未来人と艦娘と 作:メテオ・ザ=ディザスター・アラシ(以下略
「ねえねえ、どの魂から顕現させるのー!?」
帰投直後、睦月が敵主力艦隊討伐艦隊のメンバーに問いかける。どうやらさっきの戦いで手に入れた三つの魂を目にし、早く顕現させて新しい仲間に会いたいと思ったらしい。朝潮と暁が先に全員の入渠が済んでからにしなさいと諭すが、僕を含めた艦隊のメンバー全員が
「小破程度だし、この辺りの深海棲艦はほぼ全滅させたから顕現が終わった後からでも問題ない」
と言ったので、先に魂を顕現させる流れになった。睦月は大はしゃぎし、工廠へ走っていった。
「睦月、無邪気でかわいいですね」
「あんなんじゃダメよ!レディーとしてなってないわ!」
「まあまあ、それより早く睦月を追いかけようよ」
睦月を追いかけ、僕たちも工廠に向かう。これから3人も仲間が増えるとなると、賑やかになりそうだなぁ……。
「みんな、おっそーい!早く早くー!」
「あんた、どこかのスピード馬鹿みたいなこと言ってんじゃないわよ!」
睦月はすでにドックの前で待機し、手を振っている。ドックの中には妖精さんがスタンバイ済み。いつでも顕現できるそうだ。
「それで、どれから顕現する?睦月、楽しみー!」
「じゃあ、私が拾った二つからにしましょうか。駆逐艦たちの残党を始末した時に出てきたの」
霞はまず左手に持っている魂を妖精さんに手渡す。妖精さんは受け取った魂を運び、作業を始めるとすぐにまばゆい光があたりを包み込んだ。ほんとに眩しいなこれ、暗幕でもかけたほうがいいんじゃないのか?
「終わったみたいね。開けるわよ」
霞は何事もなかったかのようにドアを開ける。ドアの先には青髪の少女が立っていた。
「五月雨って言います!よろしくお願いします。護衛任務はお任せください!」
礼儀正しそうないい子だな、この子。でも……
「提督!私、何をすればいいですか?」
案の定僕を提督と勘違いし、指示を求めてきた。睦月といい暁といい、顕現したばかりの艦娘はみんな僕を提督と勘違いするんだな……。睦月に至ってはいまだに僕を提督と思い込んでるし。
その後叢雲達が説明してくれたおかげで、五月雨は僕がただの同居人だとわかってくれた。その間に霞は次の魂を顕現させる。ドアからはセーラー服を着たピンク色の髪の少女が出てきたのだが……
「綾波型駆逐艦漣です、ご主人様♪」
「はい?」
いや何を言っているんだこの子は。まさか提督と勘違いの次は主人と勘違いか?
「あのー、ちょっと聞きたいんだけどご主人様ってのは……」
「え?ご主人様はご主人様ですよ?」
マジで何言ってるんだこの子。誤解を招きそうだからやめてほしいんだけど……。
「漣ちゃんだめだよ!学さん困惑してるでしょ!」
「学、こいつは相手の反応が面白いからって理由でこう呼んでるだけだから気にしないでいいわ」
「ちょっと五月雨に叢雲!バラさないでよー!!」
ネタバレされて地団駄を踏む漣。よっぽど僕の反応を見るのが楽しみだったのか……。ちなみにこの後僕が同居人であることはわかってくれたみたいだが、「ご主人様」と呼ぶのはやめてくれないそうだ。外でこう呼ばれたら白い目で見られそうだなぁ……。
「それじゃあ次で最後ね。学、あんたが顕現させなさい」
霞に指示され、妖精さんに魂を渡す。またしても溢れるまばゆい光。あらかじめ目を塞いでいたからなんとかなったものの、後ろにいる漣達はかなり驚いたようだった。顕現したばかりでこのことを知らなかったらしい。光が収まった後機械を操作し、ドアの前に向かう。そこから現れたのは……
「木曾だ。お前に最高の勝利を与えてやる」
眼帯をし、船乗りのような服を着た少女だった。心なしか、これまで顕現した駆逐艦達よりも大人っぽい感じがする。もしかして違う艦種だろうか?
