Journey Through The Rainbow   作:がじゃまる

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ここで作者がまだスクスタをプレイできてないという告白をですね……


4話 追憶

 

 

 

―――うくん! ユウ君!」

 

「なんだよ、これ・・・、外れねぇ・・・⁉」

 

 警報のベルがけたたましく鳴り響く中、パニックになる人々の波から外れた場所で少年―――一条雄介が一人、高坂穂乃果の眼前で苦しそうに床をのた打ち回る。

 校外学習の一環として訪れたこの博物館に人型をした謎の未確認生命体が襲撃したのはほんの数分前。瞬く間に館内は混沌の渦中と化し、同時に彼の異変も始まった。

 

「っ・・・このっ・・・ぐぅぁっ・・・!」

 

 腰に巻き付いたベルトが赤い光を灯し、雄介の身体を蝕むようにその熱を広げてゆく。

 

 外す事の出来ないこのベルトは元々この博物館に展示されていた者だが、未確認の襲来でショーウィンドウが破壊されたことで何か力でも開放したのか、突然操られるようにして未確認からベルトを奪取っした雄介がそれを自身の腰に巻き付けた。

 

 その後は見ての通り、雄介からベルトが離れず、その力にこうして悶える事となった。

 

『クウガ・・・』

 

『クウガンヂバサパゾソドグ』

 

「っ・・・!」

 

 未確認の狙いがこのベルトだったならば、必然的にそのベルトを巻いた雄介及びその隣の穂乃果も奴等の攻撃対象となる。

 歪む視界の中で接近してくる未確認を見た雄介がそれを悟るも、穂乃果は雄介を心配するあまりか気が付いていない。

 

「穂乃果ァ!」

 

 痛む身体に鞭を打ち、穂乃果を襲わんと腕を振り上げた未確認に向け拳を突き出す雄介。

 

『ゴバァッ・・・⁉』

 

「え・・・?」

 

 未確認の巨体が吹き飛び、ゴロゴロと非常用照明の光で赤く染まった床を転がる。

 だが雄介と穂乃果の驚嘆の対象はそこではなく、二人にとってはもっと衝撃的なもの。

 

「ユウ・・・君・・・?」

 

 未確認に一撃を見舞った雄介の右腕。

 白い、甲冑のようなそれは明らかに人間のものではなく、ベルトの力が雄介の身体に異変をもたらしている事を如実に語る。

 

『クウガグレザレス?』

 

「ぐ・・・、らあぁぁっ!!」

 

 状況を顧みる暇すら与えずに殴りかかってきた二体目の未確認も跳ね上がっている膂力が易々と返り討ちにする。

 

 しかし再度力を行使した影響か、腕のみでなく胴体や下半身と雄介の身体は白の光に包まれてゆき―――、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・それで、あの姿に・・・」

 

「うん・・・」

 

 警察の追っ手を振り切って和菓子屋に戻ってくると、丁度高坂が歩夢に一条雄介の歯車が狂い始めた時の事を話し終えた直後だった。

 俺が聞いた時より幾ばくか詳細に語られている気がするが、まあそこは女子同士の領域という事にしておこう。

 

「・・・聞く限りじゃ、自分で巻いたって訳じゃないんだな」

 

「あ、士君・・・」

 

 俺の帰還に反応した歩夢に簡素に会釈だけ返し、高坂と向き合う。

 

「・・・てっきり自分で巻いたとばかり思ってたが・・・まあ、自分で巻いといてあのグレ方もあれか」

 

「ごめん説明不足で・・・・・・それで、何か分かった?」

 

 高坂もまた真剣さを帯びた瞳で俺を見る。いきなり口調が砕けたのは恐らく歩夢が俺に敬語なんか使う必要はないとか吹き込んだからだろう。剥いてやろうかコイツ。

 

「詳しいことはよく分からん。けど、よく分からんことは分かった」

 

「え?」

 

「・・・何言ってるの士君・・・」

 

 俺の収穫を述べると歩夢に冷たい目を向けられる。馬鹿は死ねという目だった。

 

「この世界じゃ未確認・・・つまりグロンギに関する知識が殆どないって事だ。同じようにクウガの情報もないに等しい。だから破壊活動をするグロンギとほぼ同時に現れたってだけで敵扱いされてるんだよ」

 

「・・・じゃあそのクウガ・・・一条さんが敵じゃないって皆に訴えればいいって事?」

 

