未来人と艦娘と 作:メテオ・ザ=ディザスター・アラシ(以下略
「艦隊のメンバーは把握できたわね?それじゃあ明日はさっき話したルートで遠征に行くわよ。各々シフトはしっかり確認して遅れることがないようにね」
時刻は2130。会議室に全艦娘が集まり、明日の予定について話している。今日の戦いで主力艦隊及び鎮守府付近の深海棲艦を撃滅したため安全に遠征を行えるようになったが、その代償として弾薬を消耗してしまったので補給したいという。あれだけの数の深海棲艦相手にしたから仕方ないな。弾薬も魚雷も撃ち尽くし、現地調達までしてやっと全滅させたぐらいだし。朝潮達も侵入して来た深海棲艦を撃退して弾薬消費しているらしいから、今回の消費は結構痛いらしい……。今回は新しい仲間が三人増えたので、二艦隊編成して効率よく資材を集められるのが救いだ。僕は叢雲、睦月、漣、五月雨と同じ艦隊に入って輸送を手伝うことになり、残りの五人でもう一つの艦隊を組むことになった。
「こんな時に大本営からの支援物資が届けばいいのにねぇ……。あれから何も音沙汰ないし」
叢雲がため息交じりの声でつぶやく。提督がいなくなってからずっと、最古参である彼女が資材のやりくりや哨戒のシフトを組んでいたというらしいから相当苦労していたのだろう……。
「さすがに遅いですね。いったいなにをやっているのでしょうか」
「やれやれ、お前がそんなに苦労していたなんてな。大本営の連中は無能なのか?」
「木曾さん、そんなことないと思いますよ!ほっ、ほら!もしかしたら何か大規模な作戦で忙しいんじゃないでしょうか!」
五月雨の言うことも一理あるかもしれないが、こっちには一ヶ月近く何の連絡もよこさないのはおかしいんじゃないだろうか。ここだってこの国を守る防衛戦の一つだってのに……。
叢雲がこぼした愚痴で少し話が脱線したのだが、その後彼女の号令で解散となった。古参組の叢雲、不知火、霞、朝潮、そして今日顕現したばかりの木曾は少し鍛錬したいと言って外に出て行き、五月雨は寝坊しないように早めに寝るとのことで、自室に戻っていった。そして、残ったメンバーはというと……
「提督―!睦月と遊ぶがよいぞ!」
「ご主人様、何しましょうか?」
こんな時間なのに僕と遊ぼうと提案して来た。というか、なんでこの二人はやたら僕に懐いてるんだろうか……。
「おいおい二人とも、良い子は寝る時間だぞ?」
「やだー!睦月、提督と遊びたいー!」
「そんなこと言わないでくださいよご主人様。まだ日付変わってないじゃないですか」
「おいおい明日寝坊しても知らないぞ?というかその呼び方いい加減やめてくれよ」
「そうよ二人とも!夜更かしはお肌に悪いんだから一人前のレディーはちゃんと寝るものよ!」
部屋に残っていた暁が二人を叱る。この子、結構しっかりしてるんだな。みんなのお姉さんポジションってところか。
「じゃあ、暁ちゃんは先に部屋に帰ってなよ。睦月はこれから遊ぶにゃしー!」
「それなっ!」
「わかったわ。お先に失礼するわね」
そう言って暁は部屋を出たのだが、その数秒後……
「やややややっぱりあなた達の遊びに付き合ってあげるわ!一人前のレディーには、仲間との親睦を深めることも大事だからね!か、感謝なさい!」
廊下に出た暁は、体を震わせながらものすごい勢いで戻って来た。電気がついていないため、ドアの先は真っ暗だ。なるほど、さてはこの子暗闇が苦手なんだな?かわいいところあるじゃないか。
「しょうがないな……。でも、いつまでもここにいるわけにはいかないし場所変えようか。えーっと、どこにしようか……」
「はーい!睦月、提督さんの部屋がいい!」
「じゃあ、漣もそこでいいや!」
「じ、じゃあ私もまにゃ、学さんの部屋にするわ……!」
一瞬にして三人を僕の部屋に招き入れることが確定した。というか暁、お前はいつまで震えているんだ。
「じゃあ行きますか……。ペンライトで照らすからついて来てね」
