Journey Through The Rainbow 作:がじゃまる
「らああぁぁぁぁッ!!」
「お、おい! 何なんだいきなり⁉」
状況を整理しよう。
俺と歩夢は十八の世界とライダーを救い、俺達の世界も元に戻すべく他の世界へと旅に出た。
そして訪れたこの世界で早々にグロンギと遭遇。撃破したはいいものの今度は男が変身してはいきなり殴りかかってきた。
以上。
一言で言うと訳が分からない。
「落ち着け! 俺はグロンギじゃない!」
「未確認じゃないにしろ俺を狙ってきたのは変わらないだろ!」
「はぁ⁉ 何言ってんだお前⁉」
クワガタを連想させる見た目に、グロンギ達の言葉からしてコイツは仮面ライダークウガ。
だがライダーカードに写されていたクウガの体色は白ではなく赤であり、頭部の角ももっと大きく立派なものだった。
となるとこのクウガは幼体・・・不完全な姿なのかもしれない。
「お前、俺があのグロンギを倒したのは見ただろ! 俺は敵じゃない!」
「警察の言葉なんて信じられるか!」
説得を試みるが、警察に何か因縁でもあるのか、変身前の身なりが災いして聞く耳を持とうとしない。
特質は違えども同じライダーである以上交戦する事は好ましくないと思うが・・・・・・どうする・・・。
「フッ!」
俺の胸を踏み台に使い、飛び上がったクウガの足に炎のような淡い光が宿る。
そのまま流れるように空中でムーンサルトを決めた奴は勢いよく右足を突き出し、そのポーズのままに急降下。
「ハアァァァァッ!」
「ぐっ・・・!」
両手をクロスし、飛び蹴りの衝撃を受け止める。
俺のディメンションキックと同じ類の業だが威力は大した事はない。生身ならばともかくディケイドの装甲があれば受けきれるだろう。
「ちょ、ちょ・・・二人共!」
激しくなる攻防戦の横で歩夢が上げた制止を求める声もクウガには届かない。
怒りや憎悪、そしてその中に秘めた恐怖や不安が拳を介して伝わってくる・・・・・・そんな感じがした。
「とにかく一旦落ち着いて・・・・・・士君!」
「うるせぇ!」
「きゃぁうっ・・・・・・!」
一度俺を止めて場を収めようとする歩夢だが、下手に近づいたせいでクウガの間合いに入り派手に突き飛ばされてしまう。
「お前・・・・・・何して――――――」
「ストォ――――――ップッッ!!!」
「「っ・・・・・・⁉」」
川岸を舗装するコンクリートに反響した高い声が割って入り、初めて振り上げられていたクウガの拳が止まる。
「ストップストップストーップ! ユウ君どう! どう! 落ち着いてー!」
「え・・・・・・」
堤防の上からクウガ目掛けて一直線に駆け下りてくる声の主に虚を突かれたように抜けた声を漏らす歩夢。
だがそれも無理はない。何故なら俺ですらその人物には˝見覚え˝があったから。
「知らない人にいきなり・・・・・・しかも女の子にまで・・・・・・」
肩辺りまで伸びた明るい茶髪をサイドアップに纏めた、快活な印象を抱かせる少女。
それがμ’sリーダー高坂穂乃果であることは、スクールアイドルに疎い俺の目ですらも明らかだった。
「ごめんね? 怪我してない?」
高坂に支えられて上体を起き上げた歩夢の膝では皮膚が擦れ、赤色が滲んでいる。
それが目に入ったらしい高坂は瞳の端を僅かに釣り上げ、臆することなくクウガに吠えた。
「ユウ君! ダメだよちゃんと謝らないと!」
「・・・そんな必要ねーよ。どうせソイツ等も・・・・・・」
「謝らないとこれあげないよ」
我が子を叱る母親のように説教する高坂がクウガに対し突き出したのはバスケット。
少し開いた蓋の隙間から見える中身はお握り等の食料。どうやらこれをコイツに届けるつもりでここに来たらしい。
「・・・・・・別に、そんなのいらね――――――」
ぐううぅぅぅ・・・・・・。
受け取りを拒んだ直後に乾いた音が鳴る。
「・・・・・・悪かったよ」
こっちの言う事は聞かないが腹の虫には素直なようで。
変身が解かれ、顔に朱を差したクウガ―――ユウ君と呼ばれた男が不本意そうに謝罪を述べ、引っ手繰ったバスケットを手に去ってゆく。
「・・・なんだったんだアイツ・・・・・・」
「うえぇぇ⁉ け、警察の人⁉ ごごごゴメンナサイユウ君がぁ!!」
「・・・コイツもコイツでなんなんだ・・・・・・」
クウガに続き変身を解けば、俺の警官服を見た高坂が大慌てで頭を下げてくる。何と言うか急がしい奴だ。
「ユウ君は悪い子じゃないんです! ただ最近ちょっと反抗期なだけで―――」
