ありふれた英雄願望(挫折)で世界最強   作:LW

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園部視点からスタートです。


01 未読の物語が始る

「おはよう。清水」

 

「………あぁ、おはよう」

 

何気無さを装って声を掛ける。

最近になって増えた行動だった。

ただの朝の挨拶だから、オカシイ事は何も無い。

そう自分に言い聞かせる。

 

だけど当の清水は?何も無かったかのように席に着く。

その表情に動揺の色は無い。

それは当然の事だろう。コレはただの挨拶だから。

 

清水は席に着くと、

他のクラスメイトと話す事も無く、カバーの付いたラノベを読み出す。

始業までまだ少し時間が有る。暇潰し。と言う事だろう。

 

「………ただのラノベだ。

 絵が文字になったダケで、

 教師は文句を言わないし、没収も無い。実にチョロイ」

 

前に何を読んでいるの?と訊いたら答えが↑だった。

流石に携帯ゲームは目立つからな?とも言っていた。

 

清水の席は私の隣だった。

そんな事にも、私は最近まで気付いていなかった。

隣の席の男子に、興味何て無かったから。

 

「南雲君、おはよう! 今日もギリギリだね」

 

始業が近づくと、

少し離れた場所からいつものやり取りが聞こえて来る。

いつもギリギリで登校して来る南雲が、今日もギリギリで登校。

南雲の登校に気付くと、香織が声を掛ける。

そして教室の空気の約半分が悪くなった。「男子自重しろ」と言いたくなる。

 

香織はモテる娘だから?

そんな香織が、

そんな恋する乙女の顔で南雲に声を掛けるから、男子の大半が嫉妬する。

だからクラスの中で、南雲の立場は悪い。

他にも遅刻や居眠りが多く、

趣味が所謂オタクと称される類の物である事も、評価の低さを招いているけど?

一番の原因は、香織に好かれている事だと思う。

 

「香織、また彼の世話を焼いているのか?」

 

そうして香織が南雲に絡むと、今度は天之河が絡んで来る。

天之河光輝。

盛大にキラキラネームのような名前がアレだけど?所謂完璧超人系男子だ。

(だけど雫曰く、思い込みが激しく聞く耳を持たないタイプとの事)

当然女子の人気も高い。

そしてその天之河が快く思っていない南雲は、大半の女子の評価も低い。

それが南雲の、クラスでの立ち位置と言えた。

 

「………|д゚)チラッ」

 

では清水はどうだろう?

清水も南雲同様、クラスメイトの評価が高いタイプでは無い。

趣味も南雲と同じくゲームやラノベのようだし、

趣味繋がりなのか、孤立気味の南雲とも一定の交友関係を築いている。

遅刻や居眠りなどの批判され易い行動こそ取っていないモノの、

低評価を受け易い要素を孕んでいた。

 

でも嫌われているとか、

イジメられているとか?そんな解り易い立ち位置じゃ無い。

避けられている。が、近い。

最近少し近づいて解った。興味が無い。が、多分正解だと思う。

 

清水はクラスメイトに、他人に興味が無い。

嫌われているのでも、避けられているのとも違う。

清水は独りで居るのが好きなタイプだと思う。

望んで独りで居る。独りでも生きて行けるタイプの人間だ。

 

だけど最近は?解り易く敬遠されてもいる。

いつもなら南雲に絡む、檜山達の声が無い。

檜山は?香織好きの南雲嫌いとして、周知の存在だった。(香織本人は除く)

でもその檜山は、全治一ヶ月のケガで入院中。

階段で落下。見つけたのは清水。これは清水の仕業だと噂されている。

 

曰く、南雲の友達は清水ダケだから。

集団でイジメられるのを見かねて、階段から突き落とした。

そう噂されていた。

 

 

「………あ、あのさぁ清水」

 

時間は昼休みに突入。

特に用も無いので、直ぐに学食に向かう事にする。

と言っても学食で昼食を摂る訳では無い。

学食で販売しているサンドイッチが目当て。

で、人気の無い静寂スポットで一人昼を過ごす。

それがいつものルーチンワークだ。

 

だが今日は?園部に声を掛けられる。

園部はやや様子がおかしく、

園部と仲の良い女子数人が、そんな園部を微笑ましく見守っている。

 

これが恋愛ゲーなら?まず間違い無く昼食のお誘いだろう。

が、これはゲームでは無くリアル!

