Journey Through The Rainbow 作:がじゃまる
一般で頑張ろうと思います(泣)
「・・・行くんだね。士」
「ああ。でないとこの世界・・・いや、他のライダーの世界も一緒に破壊されちまうからな。・・・てかお前も行くんだよ」
「・・・こんな事になって本当に悪いとは思ってる。・・・けど、もうこれしか方法が無いのも事実なんだ・・・」
「・・・大体分かってる。要するに、また通りすがってくればいい訳だ」
「・・・もうちょっと真剣に捉えなさいよ・・・・・・遠足じゃないんだぞ」
「フフ。まあ、今度は僕の邪魔をしないようせいぜい頑張ってくれたまえ」
「お前はさっさと捕まれコソドロ」
「だから何でそんな気楽なんだよお前等・・・事の重大さ理解してんのか・・・? ・・・まあでも・・・・・・頼んだぞ」
「ああ」
「・・・また、新しい旅の始まりか――――――・・・・・・
知らない記憶が。
朧げで遠く、それでいて懐かしくも感じる記憶が流れ込んでくる。
「フンッ! ハアァ!」
レイピアのような刀身の細い剣を振るい、大挙として押し寄せてくる果実のような怪物の群れを羽虫のように切り捨ててゆく。
視界と、記憶が目まぐるしく回る中、俺はある少女の無事を求めて声を張り上げた。
「歩夢ッ! どこだ歩夢!!」
この姿に変身し戦い始めてからそれなりの時間が経ったが、未だ歩夢はおろか他のスクールアイドル同好会の面子すらも見つけることが出来ない。
こんな状況で迷子探しをさせるなんざとんだお転婆姫どもな事で。
「こん・・・にゃろッ!」
切っても切っても次から次へと湧いてくるこの怪物どもは俺一人で対処するにはあまりにも数が多く、周囲では次々とそいつ等によって人々が殺されてゆく。
もしその犠牲者の中にアイツ等がいたなら・・・・・・いや、今はそんな事は考えるな。
とにかく今は、コイツ等を片付ける。
『アアアァァァァッ!』
背後から迫る殺気を感じ、振り向いては水色の昆虫のような姿をした怪物の攻撃を収納された刃を伸ばしたカードケース状のマルチウェポン―――ライドブッカーを盾にして防ぐ。
コイツはインベス。しかも怪物の群れの中に混じる下級の雑魚ではなく、固有能力を有した上級個体―――カミキリインベス。
その情報が脳裏を掛けた瞬間、反射的に一枚のカードを腰に巻いたバックル―――ディケイドライバーへと挿入していた。
《KAMEN RIDE》
《GAIM!》
みかんを模した鎧を身に纏った戦士―――仮面ライダー鎧武へと姿を変え、ライドブッカーを用いてカミキリインベスを攻撃。
《ATTACK RIDE》
《DAIDAI ITTO!》
続け様に装填された別のカード。
それにより繰り出された切れ味と破壊力を増した剣閃が煌き、両断されたカミキリインベスの身体は炎を噴き上げて爆散した。
「・・・? なんで今・・・」
さっきから当たり前みたいにこなしてたが冷静に考えると気持ち悪いものだ。
不意に襲いかかってきた敵の正体、そいつに対する咄嗟にも拘らず的確な対処。
元々所持しいていたライダーカードはおろか、ライドブッカーに収められていた未知のカードの使い方、諸々。
何故だか分からないが、俺は知っていた。
ディケイドとしての戦い方―――カードを収めていたケースが剣や銃に変形する事や、カードを駆使して様々な力を発揮できる事も。
『ウアアアァァァァッッ!!』
「チッ・・・」
囲まれたか。
それも上級インベスがぞろぞろ揃い踏みとか最初からクライマックスも甚だしい。
「お前等の相手をしてる場合じゃねぇんだよ・・・・・・どけ!」
世界に何が起こっているのか。この力は何なのか。それを扱える俺は一体何者なのか。
そんな分からない事だらけの状況の中、俺は歩夢を探し出す事の障害となり得る敵に向かって刃を向けた。
『お前の願いを言え・・・・・・』
『・・・・どんな願いでも願いでも叶えてやる・・・・・・』
『お前が払う代償はたった一つ・・・・・・』
「いや・・・・・・いやぁ・・・・・・!」
地面から上半身が生え、その真上に下半身が浮遊している怪物の群れが青と白を基調とした衣装に身を包んだ二人の少女を執拗に追い掛け回す。
