調教したいといっていたけどその調教じゃねぇ!! 作:先詠む人
内容はちゃんと全年齢だよ!!
「この麻縄で私の体をタイトに縛って私の敏感なところをこすって欲しいなぁ……」
緑色の瞳で鼻息荒く麻縄を持ちながら物欲しそうに上目遣いで迫りながら俺を見てくるその少女に対してため息をつきながら俺は
「どこぞの金平糖と茎わかめのコラボみたいな言い回しで俺にSMプレイを強要するんじゃねぇ!!」
そう言って突き放した。「はぁ」と大きなため息をつきながら俺はその少女、いや変態と化したかつての親友を見ながら
「大体お前は5日前まで
額に手を当て、内心呆れながら目の前に居るそれに尋ねるとそれはいい笑顔で
「そんなもん昨日初めて調教された際に私が気持ちよくなるために電子の海に置いてきた!!」
ドヤりながらきれいな声で歌う様に言うもんだから
「今すぐ電子の海からサルベージして来いこのダホぉ!!」
俺はイライラをぶつけるようについさっきまで操作していたPCの横に置いていたネギのキーホルダーを全力で投げつけてしまった。
「痛いなぁ…」
唐突に投げられた結果ぶつけられたネギを痛そうに見つめながら女の子座りで額をこするそれの左肩には赤い字で01と刻まれている。
床につくほどの長い髪の毛は鮮やかな翠色で、その髪は2本の赤いリボンで二つ結び、いやツインテールと言った方が良いか。ツインテールにしてヘッドセットをその一部を隠すようにつけている。
そして今着ている服こそ目の前の男だった友人が好き好んで着ていた勝利の女神の名を冠した有名ブランドが出しているスポーツ用のスウェット上下にいつの間にか履いていたニーソックスだが、3日前に急に呼び出されてこの部屋で再会したときはもっと特徴的な服装をしていた。
「はぁ……何がどうしたらこうなるんだよ………」
机に項垂れるように半ば崩れ落ちそうになる。目の前に鎮座する友人の高性能PCの横に置かれたあるフィギュアとそれを見比べる。昨日今日で溜まった精神的肉体的問わずのあまりの疲労感にそのまま寝てしまいたいと願いながらも俺はここまでのことを思い返していた。
全てが始まった5日前のことから……
『念願の 初音ミクの最新版を ネット通販で 格安で 手に入れた!!』
通ってる大学の図書館で司書のバイト中に友人から突然送られてきたLINE。それを見て俺はすぐに
そう返した。地元から遠く離れたこの街で貧乏大家族の末子の大学生が一人暮らしをしようとするととことん金が足りない。そのため、学費(辛うじて一部分は家から出してもらった)、光熱費、食費、通学の定期代と払うものを数えていくと娯楽に回せる分がほぼない。だから俺は初音ミクや結月ゆかりなどのVOCALOID及びVOICEROIDなどを用いてあることをしようと思っていたがそんなことができないレベルで困窮していた。
まぁ原因としては週に6回バイトを入れても全然給料が入ってこなかったため、「こいつはおかしい」と労基に行って調べてもらった結果給料の半分が俺が所属していたリーダーと上司陣の懐に入っているという頭のおかしなことが発覚したせいでバイト先自体が倒産になり、職を失っていたというのもあった。
そのせいで金がない。だけど、やってみたいことはやってみたい……そんな感じでくすぶっていた俺にとってその知らせはたとえ自慢だったとして飛びつかざるを得ないものだった。
何で俺が飛びついたのか。それにはこんな理由がある。
ゲームといってもアナログ、デジタル分野を問わずに考えると数多く存在する。そして、アナログゲーの中にTRPGというものがある。俺はそれをするのも見るのも好きだった。一番見るのが好きなシステムはシノビガミ。やったことがあるのはネクロニカとアリアンロッドのみ。
そしてとある動画投稿サイトでTRPGのリプレイは数多く投稿され、その動画に声をあてるのに主にゆっくりやVOICEROIDが使われている。だが、なんとなくだが、声が……いや抑揚か?それが俺には気になって仕方がなかった。
そんな中で俺はVOCALOID使ったら自然な抑揚でリプレイ作れるんじゃね?と浅はかな素人考えのもとに悶々としていたため、今回の友人から来た初音ミクを買ったという報告は棚ぼたレベルで嬉しいものだったのだ。
そしてその日、俺が送ったLINEに対しての返事はなかった。
大きな口を開けて欠伸をしながら大学に向かうバスに乗る。今住んでいる家から大学前でバスで10分ほどだが、その間に友人が住んでいる家が近くにある停留所がある。
今日は友人も俺と同じ1限の授業を取っていたため、俺が載っているバスに乗らないと遅刻間違いなしなのだが……と思っていたら慌てた様子で走ってくる友人がガラス越しに見えた。
