Journey Through The Rainbow 作:がじゃまる
別作品の完結により完全にスイッチが切れていたことや暫く1次をやっていた関係でまーーたサボっておりました本当にすみません何とかします(n回目)
「ふーん……
希と談笑を始め、体感で半刻ほどが過ぎたあたりだろうか。
一頻りの会話を終えた彼女は、最後に一真の名を反芻しながらやはり柔らかな笑みを作る。
「ありがとうね。久々にいっぱい人と話して楽しかったよ」
「いやいや、お前に限ってそんな……」
気付けば談笑に浸っていた身体は何の疑念も抱くことなくその言葉への返答を形作るが、間もなく的を逸れたことを理解する。
見回せば避難を強いられた人々の数はそれなりに確認できる。だがその誰もが生気の薄れた表情を張り付けており、希のような気色を持つ者は見受けられなかった。
「……やっぱり皆、追い詰められてるんよ」
口には出さず目線だけで問えば、その意図を悟ったように彼女は答えた。
アンデットの襲撃により強いられた過酷な生活。それにより落とされた影を背負う人々の姿は、敢えて言うならば死んでいるかのようで。
それがどうにも、自分自身と重なっているように思えてならなかった。
「……なあ」
一頻り交わした会話を思い起こしつつ希に問う。
周囲の人々を影とするならば、彼女は光だろう。その輝きは偏に、語られた˝生˝によって紡がれるものなのだろうか。
明日も約束されぬ日々の中で自分の信じる生を貫く希と、庇護された生を掲げ命令されるままに従うだけの一真。優劣を抜きにしても、どちらがより生命らしいと問われればその差は明確だろう。
「…お前にとっての楽しいって、全力で生きるって、なんだ?」
だからこそその真意を触れたかった。
アンデット側に着く方が生存を前提とした判断として優れている。その考えに変わりはない。……故にそれを知りたい。
生きることとは、一体何なのか。
「そうだなぁ……」
一瞬考える素振りを見せるも、彼女の中では既にその答えは形作られているようで。
次の瞬間には、待ち望んだ回答が提示され―――、
「ッ……!?」
突如身奥を貫くような衝撃が空間を揺らす。
震源は付近ではない。ガヤガヤと騒々しさを増してゆく方へと目をやれば黒を伴った土煙と、僅かに差す陽光が視認できた。
「なに……?」
「お、おい……!」
血相を変えて駆け出した希の後を追えば、間もなく震源地を思しき場所へと辿り着く。
「なっ……!」
そこで見たものは幸か不幸か。
悍ましい言語や呼吸音を掻き鳴らしながら蠢く黒の群れ。それは支配者であるアンデット―――その集団に他ならなかった。
「こーれはまた大所帯でおいでなすって………」
突然の爆発から十数秒程度だろうか。
巻きで情報を飲み込んだ俺は先んじてバックルへとカードを差し込み、迎撃の姿勢を取っては奴等と向かいあう。
「着けられてきたか……?」
「いや、あの人数での備考なんていくらアンデットでも不可能です」
「その話は後でいい……それよりも今は」
枸橘と南城もそれぞれライダーへと姿を変えるが、続々と突入してくるアンデットの部隊が動じる気配はない。
仮面ライダーすらも支配下に置いている。そんな驕りもあるのだろうが、それ以上に大きいのは目に見えて違う風格を醸す三体の怪物。
「カテゴリーK……」
アンデットはそれぞれの持つ能力によって格付けされ、それらが秀でた個体は上級アンデットなどと呼ばれ、この世界おいては幹部格に収まっている。
特にその中でも特筆した能力を持つアンデットに与えられるのが˝K˝のカテゴリー。つまりは最上位個体……それが同時に三体だ。
『フン……やはり造反を企てていたか。ギャレン、レンゲル』
「へぇ……流石、上位個体様は人間のお言葉も流暢なこった!」
挨拶代わりにとライドブッカーの引き金を絞るが、防御動作もなく弾丸を受け止めた奴等にダメージの色は伺えない。
下級個体ならばこれだけで致命傷に持っていけただろうが……そこは流石にKの称号を冠しているだけあると賞すべきか。
『全く。これしきのことに俺達が出向く必要があったか?』
『そう言うな。ジョーカー様のご命令だ』
『ま、あんまり周りをちょこまかされるのも目障りだったし、丁度いいんじゃない? 裏切り者も炙り出せたことだしさ』
「……バレた以上は仕方がないな」
充満する緊張感。それは直後に爆発する。
「迎撃だ!」
枸橘の号令と共に砲撃の音が鳴り響く。やはり人類の重要拠点だけあってそれなりの防衛システムは備わっているらしい。
だが―――、
『……温いなぁ』
カテゴリーKの内一体―――コーカサスビートルアンデットは左腕の盾で難なく受け止めて見せる。
