未来人と艦娘と 作:メテオ・ザ=ディザスター・アラシ(以下略
ここから離れた海の向こうに浮かぶ4つの光玉。もしかして奴らなのか…?少し声を聞いてみようか。
(おい、偵察部隊は何をやっている?)
(それが、真っ二つになってたやつと消し飛んでたやつがいて…)
(ちっ…艦娘がいたのか。まだあの光線野郎を見つけるのは難しそうだな)
間違いない、あれが主力艦隊だろう。光線野郎という単語を使っているあたり、あのときのホ級だろうか。こいつを今回は倒しにいくんだな…。
左手を剣から離すと視界が戻り、どこまでも広がる大海原が目に飛び込んで来た。この海の先にホ級が待ち構えているのか…いいぜ、皆で討ち取ってやろうじゃないか。剣を強く握りしめ、妖精さんが急ごしらえで作ってくれた鞘に収めて歩き出した。
「あら、おはよう。もう準備できたのかしら?」
「うん。シューズのバッテリーも変えて剣も研いだし、いつでもいけるよ」
「そう。いいことね」
叢雲はすでに準備を終えていたらしく、出撃ドックで待機していた。時刻は9時半…ここでは
「…なあ叢雲、今回の相手、あの時襲って来たホ級かもしれない。あいつ、光線野郎って言葉使ってたし」
「…あいつね。この私を大破させたあの…!」
叢雲は強く槍を握りしめる。あの日のことを思い出したのか相当怒っているようだった。
「いや、あれは僕をかばったからじゃ…」
「いいや、だとしても大破させられた屈辱は忘れられないわ…徹底的に叩きのめして海の底に沈めてやるんだから!」
まだ出撃前なのに完全に殺る気MAXである。怖すぎるよこの人…。
「不知火、準備完了しました」
「私もよ。いつでも出撃できるわ!」
「朝潮も準備完了です!」
「睦月も終わったよー!」
「私もいけるわよ」
9時55h…いや、
「それじゃあ作戦の再確認ね。朝潮、睦月、暁はこの鎮守府の防衛。ここに近づく深海棲艦がいたら容赦無く沈めなさい。そして私、霞、不知火は敵主力艦隊の掃討。学は私たちに同行して索敵よ。いい?」
「「「「「「了解!」」」」」」
確認を終えた後、まずは防衛メンバーの3人が出撃した。叢雲は円盤状の何かを掲げ、妖精さんと話している。あれって、この前も不知火さんが持ってたような…?
「ねえ、その円盤はいったい?」
「ああ、これは羅針盤よ。妖精さんの加護が宿った特別製で、艦隊が安全に航行できるルートを示してくれるのよ」
「みんなをもくてきちまでつれていくよー。でもあぶなそうだったらべつるーとにいどうするからねー」
叢雲曰く羅針盤が示したルートは絶対で、目的地にたどり着けないこともあるが従っておけば少なくとも無事に帰ってこれるという。逆に従わなければその艦隊の安全は保障されないらしい。以前羅針盤の示したルートを無視して進軍した結果、嵐に見舞われたり戦艦の大群に襲われたりして艦隊のメンバー全員が轟沈したという話があるとか…。
「さあ羅針盤さん、今日もお願いね。目的地は鎮守府近海の主力艦隊のところよ!」
「りょうかーい。さあ、いきましょうかー」
叢雲が羅針盤を掲げながら着水し、出撃。続いて僕たちも出撃した。
「提督―!頑張ってねー!」
「ちょっと、あの人は提督じゃないったら!」
「何言ってるのにゃ、暁ちゃん。あの人は提督にゃし!」
「違うでしょー!」
睦月が手を振って出撃する僕たちを見送ってくれている。そして僕が提督じゃないと訂正する暁。見ていて微笑ましいな。
「こっちは絶対に守り抜きますね!みなさん、ご武運を!」
「ええ、絶対に勝ってくるわよ!」
「よーし、みなさんこっちですよー」
羅針盤が示す方向に進む僕たち。見送ってくれた防衛メンバーたちの姿がどんどん小さくなっていき、あっという間に見えなくなった。
「んじゃ、ここで一回探知しときますか」
剣を両手で握り、敵の気配を探る。やはり視界が急に暗くなるのは慣れないな…。
