Journey Through The Rainbow   作:がじゃまる

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パソコン死んだ上に5周年発表会中止になって嘆いてます
コロナウイルスは絶版だ。


9話 アナザ-・嫉妬の果て

「―――ッ・・・!」

 

 空の器が満たされてゆく感覚の後に飛んでいた意識が引き戻され、胡乱な意識のまま周囲を見回したあの日。

 

 あの日が、俺という存在の過ちを決定付けた日だ。

 

「・・・梨子・・・? 梨子ッ!!」

 

 自身の膝に圧し掛かる重みを感じ、下げた視線の先で少女が横たわっている。

 暴れたのか、はたまた何かに抵抗したのか、髪や服装は乱れ、ピアニストにとって生命とも言える手は思わず目を逸らしてしまうような傷とそれによる紅に染められていた。

 

 意識の飛ぶ寸前の記憶も曖昧なまま呼びかければ程なく彼女は閉じた眼を開いたが―――、

 

「・・・渡・・・・・・?」

 

 その時の彼女は、明らかに様子が違った。

 穏やかであるもハッキリとした意思を感じる立ち振る舞いや声は見る影もない。とろんと緩んだ瞳に紅潮した顔は彼女の乱れた恰好も相まって煽情的に感じる。

 

「あは・・・、わたるぅ・・・・・・♡」

 

「梨子・・・・・・?」

 

 俺を視界に定めるや否や、抱きつくようにその身体を寄せてくる梨子。

 発展途上ながらも˝女性˝として成長しつつある彼女の身が柔らかさと共に密着し、それに呼び覚まされるように湧き上がってくる熱さが俺に悟らせる。

 

 そうだ。

 

 

 細く可憐なワインレッドの髪に隠れたうなじにぽつんと佇む二つの赤い点。

 それが歯を立てられた跡。つまり―――、

 

(俺が―――・・・!?)

 

 いつの日か亡くなった母に言われたことがあった。

 

 貴方の愛は愛する人を歪めてしまう。

 父のような過ちは、犯してほしくない、と。

 

「ッ・・・・・・」

 

 もし。

 もし母の言葉が、今目の前で起こっているこの事を示唆していたならば―――、

 

「渡・・・! わたる・・・!」

 

 違う。こんなのは梨子じゃない。

 

 

 

 俺が、梨子を歪めたんだ―――――・・・・・・、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 嫌な事を思い出す。

 思えばあの日が自分の出生―――生まれ落ちた罪を悟った日だったか。

 

 ずっと父親がいないのを疑問に思っていた。

 母親が自分を人と接触させたがらないのを疑問に思っていた。

 どうしてそれらの話をする時、母親が悲しそうな顔をするのか疑問に思っていた。

 

 その全てが繋がったのがあの日だ。

 

 全ては自分が、羽島渡が人とファンガイアの間に生まれた存在だから。

 

「・・・しみったれた顔してんなオイ」

 

 寂れた音と共に扉が開かれ、先程音羽に連行されていった仮面ライダーディケイド―――士が顔を出す。

 

「昔の事でも思い出してたのか?」

 

 被さった埃を払って椅子に座り込んだ士の言葉に、音羽によって過去が語られたことを理解する。恐らく梨子にも知れてしまったのだろう。

 

「・・・聞いたんなら話は早いだろ。俺はアイツとはいられない・・・いちゃいけないんだ」

 

「ピアニストとしての未来を奪ったからか? だったら心配すんな。とっくに治って復帰してるって話だ。気にする事ぁねぇだろ」

 

「・・・・・・それだけならまだよかったのかもな」

 

 勿論それで済む話でもないが、言った通りそれだけだったならば渡は梨子を避けるようにはなっていない。

 その裏にはもっと―――、

 

「・・・・・・キバットが何か言ってなかったか?」

 

「・・・襲われた後の記憶がないってのをはぐらかしてたが、そのことか?」

 

「・・・アイツなりの気遣いか・・・」

 

 呆れ気味に溜息を吐くが正直に言うと有難かった。自分とキバット以外・・・特に梨子には知られたくなかった事だ。

 だが士には話すべき―――そんな気がした。

 

