未来人と艦娘と 作:メテオ・ザ=ディザスター・アラシ(以下略
「あんた、なんでこっちに来てるのよ!早く逃げなさいな!」
「あんな大群どもに襲われてるって知って、逃げれるわけないでしょ!こっちにはアビスブレードがあるんだし、一緒に戦いますよ!」
「あんたの役割は戦闘じゃなくて索敵よ!死ぬ気なの!?」
駆けつけて来た学をどうにか追い返そうとする叢雲。彼はもともと戦闘要員としてではなく、他の深海棲艦の様子を探るために連れて来た。手持ちの靴で浮力を得て、深海棲艦の艤装で作った剣で深海棲艦を攻撃する力を得たが、それでも彼はただの人間。砲撃は愚か、イ級の突進ですら一撃当たれば命を落としかねない。そんな彼が大量の深海棲艦が群がっているこの場所で戦うなんて自殺行為に等しい。しかし、彼も引こうとはしなかった。
「あんな数だ。僕が追いかけ始めた時と比べるとだいぶ減ったけど、これじゃ叢雲たちが持たないでしょ。それに……」
彼は剣を振り、向かって来たロ級たちを真っ二つにした。あたりにロ級の血が流れ、海面がみるみるうちに暗い青色に染まっていく。
「今は口論してる場合じゃないでしょ?」
「……っ!わかったわ。でも、身の危険を感じたらすぐに逃げなさい!いいわね!?」
そう言い残し、すぐに叢雲は随伴のメンバーたちに指示を出す。青い血が滴る剣を構え、彼は目の前の敵たちの方へ向き直った。
(あの光線野郎だ……!今度こそ仕留めろ!あいつの艤装を我らがものとするのだ!)
(潰せ!潰せ!潰せ!!)
(海の藻屑にしてやるよ!)
「久しぶりだな
剣を両手でしっかりと握り、ホ級に向かって突撃する。目の前に広がるのは真っ黒な世界、そこに散らばる光玉達。すぐに砲撃の音が聞こえてくるが、当たることはない。
(もっと右だ!しっかり狙え!)
(あと少し……今だ!喰らいな!)
(畜生!なんで当たらないんだよ!)
深海棲艦が考えていることが四方八方から聞こえてくる。それを頼りに砲撃を回避し、光玉を次々と切り捨てていく。一度手を話すと、そこら中に深海棲艦の残骸と血が浮かんでいた。まだ生きている深海棲艦は焦りの表情を浮かべているように見える。
「悪いけど、一撃も当たるつもりはないよ。お前らがどこへ撃とうとしているかなんて筒抜けなんでね!」
撃とうとしている方向とタイミングさえわかれば、砲撃を躱すことなど造作もないこと。こいつらは狙いも甘いし、なおさら簡単だった。もっとも、このやり方だとかなり疲れるのが問題だが。あちこちから聞こえる声を聞きながら回避し続けると、頭が痛くなってくるし集中力もごっそり削られる……。敵の数は結構減らせたが、こっちの消耗も激しかった。
こちらが疲れを見せた瞬間、イ級達はホ級の周りに集結する。あれだけ倒してもまだホ級への道は開かないのか……と思ったそのときだった
背後から音が聞こえ、こちらに向かって何かが迫ってくる。それが通り過ぎたかと思うと正面で大爆発が起こり、集結したイ級達が散り散りになった。爆発地点からは巨大な水柱が上がっている。
「まったく、弱いくせに数だけは多いわね。あれだけ魚雷を撃ってもまだ生き残りがいるなんて……」
すぐ後ろから叢雲の声が聞こえてくる。魚雷をありったけ撃ち込み、イ級たちを蹴散らしたというのだ。手持ちの魚雷も弾薬ももう使い果たしてしまったそうだが、おかげで突破口をこじ開けることはできた。
「さあいくわよ。ここまで追い詰めてくれたお礼をしてあげないとね!」
「よし、やっちゃうか!」
叢雲は槍を構えて水柱に向かって走っていく。剣をしっかり握り、それに続いた。
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爆発の隙をつき、どうにか逃げ出すホ級。随伴の駆逐艦達はあの時の爆発で離れ離れになってしまった。攻撃手段も失った以上、もうあいつらから逃げるしかない。立ち上がる水煙に身を隠し、走り続ける。そのときホ級の腕に何かが刺さり、血が流れ始めた。
「逃がしはしないわ。どこまででも追いかけて沈めてやる!」
「どうしてここがわかったんだ、だって?この剣がある限りお前の居場所は丸わかりなんだよ!」