このみかん髪の少女、スクールアイドルグループAqoursリーダー高海千歌。
μ‘sとの合同ライブに心を弾ませていたのも束の間。現在絶望と恐怖の渦中、幼馴染の渡辺曜に手を引かれただ必死に迫る怪物から逃げ惑っていた。
『ウゥゥゥ・・・・・・!』
「っ・・・・・・!」
正面からインベスが迫ってくるのを視認し、全速力で駆けていた足に急ブレーキをかける曜。
彼女が後方を確認すれば自分達を追っている怪物もすぐそこにまで迫っており、もう逃げ場がなくなっているのは明らかだった。
『アアァァァァァッッッ!』
「千歌ちゃんッ!」
二人を視認し、殴りかかってきたインベスの攻撃を千歌を抱えて殆ど転倒に近しい形で回避。
「くぅ・・・!」
『ウアアアァァ・・・・・・』
激しく打ち付けた足の痛みに顔を顰めつつ上げた曜の視界に尚も歩み寄ってくるインベスが映る。
「曜ちゃん・・・・・・」
未知の怪物に怯え、縋るような千歌の瞳が曜に向けられる。
だがこの場において恐怖を覚え、もはや絶望に抗う気力を殆ど削がれているのは彼女もまた同じ。
そんな折れかけた心のままに、渡辺曜は絞り出すようにして救いを求めた。
「・・・助けて・・・・・・」
『――――――契約成立』
『アアアァァァァ・・・・・・⁉』
「・・・・・・?」
何者かの声の後に曜の耳朶に触れたけたたましい悲鳴と何かが吹き飛ぶ音。
祈りが通じたのか。そんな希望を持った彼女の顔から再びそれが奪われるのに、そう時間はかからなかった。
『・・・˝助けて欲しい˝というお前の願い、叶えたぞ』
自分達に襲い掛かったインベスを攻撃したのもまた怪物だと理解し、恐怖と戸惑いに表情を歪ませる曜。
『・・・契約完了だ』
「え・・・・・・ぅ――――――ッ⁉」
「曜ちゃん⁉」
二人を助けたかのように見えた怪物―――イマジンが腕を振るうと、ビクンと震わせた曜の身体が真っ二つに開く。
イマジンがその中へ飛び込むと間もなく彼女の身体は元に戻ったが、それに安堵する暇もなく次なる恐怖が二人を襲う。
「曜ちゃんはや―――え・・・?」
頼ってばかりではいられないと決意したような千歌が曜の腕を取ろうとし―――その手が空を切る。
そこには既に、渡辺曜の手はなかったのだ。
「よう・・・ちゃん・・・・・・?」
千歌が握っていたはずの手が。ついさっきまで千歌を引っ張ってくれていた手が、なくなっている。
「え・・・? え・・・・・・?」
変化はそれだけに収まらず、自分の身体に起きている現象に怯え混乱する曜の身体が淡く光を帯び出し、消えた手の先から徐々に砂の粒子と化して消えていく。
「ようちゃ・・・・・・曜ちゃんッ!!」
必死の叫び虚しく、伸ばした手が曜の身体があった場所を通過した時には、既に渡辺曜の面影を残したものは何一つ残っていなかった。
「よぉ・・・・・ちゃん・・・・・・・?」
目の前で親友が消えた。
受け止めるに受け止めきれない事実に燻っていた勇気の灯も完全に鎮火し、千歌は力なくその場にへたり込む。
「千歌ちゃん!」
「梨子・・・・・・ちゃん・・・・・・」
逼迫した声で彼女の名を呼ぶ、先程はぐれてしまったメンバーの一人である桜内梨子。
あちこち傷だらけになりながら怪物から逃げてきた梨子と、親友が消えた千歌。今の二人に互いの無事を喜ぶ余裕はなかった。
「何してるの千歌ちゃん! 早く立って!」
「梨子ちゃん・・・・・・曜ちゃんがぁ・・・・・・!」
「曜ちゃん・・・・・・?」
手を取って駆け出そうとする梨子にくしゃくしゃになった顔を向ける千歌。
だが梨子は意味が分からないといったような怪訝で一瞬眉を顰め、すぐさま差し迫った表情で彼女に訴えかけた。
「誰か分かんないけどとにかく今は逃げないと! 早く!」
「え・・・・・・?」
まるで曜の事を知らないかのような返答に千歌の目が見開かれる。
「・・・何言ってるの梨子ちゃん・・・? 曜ちゃんだよ? さっきまで一緒にライブもしてたじゃん!」
「後で聞いてあげるから今は走っ――――――――――ぅっ・・・・・・⁉」
千歌の話に効く耳を持たない梨子。