直後、ひゅ、と風と切るような音がしたと思えば、途端に瓦解した天井が崩落。砦に瓦礫が雪崩れ込む。
「ぐっ……退避ッ!」
レンゲルの発動した突風に運ばれ他の戦闘員は難を逃れるが、人類を守る防衛設備は既に瓦礫の下だ。最早使い物にはなるまい。
そうなれば最早、人類の希望は俺達仮面ライダーの他に存在しない訳であり―――、
「ようはコイツ等を倒せばいいだけだ。シンプルでいいじゃねぇか!」
「ッ…! おい!」
他の連中はたじろいでいるようだが、戦うという選択肢の他ない俺は即座に奴等へと切り掛かる。
その様を見て枸橘達も現状を飲み込んだのか、孕んだ闘気と共にそれぞれカテゴリーKへと突撃してゆくのを横目に確認した。
『…何者だ。貴様のようなライダーは知らん』
「誰も何も、ただの通りすがりだよ!」
俺の相手はパラドキサアンデット……見た目からしてカマキリの始祖か。幾度となく振るわれる刃はライドブッカーと衝突し高音を響かせる。
『フン………どうせ貴様も反逆者と言う事実は変わらん。反乱の目は潰し、我等アンデットが世界を統率するのだ!』
「やっすい台詞なこった……悪役としちゃ二流だな!」
《ATTACK RIDE》
《SLASH!》
居合の合間を突いたキックが届き、その奇怪な肉体を後方へと運ぶ。
刹那に生じた隙を見逃さずにカードを挿入。紫電を纏ったライドブッカーを構え奴へと突貫する。
『本当に二流かどうか、その足りない脳でもう一度考えてみることだな』
「ッ……!?」
迫る俺の一撃を前にパラドキサアンデットは左腕を横に薙ぐのみ。奴の間合いにも入らぬうちに見せた挙動は悪足掻きのようにも思えたが、その答えは直後に吹き飛んだ俺の身体が証明することとなる。
『……まさか、もう忘れたとは言うまいな』
「…そうか、さっきのはテメェが……」
その原因を遅れて理解する。
見えない真空の刃……俗に言う鎌鼬が奴の能力。恐らく直前に起きた天井の崩落もそれが故だろう。
『来ないのならばこちらから行くぞ!』
「チッ……」
予備動作自体は存在するとは言え、得物自体は不可視の刃。対処は困難を極める。
クウガ―――ペガサスフォームの力があれば回避は容易だろうが、現在手元にあるのはディケイドと龍騎のカードのみ。偽装のためとはいえカードを手放したのがここで響いてくるとは……。
《ATTACK RIDE》
《BLAST!》
ならばと一度距離を取り強化された弾丸をぶっ放すが、それも迫る鎌鼬を相殺するだけに終わる。
手数の多さがディケイドの強みだが、この状況に限ってはそれも過去のこと。使える手で攻撃を凌ぐので手一杯なのが現実だった。
「どうやってこの場所を見つけた!」
それでも反撃の機会を疑う傍らでギラファアンデットと対峙する枸橘の声が耳朶に触れる。
『我々を超える高エネルギー反応を感知してな。それを探り、あわよくば回収して来いとのジョーカー様の命令でな』
「なに……!?」
ギラファの能力は障壁か。ギャレンの放った銃弾を反射してはシェルターの倒壊を加速させてゆく。
「どういうことだ……? ここにそんなものはないぞ!」
『どうだかな……反逆者の言葉など聞く道理はない』
「ぐッ……!」
高エネルギー反応。奴等が何を指してそう言うのかは定かではないが、少なからず枸橘の言葉に嘘がないのは確かだ。
ならば要因は何かと思考を巡らせるが、眼前に迫った白刃はその余裕すらも与えてくれはしない。
『どうせ見つかっちゃうんだから、早めに吐いちゃうのが身のためだよ』
コーカサスに跳ね飛ばされたレンゲルの身体が俺やギャレンを巻き込み防護壁に衝突。衝撃によって露わになった鉄筋がその破壊力を物語っている。
当たり前だが一体一体の能力が下級個体の比にならない。手数も限られる現状では押し切られるのも時間の問題だろう。
『……あの
そして事態は想像にしない展開へと遷移する。
何かを感じ取ったように眼光を散らしたパラドキサアンデットが視界に定めたのは―――、
「え……」
「歩夢ッ……!」
歩夢へと魔の手を伸ばした奴を渾身のタックルで跳ね飛ばす。
だが今の状況で上級アンデットを三体も相手取るのは不可能であり、次の瞬間には変身が解かれ人としての身体を地面へと転がした。
『人間がアンデットより高い生命エネルギーを持ってるとかあり得るの?』
『さあな。だが捕えている科学者共に調べさせればわかることだ』
俺の不能を確認すると、今度こそパラドキサの腕が歩夢を捉える。
何故歩夢が……。懸念は尽きないが、今はそれを探っている暇はないのは明白だ。
「こんの―――」
『はいはい邪魔』