「おおー!ここが提督の部屋ですかー!」
「ご主人様、流石に地味すぎません?もっとデコりましょうよー」
会議室の一個上の階にある僕の部屋に辿りついた途端、睦月と漣が飛び込んでくる。ちなみに暁はというとずっと僕の手を握ったまま震えている。道中もずっとこの調子だったので、やはり暗闇が苦手らしい。出撃中に夜にでもなったら大丈夫なんだろうか……。
「それで、何して遊ぶの?この部屋には見ての通り遊び道具なんかないぞ?」
僕の部屋には回収した深海棲艦の艤装が飾ってあるぐらいで、それ以外には備え付けてあった机と布団、時計ぐらいしかない。元の世界ではゲーム機とか本とかたくさん持っていたが、こっちの世界に迷い込んだ時に持っていなかったのでそれもない。というかそんなものあったところでこの子達がルールとか知ってるわけ……いや、案外興味示してやり込み出すかもしれないな。
「確かになにもないですね……。ご主人様、暇な時間は何してるんですか?」
「ずっと艤装眺めてるかなー」
「やっぱりね!そんな提督のために、睦月が遊び道具を持ってきてあげる!」
睦月はペンライトを持って部屋を出るのだが、使い方がわからないと言ってすぐに戻って来た。隣で漣が笑い、睦月はムキになって飛び出す。なんだかすごく微笑ましい。
「おまたせー!持って来たよー!」
睦月が何かを抱え、駆け足で戻って来た。寝転がっていた漣と部屋の隅で三角座りをしていた暁が反応し、睦月の元へ集まる。
「これはオセロっていうの!提督、遊び方わかる?」
「うん。これはやったことあるからわかるよ」
オセロ盤を広げ、駒をセットしていく睦月。漣たちはすでに順番を決め始めていた。
「トーナメント形式にしましょ!私とご主人様、睦月と暁で戦って、勝ったもの同士で決勝戦ね!」
「いいわね!そうしましょうか」
「睦月が圧勝してやるにゃしい!」
そうして始まった真夜中のオセロ大会。最初は漣と戦うことになったのだが……
「嘘……だろ?」
「完全勝利キタコレ!」
決着がついた頃、盤面はほとんどが黒色のコマで埋まっていた。四隅も漣にとられ、完全敗北である。お前ほんとに今日顕現したばかりなのか……?
「どう、漣はすごいでしょ?ね?」
「お前の前世絶対オセロの世界チャンピオンだろ……」
「いやーそれほどでも〜……ありますよ。てへっ♪」
その後暁に勝利した睦月と漣の対決になったのだが、もちろん漣が圧勝した。しかも盤面に残った睦月のコマは4つだけであとは全部漣のコマである。悔しがった睦月が何度かリベンジマッチを挑むも、全て漣の圧勝に終わってしまう。徹底的に叩きのめされた睦月が泣き出すほどであった……。
「あーあ、もうみんな寝ちゃったか」
ちょうど日付が変わった頃、みんなは眠りについていた。あの後はしりとりをしようかという話になったのだが、オセロ大会で散々はしゃいだ反動か始まってすぐに漣がダウン。続いて暁、睦月が寝落ちし、今に至る。
「僕ももう寝るかな……。でも、その前に」
剣を鞘から抜き、砥石で研いで行く。万が一明日深海棲艦に出くわしても問題ないように。そして、無事に帰ってこられるように……。
研ぎ終わった剣を再び鞘に収め、睦月たちが寝てる場所から少し離れたところに布団を敷いて眠りについた……。
「な、なんだここ?」
目を覚ました時、僕は真っ白な世界にいた。比喩表現なんかではない。本当にどこを見渡しても真っ白な空間が広がっているのだ。上下左右見渡しても、少し歩いて見ても何も見えてこない。自分の部屋で寝ている間に何があったんだ……?
「あなたなのね……。あいつを撃沈したのは」
突然どこかから聞き覚えのある声が聞こえてきた。しかし、辺りを見渡しても声の主は見つからない……。
「誰?一体どこにいるの?」
「こっちだよ」
振り返ると、そこにはセーラー服を着た白い長髪の少女、そして……
「ありがとうね。あいつを……ホ級を撃沈してくれて」
僕の部屋で寝ているはずの漣の姿があった。