない。真司は小原を想っての事だし、小原の方も黒澤や松浦の事で気持ちがごちゃごちゃになっているだけ。

 

「…それより、ちょっと付き合え」

 

「あ?」

 

 俺たち二人になるタイミングを見計らっていたかのようにデッキを取り出した真司が龍騎へと姿を変える。

 

「……俺の集めた情報が正しいなら、この後―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鞠莉さん……!」

 

 鞠莉の後を追って絢爛な装飾の施された通路を駆ける。なんでも彼女の部屋はホテルの一室なのだとか。

 そんな場所をドタバタと騒がしく走るのはモラル的にどうかとは思うが、この際四の五の言っていられない。

 

「あの馬鹿……こっちの気も知らないで……」

 

「真司さんにも理由があるんですよ……だからそんな風に―――」

 

「理由って何? 何か知ってるの?」

 

「それは……」

 

 ようやく立ち止まってくれるも、今度は追っていたはずの歩夢が問い詰められる側に立ってしまう。

 鞠莉はミラーワールドの存在や真司が仮面ライダーであることを知らない。そして真司自身もそれを知られたがってないと思っているのだし口籠ることしか出来なかった。

 

「ふふ……sorry.歩夢にこんなこと言っても仕方ないよね」

 

 その剣幕に狼狽えていると、歩夢の反応を面白がるように鞠莉が笑った。

 元の世界でスクールアイドルとしての彼女を見た時から思ってはいたが、こう間近でその笑みを見るとやはり美人だと思い知らされる。

 

「なんか変な空気になっちゃったね、tea timeとでもいきましょうか!」

 

「え……でも真司さんは……?」

 

「Don‘t worry! ほっとけばいいのよあんな奴! それより歩夢の話が聞きたいなー」

 

 自身の気を紛らわすためか、歩夢への気遣いか、英語交じりの独特な口調と勢いで振り回してくる。

 Aqoursとしての彼女を知っている分、やはりこちらの方が彼女らしく思えた。

 

「ね、ね、歩夢もスクールアイドルなの?」

 

 自室に招かれ、その装飾や今まで見たこともないような銘柄の紅茶に委縮していると興味津々といった様子の鞠莉に詰め寄られる。

 

「…え、あ、はい……虹ヶ咲学園って学校で……」

 

「虹ヶ咲のスクールアイドル…………あれ、調べても出てこない…」

 

 しまった、と自身の失敗を呪った。

 つい何気なく口にしてしまったがこの世界の虹ヶ咲にスクールアイドル同好会が存在していない可能性を失念していた。

 

 鞠莉の反応を伺うにこの世界は同好会はおろか虹ヶ咲すら存在しているか怪しい……さてどう誤魔化したものか……、

 

「えっと、実は―――」

 

* * *

 

「へー……、それじゃあ歩夢は別の世界から来たってこと?」

 

「はい……」

 

 何とか誤魔化そうとしたのだが……結果から言うとあっけなくバレた。

 以前士に嘘が下手だと指摘されたことがあったがまさかここまでだったとは。

 

「疑わないんですか?」

 

「まあちょっと信じ難くはあるけどね。けど歩夢嘘つくの下手そうだし」

 

 初対面の彼女にすらこう言われる始末である。この短時間で指摘されているのだから相当なのだろう。

 

「別の世界にもスクールアイドルがあるんだ……なんか嬉しい」

 

 こちらの世界にも鞠莉達Aqoursがいて、果南とダイヤも一緒に人気のスクールアイドルとしてステージで踊っている……とは言えなかった。

 士は最悪の可能性も考えておけと言っていた。仮にそれがなかったとしても今の彼女にそれを言うのは酷だろう。

 

「歩夢はどうしてスクールアイドルを始めたの?」

 

 過去の自分を重ねるようにそう問うてくる鞠莉。その瞳を見れば、彼女も自分と同じなのだろうと悟った。

 

「……誘われたんです、あの子に」

 

 思い出に浸りながら語る。世界を渡り歩いているせいか、さほど昔の話でもないのに随分と懐かしく感じた。

 