「どーだか。正直それに関しちゃもう高坂がやってるだろ」

 

「うん・・・。でも・・・」

 

 それ以上は続かなかったが、誰も聞く耳を持ってくれなかったのは俺にも歩夢にも伝わった。

 むしろ危険視されているクウガを擁護する存在として彼女も白い目で見られた事もあるくらいだろう。

 

「・・・μ’sの皆さんもそうだったんですか? 海未さんとかことりさんも・・・」

 

「・・・みゅーず・・・って、なに?」

 

「え・・・・・・?」

 

 まさかの返答に目を剥いたのは歩夢だけではなかった。歩夢からは彼女がμ’sの創設者であると聞いたが、その張本人からのこの返しは一体・・・。

 

「・・・お前、スクールアイドルやってるんじゃないのか?」

 

「スクールアイドルって・・・あの今人気だって言う? でも私はやってないし何なら部活も・・・」

 

 俺達の記憶と食い違うその言葉。

 だが彼女が嘘を言っているようには感じられず、それを示すように青い瞳は純粋な疑問の色を浮かべている。

 

「それに海未ちゃんは弓道部で、何よりアイドルなんて恥ずかしい~とか言って絶対やらないと思うし、ことりちゃんは今留学中だよ?」

 

 更に俺達の認識とは異なる事実が積み重なる。ここまで来るともう決まりと言っていいだろう。

 

「・・・そうなるとここはパラレルワールドって事か・・・」

 

「・・・どういう事?」

 

「どこかの地点で分岐して別の可能性を歩んだ世界って事だ。もしもの世界って言った方が分かりやすいか?」

 

AとBという選択肢があったとしたら、Aを選んだ場合とBを選んだ場合で未来は変わる。俺達の世界がAを選んだ場合の世界だとしたら、こっちはIFの世界、Bを選んだ場合の延長線上にある世界。

 

 つまりこの世界は何かのきっかけでクウガが誕生した世界であると同時にスクールアイドルの高坂穂乃果が、μ’sが誕生しなかった世界であるらしい。

 

「・・・・・・まるで別の世界から来たみたいな言い方だな」

 

 ・・・と、情報の整理と推測を行っていた俺の思考を妨げる声が入り口から飛ぶ。

 ついさっきも聞いたその声に振り返ってみればやはり一条雄介。歩夢に対する説明を聞いていたのか、相も変らぬ険しい顔を俺に向けている。

 

「・・・そうだって言ったらどうする?」

 

「別に。胡散臭さが増すだけだろ」

 

 こちらが本来のテンションなのか、先程初見で襲いかかってきた時に比べると幾分か落ち着いて見える。

 だが敵意というか、警戒の色は明らかであり、険しい表情を解こうとする気配は感じられない。

 

「・・・それよりユウ君、なんでここに・・・?」

 

「・・・これ返しに来ただけだよ」

 

 ほんの少し期待するような高坂に対しても同じ態度のまま、素っ気なく先程彼女から手渡されたバスケットを突き出す一条。

 殆ど迫害されているような状況にも拘わらず律儀に返しに来るとは、高坂の言う通り根は優しいのかはたまたバカなのか。

 

「・・・あと、もう俺の事は気に掛けるな」

 

「・・・え・・・?」

 

 バスケットを手渡すや早々に背を向け、馬鹿・・・じゃなくて一条は何かを抑えこんでいる

ような声音でそう言う。

 

「・・・なんで・・・? 私、ユウ君の事怖がってなんか・・・!」

 

「そういう話じゃない」

 

 そう言うのが予め分かっていたように、即座に返された言葉が高坂の声を遮る。

 

「・・・落ちてんだろ、売り上げ」

 

「・・・・・・それは・・・」

 

 返答に詰まった高坂の反応から、一条が何を言わんとしているかを悟る。

 高坂の家は和菓子屋・・・自営業の家系だ。客が来なければやっていけない。

 

 つまりは世間から疎まれている一条と高坂が関わる事は、高坂の家に直接的な損害を被る事になる。

 

「・・・周り見りゃ分かるだろ? 明らかに俺なんか気に掛けてるからだ」

 

 その元凶となっている事を理解している者からの言葉は重い。

 だがその裏に微かだが、何か、高坂に対する怯えのようなものが垣間見えた。

 

「今でさえお前が白い目で見られてんだ。これ以上続くようなら雪穂達まで・・・。そんな事お前も望んでないだろ?」

 

