Journey Through The Rainbow   作:がじゃまる

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ペースが安定しないどころか前回以上に間を開ける男
最早待たれてすらいないかもしれませんがただ今復帰いたしました。今度こそちゃんと更新守ります()


16話 揺れ動く熱

 

 

 

「……シェルターってのはここか?」

 

「なんか廃屋みたいだね……」

 

「ま、アンデットが支配してる世界だ。虐げられてる人間が隠れる場所ともなりゃうってつけだろうよ」

 

ギャレンにレンゲル。乱戦の最中奴等に示されたポイントまで赴いてみれば、そこは倒壊した商業施設……その跡地だろうか。

 

荒涼とした殺風景の中に鎮座しているもののここに至るまでに鼻腔を突き刺していた硝煙の臭いはない。すなわちここはアンデット達の侵攻から逃れて久しいということだ。

 

「来たな」

 

だが確かに居座る違和感。

その正体に思考を巡らせていた掛かった声はすぐ直前に耳にしたもの。

 

「よう……丁度ご説明頂きたかったところだ。反逆者様方」

 

「それはあなたもでしょう?」

 

「詳しい話は中でする。とにかく着いてきてくれ、奴等に勘付かれたくない」

 

ブレイドから俺達を二人。その目的が何かまではまだ定かではないが、現状頼れる筋がここしかないのが事実。まああまり心配はしていないが一先ずその後に続く。

 

「改めて聞いておくがお前は何者だ? 見たところアンデットの力で戦っている訳でもなさそうだが」

 

「ただの通りすがりの仮面ライダーだ。一応味方だが……生憎お前等の事情は何も知らんからイチから説明してくれ」

 

「はぁ…? じゃああなた達どうやって今まで……」

 

「まあいいさ。どちらにせ俺達のことは話すつもりでいた」

 

互いに探りを入れつつ進めた足が厳重に閉ざされた鋼鉄製の戸の前で止まる。

地下に鎮座するこの場に至るまでにもいくつかバリケードと思しき個所を通過してきたが、恐らくその最終ラインと思しきそれは軍の基地を連想させた。

 

「……ここが俺達の砦だ」

 

重低音と共に開かれた戸の向こうに待ち構えていたのは地下都市……とでもいうべきものか。

だがそこに栄えた様子は一切なく、スラム街を思わせる簡素な住居や市場が並ぶ荒れ果てたものだった。

 

「ひっでぇな……」

 

「ちょっと、士君…!」

 

「見たままの感想でいいですよ……酷いのは事実ですから」

 

黒い隊服を着た俺が足を踏み入れたことで周囲の連中に警戒と恐怖の色が伝播するが、先導してきた二人の説明により間もなくそれも薄れてゆく。

 

目に付くのは武装した戦闘要員と思われる連中ばかりだが、彼等が守らんとする背奥にはその他の人々の姿も確認できた。

 

そして総じて、その顔には生気がない。

 

「自己紹介が遅れたな。俺は枸橘朔也(からたち さくや)

 

南城睦月(なんじょう むつき)です。朔也さんがギャレンで、僕が―――」

 

「レンゲルだろ。……俺は士でいい。こっちは上原歩夢だ」

 

創作の世界だとこういうのをディストピアだとかポストアポカリプスとか言うのだったか。

自己紹介は軽く流す程度で十分だ。とにかく今は情報が欲しい。

 

「……で、なんでまたこんなひっでぇ状況になってる訳だ?」

 

「お前達もさっき見たばかりだろ……アンデットどものせいだ」

 

説明を乞えば苦々しい朔也の返答。

そこから綴られたのは、この世界の人類に降りかかった不幸の歴史だった。

 

「文明の跡はちらほら散見できるが……この世界も元々は人類が栄えてたと思っていいのか?」

 

「ええ。まあ、それもアンデット共が復活したせいでこの様ですが」

 

「睦月の言った通り、アンデットは太古の戦争において封印されていたはずの存在だった。そしてその封印が解かれたのが二年前のことだ」

 

朔也曰く、その大戦においてアンデットを封印したものが太古の人類が生み出したオーパーツ˝ラウズカード˝。

 

戦争の勃発、そしてその終結に至るまでの経緯は全て伝記によって後世に伝えられていたらしいが……時代の経過と共にその伝説も風化。いつしか桃太郎のような作り話とされていたそうな。

 

そして約二年前に古代遺跡にてラウズカードが発掘されるが、もはや伝説のことなど忘れ去った科学者達の解析中にアンデットの封印が解かれてしまい今に至る……つまりはそう言うことらしい。

 

「で、お前達仮面ライダーがアンデット側に着いてた理由は?」

 

「正確にはついてるフリ……ですけどね」

 

「単純なことだ。このライダーシステムを牛耳ってるのがアンデット共だからな、この力を得るには一度奴等の軍門に下る必要があった」

 