「ふーん……あの子って、あの不愛想なboyのこと? 失礼かもだけどそんなタイプには見えないんだけど……」

 

「ああいや、士君じゃなくて、ずっと一緒にいる幼馴染の子がスクールアイドルに魅了されちゃって……」

 

「へぇ……なんか、ダイヤと果南が私を誘ってきた時に似てるな……」

 

 ノスタルジックな反面、もの悲しい哀愁の目が揺れた。

 

「あ……ごめんなさい……」

 

「気にしなくていいのに、歩夢は優しいのね」

 

 一度その姿を見ていると、本心からのそれであるかもしれない笑みも気丈に振舞っているように見えてしまう。

 そんな歩夢を気遣ってか、鞠莉は変わらぬ笑顔で続けた。

 

「どうしてもって言うなら、もっと色々話して? その幼馴染の子の話も聞きたいな」

 

 傷ついているのは確かなはずなのにそれを見せようとしない姿がとある誰かと重なった。きっと鞠莉も同じなんだ。

 だったらやることは何度もそれを掘り返そうとすることじゃない。少しでもその痛みを軽くすることだ。

 

 幼馴染との思い出を語るだけでそれが務まるのなら、喜んで話そう。

 

「あの子は―――」

 

 そう思いいざ話そうとし―――直後に言葉が続かなくなる。

 

「…あれ……?」

 

 何度も記憶の中にあるそれを取り出そうと試みるも手応えがない。まるで元から存在しなかったかのように。

 

「歩夢……?」

 

「う…あっ……!?」

 

 心配げに顔を覗き込んできた鞠莉に何とかこたえようとするが、直後に走った頭痛がそれを阻む。

 それどころか痛みはどんどん激しさを増し、頭が割れんばかりに何度も何度も襲い掛かってくる。

 

 ―――――歩夢!

 

 知っているはずなのに知らない声と顔がホワイトアウトしていく頭の中に浮かんだ。

 いや、知らないはずがないんだ。だって˝彼女˝が自分の――――――……、

 

 

 

 

 

 

「歩夢……? 歩夢!」

 

 突然頭を押さえながら倒れこんだ歩夢の身体を起き上げて何度も呼びかけるが返事はない。理由はわからないが気を失ってしまったらしい。

 

「誰か来て! 歩夢が……!」

 

「お嬢様? どうかいたしましたか?」

 

 とにかく救急だと助けを呼べばすぐに使用人の男が部屋に駆け込んでくる。

 

「わかんない……急に倒れて…………とにかく救急車―――」

 

「おっと……これは…………」

 

ダイヤと果南がいなくなったあの日のことがフラッシュバックし少しパニックになるが、それでもやるべきことだけは見失わずに使用人にそう要求する。

 そうして何とか冷静に努めようとするが―――瞬刻の後にすぐ思考は停止することになった。

 

「……実に、好都合ですねぇ」

 

 この声が遠く聞こえた。主は間違いなく目の前の使用人だ。

 

「これでそのお嬢さんまでは殺さすに済みますね……余計な殺生は流儀に反するので」

 

 言葉一つ一つが狂気を持って背筋に悪寒を齎してくる。

 理解が出来ないまま狼狽えていれば、次に紡がれた言葉がさらなる衝撃を与えてきた。

 

「それとも、お嬢様はその子も殺した方が絶望してくれますかねぇ……」

 

「あなた……何言って…」

 

 ようやく絞り出せた声はか細く震え、男はその様子が愉悦だというように嗤った。

 

「一人になるのを待っていましたよ鞠莉お嬢様……いや、小原の令嬢…!」

 

 キイィィ……と共鳴音が鳴り響いたと思えば、刹那に地震のような揺れに襲われた。

 

「ぇ……」

 

 顔を上げまたも言葉を失う。

 割れた窓ガラスや滅茶苦茶に荒らされた家具や装飾ももはや気にならない。それ以上の衝撃が目の前にいるのだから。

 

『グウゥゥゥゥゥ……』

 

 人型の鮫……とでもいうべきか。これまで目にしたことも、まして想像したこともないような怪物が眼前で唸りをあげている。

 