そんな彼女が千歌の腕を強く握っては地面を蹴ろうとし、刹那にその身体がビクリと揺れた。
「く・・・ぁ・・・・・・?」
ビクビクと痙攣する彼女の首筋に突き刺さった二本の牙が˝色˝を吸い取ってゆく。
やがて完全に色を失い無色透明なガラスのようになってしまった梨子がゆっくりと地面に倒れ込み、音を立てて砕け散った。
『・・・ウウゥゥゥ・・・・・・』
「ひっ・・・・・・!」
梨子の命を奪ったステンドグラスのような紋様が全身に走る吸血鬼―――ファンガイアが今度は自分を獲物として捉えたのを感じとり、また一人散っていった友人の死を悲しむ間もなく後ずさる千歌。
だが既に彼女に逃げ道など残されておらず、踵を返した直後に衝突してしまったのは先程曜を消したイマジンによって退けられたはずのインベスだった。
「あ・・・・・・あぁ・・・・・・・・・!」
『ウアアアァァァァァァァァァッッッ!!!』
耳を劈く咆哮に続いて拳が振り下ろされ、悲鳴もろともその命を押し潰した。
「ぬっ・・・・・・ぐぅぅッ・・・・・・⁉」
丁度インベスの群れを一掃した俺を唐突に襲った痺れるような感覚。
「なん・・・・だ・・・・・・?」
瞬刻に戦国武将のような装甲が解除された俺の姿がディケイドへと戻り、ドライバーから鎧武のカードが排出される。
しかしそのカードに仮面ライダー鎧武の姿は描かれておらず、ほんの数刻前のディケイドのカードと同じ様なブランク状態と化していた。
「どうなって・・・?」
いや、鎧武だけじゃない。
ライドブッカーに収まったカードを確認してみれば、元々所持していたライダーカードの内三枚、仮面ライダーキバに仮面ライダー電王のカードまでもがブランク状態となってしまっている。
「―――り、ダイヤ!」
「もう・・・・・・何なのさコイツ等!」
ヒステリックな叫び声に釣られ、意識がカードから声のした方へと流れる。
少し離れた場所。ガラス張りの建物を背に怪物の群れに囲まれる三人の少女。
あの三人には見覚えがある。確か歩夢が「ライブ前に絶対覚えて!」と迫ってきた・・・・・・Aqoursの松浦果南、黒澤ダイヤ、小原鞠莉・・・・・・だったような気がする。多分。
で、その人気グループのメンバーである彼女達に今も襲いかかろうとしている怪物は二種。あれは魔化魍とスマッシュか。
『KAMEN RIDE』
『HIBIKI!』
例の如く怪物の正体とそれらへの有効打を弾き出した俺はライダーカードを用いて仮面ライダー響鬼へと姿を変え、流れるように別のカードの力で攻撃に移る。
『ATTACK RIDE』
『ONGEKIBOU REKKA!』
両手に取った太鼓の撥のような武器に炎を纏わせてはそれを放出。清めの火球が魔化魍とスマッシュを燃やしてゆく。
「what・・・・・・?」
「味方・・・ですの・・・?」
「・・・そんなことより、今のうちに」
最初こそ俺に畏怖と疑念の混じった視線を向けていた三人だが、怪物どもの注意がこちらに逸れた事で退路を見出したのか、奴等を刺激しないよう慎重に逃避を図る様が伺えた。
それでいい。
この状況においては俺を囮にして逃げるのが最善手だ。
『アアァァァァァッ!』
「・・・・・・?」
この違和感は何だろうか。
魔化魍やスマッシュの咆哮に混じり、少なくとも生物の鳴き声ではない音が聞こえる。
擬音で例えるならばキイィィィ・・・と言うような、猛烈に胸をざわつかせる共鳴音。
これは・・・・・・、
「ッ・・・・・・! おい! さっさとそこから離れろ!!」
「え――――――」
『ゴガアアァァァァァァァァァァッッ!!!』
その音があの三人の背後。本来映っているべきものが映っていないガラスの張りの壁から迫っている事を理解した俺は反射的に叫ぶが、僅かに遅い。
次の瞬間には鏡の世界―――ミラーワールドと繋がったガラスから一体の龍が飛び出し、紅が散華した。
「え・・・・・・?」
「ま・・・・・・り・・・・・・?」
龍が通り過ぎていったのは松浦と黒澤の間。つまりは今の今まで小原鞠莉がいた場所・・・・・・だったのだが、飛び散った血潮と血だまりに沈む肉塊が、何が起きたかを如実に物語っていた。
『ッ――――――!!』
マズイ・・・!