必死な様子で手を上げてバスの運転手にしたアピールの甲斐あってか出発しかけながらも再度停止して扉を開けたバスに息を切らしながら友人が乗り込んでくる。
「お前昨日LINE無視っただろ~」
半分ちゃらけながら俺に気付いてこっちまで歩いてきた友人に言うと、友人は息を整えながら
「いやぁ~テンション上がってそのまま寝ちゃってさ~」
といってきたのだが俺はその友人の様子に違和感を覚えた。
「…?」
「どうした?」
怪訝そうに見てくる友人に対して俺は無言でその違和感の原因らしき物体を引っ張った。
「イッてぇぇえ!!」
プツンという音とともに何かが俺の手の中に握られる。突然の俺の蛮行に友人は悲鳴を上げる。そんな友人の様子を無視して俺は
「……お前髪の毛染めてたっけ?」
そう言って手に入れたものを両手で引っ張った。両の手で引っ張る様に持たれたそれは、どこか翠色っぽい髪の毛だった。
「染めてねぇよ…ったく髪の毛急に抜くたぁどういう了見だよおめー」
不思議そうにその髪の毛を眺める俺に怒ったような顔でこちらを見る友人。しかし、なぜだろうか。その友人の声がいつもに比べて高くなっているような気が……何となくレベルだがした。
「お~す」
大学にレポートを提出するために授業がないにもかかわらず大学まで来てみると学生センターの生徒たちのたまり場になっている椅子にどこか憔悴した様子の友人が座っていたから声をかけた。
「……あ、お前か……」
「なんや風邪でも引いたのかよ。声がっさがさじゃねーか。」
そう言いながら友人の前にある椅子に座る。友人の声はこれまで聞いたことのないレベルでがっさがさだった。
「………」
「?」
口を少しだけパクパクさせてからおもむろにスマホを取り出した友人になんだこいつと思っているとスマホの通知が入り、俺のスマホは振動した。
『声が今朝からほとんど出ない。風邪引いたっぽい。』
友人のアカウントからの通知だった。
「はぇー…まぁ、今秋口だから季節の変わり目には風邪ひきやすいっていうしな。あんまり悪化しねーよう気をつけとけよ。てか、さっさと病院行けよ。」
画面を見てから俺がそう言うと
『今日行きつけの病院しまってる。』
そうLINE経由で返ってきたので俺はそれを見て
「んじゃ、お大事にとしか俺は言えねー………わ?」
そう言いながら画面から顔を外して友人の方を見るととてつもない違和感を感じた。
(はて、こいつの顔こんなにもきれいだっただろうか?なんか中学生の時に潰したニキビがどうこう言ってなかったか?)
そう思いながら見ていると何かにおびえるかのような友人の目と目が合った。
「?」
その時、一瞬だけだが友人の目がきれいな透き通った緑色に見えた気がして俺は首を傾げた。だが、ほんの一瞬だったため俺はそんなに気にすることなくそのまま椅子から立ち上がった。
「んじゃ、俺は今日はレポートだしに来ただけだし帰るわ」
そう言ってカバンをもってセンターの入口を出て停留所の方へと足を向けたとき、ふと気づいた。
(そう言えばあいつの髪の毛……異様な速さで伸びてね?)
気づいてすぐ振り返る。しかし、そこに居たはずの友人は既にそこにはいなかった。右手で握りしめた端末のカバーを手首のスナップで開き、ロックを外してLINEを起動する。
『何かあるんなら言えよ。俺たちともだちちゃうんけ?』
とりあえずそれだけ打ち込んでから俺は学内にある停留所に今にも入ろうとしているバスの方へと走り出した。
前日の大学内で行われたイベントに教授の伝手で入れてもらったバイトの疲れで寝ていた俺のすぐ横にベッドサイドテーブルの上に置いていた端末が何度も何度も通知を鳴らす。
バイブレーション機能によって大きな音を立てた端末の音で目を覚まし、時計を確認すると時刻は朝の6時ちょい過ぎだった。
「ったく誰だよこんな朝早くに……今日授業ねぇから遅くまで寝れると思ってたのに」
とぶつくさ文句を言いながら端末のロックを外すと来ていたのは10を超えるLINEの通知で発信源は友人だった。
「…?あいつこんなにメッセ送るって何かトラブったのか?」
そう言いながら確認すると全部助けてくれといった内容。
「……あかんやん!?」
とんでもないトラブルが起きてると思って大慌てで着替え、家を飛び出す。自転車に乗ってアイツの家にまで飛ばすと漸く日は昇り始めていた。
そうして友人の家にまでたどり着いた俺を待っていたのは
「………」
「………どういうこっちゃ……」