復活したアンデットの進撃が続く中、人類も対抗策としてラウズカードを分析しライダーシステムを開発したはいいものの、実用段階に至る前に襲撃を受け奴等の手に落ちたという。

 

そして今はアンデットの傘下となった人間、その中でも選ばれた者が行使する力。要するにこの世界の仮面ライダーはアンデットの手下となっている訳だ。

 

「大体わかった。それでお前等は手下になったフリをしてライダーシステムを手に入れてた訳か」

 

「理解が早くて助かる」

 

「と言っても、僕等みたいな反逆派はほんの一部で、殆どは本当にアンデットに寝返った奴等ばかりですけど」

 

「あぁ…、さっきのブレイドとかまさにそんなだったもんな」

 

仮面ライダーブレイド。この世界の救う鍵を握るライダーであり、俺が使命を果たすべき相手。

 

だが奴は如何にもアンデットに迎合しその思想に染まっているといった様子だった。あんなのをこれから口説かなければならないと思うと頭が痛い。

 

「いや、アイツは……一真はかなり特殊でな……」

 

「あれを引き込もうと思ってるなら諦めた方がいいですよ。人類側の都合とか考えるような人じゃないですから」

 

「……どういうことだ」

 

口振りから察するにブレイド、ギャレン、レンゲルの三人以外にもライダーは存在するようだが、まだそれらと遭遇していない俺には判断を下す材料がない。

 

しかしこの二人は自ら敵陣に忍び込んだ奴等だ。当然他のライダーとも接しているだろうし、俺には知り得ない情報も掴んでいるはずだ。

 

「……一真さんは出自を含めた何もかもが謎なんです」

 

そう思ったのも束の間のこと。

示された解は想像の真逆を行き、組み立てつつあった方程式を崩壊させる。

 

「他のライダーについては殆ど調べが済んでいるが、一真だけは欠片の情報も掴めん。アンデット復活以前の戸籍データにも目を通したがアイツの名前はなかった」

 

「…あり得るのかそんなこと」

 

実際元の世界で戸籍上に名前がなかった俺が言うのもなんだが、この世界にも同程度に文明が進んでいたのならば出生から青年と呼べる段階に至るまでの間に一切戸籍に関わることが無かったなどあり得るのだろうか。

 

「記憶喪失……ってことはないんですか? 士君とかそうだったから……」

 

「ああ、恐らくそうだろうと踏んでいる。まあ実際記憶喪失ともまた違うんだろうが……」

 

「あの人、自分のことアンデットに育てられた選ばれし人間とか言ってましたからね……」

 

歩夢への返答から察するにブレイド―――一真は記憶に何かしらの改竄を受けている……ということなのだろうか。

実際、一真の発言と史実を照らし合わせると少なからず彼は二歳児以下になると考えればもう確定したようなものだろう。

 

なるほど。この世界のライダーもまた毛色が違う……苦労することに変わりはなさそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだお前……ここはどこだ!?」

 

「だから希って言ったやん? いきなりで混乱してるのかもだけど、しばらくは安静にしてないと」

 

視界に映る何もかもが見慣れぬものだった。

その中でもこの少女―――東條希と名乗った彼女の存在は一際異質だ。如何に敵意や警戒心を向けようと、返ってくるのはその全てを中和するような和顔愛語ばかり。

 

「そんでここは東地区のシェルターやね。あんまり外から人を入れちゃダメって言われてるけど、流石にあんな状態で倒れてたら見逃す訳にもいかんしね」

 

一真とは対照的に希の向ける笑みには敵意はおろか警戒の色すらも伺えない。

もしや一真が仮面ライダーであると知らないのか。そうなると時折仮面ライダーやアンデットと交戦する反乱軍の者ではないらしい。

 

「で、どうしてあんなところに転がってたの?」

 

だがアンデットの統治に抵抗する者であることに変わりはない。

 

彼女の言葉から推測するにここは逃げ隠れた人類が身を隠しているシェルターの一つだろう。これまではその場所の特定に手こずることも多々あったが、このシェルターを制圧すれば芋づる式に別のシェルターの場所も判明するかもしれない。

 

そうなれば早急に制圧、ないしは本拠地に戻って報告だ…………そう思い腰元に手を伸ばすが、本来あるべきはずの感覚に触れることなく空を切る。

 

「え……」

 

ライダーへと変身するためのアイテム―――ブレイバックルがない。

咄嗟に周囲を見回すもそれらしきものは見当たらず、希がくすねたとも考えずらい。

 

となると真っ先に思い浮かぶのは、あの裏切り者達の顔だった。

 

「アイツ等…!」

 

朔也に睦月。ライダーでありながら人類の味方をしていた裏切り者。

先の戦闘で奴等に敗れた後バックルを奪われた……そう考えれば合点がいく。

 

「こーら、無視しない」

 

どうすべきか。焦りと憤りが渦巻く頭で答えを模索するが、それすらも許されることなく頬を挟む手のひらに阻まれてしまう。

 