「・・・俺の父親、先代キングのヴァンプスファンガイアには他のファンガイアにはない能力・・・ライフエナジーを擦った相手を自分に惚れさせる力があったんだよ」

 

 俗にいう催淫能力とか言うやつだ。しかもヴァンプスファンガイアのそれは尋常ではない程の効力があり、一度その力を行使すれば自身が解除するまで永遠に相手を掌握することが出来る。

 ファンガイアの王にまで登りつめたのにもその力が一役買っているらしい。

 

「母さんがファンガイアの子を身籠ったのもその力にやられたからだ・・・・・・そして俺が生まれた」

 

「・・・・・・なるほどな、大体分かった」

 

 士も気を遣ったのか、苦悶の顔で自白する渡を制する。

 

「・・・お前はそのヴァンプスファンガイアとやらの息子・・・・・・親父の催淫能力まで受け継いじまったってことだろ」

 

 代わりに述べた士に対して首肯する。

 父から受け継いでしまった催淫能力。そしてファンガイアとしての衝動が引き起こした梨子への吸血行動。

 

 そこから導き出される結論は士にも想像に難くないだろう。

 

「・・・俺が梨子を歪ませたんだ」

 

 あの日あの場所あの瞬間の梨子は梨子であって梨子でなかった。

 ピアニストとしての将来を奪われるかもしれない傷を気にも留めずに渡へ身を摺り寄せる痴態。自分がああさせたんだ。

 

「惚れた女の気ぃ引けてんだ。悪い気はしねぇんじゃないのか」

 

「そうじゃないんだよ!」

 

 冷やかし気味に言った士の言葉を強く否定する。

 確かに自分は梨子が好きだ。ずっと傍にいたいしなんなら自分のものにしたい。

 

けれど梨子といる限り渡が人間でいられないのと同時に、渡といる限り梨子も本当の桜内梨子ではいられなくなるかもしれない。

 

「・・・俺が近くにいると俺の好きな梨子がどんどん壊れてく。・・・それが怖いんだよ。俺がファンガイアになること以上に、梨子が梨子じゃなくなるのが」

 

 誰にも、キバットや音羽にすらも語っていない心情を吐露する。

 惚れた幼馴染一人のために人間である事も、ファンガイアであることも選ぶことも出来ない。覚えるのはいつもそんな情けなさばかりだ。

 

「・・・・・・だから逃げ続けてんのか? 人間とファンガイア、両方の自分から」

 

「・・・じゃあどうすりゃいいんだよ」

 

 優柔不断だと言うのならそれも間違ってはないないのかもしれない。実際迷いのあまり何者にもなれていないのは事実なのだから。

 

 人間としての道、そしてファンガイアとしての道。どちらを選んだにせよ耐え難い苦悩や後悔は付き纏ってだろう。

 

 そんな葛藤に答えたのは、意外な声だった。

 

「・・・・・・だったらその両方を選ばなければいいだけの話だ」

 

 第三の声が会話に割って入り、視線を流せば先程音羽に昏倒させられた名護がダウン復帰を遂げているのを確認。

 イクサの鎧越しとは言えダークキバの攻撃を受けてよくこれ程早く回復した・・・・・・という驚きもあるが、それ以上に別の違和感を覚える。

 

「・・・聞いてやがったのかテメェ」

 

「お前達が勝手にベラベラと話してくれたからな。・・・・・・おかげで調子が狂った」

 

 そう言うと名護は身体を起き上げ、一瞬だけ渡の方を振り返った事以外は特に何事もないかのようにこの場から立ち去ろうとする。

 

「・・・お前、キバを倒しに来たんじゃなかったのか? 目の前にいるぞ」

 

 渡の抱いた疑問と同じ事を士が口にし、名護が歩み始めていたその足を止める。

 名護はファンガイアを撲滅する組織の一員であり、ここに来たのもキバを滅するためだ。ダークキバである音羽の正体を看破していた以上、渡の事も知らないはずがないのだが・・・・・・、

 

「・・・ずっと思っていた。ファンガイアなど血も通っていないような情の欠片もない野蛮な存在だとな。今だってその事に変わりはない」

 