「あの・・・・・・大丈夫ですよ・・・? 士君に人は裁けないし何なら裁かれる方なので・・・・・・」
「どういう事だお前」
記憶ない金ない役に立たないの三拍子である極潰しとでも言いたいのだろうか。間違ってないので何も言い返せないのだが。
「・・・それに関してはいい。代わりにアイツの事を教えろ」
あのナルシスト気味の男が言った世界を救えという事が、具体的に各世界で何をすべきなのかという事は分からない。
だが何をするにしろ、まずはこの世界のライダーの情報を手に入れる事が先決だろう。
「・・・とりあえず怪我に手当てしないとね。ウチまで来て」
「はい! これで大丈夫」
「あ、ありがとうございます・・・」
歩夢の膝にぺたしとガーゼが張られる。
通されたのは彼女の実家だという和菓子屋。音や光で洪水を起こしている電気街からは外れているとは言え、この古風な店構えは少し異色とも取れる。
「・・・それで? どうしてアイツは俺達に攻撃的だった?」
出された団子は美味いが、俺達はお茶するためにここ来たのではない。
クウガの俺に対する黒い感情・・・ただグロンギの仲間と勘違いしたとか警察が嫌いだとかそんな理由ではないはずだ。
一体、奴の過去に何が・・・。
「・・・・・・ちょっと前まではもっと明るくて、優しかったんです」
明かるげだった雰囲気とは相反する陰りを表情に差した高坂が語ったのは、ユウ君こと一条雄介に降りかかった不幸。
三ヶ月前、突如として長野の遺跡から現れた未確認生命体―――グロンギが、同じく遺跡で発見された出土品の展示されていた博物館を襲った。
そしてその日偶然にも、高坂や一条が校外学習でその博物館を訪れていたのだという。
「ユウ君、展示されてたベルトを見た時から変な声が聞こえる~とか、なんか力を感じるとか言ってて、それで・・・・・・」
「グロンギがそれを狙ってショーケースを壊した拍子に巻いちまった・・・・・・と」
高坂が小さく頷く。
その後は簡単に想像できる。あのベルト―――アークルの力で一条の身体はクウガへと変わった。
その場にいたグロンギはクウガの力を手にした一条によって倒され、死人は出なかったという。
「・・・・・・でも、皆はユウ君も怪物扱いして、押っ放り出そうとした」
人間とは未知なる脅威を恐れ、本能的にそれを押さえつけ、取り除こうとする。
この世界の人類の目にはグロンギも、それを倒したクウガも同じ。等しく怪物に映った。
「・・・皆を守ったのに、皆ユウ君を追い出そうとするから、ユウ君、誰も信じなくなって・・・・・・」
最近になり本格的に警察がクウガやグロンギの排除に動き出した事により、クウガの正体だと噂が立っている一条が観察対象に指定されているらしい。
警官服を着ていた俺を襲ってきたのはつまりそういう事。
「・・・でも、穂乃果さんはそうじゃないですよね・・・⁉」
「当り前だよ! 私がユウ君をそんな風に見る訳ない・・・・・・けど・・・」
一度は歩夢の言葉に力強く答えるも、徐々に語勢を落とした高坂の瞳が悲し気に揺れる。
「・・・ユウ君はどうせお前もその内手のひら返すんだろって、信じてはくれてないみたい・・・・・・」
聞けば既に両親はおらず、世間の偏見のせいで拠り所もない一条にああやって食料を届けているくらいなのだ。高坂がアイツに負の感情を抱いている訳がない。
だがそれが分からない程に一条は追い詰められているのだろう。
「士君・・・」
歩夢の視線が俺に向く。
ああ、お前に言われなくても分かってるよ。
仮面ライダークウガを、一条雄介を救う事。それがこの世界で俺が為すべき使命らしい。
『―――かー田明神に未確認出現。付近の警察官は直ちに現場に急行せよ』
「・・・・・・っと、丁度いいな」
無線機が掠れた召集令を上げ、それに応じて腰を上げる。
どうしてこの世界で俺が˝クウガの敵˝である警察という役割を与えられたかも気になるところだ。この期に乗じて情報を集めるとしよう。
「・・・・・・そりゃ都合よくアイツもいる訳ないよな」
けたたましいサイレンの鳴り響く中、銃数人の警官から一斉に射撃を受けるグロンギを眺めそんな事をぼやく。
このグロンギも俺が倒した奴等と同様クウガを探していたようだが、奴の下に辿り着く前に警察に見つかってしまったらしい。
「・・・もっとコソコソ動きゃいいもんを・・・そんなだから見つかるんだろ・・・」
それともクウガ以外にも何か狙いがあるのか。
そうなるとわざわざ人目についてこのように警察に攻撃されるリスクを犯す価値があるものという事になるが・・・、