血の臭いで刺激され興奮したのか、魔化魍とスマッシュが俺に向いていた意識を生臭さの発生源、つまり呆然とする松浦と黒澤の方へと戻してしまう。
「「うわあぁぁぁぁぁっっ⁉」」
「っ・・・・・・! こんのッ!」
一点に群がった獣達の中央から上がった悲鳴に続き、痛々しい殴打音と咀嚼音が不快な響きで耳朶に触れる。
「・・・・・・・・・」
怪物どもを全て焼き払った時には既に断末魔は止み、残ったのはほんの数秒前まで人だったもの。方や全身がひしゃげ、方や至るところを食い千切られた、見るも無残な亡骸だった。
「ぐうぅ・・・ッ⁉」
理不尽を前に散った命を悼む間もなく再度俺の身体に痺れが走り、響鬼の装甲が解除される。
カードを見やればやはり仮面ライダー響鬼の力は失われており、続き仮面ライダー龍騎と仮面ライダービルドの力も消失し、ブランク状態と化す。
「・・・三枚・・・・・・?」
今目の前で失われた命と、力の消えたカードの枚数が一致している。しかも消えたのはアイツ等が逝った直後。
まさか・・・アイツ等の死に呼応して力が消えた・・・?
――――――ズガァァァァッ・・・・・・!
そう遠くない場所で何かが砕けた爆音を背に、また新たな怪物の群れが押し寄せてくるのが見えた。
どうやら救えなかった命を悼む時間も与えてくれないらしい。
「・・・こんな簡単に壊れちまうもんなんだな・・・世界ってのは・・・・・・」
口ではこう言ったが、悲観している場合ではない。とにかく、俺のやるべき事は一つだ。
「・・・・・・スマン」
届かなかった命にせめてもの手向けを送り、俺は最悪の結果が訪れぬ事を祈っては駆けた。
「っ・・・っ・・・」
「歩夢さんはやく!」
突如舞い降りた混沌によって瞬く間に様相の塗り替えられた世界の中、辺りの人々同様、上原歩夢もまた逃げ惑っていた。
「逃げる事ないじゃない。ちょっと傷付くわよ?」
背後から歩夢達に迫る、μ’sの一員である絢瀬絵里と同じ姿をした˝何か˝。
見た目や声音と言った身体的特徴こそ本人のそれだが、明らかに異様な雰囲気や圧を漂わせるその姿は彼女達の足を動かすには十分だった。
「何なんですか・・・なんなんですかこれぇ・・・・・・! しず子ぉ・・・りな子ぉ・・・!」
「かすみさん・・・気持ちは分かりますが今は・・・・・・!」
歩夢と共に逃げているのは、優木せつ菜に中須かすみだけ。他のメンバーの安否ははぐれてしまってからというもの不明だ。
加え、いくら走っても歩いているはずの絵里を振り切れないという事実が更に彼女達の不安と恐怖を駆り立てた。
「・・・あら、追いかけっこですか?」
「「「ッッ・・・・・・⁉」」」
そこら中で上がる悲鳴や爆音に遮られる事なく存在感を示した凛とした声。その途端に彼女達にずずんと圧し掛かる重圧。
「海未・・・・・・じゃないみたいね」
「・・・どうやら、絵里もこちら側のようですね・・・・・・丁度いいです」
「海・・・未、さん・・・・・・?」
立てない訳ではないし、動けない訳ではない。まるで身体をスローモーション再生したかのように動きが遅くなっている。
これが˝重加速˝と呼ばれる能力によるものなどと歩夢達には到底分かるはずなどなく、ただ憧れの存在の皮を被った化け物に蹂躙されるのを待つだけの身となる。
「さて・・・、鬼ごっこも終わりね」
「っ・・・⁉」
嗜虐的に微笑んだ絵里の身体が緑炎に包まれ、昆虫の蛹が人型を成したような怪物に変わる。
「ワーム・・・重加速を使用せずとも何者より早く動けるとは羨ましい限りです」
羨む海未の視線をよそに絵里に化けていたワームが一切の動作が目で追えない程の刹那で歩夢の眼前に肉薄。グロテスクな体表をその視界を支配した。
『シュゥゥ・・・・・・』
振り上げられた腕の先で煌いた鋭利な爪が歩夢の恐怖心を煽る。
どうにかしようにも、重加速の影響で速度を制限された動きでは逃げる事も間に合わない。
『アァァッ!!』
ひゅ、と風を切る音と共に、瞼を閉じて自分の身体が引き裂かれる瞬間から目を逸らす事も出来ない歩夢にワームの凶刃が迫る。
(士君・・・・・・!)