 筋は通っている。関わる事で何の利益も生まずむしろ害となり得る者と関わってはいけないと。

 けれど、今しがた垣間見えた一条の憂い。それが引っ掛かる。

 

 俺にはその言葉の裏には何か別の、一条の本心があるように思えた。

 

「・・・・・・だから、もう関わるな・・・」

 

 有無を言わせぬ雰囲気を纏ったまま、一条が暖簾の外側へと消えてゆく。

 高坂もその圧に押され言葉が出ず、誰もがただ黙って立ち去る背中を眺めていた。

 

「・・・? 歩夢・・・⁉」

 

 ・・・ただ一人を除いては。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの!」

 

 舞い降りた夜の帳を自己主張の激しい電気街の光が切り裂く夜の一風景。

 背後からの呼びかけが自分に対するものだと悟った一条雄介は足を止め、その声の主である歩夢へと視線を向けた。

 

「・・・・・・なんだよ」

 

 剣呑な眼光に思わず萎縮する。

 だがそれでも、言葉だけは押しとどめず声として雄介と向き合う。

 

「・・・・・・穂乃果さん、本気であなたのこと心配してるんです。・・・だから、少しでも向き合ってあげてください!」

 

 士が出払っている間、雄介の事を語る穂乃果の哀愁を感じ取ったからこそ言える。

 穂乃果の雄介に対する想いは揺るがないもの。それがこんな事で断ち切られていいはずがない。

 

「・・・それで何になるんだよ」

 

「え・・・?」

 

 返答は至って簡素で、それでいてこちらの言葉を詰まらせるもの。

 

「・・・向き合って何になるんだ。そんなことしたところで何も良くならねーし、むしろ余計に悪化するだろ」

 

「・・・でも・・・! 他に何かあるかもしれないし・・・私達に出来る事なら・・・!」

 

「・・・じゃあなんだ? お前がアイツん家の損害賄えるのか?」

 

「・・・それは・・・・・・」

 

 一介の高校生である歩夢にそんな事は不可能だし、そもそもそれでは根本的に何も解決しない。

 クウガへの・・・雄介への偏見をなくさない限り、この状況は何も変わらないから。

 

「分かったなら適当なこと言うな。・・・昼間に怪我させたことは謝るよ。けど、これ以上俺に関わろうとするな。・・・・・・穂乃果にもそう言っといてくれ」

 

 雄介はそう言い残すと跨ったバイクのエンジンを切り、人気のない、閑散とした夜の暗闇へと消えてゆく。

 士と穂乃果が遅れて店から出てきたのは、その直後だった。

 

「・・・珍しいな。お前が会ったばっかの奴にあんな事言うの」

 

「・・・うん」

 

 こくりと頷いた歩夢は、同情するように雄介の消えていった方を見つめる穂乃果に視線を流す。

 

「・・・私も、同じだから・・・」

 

「・・・?」

 

 儚げに呟いた彼女の言葉の真意を、士はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くぅっ・・・あッ・・・・・・!」

 

 闇に溶ける、か細い悲鳴。

 

『・・・ヂパバガグバジョ。ギンゲギバスゲゲルンスススゾジャヅスボドビバス』

 

『パバデデス』

 

 ゴキ、と何かが砕ける音がし、同時に悲鳴が止む。

 時を同じくして遠方からの波動を感知し、二体の怪物は嗤った。

 

『ボセゼガドパパンビン・・・』

 

『ゴゴギバスジャリンズババヅパヂバギ・・・』

 

 どさり。

 そんな音と共に怪物が去った後には、赤と白の装束を身に纏った、既に動かぬものとなった女性の亡骸だけが残されていた。

 

 

 




今回はちょっと控えめに。次回からクウガ編畳みかけます

言及がありましたがクウガの世界では穂乃果はスクールアイドルを始めておらず、何ならμ’sも結成されておりません。
アニメでμ’sが生まれなかったらどうなるのかを想像して書いたのでことりちゃんも留学で海外です。

雄介はクウガ本編と違い望まぬ形でアークルを巻いてしまい、クウガとなってしまった感じですね。
そしてそんな雄介が穂乃果をも拒絶する本当の理由は…

あとこの時空の歩夢はμ’sとAqoursを先輩として見ているので各メンバーに対し敬語で接してます

それでは次回で。よいお年を
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