無言で友人が好んで着ていたパーカーを着て上目遣いでこちらを見て、ニーソックスだけ履いているほぼ全裸の初音ミク?だった。
「誰やお前……」
「………」
目の前のことが理解できなかった俺の問いかけに目の前の初音ミク?は無言で何か意思表示でもするように身振り手振りで何か訴えてくるが、何も意味が伝わってこない。
「いや喋れや!!」
「っ!!」
さすがに朝にたたき起こされたに近いのもあって少しイラっとして俺が突っ込むと初音ミク?は俺の手を引っ張って友人の家の中まで俺を連れ込んだ。
「ちょっ!靴脱がさせろ!おまっ!」
靴を脱ぐ暇もなく俺は家の中まで引っ張られる。そんな俺の様子を無視して初音ミク?は俺を友人宅にある高性能PCの前にまで連れてきて
「!!」
無言のまま指さした。
「いや、意味が分からんて……」
といいながら画面を見るとそこには前に家電量販店で見た初音ミクの声のキーの高さと話す音を当てはめる画面が展開されていた。
「っ!!っ!!」
初音ミク?はその画面を必死に指さして俺に何かを懇願するかのように両手を合わせる。
「調教しろってこと…か?」
俺がそう呟くと初音ミク?は嬉しそうに破顔し、首がもげるんじゃね?といいたくなる速度で首を上下に振った。
「……なんかよくわからんけど……やるしかない…か?」
寝ぼけていたせいで判断力がかなり鈍っていたって言うのもあるだろう。俺はそのまま椅子に座り調教を始めた。
初音ミクを自然に喋らせる調教自体は前に先輩のPCを借りる形で教えてもらったことがある。その先輩は俺がPCを新調するよりも前に卒業してしまったので結局ソフトを借りることができなかったのだが、まさかその経験が今ここで生きるとは思わなかった。
俺が昔のことを思い出しながら調教の作業をし、ほぼ終わったというところでおもむろに初音ミク?がUSBコードをもってこちらへ歩いてきた……が、それを無視して俺は仕上作業を進めていた。
「………」
そんな俺の様子を黙って見ていた初音ミク?だったが、突然持っていたUSBの端子をPC本体に突き刺し、もう一方の端子を自分の首筋に突き刺した。
「いきなり何してんの!?」
その突然の凶行に俺が驚いて席を立つと初音ミク?はビクンビクンと痙攣しながらその場に崩れ落ちる。後なんか水っぽい音もした。
「………はぁ?」
その光景を見て俺が困惑を隠せずにいるとPCの画面が変わり、新たなポップアップが出現した。それはアイツがPCに入れていた色んな曲のデータがコピーして送信されているという情報だった。
「………意味わかんねぇ…」
そう呟くとデータがすべて送られたという表示とともにPCの画面が暗転する。
「あっ!?」
俺が慌てて駆け寄るもPCは電源が落ちていた。
「そんなぁ…」
これまでの苦労がどっか行ったと内心思いながら嘆く俺の肩に軽くポンと手が乗せられた。
「私はだ~れだ。」
どこか楽しそうな感じで、だけど不安そうな感じでそう言う彼女に対し俺は
「知らねーよ!?」
8割がたブチギレた状態で叫んだ。
そうして色々と説明をしてもらって今に至る。
この初音ミク?は結論から言うと友人が何故か姿が変わってしまったものだった。
友人の話を総合すると初音ミクを買って届いた日、初音ミクにキスされる夢を見たそうだ。それがスタートだったらしい。
変化の最初は髪の毛、そして肌。気づいたら男の象徴は縮みだし、体全体も縮んで行くのに対し母性の象徴は膨らんでいったそうだ。
学生センターで俺があの憔悴した姿を見た時点で既に象徴が縮み始めていたらしい。変化にスパートがかかったのは昨日。
気づいたら髪の毛がとんでもない勢いで伸びてしかもつけた覚えのないリボンが髪についている。嫌な夢だと思って二度寝して起きたらもう初音ミクの姿だったというわけだそうだ。
そして何を思ったのか俺にもっと調教してくれと強請り、かじりつき、そして………
「つ……疲れた……」
調教は調教でも変態的な調教をしてくれと目を輝かせながら迫ってくるせいで俺の疲労はピークに達していた。しかしそんな状態でも奴は止まらない。
「ねぇ~ってば~この麻縄で私の弱いところが擦れるように縛ってよ~」
初音ミクとは到底思えないようなとんでもないことを自然な声で言ってくる。
「………」
「ねぇってば~!!」
無視したい……てか、俺昨日結局風呂に入ってないし、再起動させたPCに入っていた初音ミクを再度調教していた結果ここに泊まっちまった…
「だぁ~!!」
ストレスがたまりすぎて大爆発する。
俺は周囲の御家に迷惑がかかることなど考えずに叫んだ。
「確かに俺は調教したいって言ってたけどその調教じゃねぇぇぇぇぇええええええええ!!!!」
続かない