目の前にある三つの光玉、これは叢雲たちだろう。遠くには今朝見つけた主力艦隊と思われる光玉たち。ところどころに散らばる光玉、はぐれ艦隊のものだろうか。そして…
「…みんな、後ろから何か来てる!」
後ろから迫ってくる光玉。振り返ると、イ級がすごいスピードで向かって来ていた。
「雑魚一隻が来たところでどうということはないわ。いくわよ!」
叢雲が号令をかけると随伴の二人も砲を構え、一斉に砲撃した。砲弾の雨にさらされ、イ級は蜂の巣にされてあっけなく沈んでいった。
「弱いから不意打ちで仕留めようとでもしたんですかね。工藤さん、助かりました」
「どういたしまして。にしてもすごい迫力だったね…」
「こんなぐらい当たり前よ。それより工藤、他に敵がいないか探してちょうだい」
「オッケー」
霞に言われ、再び敵を探知する。様子は先ほどと同じ。はぐれ深海棲艦も主力艦隊らしきものもあたりをうろうろしているだけで、こっちに向かってくる様子はなかった。
「問題なし。こっちに向かってくる敵はいないよ」
「じゃあ先を急ぎましょう。羅針盤さん、よろしく」
「あいあーい」
羅針盤に導かれる叢雲を先頭に、再び主力艦隊目指して航行を始めた。
「ちょっとまってねー。このさきのるーとをきめるよー」
「わかったわ」
叢雲は立ち止まり、妖精さんが羅針盤を回し始めた。ちょっと待て、羅針盤って回していいものなのか!?
「あれが妖精さんなりの決め方ですよ。デタラメかもしれませんが、あれで私たちは災難に見舞われずにすんでますから」
「そ、そうなんだ…」
こっちから見たら遊んでるようにしか見えないんだが…。しばらくすると、妖精さんが羅針盤を止める。
「こっちー。こっちにはしゅりょくかんたいがいるよー。いまならいけそう」
「ありがとね。学、ここで索敵お願い」
そしてまた剣を両手で握る。これ、何回もやると疲れるな…。周りの様子はさっきと変化なし…ん、ちょっと待て。主力艦隊の少し先に6つの光玉が現れた!?
「みんな、主力艦隊の少し先に6つの気配が出て来た!」
「なんですって!?まさか別海域からの応援部隊…!?」
「待って、今あいつらの声を聞いてみる!」
現れた光玉を見つめて声を聞いてみる。すると…
(今日もいっぱい敵やっつけちゃったー!提督さん、これでほめてくれるっぽい?)
(連装砲ちゃん、帰ったら直してあげないとねー)
(長門さんのおかげで助かりましたね…。あのままじゃ艦載機発艦できなくなっていたわ)
えっ、これって深海棲艦じゃないのか…?てか長門って誰?とりあえず聞こえた声そのまま報告してみるか…。
「あー、『っぽい』って言ってる奴は夕立で、連装砲ちゃんのことを言ってるのは島風ね。長門のことを言ってるのは空母の人だろうけど、誰かはわからないわ…。にしても久しぶりね。この辺りを艦娘が通るなんて」
「なーんだ艦娘か。よかったぁ…」
「様子からして任務帰りのようですね」
「あの艦娘たち以外変わった様子はないようだし、もう行きましょうか」
こうして再び進軍を開始した。…正直ビビって損したよほんと。というかこの辺りに艦娘が通りかかることってそんなに珍しいのか。
「もうすぐもくてきちだよー」
「いよいよ主力艦隊のお出ましね…!準備はいい?」
艦隊全員に緊張感が走る。不知火と霞は主砲を構え、僕は索敵を行う。主力艦隊はこちらに向かい始めたが、はぐれ深海棲艦は相変わらずうろうろしているまま。さっきの艦娘たちももう遠くへ行ってしまった。
「主力艦隊がこっちに向かって来ている。それ以外は特に異常はないよ」
「わかったわ。…さあ、かかって来なさい!」
視線の先に4つの影があわられた。その先頭に立つのは僕たちを襲撃した張本人、軽巡ホ級だった。
「さあいくわよ!一隻残らず沈めてやるわ!」
叢雲を旗艦とする討伐隊とホ級を旗艦とする敵主力艦隊が激突、戦いの火蓋が切って落とされた。
途中で出てきた夕立達は今後また登場する予定