鍛え上げられたゲーマーたる自分に、過度の期待は無い。

 

だが最近、園部とは話す機会が増えた。

例の一件以来だ。

別に勘違いでも、嬲って来る程の交友関係者は居ない。

キマグレだと思う。

 

「………昼。来るか?」

 

「ッッ!!!」

 

だから園部を昼食に誘った。

園部は驚きの感情に囚われた後、

やがてコクコクと了承し、後ろの女子連中は大いに盛り上がっていた。

どうやら正解らしい。リアルは選択肢が非表示仕様だから困る。

 

歴史にifは無い。有名な言葉だ。

一般的な人間は未来の予測や備えは出来ても、視る事はデキナイ。

ゲームのように、セーブポイントからロードもデキナイ。

 

では今回!もし園部に声を掛けられる事無く、

学食に行っていたら、歴史は変わったのか?

 

「!

 園部ッ!!」

 

解答→大いに変わっただろう。

その瞬間、教室は光りに包まれた。

光っているのは床!では無く、

いつの間にか教室の床に展開されていた魔法陣のようなモノだ。

ゲームでは見慣れた代物。空想の産物。ありえない展開。

だが瞬時に現実を受け入れた。

 

最悪の事態が閃く。

これをラノベ展開の異世界転移だと想定。

分断は避けなくてはナラナイ。転移トラップの基本だろう。

護ろうとしたのだと思う。

理不尽なファンタジー展開に、コイツを好き勝手されるのが気にイラナイ。

 

「清水ッ!!」

 

園部の手を取った。

今度は思い込みでは無く、確かに伸ばされた園部の手を取った。

 

実は非常用ショルダーバッグも用意していた。

災害時にも使える非常用便利アイテムの詰め合わせだった。

イザと言う時の備えだ。

だが実際に取ったのは、園部の手だった。

某有名RPGのⅥ作目で、モーグリの手を取った時と同じく後悔は無い。

 

 

「此処は………

 教会。か?」

 

光りが治まり、気が付くと教会らしき場所の広間に居た。

教会だと認識したのは、らしかったから。と言う他は無い。

きっとこの広間は?祈りの間とかの名前が付いている場所だろう。

探せば鐘撞き堂とか、パイプオルガンとかも有りそうだ。

 

「………園部。無事か?」

 

「清水」

 

そして直ぐに園部の手を握っている事に気付き、

次に他のクラスメイトや、

畑山先生も居る事に気付いたが、まず園部の安否を確認。

受け答えも出来るようだ。取り合えず無事と判断。

だが手は繋いだままで、園部は羞恥で手を離す。

と言うアクションを起こす気配が無い。

 

突然の召喚(仮)で、動揺?不安なのか?

ならば此処で手を離す!と言う選択は無い。

逆に強く、園部の手を握る。

 

「///」

 

どうやらこの選択も正解のようだ。

ロード無しのリアルでは、幸先の良い展開。

何気に恋人繋ぎに移行しても、拒絶の反応が無かった。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ」

 

そして死の宣告は告げられた。

これが死の宣告だと理解デキた者は、どれ程居ただろう?

それに全く気付いていない代表選手の天之河は?

道化丸出しの言動で、戦争参加の表明までしてくれた。

畑山先生の常識的な抗議の声も空しく、

他の大半のクラスメイトも同意してしまう。

 

「コレ詰みゲー☆

 ………そうだ。チートに行こう!」




某有名RPGⅥ作目とは、FFⅥの事。
仲間になるモーグリと、
MP消費が半分になる装備品のどちらかを選ばせる鬼畜選択。
当時は特に悩まずモーグリを選んだモノです。
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