 梨子に聞いた話だが、名護は過去に家族を殺された恨みからファンガイアの撲滅に身を捧げているらしい。

 しかしそんな彼が今渡に向けるのは、敵意や憎悪とは違った感情―――、

 

「・・・・・・だが、今のお前はそうとは思えん」

 

「ッーーーー!!!」

 

そう言い残し、名護が部屋を去ろうとしたその瞬間、重なった高い悲鳴が空気を揺らす。

 

「なんだ…?」

 

身構えた名護より速く、外へと飛び出した渡と士が見たものはーーー、

 

 

 

 

 

 

 

「なっ……!?」

 

悲鳴を聞きつけ、咄嗟に飛び出した俺達が目にしたもの。それはこの屋敷を取り囲うように発生した大量のファンガイアの群れだった。

 

「渡……?いきなり何のつもり……?」

 

そしてそれとは別に意識を引くのはダークキバに変身した登が対峙する一際異彩を放つファンガイアらしき怪物。

 

赤を基調としたステンドグラスのような紋様はファンガイアと同じだが、人形をした蝙蝠のような風貌、何より漂う気配がそうではないと物語っている。

 

一言で言い表すならばファンガイア化したキバ……だろうか。

 

「渡!渡ってば!!」

 

不可解なことは続く。

ファンガイアの群れを捌きながら登が呼び掛ける先はそのキバ擬き。登のみならず歩夢と桜内までもがあの怪物がキバであるかのような反応を示している。

 

「なぜキバが……!?」

 

名護さえも御多分に漏れずキバ擬きと本物のキバである渡を交互に見回している。

どういうことか、あれを仮面ライダーキバではないと認識できているのは俺と渡だけらしい。

 

「渡……?」

 

『桜内さん……あぁ…!』

 

「っ…! キバット!!」

 

桜内の存在を認知した途端に彼女へと向かい始めたキバ擬きにさすがにマズイと感じたか、渡が呆けていた蝙蝠擬きを呼び寄せ自身の手に噛みつかせる。

 

『ガブッ!』

 

「変身!」

 

キバの鎧を纏った渡が一直線にキバ擬きへと突撃。そのマッシブな身体から繰り出されるタックルが赤い怪物を撥ね飛ばす。

 

「え…、渡…?」

 

「うそぉ!? 渡が二人!?」

 

本物のキバが現れてもなお見分けがつかないのか、驚きの声と共に困惑した顔を浮かべる女子三人。

そんな彼女達の視線を受けながらも、渡は桜内を襲わんとした奴に対して低く問うた。

 

「なんだお前……!」

 

『キバ……、ウアァァァァッ!!!!』

 

「ッ……!?」

 

桜内に対し何か反応を見せたと思えば、今度はキバに対し何やら憤慨するように襲い掛かるその偽物。

その怒号に呼応するかのように群れていたファンガイア共までもがキバへと突進を開始する。

 

「「くっ……!」」

 

《KAREN RIDE》

 

《レ・デ・ィ》

 

それを見て俺と名護がベルトを巻くのは同時だった。

 

《DECADE!》

 

《フ・ィ・ス・ト・オ・ン》

 

あの偽者は渡に任せるとし、俺達がやるべきは群がる雑魚の処理。

問題はあのバーサーカー名護が素直に動いてくれるかだが……、

 

「む……貴様も俺達と同じ力を……」

 

「……おいおい、ここでやりあうのは勘弁だぞ」

 

「お前もファンガイアなのか?」

 

「寝言は寝てから言えアホ。いいから手伝え!」

 

「お前が手伝うんだ!」

 

一応杞憂で終わってくれたのか、キバを襲うことなくファンガイアへと斬り掛かる名護。

とりあえず仲間割れのような事態にはならず一安心。その後に続いて俺もライドブッカ-を握り直す。

 

「ハアッ!」

 

『ガァ…!』

 

煌めいた剣閃がファンガイアの体表を切り裂き火花を上げる。

背後ではイクサがイクサカリバ-。ダークキバに至ってはその拳のみでものの一撃のもとに敵を粉砕していくのが伺えた。

 

「何か変…、コイツ等生気を感じない……」

 