「なに……なんなの……」

 

「それだよ……ずっとその顔が見たかったァ!!」

 

 驚愕と恐怖の時間は終わらない。

 怯える鞠莉を見て心底愉快そうに笑う男がデッキケースのようなものを取り出せば、突然腰に巻き付いたベルトのバックル部分にそれを嵌め込む。

 瞬時に男も目の前を怪物を鎧として纏ったかのような姿になり、手元で一枚のカードを弄びながらこちらへ歩み寄ってくる。

 

「お前は僕と同じ……いや、それ以上の苦しみを与えて殺してやる。よくもこの僕にあんな屈辱を味合わせて……!」

 

《SWORD VENT》

 

 言っていることの意味も分からないままに男の手に怪物と同じ剣が握られ、鞠莉に向けられる。

 

「そうだな…まず死なない程度に四肢を一本ずつ刈り取るとしようか!」

 

 振り上げられた剣が光を浴びて鈍色に輝く。

 次の瞬間にはそれが自分の血潮で赤く染め上がっているのを想像し、否応なしに死を悟らされる。

 

「っ……!」

 

 何もわからぬままに迫った死に思わず目を瞑る。

 ごちゃごちゃになった思考の中で真司に詫びた。もしかしたら彼が言っていたのはこのことだったのかもしれない。

 

 言い分も聞かずに彼を責め、挙句これか。

 せめて一言、何か真司に―――、

 

 

《STRIKE VENT》

 

 

 轟音が轟くが一向にその時は来なかった。むしろなぜか男の悲鳴のような声さえ聞こえる。

 

「え……?」

 

 微かな熱と煙の舞う中、銀色の甲冑を纏った戦士が佇んでいる。

 今自分を襲った男のそれと同質のものだということはすぐに分かった。けれどどうしてか、不思議と恐怖はなく、むしろその背中には安心感すら覚える。

 

「……真司……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかアンタだとは思わなかったよ……鎌田さん」

 

 自らの火焔で薙ぎ払った青色の仮面ライダーを見下ろす龍騎。

 仮面の下に隠れたその表情は定かではないが、きっと、悲しげなものなのだろう。

 

「…! 歩夢っ!?」

 

 龍騎が謎のライダーに詰め寄る一方、横たわる歩夢を目にした俺がその身体を抱き上げる。

 外傷こそないがその表情は苦悶に歪んでいた。少なからず何かあったことに間違いはないだろう。

 

「テメェ何を……!」

 

「…その女は僕が何かする前に勝手に倒れたよ」

 

 その理由と思われる者を睨む俺にやれやれといった様子でため息をつく、真司が鎌田と呼んだそのライダー。

 

「上原に用はなくても鞠莉には大アリって感じだが?」

 

「……やはりお前には勘づかれてたか、本場真司」

 

 この場でライダーに変身していること、そしてミラーモンスターを呼び出していること……考えるまでもなくクロだろう。

 

「鞠莉が狙いなら俺と別れた一人の瞬間に狙うと思ったしな。睨んでおいて正解だったよ」

 

 真司の提案はミラーワールドから小原やその周囲の動向を見張ることだった。

 先程のような喧嘩別れの後ならば絶好のタイミングに成りうる。真司の推測通りだ。

 

「…なあ、なんでコイツを狙うんだよ。アンタにとっちゃ恩人みたいなモンだろ……俺と同じで」

 

「恩人……だと……?」

 

 鎌田の声が低くなる。

 もう何度かこのパターンを経験している俺にはわかる。これは逆上する前触れだ。

 

「誰もかれもそう言いやがる……誰が助けろなんて言った、誰がこんな辱めを受けたいと願った!?」

 

「辱め……?」

 

 想像通り鎌田が地団太を踏む。

 だが真司にも小原にもその訳が理解出来ていないようで、その反応を見るとさらに鎌田の怒気が増した。

 

「…やっぱりライダーになって正解だったよ……お前からも全てを奪わないと気が済まない」

 

「……だからアイツ等を殺したのか」

 

 それを押しのけるように真司が低く返す。

 その声にも鎌田同様怒気を孕んでおり、今にも爆発しかねない危うさを秘めていた。

 