歩夢が走馬灯のように浮かんだ少年の名を心の中で呼んだ―――その時だった。
「フウゥゥンッ!!」
突如としてワームが弾け飛び、昆虫然とした怪物の姿の代わりに立った一つの影。
バーコードを走らせるマゼンタのボディを持つ、戦士の姿がそこにはあった。
「・・・ギリギリセーフってところか?」
どうしてか異様なまでに動きが緩慢になっている歩夢、中須、優木の三人を見やる。
原因はたった今弾き飛ばしたワーム・・・でないのなら、その後方でこちらを睨みつけているあの青髪の女。
《ATTACK RIDE》
《BLAST!》
ライドブッカーを片手銃状態へと移行し、引き金を絞っては弾丸をぶっ放す。
だが奴が少し眉を顰めたと思えば急ブレーキでもかけたかのように銃弾が減速し、事実上無力化されてしまう。
「・・・重加速・・・」
瞬時に頭に浮かんだ言葉を口にする。
なるほど。確かにそれなら今の攻撃。そして何より歩夢達がこうなっている事への説明が付く。
《KAMEN RIDE》
《DRIVE!》
最後にライダーの残った力がこの仮面ライダードライブの力だったのは幸運だった。
奴等―――ロイミュードに対してはこのライダーの力でないと。
「ハアァァァァッ!」
「く・・・うぅぅ・・・ッ!」
レースカーが如き勢いで突っこんだ俺の一撃を貰った女の輪郭が歪み、本来のロイミュードとしての姿が露わになる。
「こいつで・・・終いだ」
《ATTACK RIDE》
《TURN SLASH!》
刀身を紅く染め上げたライドブッカーの剣戟を迸らせる。
紅の閃光がロイミュードは勿論ワームもろとも引き裂き、爆炎を吹き上がらせて奴等の身体を粉砕した。
「・・・・・・ったく、おい。怪我ねぇか歩夢」
「え・・・、つ、士君・・・・・・?」
ドライブの力が消え、ディケイド以外のライダーの力を失うというこれまでと逆の状況。
そんな俺に歩夢が向けてきたのは、微かな畏怖と、驚嘆、戸惑いの混じった瞳だった。そう言えばまだ変身したままだったか。
「あーその・・・、説明すると長いんだが・・・・・・、まあとにかく俺だ」
ロイミュードが消えた事で重加速が解かれ、動きに枷のなくなった三人に詐欺のような言い回しで説明する。
声と雰囲気だけで俺だと感じ取った歩夢はともかく、あと二人にはどう映ったかは怪しいが・・・、
「・・・・・・歩夢さん・・・、いくら何でも簡単に信じすぎじゃ・・・」
「そうですよ。本当にもやしだって言うなら証拠見せてください証拠―!」
まあそうなるよな。
優木と中須には怪物の一体としてみなされているようで、警戒故か歩夢より数歩引いて俺の様子を伺っている。
証拠・・・というならやはり変身を解除するのが一番手っ取り早いのだろうが、生憎、今はそれが出来ない。
「・・・悪いが、それはもう少しお預けだ」
敵はまだいる。しかも、ワームやロイミュードとは全く異質の気配を持った何かが。
「・・・・・・いるんだろ。出て来いよ」
虚空に向かって煽るように言う。
それに対する返答は、そのすぐ直後に帰ってきた。
「・・・困るんだよねぇ。そう好き勝手やってもらっちゃうと」
ゆらり、と空間を揺らめかせるような挙動を見せる、一人の男。
「そもそもお前の力は消えたはずなんだけどなぁ・・・・・・ディケイド」
低く身構え、警戒態勢に入る。
ディケイドの事やその力が消えた事を知っている・・・それだけで警戒するには十分だった。
「・・・誰だお前」
「・・・? 覚えてないの・・・・・・?」
町に出れば間違いなく奇抜な格好だと指を差されるであろう厨二チックなファッションと、髪飾りのように鬢の毛から下がった羽。
まあ間違いなく一般人ではない。
「ま、いっか。どうせやる事は変らないし」
コイツは何者か、何が目的か。そんなことは分からない。
だが、今起きているこの事態を引き起こしたのはコイツ・・・・・・それだけは分かる。
「君と、君」
奴の挙動に注意を注ぐ俺の眼前で動かされた指先が指し示したのは優木に中須。
「君達が来るのは・・・・・・こっちだよ」
「させ―――――ッ⁉」
銃口を奴へと向けたライドブッカーの引き金に指をかけ―――それ以上動く事なく制止する。