そう最初に口にしたのは最もファンガイアに近い存在である登だった。

彼女の言葉の通り、このファンガイア達はただ突っ込んで来るだけの木偶に等しい。

大挙として押し寄せてくる分厄介でこそあるものの一体一体があまりにも大したことがないためにこの人数ならばなにも苦ではないのだ。

 

規格外の登とファンガイアキラーの名護がいることを加味しても、手応えが無さすぎるのだ。

 

「まさかコイツ等あれに操られて……」

 

「があぁっ……!!」

 

その原因として考えられる対象に視線を飛ばしたその瞬間、弾き飛ばされたキバが俺達の足元まで転がってくる。

 

『何でお前なんかに……! 桜内さんには僕が…!』

 

「お前なに言って……」

 

『ドッガハンマー!』

 

フエッスルの汽笛で召喚した巨大なハンマーを掴み、装甲を纏うと共に得物をぶん回しては偽物へと殴り掛かる。

 

「はああぁぁッ!!」

 

地面を抉るような一撃が繰り返しに打ち込まれ、この度に衝撃音が空気を揺らす。

そして遂にその攻撃が奴へと到達しようとしたその時ーーー、

 

『フゥッ!』

 

「ッ……!? 何……?」

 

突如ドッガハンマーがキバの手を離れ、掲げられた偽者の手の中へと吸い寄せられるように収まる。

そしてそのまま、ドッガフォームの解除されたキバへと振り下ろされーーー、

 

「がッあぁぁぁ……!!」

 

ドッガハンマーの重量に軽々とキバを撥ね飛ばす力が加わり、轟音と共に赤い蝙蝠が地面に打ち付けられる。

 

「くそっ…!」

 

『バッシャ-マグナム!』

 

『フフ……』

 

昨晩俺がやったように距離を取ったキバが銃を手に牽制を試みるが、またもその得物は偽者の手へと渡る。

 

「渡ッ……!」

 

動揺と奪われたバッシャ-マグナムから撃ち出される気砲の雨に翻弄される渡を見かねたか、相手取っていた雑魚をまとめて粉砕した登がその攻撃対象をキバ擬きへと変更。その腕に闇を纏わせる。

 

「何のつもりかは知らないけど、渡の真似するなんていい度胸じゃん…………絶滅するよ?」

 

釣り上がった双眸が狂気すら孕んだ光を放ち、湧き上がる殺意を全てぶつけるかのようにダークキバが奴へと肉薄。

 

「ハアァァァッ!!」

 

『ゴッ……バァッ……!?』

 

腕に収束されていた闇のエネルギーは瞬く間に膨れ上がり、ボディブローの炸裂と同時に奴を巻き込んでは爆ぜる。

しかもどういうことか。霧散し切らなかったエネルギーは奴の背後でキバの紋章を形取ったと思えば、トランポリンのようにその身体を跳ね返した。

 

『ウェイクアップ! ワン!』

 

蹴り飛ばす度に紋章によって奴の身体は跳ね返り、再び一撃をもらって弾け飛ぶ。

そしてもはや気の毒にすらなる程にダークキバのコンボが叩き込まれた後、一際大きく蹴り上げられたキバ擬きが闇の世界へと誘われる。

 

「ラアァァァァァァァッ!!!!」

 

『ウアァァ…………ッ!!』

 

落下する奴に無慈悲な正拳突きがめり込んだ瞬間に勝負が決した。

爆発を起こして落下した後にその身体から障気が巻き起こり、やがて霧散し姿を現したのはーーー、

 

「ぐっ……うぅ……!?」

 

「人間……?」

 

「え……」

 

渡に登、名護の視線はそのキバ擬きの正体である若い男へと向くが、俺と歩夢が意識を持っていかれたのは別のものだった。

男の傍らに転がった、黒い懐中時計のようなもの。

それは俺達の世界で、優木せつ菜と中須かすみを怪物へと変えたーーー、

 

「……やられたの?」

 

かつん。

ファンガイア共の呻き声が満たすこの世界の中でも、その音はハッキリと耳を打った。

 

「…お前……」

 

場の空気を変える雰囲気を伴って現れた淡い空色の髪を持つその少女。

あの時計を確認した時点でもしやとは想っていたが、彼女の服装や髪飾りは優木と中須を連れ去った男のそれと一致する。

 