「ああ…………いい悲鳴だったよ」

 

 追い続けた真相がここで終結した。

 つまりはコイツが、一連の事件の犯人。

 

「そうかよ……それが聞けりゃ十分だ」

 

「待って真司……今のどういう……」

 

「アアァァァっ!!」

 

 何かを悟った小原が問うより早く、弾丸のように突進した龍騎によって鎌田がミラーワールドへと押し込まれる。

 

「まってよ…、じゃあ、ダイヤと果南は……」

 

「…チッ……」

 

 悪態と共に舌を打つ。

 歩夢のことは気掛かりだが、今はこの残されたモンスターの対処が最優先か。

 

「色々ほっぽって行きやがってあの野郎…!」

 

 恨み言を綴りつつ、歩夢と小原を守るように奴を鏡の世界へと押し込んだ。

 

 

 

 

「…やれやれ……」

 

 その様子を眺めていたある男の存在には、気が付くことなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《SWORD VENT》

 

「オオォォォォッッ!!」

 

二人のライダーの剣が衝突し、甲高い音が鏡の世界に響く。

条件は五分五分……だが僅かに鍔迫り合いで勝るのは鎌田の変身する戦士―――仮面ライダーアビスだった。

 

「お前がいなければ全部上手くいってたんだ……! 僕の邪魔をしやがってッ!!」

 

「ぐおぉぉ……?」

 

 膂力が増したアビスの袈裟切りに跳ね飛ばされる。

 力量の差なのか、はたまた契約モンスターのスペック差か、アビスは殆どの能力で龍騎を上回っていた。

 

《ATTACK RIDE》

 

 

《BLAST》

 

 

 追撃をかけようとするアビスを銃撃で縫い付ける。

 俺が相手取っているモンスターは図体こそデカいが動きはそうでもない。これならば十分龍騎を援護しながら戦える。

 

《STRIKE VENT》

 

 俺が牽制したその隙、龍騎が起き上がりざまにアドベントカードを挿入し、装備したドラグクローから火球を放る。

 

「甘い」

 

《STRIKE VENT》

 

 だがアビスもまたストライクベントを発動し、鮫の頭部のような前腕甲から打ち出した水流により火球が消化される。

 同時に沸き上がった水蒸気により視界が白く染まるが、龍騎は臆することなくその中に突っ込んだ。

 

「だぁらッ!!」

 

「がふッ……!?」

 

 白い世界の中でアビスを捉えた龍騎の飛び蹴りが火を噴く。

 一か八かで飛び込んだが一度攻撃がヒットすればこちらのものだ。位置さえ把握できれば姿が見えてなかろうと関係ない。

 

 ここが最大のチャンスだ。

 

《FINAL VENT》

 

 白煙の晴れるギリギリにアッパーで殴り上げ、同時にドラグレッダーを呼び出す。空中ならば回避はできないという魂胆だろう。

 空中のアビスを追うように自身も飛び上がり、ドラグレッダーの火炎放射に乗って繰り出したトドメの一撃がフィナーレを告げる―――はずだった。

 

「「がああぁぁ・・・!!」」

 

「なあぁぁぁッ・・・・・・!?」

 

 突然吹き飛んできた二体の仮面ライダーが龍騎と激突し、ドラグレッダーも巻き込んで地面を転がる。当然ファイナルベントも中断。

 

「なん…だ……?」

 

 龍騎が首だけ上げ、戦慄する。

 

「暇だったから骨のない奴で我慢してたが・・・・・・祭りの場所はここか?」

 

 台風が一歩また一歩と近づく。

 仮面ライダー王蛇。荒くれ者・・・・・・と表現するのも生温い、ミラーワールドの狩人。

 

「・・・昨日の新顔もいるな・・・・・・丁度いい、遊ぼうぜェ!」

 

 ただ純粋に殺し合いを楽しむ奴に目的もクソも関係ない。

 金色のベノサーベル片手に、五人のライダーを手当たり次第に攻撃してゆく。

 