「さっきも言ったけど、結構傷酷いからおとなしくしてた方がいいよ。でもじっとしてるのも暇だろうし、ちょっとウチとお話しようよ。ね?」

 

なんなんだこの女は。

探りを入れているかのような強引さだが、特別何か裏があるようにも思えない。

 

本当にただ自分と話すことだけが目的ならますます訳がわからなくなる。それをして何になるのだろうか。

 

「それで、なんであんなところで倒れてたの?」

 

気付けば完全に彼女のペース。ライダーとして選ばれた自分がこんな少女に振り回されているとは情けない話だ。

だが逆に考えればこれは好機か。話の中で自分の状況だけでなく、人類側の情報も何か掴めるかもしれない。

 

「……想像してる通りでいい」

 

ならばと、お望み通り会話とやらに興じてみる。

嘘で塗り固めてこそいるが、それでも対話に応じた一真に彼女は目を細めて笑った。

 

「まあ多分そんなだろうと思ってたよ。このご時世であんなことになってるなんてアンデット絡み以外あり得んし……でも無事だったなんて運いいんやね」

 

「……まあな」

 

嘘だけどな。と心の中でほくそ笑みつつ受け答える。

やはり何か裏があるようには思えない。底こそ伺えないが、彼女の笑顔はそこまでも透き通っている。

 

その純粋さが、どことなく眩しく思えた。

 

「……すげぇよな、アンデットは」

 

「え…?」

 

それがどうにも嫌で、早くも目的から逸れたことを口にしてしまう。

 

「だってそうだろ。力も知能もずっと上……俺ら人間じゃ到底敵いやしない、高等な存在だ」

 

選ばれた人間なはずなのに、コイツなんかよりもずっと上にいるはずなのに、心の奥で彼女に負けていると思っている自分がいる。

 

「そんな奴等に抗ったって無駄なんじゃないのか? 抵抗なんかやめて、大人しく支配された方がきっと……」

 

その言葉が自分自身の主張であることに変わりはない。

けれど今それを口に出した理由は啓蒙でなく、もっと矮小な訳。

 

少しでいい。少しでも彼女に、自分達アンデット側への畏怖を見せて欲しかった。

 

「……そうかなぁ」

 

だが、希が見せたのはまた別な顔。

 

「そんなの、つまんなそうやん?」

 

たった一言。

正論を並び立てて諭すでも、感情に任せ捲し立てるでもない。ただただ一言で期待は崩れさり、同時に敗北感が吹き抜ける。

 

「頭おかしいのか……? アンデットの傘下に入れば命は保証される。いつ奪われるかもわからない明日から逃れられるんだぞ?」

 

「明日がわからないからこそ、今日っていう日を全力で生きれるんよ」

 

アンデットの世界しか知らない一真と、人の世界で生きてきた希。文字通り、見ている世界が違うのは明白だ。

だがここで敗北を認めるのは即ち、アンデットがどこか一つでも人間に劣っていると認めるのと同義だ。それだけは許容することができない………はずだった。

 

「………」

 

反論に詰まる傍ら、今一度彼女の言葉を噛み砕いてみる。

つまらなそう、全力。この状況下においてもそう言えるのは自分の抱える生に楽しみを見出しているからこそだろう。

 

そんな彼女に反し自分はこの˝生˝を……楽しいなどと思ったことがあっただろうか。

 

「ていうか君、やたらアンデットの肩を持つけど、もしかして………」

 

思案に耽る最中、こちらを覗き込む希に悪寒が走る。

途端に冷静になる思考が己の失策を呪う。溜飲を下げるために口を滑らせすぎたか。

 

繰り返すがここは人間側の陣地。希が反乱軍の者でないにしても、不穏な気を感じ取れば奴等に報せが飛ぶことは容易に想像がつく。

 

「……ま、いっか。それよりもっとお話し聞かせてよ。ウチ、君に興味湧いちゃった」

 

場合によっては……と身構えるが、やはりそんな懸念すらも彼女は超えてきて。

 

なんなんだ。

何がしたいんだコイツは。

 

詮索の意思がある訳でも、敵意を感じる訳でもない。ただただ一真に対する興味のまま接してきている。それはこれまでに触れたことのなかったものだ。

 

そして、その熱に心地よさを感じている自分も確かにいて。

 

「……語るほどねーぞ」

 

だからそれを知るために、少しだけ。

少しだけ、こうしてどこにも属さない人間として生に触れて見るのも、悪くはない気がした。

 

 




間が空き過ぎて最早作者自身何の話をしていたのか忘れていたレベルですがまだ読み返せば何とかなるのでセーフの精神。

士達はこの世界の成り立ちや謎に包まれた一真の出自に触れ、一真自身は希に振り回されながらも何か感じるものがあるようで……。

とりあえず集中していた作品の方は完結しましたので今度こそライダー側に復帰することを誓います()
それでは次回で
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