「おお!軽巡の人ですね!」
「軽巡キタコレ!」
「これで水雷戦隊が組めそうね」
「なんだ、ここには駆逐艦しかいないのか?なら、俺が引っ張って行かねえとな!」
どうやらこの艦娘は軽巡のようだ。それにしても頼もしいこと言ってくれるなぁ。
「新造艦のみんな、部屋は空いてるところがたくさんあるから好きなところを使ってくれていいわ。朝潮達、私たちが入渠している間にここを案内してあげなさい」
叢雲達は入渠ドックへ向かっていく。残されたメンバーのうち朝潮が新造艦の3人を案内しようとするが、睦月が突然前に躍り出て
「じゃあみんな!睦月探検隊、出発しますよー!総員、睦月に続くにゃしー!」
と言って、朝潮のポジションを奪ってしまった。
「む、睦月!私がこの中で一番長いことここにいるんだから私が案内するよ……」
「やだー!睦月だって案内したいー!だから朝潮は副隊長ね!」
「もう……しょうがないわね。じゃあ睦月隊長、お願いね!」
「はーい!」
こうして睦月探検隊なるものが結成され、隊長の睦月と副隊長の朝潮が案内することになった。レディーとしてなっていないと怒る暁。ノリノリでついていく漣。苦笑いをする五月雨。可愛いやつだと言って見守るような感じの木曾。様々な反応を見せる仲間達を引き連れ、睦月は進んでいく。
「ここで最後ね。ここは出撃ドックで、睦月達が遠征に行ったりするときはここから出るんだよ!」
朝潮の補助もあったが、隊長としての役割を完遂しこの鎮守府の案内を終えた睦月。誇らしそうに出撃ドックでやることを説明している。隣では艤装のメンテナンスや補給を行う妖精さんが
「むつきたいちょうおつかれさまー」
と言って拍手している。一体どこから聞いたのだろうか……。
「じゃあ案内はこれでおしまい!とりあえず、叢雲達が帰ってくるまで談話室で待ってようか」
「なあ睦月、ちょっといいか?」
談話室に誘導しようとする睦月を、木曾が呼び止める。
「木曾、どうしたのにゃ?」
「この鎮守府、過去に敵に攻め込まれでもしたのか?工廠と宿舎の一部が盛大に壊されていたんだが」
かつて工廠に案内された時は、海側に面する壁が破壊されていてドックも使用不能になっていた。その穴めがけてやってきたイ級たちを僕と睦月とで撃沈したのはいい思い出だ……。そして宿舎のほうも同じようなことになっていた。僕が使っている部屋のあたりは問題ないのだが、そのさらに奥の方は工廠並みに酷い有様だった。血痕ようなものが床にあったし、壁が消し飛んでいてあたりには破片や弾薬が散乱していたし、壁に開いた穴からは潮風が吹き込んできていた。
「それが、睦月もよくわからないの。睦月が来た時にはすでにこうなってて……」
「そうなのか……。朝潮、お前は何か知ってるか?」
「……ごめんなさい。あまり思い出したくないの」
途端に雰囲気が悪くなる。ここで何か嫌なことでもあったのだろうか。まさか……。
「はいはい、この話はもうおしまい!睦月はこういう雰囲気嫌いなのー!」
睦月が割って入り、このムードを打破する。朝潮も目に涙を浮かべていたし、止めに入ってくれてよかったと思う。
「そうだな……。すまん、嫌なこと思い出させてしまって」
「いえ、私は大丈夫です」
その後、みんなは談話室に戻っていった。しかし、朝潮はその道中も悲しそうな目をしたままだった。そんなに悲しい事件があったのか……いや、このことはあんまり考えない方がよさそうだな、うん。
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「私、どうしてもっと早く建造されなかったんだろう……」
夕暮れ時の母港に、朝潮は一人で佇んでいた。その目に涙を浮かべ、茜色に染まる海を見つめている。
「私がもっと早く建造されて戦える状態だったら、あなたは沈まずに済みましたか?私が戦えたら、沈む人はもっと少なくなりましたか?」
海に向かって問いかける。しかし、波の音以外に聞こえてくるものはない。夕日を受けてきらめく雫が流れ落ちていく。
「金剛さん……私は……私はっ……!」
過去にここでなにがあったんでしょーね