「なんでこんな・・・・・・僕はただ女の子を愛でたかっただけなのに・・・・・・!」

 

「・・・お前はさっさと死んでくれ。ホントに」

 

 共に王蛇の攻撃に晒される仮面ライダーシザースに辛辣に当たった後、軽快な動きで距離を取った仮面ライダーインペラーが龍騎の傍らによる。

 羚羊のような見た目からして、契約モンスターはそこら中に蔓延ってるギガゼールなどか。

 

「・・・この分だと、アイツがお前の言ってた犯人か?」

 

 真司曰く、このミラーワールドで戦うライダーは皆自分の願いを叶えるために戦っているそうだ。

 そんなライダーの中でも一際異端である龍騎及び真司の行動は他のライダーたちにも知られていることらしい。

 

「・・・あのなぁ、今更犯人を突き止めたところでその子らは帰ってこないし、お前の彼女泣かすだけ。勝ち残って願いを叶える方がよっぽど現実的だろ」

 

 真司にはインペラーの言葉が酷く刺さるように見えた。

 けれど真司には他人の命を奪ってまで願いを叶えるつもりはない。ライダーの力を得たのも、犯行がライダーによるものと知ったからこそだ。

 

「・・・っと、呑気に話してる場合じゃないか」

 

《SPIN VENT》

 

今度はこちらに狙いを定めた王蛇の攻撃を羊の角を直立させたような武器で受け流すと、やり合う気はないかのようにまた距離を取る。

 そうなれば必然的に次の攻撃対象になるのは俺達だ。

 

「・・・とりあえず、今は生き残ることだけ考えろ」

 

「・・・・・・分かってるよ」

 

《FOAM RIDE》

 

 

《KUUGA DRAGON!》

 

 

 素早くクウガドラゴンフォームにチェンジし、ライドブッカーを変移させたドラゴンロッドでベノサーベルを弾き返す。

 

「・・・姿が・・・・・・、ぐはぁッ・・・!」

 

 御多分に漏れず動揺してくれた王蛇の腹に遠心力を利かせた一発をお見舞い。更にそれでは留まらず連撃で畳みかける。

 ミラーライダー達とは質が違う俺は存在そのものがアドバンテージのようなものだ。そうそうな事がない限り手段が読まれる事はない。

 

 おまけにこちらは二人体制。基本単独で戦う奴等とは勝手が違う。

 

《STRIKE VENT》

 

 追撃の業火が王蛇を攻め立てる。

 奇襲が嵌ったに過ぎないが、それでも王蛇相手に善戦する俺達に傍目でそれを眺めていたライダー達がどよめき立った。

 

「面白れぇ・・・・・・面白いぞォッ!!」

 

 歓喜の声を上げた王蛇がアドレナリンに酔いしれるようベノサーベルを振り回す。

 

《KAMEN RIDE》

 

 

《DECADE!》

 

 

 そんな王蛇の斬撃を防いだカードの渦が俺に集約。本来の仮面ライダーディケイドの姿に戻る。

 その即座にライドブッカーをソードモードに移行しては、龍騎と共にカードとの衝突で上体の開けた王蛇の懐へと一刀を叩き込んだ。

 

『アアアァァァァッッ!!』

 

 だがこのまま一気に押し切る―――ともいかず。

 猛然と突っ込んできた何者かが俺達と王蛇の間に割って入り、その全員を纏めて薙ぎ払ったのだ。

 

「お前・・・・・・」

 

 今度もまたライダーの乱入者・・・・・・という訳ではなかった。

 人型ではあるがそれはモンスターに近く、龍をそのまま人型にしたかのような赤と銀の装甲が目を引く。

 

 当然その異質な存在に誰もが目を引かれたのだが・・・・・・ソイツに最も反応したのは俺だった。

 

 何故なら目の前の奴を俺は、一度目にしていたから。

 

 

 

 

「・・・・・・優木・・・?」

 

 




ディケイド本編通り一連の事件の犯人はアビスさんです。その動機等は次の話でまた
アナザーライダーの正体やその変身者も次で明かしますが歩夢の異変に関してはもう少し先になりそうです

それでは次回でー
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