突然どこからともなく聞こえる声。声のした方にはまいたはずの二つの人影があった。人影達は急接近し、片方は腕に刺さったものを抜き取る。そしてもう片方はホ級の頭を切り裂いた。ホ級は声にならない叫びをあげ、血を流していく。
「よくもあの時は襲ってくれたな、この幽霊野郎が!」
「私を怒らせたこと、海の底で永遠に後悔することね!」
完全に浮力を失い、ホ級はあっけなく沈んでいく。その後には不気味な青色の血が広がっていた。
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「ふん、苦労させられた割にはあっけない死に方だったわね」
「ほんとそれ。あんな大群率いてくるなんて往生際が悪すぎる……」
ついさっきまでホ級がいた海面を見つめる。やはり深海棲艦特有の青い血で染まっているが、その中に何かが浮かび上がっているのを見つけた。
「これは艦の魂……とホ級の艤装!叢雲、持って帰ろう!」
「こんな時まで艤装集めは忘れないのね……。まあいいわ。でも、その前にもう一仕事してもらうわよ」
「あっ……」
そういえばあいつらのことをすっかり忘れていた。剣を握り索敵すると、こちらに十数個ぐらいの光玉が向かってくる。
(いたぞ!あいつらだ!)
(私たちのリーダーをよくも!)
(潰せ!徹底的に潰せ!)
背後から生き残った深海棲艦たちが突っ込んでくる。やはりというか、リーダーを倒したことに怒っているようだ。というかホ級が仲間を集めた時といい今回といい、どうやって仲間に知らせているのだろうか。深海棲艦はテレパシーでも使えるのか?……いや、今はこんなこと考えている場合ではないな。
「もう砲雷撃はできないからこの槍であいつらを仕留めるわ。あんたはその剣でできるだけ多く斬りなさい!」
「ああ!」
突進してくるイ級たちを切り裂き、右側で砲を構えるロ級たちの方に向き直る。その時、突然どこからともなく砲弾が飛んできた。そのまま目の前にいるイ級やロ級に命中し沈んでいく。今のは一体誰が……!?
「叢雲、学、待たせたわね。後は私たちに任せなさい!」
「不知火、弾薬補給完了しました。ここはお任せください」
砲を構え、深海棲艦を蹴散らしながら霞と不知火が駆けつけてきた。ちょっと待て、弾薬が尽きていたのにどこで補給なんてしたんだ!?
「ホ級に突っ込む前に二人に指示したのよ。この近くにある島に流れ着いている弾薬を探して、それを持ってきなさいって。なぜか知らないけどあの島はよく弾薬が流れ着くから、遠征でよく使ってるの」
「よく流れつくって……。よくわからないけど、これで戦えるんですね」
弾薬を補給した二人は、軽やかなステップを踏んで攻撃をかわしながら次々と深海棲艦を撃沈していく。みるみるうちに頭数は減り、ついに敵は全滅した。
「拾った弾薬込みでやっと全滅か……。ほんっと疲れたわ」
「あなたが駆けつけてくれなければ、不知火達は大破、最悪轟沈していたかもしれません。学さん、ありがとうございます」
「確かに私の槍だけでは厳しかったわね。よくやったわ」
「……叢雲さん、もっと素直にお礼すればいいのに」
「な、なによ!」
さっきまでの真剣さはどこへやら、不知火と叢雲の喧嘩が始まった。この二人、よく喧嘩するよなほんと……。
「二人とも、喧嘩は母港に帰ってからやりなさい。それとこれ、見つけたんだけどどうするの?」
「艦の魂……それも二つ同時か。学のも合わせたら三つね」
「あれだけの数倒したんだから、もっと落ちててもいいものですが……。まあ、これから探すのも危険そうですしそれを持って帰りましょうか」
「ええ、私ももう疲れたわ。早く帰って入渠しましょう」
「はーいみなさん、かえるまでがしゅつげきですよー」
どこからともなく現れた羅針盤の妖精さんが示すルートを辿り、母港へと向かう。念のため索敵するが、三つしか光玉は見つからない。あいつ、まさかこの辺りの深海棲艦全員呼び寄せたのか……?
その後深海棲艦に出くわすこともなく無事帰投。防衛に徹していた朝潮達に出迎えられ、主力艦隊掃討作戦は終了した。