動きを制限する重加速とは違う、完全なる停止。しかもそれは指だけでなく全身に及び、時間を止められたかの如く身体が動かない。
「いくらお前でも時間を止められちゃ何も出来ないでしょ。そこで見てなよ」
悠然と俺の横を通りすぎた男が同じく停止―――奴曰く時間を止められている優木と中須に接近。
《RYUKI・・・》
手のひらに収まるほどの大きさの、黒い、懐中時計のようなデバイス。
奴はそれに顔のような何かを浮かび上がらせ―――優木の身体へと埋め込んだ。
「う・・・・・・ああああ・・・・・・っ!」
途端に優木の時は動き出すが、自分の身体を抱いて苦しむ姿を見れば決して喜べるものではない事が伺える。
《RYUKI・・・!》
「あああああああぁぁぁァッッッ!!!」
瞬刻の後に発生した黒い瘴気の奔流が優木を飲み込み、膨れ上がる。
遅れて上がった慟哭がそれを払った時には既に優木の面影など無く、その姿は全くの異形の者へと変貌していた。
『・・・ウ・・・ァ・・・・・・』
歪な形相と、どことなく龍を思わせる赤と銀の体表。それは俺の記憶の中で仮面ライダー達を殲滅した怪物に酷似している。
「君もだよ」
《BUILD・・・》
「んんっ・・・あ、ああああああっっ・・・・・・!」
中須もまた同様のデバイスを埋め込まれ、優木に続き変貌。螺旋状に赤と青が連なる身体にトンボの複眼のような目が特徴の怪物となる。
「・・・さてと・・・」
優木と中須を怪物へと変えた男は、一瞬、歩夢を見た後、同じデバイスを手に今度は俺に標的に定める。
二人に用いられたものと違い、今奴の手にあるそれには何も描かれていない。つまり俺のカードと同じブランク状態という事。
そうなるとつまり、奴の狙いは―――、
「・・・? なんだこれ・・・」
はたと足を止めた男の顔が白く、遠くなってゆく。
今日だけでもう三回目ともなると流石に分かった。
これは˝アイツ˝に呼ばれ、あの世界に召喚される前兆――――――、
「間一髪だったな。今お前の力を奪われちゃお終いだ」
「・・・・・・またお前かよ・・・」
気付けばやはりホワイトアウトした謎の空間と謎の男。本日三回目だけあって若干慣れている俺がいる。
「つ、士君・・・? どうなってるのコレ・・・・・・」
状況を考慮した男が俺のついでに呼び寄せたのか、今度は歩夢もここにいる。
突然こんな訳の分からない場所に連れてこられて説明も無しに放置するのは若干気の毒な気もするが・・・・・・今回は奴に話を聞くのが先だ。
「・・・とりあえず何が何なんだか説明してくれ。訳が分からん」
「・・・お前が記憶さえ失ってなきゃこうはならなかったんだけどな・・・・・・仕方ない」
溜息をついた男が指を鳴らすと、途端に世界が暗転。
宇宙を思わせる空間の中に俺達は浮かんでおり、周りには地球と思しき惑星が幾つも存在していた。
「・・・十八の世界に、それぞれ仮面ライダーが生まれた。それらは独立した物語。決して交わる事はない・・・・・・はずだったんだがな」
言葉が途切れたのを境に空間が揺れ、同時に全ての地球が一点へと集中していく。
「今その物語は融合し、それが原因で世界が一つになろうとしている。もしこのまま事が進めば全ての世界は消滅する・・・・・・お前の力が消えた原因の一端もそれだ」
ブランク状態となった十八枚のカードに目を落とす。
仮面ライダーに、十八の世界と、それらの融合と消滅。覚えなどないはずなのに、何故だかすんなりと受け入れている自分がいる。
「ディケイド。お前は十八人のライダーの世界を旅しないといけない。それがお前が力を取り戻し、世界を救う唯一の方法だ」
「ちょ・・・ちょっと待ってください!」
淡々と話を進める男の言葉を割って入った歩夢が遮る。
「さっきからライダー?とか世界がどうとかよく分からないですけど・・・・・・それより皆は⁉ かすみちゃん達はどうなったんですか⁉」
悲痛な声が暗い空間に溶けてゆく。
優木と中須は勿論の事、他の同好会メンバーの安否も定かではない。
むしろあの状況ともなると―――、
「・・・正直、今の状態じゃ何も言えない」
苦々しい表情の男から帰ってきた答えも芳しいものではなく、逆に歩夢の不安を増長させるもの。
