シアも身体強化とか使っているので、これで行けると思う。
「出番だ、グラ!」
早速、専用バイクのグラを召喚する。
受け取ったオルクスの指輪は正常発動して、
召喚陣からグラが、その姿を現す。
「良し!まずはライセン大峡谷を抜けて、
最寄りのブルックだ。そこから街道沿いに王都へ向かう」
「解放者の住処で凡その世界地図も手に入れたから、
ナビゲートも行けるわ。安心してマスター☆」
「流石だ水晶、頼りになる」
水晶が頼りになるのはいつもの事。もう色々と慣れた。
水晶は横座りで乗り込み、グラはコチラで操縦する。
「こう言うのも、悪くないわね☆」
久々の外の世界、バイクでツーリング。
風を切る感覚も悪く無いのだろう。
だがやはり、無粋な輩も居る。ライセン大峡谷在住の魔物達だ。
首が二つの某レックス系や、
プテラノ系の翼竜など、恐竜系がメインと思われる。
ライセン大峡谷は恐竜の住処なのか?
だが悲しい事に世の中には、
理不尽には更なる大理不尽を!と言う言葉が有る。
ライセン大峡谷で、強者として君臨していただろう恐竜達は?
更なる強者たる、後部シートに座る水晶に無双されていた。
久々の外で機嫌が良いのだろう。楽しそうな無双ぶりだった。
「次はマスターもやって見る?」
「………グラは止めないと行けないが、
試さない訳にも行かないか」
水晶にコネクトを頼んで、次の襲撃はコチラで対応する。
グラも一旦収納済だ。戦闘に巻き込まれて大破するようでは?
今後の移動速度に、深刻な悪影響が出る。
「魔術師が近接戦とか、
進んでやりたい戦法では無いな?」
ライセン大峡谷では魔法を出した瞬間から、
魔力が分解されて減衰現象が発生する。
なら、魔法を外に出さなければ良い。
「「ギャオオォォッッ!!!」」
二つの首が同時に、断末魔の声を上げる。
成功したようだ。
接近して対象となる相手に直接触れる。
直接触れて、零距離で対象の体内で魔法を発動させる。
これなら力押しでは無くても、通常通りの魔法効果が見込める。
双頭は体内を【棘影】でズタズタにされて、崩れ落ちた。
「次は翼竜。対空戦か」
双頭の魔石を回収している内に、三体の翼竜が接近して来る。
対空戦となると、先程の近接体内攻撃は使い辛い。
だが向こうも遠距離攻撃手段が無い限り、
降下してコチラに近づかないと行けない。なら手段は有る!
届きそうな距離になった処で、ステータスにモノを言わせて跳躍!
三体の翼竜に次々と飛び乗る!
飛び乗った際に、足から魔法発動。
やはり体内で魔法を発動させて、三体の翼竜を仕留める。
「このジャンプ戦法、やはり無理が有る気がする。
次は多殻魔法を試して見るべきか?」
†
結局あの後も戦って試した訳だが、多殻魔法にも問題点は残った。
多殻魔法は?魔法を多殻層に構成した物で、
ライセン大峡谷の分解作用も、多殻層の外層から作用が働く事が解っている。
詰り外層を囮に、内層の本命を対象に命中させる魔法だ。
だが結局は結構な魔力消費と、チャージが必要になる。
力押しとどちらがマシか?と言う話だ。
それにライセン大峡谷の魔物の弱さも気になる。
アクマでオルクス大迷宮の奈落と比べて、の話になるが?
この大峡谷は、オルクスで言う処の表層に当たる部分かもしれない。
大峡谷の分解作用は確かに面倒だが、奈落の過酷さに比べればマシな部類。
此処は真の大迷宮では無い。そう思わせた。
「はい、マスター☆」
「あぁ、いつも助かる」
結構な距離を走った気がするが、まだライセン大峡谷の中。
今夜は此処で野営となる。
オルクス大迷宮でそうだったように、
今日も水晶が寝床を用意して、もう飲み慣れた栄養補給飲料を受け取る。
町に着けば、久々の普通の食事となる訳だが?
それは水晶手製の栄養補給飲料より美味いのか?と言う程のハマリ具合だ。
水晶作のウォーターベッドは、宿のベッドより確実に上等だと思う。
「どうしたの?マスター」
「いつもそうだが、水晶は凄い奴だと思ってな?
町に着いても、水晶の補給飲料やベッドを忘れられる気がしない」
「今は材料が無いから出ないけど、
普通の料理も出せるから」
「それは楽しみにしておこう」
毎回同じ栄養補給飲料を出していた事を、気にしていたのか?