「・・・・・・ま、聞いてみりゃ分かるか」
《KAMEN RIDE》
《DECADE!》
ディケイドライバーがカードの力を開放し、俺の身体を戦士の装甲が覆う。
「うらぁッ!!」
『グバァッ・・・⁉』
軽々と警察の背後からその背中を飛び越え、銃撃に晒されているグロンギに飛び蹴りの形で突撃。着地と当時にその身体を薙ぎ払う。
「なんだ・・・⁉」
「未確認・・・・・・十号⁉」
俺の乱入に際し警察達が何やら騒いでいるが気にせずやるべきことを実行。
グロンギの胸倉を掴んでは電柱に叩きつけ、耳打ちする。
『バンザ、ビガラパ・・・?』
「なぁに、ちょっと聞きたい事があるだけだよ。・・・ゴラゲサ、クウガギガギビロロブデビグガスンザソ? ゴギゲソジョ」
『・・・? ビガラ・・・バゼゴセゾ・・・?』
「さあ? 何でだろうな」
相手から情報を引き出す際の方法は三つ。
交渉、取引・・・・・・そして拷問だ。
『・・・・・・ゲゲルバ』
「・・・・・・ゲゲル・・・?」
・・・割とあっさり吐くんだな。まだ振りかぶっただけなんだが。
ゲゲル・・・聞き覚えのない単語だが、コイツ等が目的としている時点で良からぬ事なのは確かだろう。
「ゲゲルデデボパバンザ」
『ゲゲルパゲゲルザ。ゴゴギバスジャリゾズババヅガゲスダレンバ』
「・・・・・・」
良からぬ・・・ってレベルのもんじゃなさそうだな。
コイツの言ったソレがどの程度のものなのかは知らないが、未然に防いでおくことに越した事はない。
『バラゾガガゲスリントンゴンバゾズガギビンボソグ。ゴセグゴゴギバスジャリゾズババヅガゲスゲゲルザ』
「そーかい。ベラベラとありがとよ!」
引き出すべき情報を全て引き出すや否やグロンギの顔面に拳を沈める。
聞くだけ聞いて用済みというのも酷い話だが、この場において俺と奴は敵対関係。しかも奴の言うゲゲルによって引き起こされることを考慮すると生半可なことは言っていられない。
「とど―――」
パーン、と言った乾いた音の後、トドメを刺そうとした俺の肩を衝撃が叩く。
音源では畏怖と敵意を滲ませた警察達の顔と、その手の中の拳銃が俺に向けられた銃口から煙を上げていた。
「撃てェ―――ッ!!」
最初の発砲に続いて上がった声を皮切りに銃撃が再開される。ただ一つ先程と違う事があるとするなら、それはその標的に俺も含まれているという事。
「ちっ・・・俺までグロンギ扱いかよ・・・⁉」
『・・・・・・ウウゥル・・・』
「あ、おいコラ待て!」
俺の意識が警察に向いたスキを突いてグロンギが逃走を図る。
追跡をするにも射撃が邪魔をし、間もなくその姿は視界から逃れてしまう。
「この・・・! ああったく!」
ディケイドの装甲は拳銃射撃程度どうという事はないが、コイツ等が俺を攻撃対象として見なしている以上は居座って説得を試みるのは得策ではない。
逃げるが勝ちとも言う、ある程度の情報は得られたのだしここは退こう。戦略的撤退。
「・・・これがアイツの見ている世界か・・・」
クウガの、一条雄介の見る世界はずっとこれだったのだろう。
確かにいつもこんな調子で負の感情を向けられれば、他人を信じられなくなるのも理解はできる。
「・・・さて、どうするかね・・・・・・」
騒ぎを聞きつけたのか、野次馬に紛れこちらを覗く浮浪の少年を横目に、俺は小さく呟いた。
「・・・変」
野次馬とはまた別、豪奢な造りの社の上から騒ぎを見下ろす二人の男女。
そのうちの片方、眠たげな瞳をした少女が黒い懐中時計のようなもの―――アナザーウォッチを手に首を傾げた。
「・・・クウガの力、奪えない」
「この世界じゃまだ、クウガは仮面ライダーとしての力には目覚めてないのか・・・」
少女に答える形で男が口を開き、同時に踵を返して騒ぎに背を向ける。
「帰るよ。ディケイドが力を取り戻すと困るからこの世界のクウガの力も奪いに来たけど・・・、そのクウガがあんななら必要ない」
「・・・わかった」
続いて少女が腰を上げ、ひょこりと男の傍らにつく。
男が指を鳴らしたその刹那には二人の姿は消え、乾いた風が社を吹き抜けた。
最初の世界、クウガ世界のヒロインはμ’sリーダー穂乃果です
やっぱり最初の世界ならこの二人がいいと思いまして
で、そのクウガですが、この世界線ではグロンギと同列の存在と見なされ迫害を受ける側
世界観が世界観なのでこういうのもありかなと。そのクウガも現時点ではマイティではなくグローイングフォームです
それでは次回で。何とか今年中にもう一話…!