掴み掛かるも、ライダーとしての装甲の無い生身の肉体ではアンデットには太刀打ちのしようもない。軽々と薙ぎ払われ地を舐める。
『諦めないよね人間も。けど、あんまりしつこいとコイツみたいに―――』
再度の突撃も虚しく跳ね飛ばされたその刹那。
突如飛来した光弾が俺への凶刃を生生だと思えば、それは二つの像を成し、顕現する。
「おいおい、レディの扱いがなってねぇなカブトムシ。手本を見せてやるよ」
「…無関係のガキ巻き込むのはルール違反じゃねぇのかよ、ゴラ」
「名護……?」
現れたのは二人のライダー。その片割れである仮面ライダーイクサは過去に訪れた世界で共に戦った者……だが何かが違う。
「待ってろお嬢さん、今行くぜ!」
「心火を燃やして……ぶっ潰す」
唐突な事態は誰に状況を悟らせぬまま次なる舞台へ移る。
何かに突き動かされるように二人のライダーはアンデットへと接近し、片やナックルダスター、方やバンカーか、各々の握る得物を振り翳す。
『次から次へと……何なんだコイツ等は』
『さあね。…けど気に食わないのは確かかな!』
アンデット共もそれらを敵とみなしたのか、応戦する形で前へと出るギラファとコーカサス。
俺と同様、本来この世界に存在しないライダー達であるが故か、先程よりも幾分か慎重に様子を伺っているようにも思えた。
「今度はクワガタか。せいぜい俺を引き立ててくれ」
だがそんなことは一切関係ないと言わんばかりにイクサは拳を打ち出す。
そのスタイルはやはり俺の知るイクサとは違った。構える武器は長剣ではなく、変身にも用いる拳型のアイテムをひたすらに叩き込んでいる。口調も相まってか、受ける印象は真反対と言っていいだろう。
「足りねぇなァッ!」
イクサのそれを傲慢や驕りと称するのなら、こちらは闘気と野生か。
金色のソルジャー―――仮面ライダーグリス。˝型˝を大きく逸した荒々しさには一種の享楽すらも感じる。
膂力か、はたまた属性が故か、コーカサスの防御を容易く打ち破るような猛攻が恐ろしいまでの速度で叩き込まれてゆく。
「やるじゃないか、全身金ピカシャチホコ」
「いちいち癪に障る野郎だな……さっさと決めんぞ」
「おっと、彼女を助け出すのは俺の役目だ」
「勝手にしやがれ」
瞬く間に二体の上級アンデットを退けると、同時にパラドキサへと突撃。
先んじて一撃を加えたグリスと入れ替わる形でイクサが肉薄。当てがった手甲が目視でもわかるほどの電流を流し込み、脱力した一瞬の隙に歩夢を救出。前線から離脱する。
《スクラップフィニッシュ!》
「デェェァラッ!」
直後に迸ったのは黒の渦、とでも称するべきか。
グリスの両肩から噴出されたオイルのような液状物質が推進力を生み、ミサイルの如く突き刺さった飛び蹴りがパラドキサを薙ぎ払って見せた。
『全くもう……イライラさせるなぁ』
『流石に想定外だ。ここは一度退くぞ』
使命は果たした。雄々しい背中でそう語りつつ、歩夢を連れ戻したライダー達は光へと還ってゆく。
これにより俺達側の抑止力は再び失われた訳だが、彼等の出現が唐突であったが故か、援軍を警戒するアンデット共にも自重が伺い取れた。
『フンッ!』
統率を取るパラドキサが鎌鼬を生み、先例と同様に天井の一部を崩壊させる。
『…ただ退くってのも任されたみたいで気に食わないなぁ』
『ならば良い手がある』
降り注ぐ瓦礫片により舞い上がる土煙は撤退する不死者達の姿を包み隠す。
悪化する視界の外までは把握することは出来ないが、連続して上がった悲鳴や怒号から何かよからぬ方向へと事が運ばれようとしているのだけは容易に想像できた。
『何人か預からせて貰うよ。君達で言う人質…かな? どうすべきかは……まあ、自分達で考えなよ』
最後に残された不穏な声と共に、奴等の姿は文字通り煙に巻いて消えてゆく。
明瞭になる視界の中、被害状況の確認を急ぐ周囲に交じって映ったのもまた、本来、この場所にはいない者。
「お前……」
自身に注がれる視線すら意に介すこともなく、彼はただ茫然と立ち尽くす。
人よりも優れた存在を自称した少年―――兵刃一真に浮かぶのは、誰よりも人間らしい、明らかな焦りの色だった。
ドタバタ感もブレイドの味だと思います(言い訳)
アンデットの襲来により人類は砦が暴かれたのみならず人質まで取られる始末
そんな渦中、˝生きること˝の意義で揺れ動く一真の選択は……
歩夢の謎や他世界のライダーが登場した訳にも注目ですね(いうて後者はバレバレでしょうが)
流石にそろそろそれなりのペースに戻さないと人権を無くす懸念があるので今月中にはブレイド編を終えることをここに誓います()
それでは次回で