「あの野郎の仲間か…?」

 

「あの野郎……、ラルクのこと?」

 

俺の問いに眠たげな瞳で答える少女。

アイツのような明確な悪意こそ感じないものの、その得体の知れない気配に油断はならなかった。

 

「……仲間かは知らないけど、私もアイツもタイムジャッカーなのは同じ」

 

「タイムジャッカー……?」

 

「……そう。私はタイムジャッカーのフィル」

 

フィルと名乗った彼女はすぐに俺達への興味をなくしたかのように身体の向きを変え、男の傍に歩み寄っては懐中時計ーーーアナザ-ウォッチを拾い上げる。

 

「もう一回……あの力を……!」

 

「……当然」

 

懇願する男に対し起伏の乏しい笑顔を作ると、ウォッチを起動するように上部ボタンを押す。

 

「……今はあなたが…、キバだから…」

 

『KIBA……!』

 

「う…………アアアァァァァッ……!!』

 

フィルがそれを男の身体に埋め込めば、瞬く間に男は怪物へと変貌する。

しかもそいつは、たった今登が撃破したばかりのキバ擬きだったのだ。

 

「え…、何で……!?」

 

「ぐっ……!」

 

《イ・ク・サ・カ・リ・バ-・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ》

 

倒したばかりの敵の復活に戸惑いを見せる登に代わり、今度は名護がイクサカリバ-で奴を襲撃。

だが爆破した直後には再びフィルによってウォッチが埋め込まれ、キバ擬きは復活してしまう。

 

「……無駄。あなたたちにアナザ-ライダーは倒せない」

 

「アナザ-…ライダー……?」

 

フィルの口にした単語に首を傾げる。

それがキバ擬きや虹ヶ咲のメンバーが変貌させられた怪物の総称であることは容易に想像できる。

 

となると差詰め、奴はアナザ-キバとでも称したところか。

 

「大体わかった。……要はキバの偽物ってことだろ」

 

「……偽物なんかじゃない。今から本物になる……そいつを消して」

 

「はぁ……?」

 

一切表情を変えずに放たれたフィルの一言に対しての返しがずすんと空気を重くする。

声の主は言わずもがな登音羽。本物を消す……つまり奴等の目的は渡だ。そうなればこの女が黙っている訳がない。

 

『ウェイクアップ! スリー!』

 

Ⅱ世に三度フエッスルを噛ませ、現出した深淵の闇は先程アナザ-キバに叩き込んだものとはエネルギーの質が違った。

ダークキバから放たれる障気に触れた歩夢と桜内は途端に顔色を悪くし、ふらつきだしたことからその闇の濃度が伺える。

 

「なんでアンタがここでこんなことしてるかは知らないけど……、判決なんか下す必要もない…………死ね!!」

 

吹き荒れた怒号の直後、激しい衝撃波を伴った黒閃がフィルへと迫る。

直撃すれば致命傷どころか肉体すら消し飛びかねないその攻撃を前に、フィルはただ手を翳しーーー、

 

「……邪魔」

 

カチ。

そんな擬音が聞こえたかのような錯覚を覚えた。

 

「え…」

 

ダークキバの一撃は静止していた。

フィルに到達する寸前、まるでそのまま凍りついたかの如く。

 

「ッ……!」

 

そして遅れて気付く。

攻撃だけじゃない。登や渡、俺といった、この場のフィルとアナザ-キバを除く全てのものが停止していることに。

 

そうだ。これは出発の日にも見た時を止める力。

となるとやはり、コイツはあの男と同じ……、

 

「……あなたはいらない」

 

くるりと反された手のひらの動きに準じ、推進力を奪われた黒閃がその進行方向を反転させる。

直後に再び時間は動き出し、一閃が向かった先はーーー、

 

「あぅっ……あぁぁぁぁぁぁぁッ……!?」

 

「音羽……!!」

 

ダークキバの一撃がダークキバを貫き、変身前の少女としての姿に戻った登が地を舐める。

 

「この……!」

 

「……あなた達ももういい」

 

キバが低姿勢のまま地面を蹴るも、フィルによってまたしても時間が止められてしまう。

 

「……早く倒して。手間が省ける」

 

