なざりっく!   作:田島

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食堂~コキュートスとデミウルゴスとアインズの会話

「ふむ、それではパンケーキはどうかな。メープルシロップもまあ樹液……と言えなくもないし、昼食なのだし君は肉も食べられるのだからベーコンとフライドエッグを乗せてもらおう。メープルシロップとベーコンの組み合わせだと一気にジャンクフードのような味になるだろうが……まあ君は甘い方が好きなようだし、不味い組み合わせではないよ」

「ナルホド……」

 アインズが食堂に入ると、そんな会話が聞こえてきた。見やると、カウンターの前でデミウルゴスとコキュートスが何やら相談している。

「二人とも食事休憩か」

「これはアインズ様、思いがけずご尊顔を拝することができ欣幸の至り。アインズ様はお食事はされぬかと存じますが、ここにいる者に何かご用の向きでもございましたでしょうか」

「いや、視察だ。お前たちがしっかりと食事をしているかどうかな。これから頼むところか?」

「左様デス。アインズ様ニシッカリト食事ヲスルヨウ教エヲ受ケ、ワタクシモ樹液以外ノモノモ口ニシテミタ方ガヨイカト、デミウルゴスニ相談ニ乗ッテモラッテオリマシタ」

「……コキュートスは、樹液しか食べないのか?」

「そういうわけではございません。食性としてはカミキリムシと近いようで、基本的には草食ですが肉も特に害なく食べられるようです。あまり好んではいなようですが」

「食ベラレナイコトハナイガ……アマリ美味イトハ思ワナイナ」

「食事というのは慣れもあるからね。食べて問題がないなら色々と挑戦してみるのも大事だよ」

 そうか、コキュートスは草食男子なのか……などと馬鹿馬鹿しいことを考えながらアインズは横に目線を向けた。熱烈な視線を感じて見てみたが、ルプスレギナがただの興味とは思えないきらきらした目線をまっすぐに向けてきていた。

「……ルプスレギナ? 何か言いたいことがあるのか?」

「ひゃっ! あっ、そのっ、いえっ! デミウルゴス様とコキュートス様がパンケーキなんて女子会みたいなメニューの話をしているのがおんもしろいなんて! 塵ほども思っておりません!」

「正直だなお前……」

 慌てて首と手をめちゃくちゃに動かしルプスレギナは否定してみせるが、言葉が正直すぎた。しかし言われた方の男二人は涼しい顔だ(コキュートスの表情はよく分からないが)

「パンケーキは女性のものというのは偏見ではないかね。料理の美味しさは全ての者で共有すべきだろう? 恩恵が受けられるのは味が分かる者に限られるだろうがね。ああ、その点は心配いらないからねコキュートス、料理長の腕は確かだから君もきっと気に入る」

「オ前ヲ信ジテミヨウ……」

「注文をお願いするよ。パンケーキ二つ、ベーコンとサニーサイドアップを乗せて片方はメープルシロップで、もう片方はオランデーズソースで頼むよ」

 苦笑したデミウルゴスがキッチンに注文を告げるが、注文の中身が半分くらいしかアインズには理解できない。知らない言葉が多すぎる。

 というかジャンクフードがどうとかさっき言っていたが、どうしてジャンクフードの味をデミウルゴスは知っているのだろう。ナザリックの食堂にもハンバーガーはあるが、(食べられないアインズは想像するしかないが)多分一般的なジャンクフードのいわゆるチープな味ではないだろう。そもそも鈴木悟はジャンクフードと呼ばれるものすら満足に食べたことがなく味を知っているなどと言えないのだが。デミウルゴスの豊富すぎる知識には謎が多かった。

 コキュートスがパンケーキを食べてどのような反応を返すのかにはアインズも興味が湧いたのでそのまま一緒に待つことにした。デミウルゴスとコキュートスとルプスレギナの他にはメイドと男性使用人がちらほら食事を摂っているが、見た限りでは皆きちんと美味しそうに食事している。ルプスレギナも話を聞いていたら食べたくなったのかパンケーキを注文していた。

 すぐに三人分のパンケーキが出来上がってくる。ふんわりと厚みのある生地が重ねられて、コキュートスとデミウルゴスのものはその上にカリカリのベーコンと目玉焼き、ソースがかけられている。ルプスレギナはチョコレートソースがたっぷりかかったフルーツパンケーキのようだが、それは食事ではなくおやつではないのか、と思いつつアインズはスルーすることにした。

「私は食べられないが一緒に座って見ていても構わないか」

「アインズ様と食事の時間を共にできる光栄に浴することを拒否するシモベなどナザリックには存在いたしません、どうぞ上座へおいでくださいませ」

「食事ノ時間ガ思イガケズアインズ様トノ語ライノ時間ニナルトハ、ナンタル僥倖」

 一応聞いてみたがデミウルゴスもコキュートスもウッキウキで席を確保しアインズを上座に座らせる。聞くまでもないのだろうが聞かないのはそれはそれで落ち着かないのでつい聞いてしまう。

「ではいただこう、御前で失礼いたしますアインズ様」

「アインズ様、失礼イタシマス」

「気にせずいつものように食べよ、視察だからな、いつも通りの姿を見せてほしい」

 コキュートスとデミウルゴスは恭しく頭を下げてからパンケーキを切り分け始めた。コキュートスはあまりこういう食事はしないようだが、テーブルマナー的なものは問題なくフォークとナイフの使い方も危なげない。NPCは最初からできるようになっているとしたら大分便利だな、とどうでもいいことを考えながらアインズは初めてのパンケーキを口に運ぶコキュートスを見守った。

「……」

「どうだね? 味の方は」

「…………初メテ感ジル味ダ、不思議ナ味ガスル……ダガ、嫌イデハ、ナイナ」

「ではきっと食べ慣れれば好きになれるよ。馴染みのない味はある程度食べ慣れないと美味しいとははっきりと感じられないこともあるからね。そうだね……数日経ってふと思い出したりしてまた食べてみたくなったなら、それは好きな味ということで間違いないと思うよ」

「ソウイウモノカ」

「そういうものさ。不味くはないなら慣れるのもそんなに苦労はないだろうし、君も色々な味に挑戦できるということさ」

「食トハ奥深イノダナ……コンナ不思議ナ味ガアルトハ思ッテイナカッタ」

「はは、ベーコンとメープルシロップの組み合わせは普段から色々な食事をしている者でも少し不思議な味と感じると思うよ」

 それってどんな味、と思ってみたところで、アインズは知ることはできない。それにしてもデミウルゴスは面倒見がいいしこの二人は非常に仲がいい。正々堂々と戦うのを好むコキュートスにとってデミウルゴスの裏工作たっぷりの策謀はどう映るのだろう、とか普段他にどんな話をしているのかとか様々なことが気になり出す。しかし詳しいことを聞くと藪蛇になりそうな予感もあり、アインズは二人の和やかな食事風景を静かに見守ることに決めた。

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