「俺に分かっているのは、アイツ等が仮面ライダーと、それぞれの世界を消そうとしている事だけだ。アンタの友達が狙われた理由までは分からない」
「そんな・・・」
歩夢が肩を落とす。
歩夢自身まだ何が起こったのかを全く把握出来ていないというのに、友人は行方も安否も不明。それだけじゃない。家族などの事も・・・・・・そんな彼女の心境など、想像するに余りある。
「・・・それもその旅ってのをすればどうにかなるのか?」
低く男に問う。
コイツは先ほど言った。俺が十八の世界を旅する事がこの世界を救う唯一の方法だと。
ならば他の世界を回ればこちらの世界も戻り、アイツ等は・・・、歩夢の仲間を取り戻すことが出来るのか。
「・・・確証はない。けど、もしお前が旅を全て終わらせ、力と記憶を取り戻すことが出来たなら・・・・・・その時は˝俺達˝が必ず救い出す」
なら、迷う必要はないだろう。
「・・・・・・分かった。その話乗ってやる」
歩夢や俺自身の記憶のためとは言え、こんな素性も知らぬような奴の話を鵜呑みにするというのも馬鹿げた事なのかもしれない。
けれど現に奴の言った世界の崩壊は始まってしまったし、この要求を拒否したところで何も分からない俺達に出来る事などありはしない。縋る藁はこれしか残されていないのだ。
―――俺が世界を救ってやる・・・・・・多分
それに、誰に効かせたものでもないこの宣言。
この時、俺はその場にはいなかった誰かに約束していた気がするから。
「・・・決まりだな」
始めて笑みを見せた男の傍らで空間が揺れ、その歪みからこの摩訶不思議な空間に不釣り合いに思えるエキセントリックなデザインのバイクが出現。色彩のベースがピンクなのはディケイドに似せたのだろうか。
「ピンクじゃないマゼンタだ」
「思考を読むんじゃねぇ。あとどうでもいいわ」
「どうでもよくないんだよ。・・・まあとにかく、そのマシンディケイダーはこの天才物理学者と、先輩達からの贈り物だ。各ライダーの世界に一度だけだが行けるようにしてある」
自分を天才と称した発言はさておき、とにかくこれが別の世界へと渡る手段らしい。
・・・と、そこまでの説明を終えた直後にまた男の姿が翳み始める。
「・・・・・・もうこれ以上の干渉は無理か・・・。とにかくディケイド。こんな役回りを押し付けたのは悪いと思ってる。けど、これしか手段がないことも理解してくれ・・・・・・。旅を終えたら、また会おう―――・・・・・・」
何故だかデジャヴを覚える言葉を最後に男の姿は完全に消え、周囲の風景が元いた町の中へと戻る。
既に優木と中須の姿はなく、代わりにマシンディケイダーだけが荒れ果てた光景の中に鎮座していた。
「・・・・・・士君・・・」
きゅっと歩夢が俺の服の裾を掴む。
「・・・・・・本当に行くの?」
覗き込ませてきた顔はいつになく不安気で、今にも壊れてしまいそうな程に弱々しい。
今俺にディケイドの力を使う理由があるのなら、それは一刻も早く歩夢の悲しみの根を取り除く事だろう。
「まあな。ちょっくら世界救ってくる」
これは俺にしか出来ない事。そんな気がする。
「・・・・・・そっか・・・、じゃあ、私も行く」
「はぁ⁉」
マシンディケイダーに跨った俺の後ろに陣取ろうとする歩夢の申し出に思わず抜けた声を上げる。
そんな反応が気に入らなかったか、歩夢は俺に子供っぽい膨れっ面を向けて言った。
「士君、私がいないと全然ダメだし・・・、それにこんな事になってるのに置いて行かないでよ」
「あー・・・」
倒壊した建物の世界の中に生きた人間の姿は見当たらない。仮に生き残っている者がいたとしても、怪物蔓延る現状ではその命も風前の灯火同然だろう。
別の世界の旅に連れ回すか、崩壊した世界に一人残すか。そんなもの、秤に掛けるまでもない。
「・・・・・・仕方ないか・・・」
何が待ち受けているのか分からない以上歩夢を巻き込むのは不本意だったが・・・・・・言われてみれば確かにこの世界に残していく方が危険だ。
やむなく後部座席に乗った歩夢を受け入れ、俺はハンドルを握る。
「・・・・・・そう言えば士君、バイクの運転できるの?」
「大体分かってる。まあ大丈夫だろ」
「そんなアバウトな――――――きゃうッ⁉」
エンジンの掛かったマシンディケイダーが歩夢の短い悲鳴を置き去りに勢いよく動き出す。