『わかってる……キバァァァァッ!!』

 

猛るアナザ-キバが奪い取ったドッガハンマーを振り回し、動けないキバやイクサ、俺までもを重い衝撃をもって殴り飛ばす。

立て続けに俺達を変身解除に追い込み、いよいよトドメを刺そうとーーー、

 

『あぁ……!』

 

「え…」

 

アナザ-キバが足を向けた先はーーーなんと桜内梨子。

渡への言葉で薄々勘づいてはいたが、やはり狙いは桜内だったか。

 

「……あとは好きにしていい」

 

奴にアナザ-ライダーの力を与えた際にその目的も知ったのか、一人澄まし顔のフィルが一瞬のうちに消え去る。

 

「梨子ッ……!!」

 

手の施しようのない敵がいなくなった事に対する安心感などは微塵もなかった。

一ミリも緩むことのない空気のまま、必死の形相で起き上がった渡がアナザ-キバを押さえようと立ちはだかる。

 

「梨子! 早く逃げろ!!」

 

『邪魔を……するなァ!!!』

 

だが変身していない渡の力などアナザ-キバの前では赤子同然。軽々と撥ね飛ばされ塀に身体を打ち付ける。

 

「渡……!」

 

『ぁあ……桜内さん……桜内さん…!』

 

足を止めてしまった桜内に一歩、また一歩とアナザ-キバが迫る。

 

『僕が…僕こそ君に…!』

 

「ッ……来ないで…!」

 

自身を拒絶した桜内にショックを受けたように硬直するアナザ-キバ。

だがそれも一瞬の話で、渡の方へと駆け寄ろうとした彼女を見て戦慄き始める。

 

『ハ、ハハ……、………アァァァァァァァァァァァァ!!!』

 

「きゃあぁぁぁっ!!??」

 

激昂に狂ったアナザ-キバが怒号と共に桜内へと掴みかかる。

悲鳴をあげ、抵抗を試みる桜内は意図も容易く押さえ込まれーーー、

 

「いや……離しーーーぅあッ……!?」

 

「梨子ーーーーッッ!!!!」

 

アナザ-キバの吸血牙が首筋に突き立てられ、痙攣する桜内の身体がビクビクと震える。

異変はーーーこの直後だった。

 

「梨子……?」

 

通常、ライフエナジーを吸い尽くされた人間はその色を失いやがて死に至る。

吸血牙の離れた桜内にその様子は見られないが、代わりにどうしてか、その目の光が失われ虚ろな状態でいた。

 

『ふふ…………あはははははッッ!!』

 

コロコロと情緒の変わるアナザ-キバが次にあげたのは愉悦と勝利に震える笑い声。

 

『これで……桜内さんは僕のモノだ…!』

 

「なに…?」

 

アナザ-キバの言葉の意味を理解したのはそのすぐ後。

あれだけ抵抗を見せていた吸血をされた瞬間に一変、自らアナザ-キバへと向かい、身を寄せたのだ。

 

「まさか……!?」

 

「渡の能力を……?」

 

説明をつかせるとしたらそれだろう。

そもそもな話として、アナザ-キバは仮面ライダーキバの能力をコピーもしくはそれ以上の力で獲得している節があった。

 

そこから推察できるのはーーーアナザ-キバが渡の催淫能力までもを得たということ。

 

『行こうか……僕等だけの場所に』

 

意味深に渡を見下ろした後、桜内を抱き上げたアナザ-キバが飛び去ってゆく。

 

「梨子……」

 

登は重体。俺達もすぐには立ち上がれる状態ではなく、挙げ句桜内まで拐われた。

寂れた色の空の下、渡の掠れた声だけが残された。

 

 




前書きで言ったようにパソコン死んでスマホで執筆してるんですが進みませんダレカタスケテー

まあそれはさておき内容。アナザ-キバに渡のR18一歩手前な能力がコピーされたせいでR18一歩手前な展開に……ドウシテコウナッタ

それはそうと新キャラのタイムジャッカ-フィルちゃん。色々あってロリになったの。気になったらTwitter遡ってみてください。
ビジュアルは友人に頼んだら身に余るイラスト来ちゃったんで考えさせてください……

それでは次回で
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