少し拗ねた感じだ。気にする事は無い。と補給飲料を飲む。
「水晶さんの事、しっかり刻まれてる?」
「あぁ、そうだな?」
準備を終えて寝床に入る頃には、いつものようにその気になっていた。
水晶の事が欲しくなる。求めたくなる。
水晶は、やはり今夜も拒まない。
「………これは、何だ?」
だがいつもと違う事が一つ。
魔力感知に反応有。微弱だが突然現れた感じだ。それも近い。
流石に色々と中断して、感知元へ偵察に向かう。
そこで見つけたのがそれだった。
【おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪】
端的に言えば看板だった。
書いて有る事をそのまま信じるなら、大迷宮の案内板だろう。
しかも夜間仕様なのか?電飾のような灯りまで有る。
魔力感知に反応が出たのは、この灯りだろうと推察。
だがこの軽さは何だ?本当に自分の知る大迷宮か?
この如何にも幼女臭い丸文字は、近隣住民のイタズラでは?と疑いたくなる。
だが此処はライセン大峡谷の谷底だ。近隣住民など居ない。
或いは、未確認の少数部族的な亜人が住んで居るのかも?
と意味の無い想像を膨らませてしまう。
「どう思う?」
「………敢てシリアスに判定するなら、本物だと思うわ。
まずは【ミレディ・ライセン】のファーストネームの存在。
ライセンの名前は一般的にも伝わっているようだけど、
ミレディの方はそうじゃない。
それにこの灯り、イタズラに使う玩具じゃないでしょう?」
「確かにそうだな」
「それに問題はこれの真贋より、
どうするか、でしょう?」
そうだった。突然の展開で、それが飛んでいた。
確かに大迷宮の攻略は重要だ。
しかも未発見の大迷宮の発見は、更に重要事項となる。
だがコチラは歌姫に逢う為、急いで王都に向かう身!
悠長に大迷宮の攻略は出来ない。
「………こんな時に残念だが、後回しだ。
此処は王都の帰りにっ!!」
「マスター!!」
王都の帰りにチャレンジしよう。
と足を一歩、看板の前から引いた。だがそこに地面の感触が無かった。
落とし穴。
そう認識した時には、既に落とし穴の中だ。
水晶のコネクトは間に合った。
だから水晶とはぐれる事も、トラップに因るダメージも無い。
だが随分長々とパチンコ台の玉のように転がされて、
気付いた時には、大迷宮の中と思われる場所に転がっていた。
その上最初に目に入ったのは、あの看板だった。
いや正確には違う。彫られている文字がだ。
【あれぇ帰っちゃうの?遊んで行ってよ♪
断っても招待するけどね☆うぷぷ♪】
何だろう?久々にガチギレしそうだ。
この急いでいる時に強制イベントだと!
ダンジョンをクリアして、町に戻ってセーブしようとしたら?
いきなりリヴァイアサンに襲われて、
強制ダンジョン(セーブ不可)に入るハメになって以来の案件である。
「さっさとクリアして脱出する。
あの日と同じだ」
さてライセン大迷宮では、どんな凶悪な魔物が来るのか?
と構えていたが、やって来たのは物理トラップだ。
オルクス大迷宮の天然系ダンジョンとは違い、
如何にも人工物系ダンジョンのライセン大迷宮を進んでいると、
ガコンと何か嫌な音がして、何か嫌な予感がした。
完全な物理トラップ!
魔力反応が無い為?魔術師の身では事前感知が難しく、
盗賊系の罠解除などのスキルも無い。
上手く首と腹を狙って来る回転歯車に、どう対処するのが正しいのか?
「御苦労、アンタレス」
コチラも物理で突破する!
この一ヶ月!
奈落で新たに従属目録に登録した従魔を解凍召喚!
鉱石系甲殻蠍型のアンタレス。
召喚も問題無く行えた。
記憶領域(体内)で魔力を使う分には、分解作用の影響も出ない。
即応召喚されたアンタレスは、
自慢の硬度で二枚の回転歯車を容易く防いだ。頼もしい頑強さである。
更に同じく頑強な鋏で、回転歯車を叩き潰す!
その後になってから不意打ちで三枚目の回転歯車が、
頭上からギロチンの如く降って来たモノの、
アンタレスの甲殻を貫く事は無かった。本当に硬い。
アンタレスは蓄積する魔力次第で、
硬度が増すシュタル鉱石の生体装甲を持つ。
その生体装甲を、コネクトした水晶の魔力で活性化させている。
するとどれ程の硬度になるか?結果は見ての通りだ。
因みにこのアンタレスは?
ユエが封印されていた部屋の番人と、同タイプの魔物らしい。
細部が違うらしいが、ハジメもユエも驚いていた。
曰く、まだ別のヤツが居たのか!と。
奈落の90階層を越えた辺りで、生息していたが?
と返したら、うわぁと言う顔になった。
「さぁてライセン大迷宮!
最速クリアしてやるから、楽しみに待ってろ!!」
ライセン大峡谷の分解作用ですが?
シアも身体強化とか問題無く使っている感じですし、
魔法の体内発動も行けると思います。
多殻魔法の解釈も、
全て分解される訳でも無い処を考慮すると、行けるかと。
ユエの封印部屋に居たサソリモドキが、
普通に繁殖して、他にも居た!と言うのはオリジナル設定です。