導かれるように進む先にはカーテンサイズのオーロラ。どうやらあれに飛び込めという事らしい。
「・・・行くぞ」
「・・・・・・うん」
腰に回された歩夢の腕に力が籠る。
よりハッキリと伝わった温かさを背中で感じつつ、俺は更に速度を上げてオーロラの中へと突っ込んだ。
「・・・ここが・・・」
オーロラを超えた先には、俺達が元いた世界と何ら変わらない光景が広がっていた。
目の前にはコンクリートで舗装された河川に、こちら側と対岸を結ぶ橋。その向こう側には高層ビルが聳え立つギラついた電気街が存在していた。
「・・・・・・つか、ここ・・・」
「秋葉原、だよね・・・・・・って、士君何その恰好?」
「あ?」
歩夢に言われ、自分の服装を確認してみればあら不思議。元々俺が着用していた服の代わりに紺に近い青色をした堅苦しい制服が着こまれていた。
「それ・・・警官だよね・・・・・・なんで?」
「そんなん俺が知りた――――――ッ!」
物珍しさで頭に被さっていた警帽をまじまじと眺めていたその時、何かの気配を感じ取り歩夢を抱えて橋脚の影へと転がり込む。
「つ、つつ士君・・・? いきなりそんな・・・・・・!」
「・・・ちょっと静かにしろ」
顔を赤らめてじたばたする歩夢の口元を抑え、俺が感じた気配の正体を探る。
ただ人が近づいてきたとかそんなならこんな大袈裟なことはしない。˝明らかに人間の気配ではなかった˝からこそこうして身を隠したのだ。
『ジャヅパゾボザ?』
『ボボゼクウガンビゴギググス』
その正体はすぐに明らかとなった。
獣然とした人型の怪物が二体、奇怪な言語を交わしながら何かを探している様子でこちらに迫ってくる。
「むううぅぅ⁉」
「・・・・・・グロンギ・・・」
半ば怪物から逃れてこちらの世界に来たというのに、来て早々怪物に遭遇しては世話がない。おかげで歩夢もパニックだ。
とにかくこれ以上ウチのお姫様が混乱なさる前にぱっぱと片付けるとしよう。
《KAMEN RIDE》
《DECADE!》
バックルにカードを差し込み変身。橋脚から飛び出しては怪物―――グロンギの行く手を塞ぐ。
『クウガバ?』
『ギジャ…ヂガグ』
「クウガジャベェ、ディケイドザ」
自然と頭に流れてきた奴等の言葉で啖呵を切り、問答の隙も与えずに右ストレートで強襲。
立て続けにラッシュを叩き込み、開戦数十秒でグロッキー状態へ追い込む。
《FINAL ATTACK RIDE》
《DE・DE・DE・DECADE!!》
ディケイドのクレストが写る金色のカードの力で所謂˝必殺技˝を発動。
幾重もの光の束を突き破って繰り出された飛び蹴り―――ディメンションキックが炸裂し、二体のグロンギの身体は跡形もなく爆散する。
「・・・何が目的か聞き出してからの方がよかったか・・・・・・?」
「――――――どうして同じ未確認を倒した? 何なんだよお前」
次から次へと今度は何だ。
また新たな敵かと思い振り返れば、予想に反しそこにいたのは一人の少年。
大体高校生ぐらいの見た目だが、その薄汚れ、ボロボロの身なりはコイツ自身の目つきの悪さも相まって自然と警戒心を引き立たせてくる。
「人に名前を聞く時はまず自分から・・・・・・ママに習わなかったのか?」
「うるせぇ! どうせお前も俺を・・・・・・!」
尋常じゃない憎悪の籠った眼が俺に向けられ、それに呼応するように男の腰回りに巻き付いた状態で出現したのは―――形や性質こそ違えど、俺と同じベルト。
「なんなんだよ・・・・・・俺が何したって言うんだよ!」
悲痛な叫びの後、ベルト中央の宝石に灯った淡い光が広がる。
そうして男を包んだ光は即座に弾け、その姿を純白の鎧を纏った戦士―――仮面ライダークウガへと˝変身˝させた。
色々情報がごった返していますがとりあえず原作キャラの死亡描写は今後描く事はありませんのでご安心を………いやほんとゴメンナサイ
あともうお察しかもですがジオウ要素もたっぷり入っております
少し設定等の解説をすると、こっちの士君は訳合って高校生くらいの見た目です
中盤で出てきたウール君っぽい奴は一応オリキャラ
そして最初の世界は勿論、歴史の始まりであるあの人達です
それでは次回で