未来人と艦娘と 作:メテオ・ザ=ディザスター・アラシ(以下略
「ここは…どこだ?」
気がつくと、僕は小部屋の中にいた。机やベッドぐらいしか家具が置かれていない、質素な部屋だ。頭の上には、水で濡らしたタオルが乗せられている。さっき爆発に巻き込まれたあと、誰かが助けてここまで連れて来てくれたのだろうか?というかあの時追いかけて来た化け物はいったい?僕を助けてくれたあの少女は? …ダメだ、いろいろありすぎて正直頭が追いつかない。
「失礼します。…あら、目が覚められたようですね」
ドアが開き、ピンク色の髪の少女が入って来る。この人が僕の手当てをしてくれたのかな?
「あの…あなたが僕を助けてくれたのですか?」
「いえ…不知火はここであなたの手当てをしただけです。海上で深海棲艦を撃退し、あなたを保護したのは叢雲さんです」
不知火さんに叢雲さんっていうのか。なんか変わった名前だな。
「そうなんですか…それで、叢雲さんはいったいどうなってしまったのでしょうか…?」
あの時、叢雲さんは敵の攻撃をかばって僕を助けてくれた。そのおかげで気を失った程度ですみ、今こうして生きていられるとのことだ。では叢雲さんは一体?普通の人間なら、いくら武装していてもあんな攻撃受けたらひとたまりもないのでは…。
「叢雲さんなら、今は手当てを受けていますよ。大破してしまいましたが、なんとか轟沈はまぬがれました」
そうか、まだ生きているのか。それならよかった。でも、なんでわざわざ人間相手に大破とか轟沈とかいう言い回しをするんだ?まるで一昔前の戦艦みたいな言い方ではないか…。不知火に理由を聞こうとしたが、彼女の言葉に遮られた。
「あの、お目覚めのところを申し訳ないのですがこちらからいくつか質問させていただいてもよろしいですか?あなたに関して気になることがありますので…」
「は、はい」
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いくつか彼に質問を投げかけてみたが、謎はますます深まるばかりだった。「ホ級とかいう幽霊みたいな化け物と黒いサメみたいな奴に襲われたから、れーざーがんやぷらずまそーどという武器で迎撃したが全く効かなかった」「サメがみさいるを発射しようとしたかられーざーがんで爆破したらサメも消し飛んだ」と言っているが、ところどころ出てくる単語の意味がわからない。彼が言っている単語は武装の一種だと説明されたが、そんな武装は聞いたこともない。みさいるというのは、黒いサメ…おそらくイ級かロ級が発射しようとしていた、というあたり、おそらく魚雷のことをみさいると勘違いしたのだろう。艦娘や深海棲艦のことも知らない、未知の武装や海上を走れる靴を持っている、いきなり海に放り出された(といった感じのことを彼は言っていた)など、彼と話していて不可解な点はいくつも見つかった。彼は一体何者なの?もしかしたら、私たちとは違う世界の住民なのだろうか…?
私が思考を巡らせている時、一人の艦娘がドアを開けて入って来た。
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不知火さんと話していると、また一人の少女が部屋に入って来た。彼女もまた艦娘なのだろうか?
「あら。あんた、目を覚ましてたのね」
「はい…あなたも艦娘ですか?」
「ええ。朝潮型駆逐艦、霞よ。不知火に用があるからちょっと借りてくわね」
そう言って、霞さんは不知火さんを連れて部屋を出ていった。不知火さんは、去り際に「この部屋で待っていてください」と言い残し、霞さんについていった。残されたのは僕一人だけ。…正直いろいろありすぎて困惑しているから少し助かった。かつて大戦で戦った艦船の魂が具現化した存在が艦娘だとか、人間が作り出した兵器の攻撃が効かない深海棲艦とか、全然話についていけない。ここはゲームか何かの世界なのか?魂が具現化するとか、おとぎ話ぐらいでしか聞いたこともないんだが?
「ねーねー」
僕が考え事をしていると、後ろから小さな声が聞こえた。振り返ってみると、机の上に数人の小人が立っていた。
「おにーさん、おもしろそうなものもってるねー」
そういって小人は僕のところに駆け寄り、靴やレーザーガンをつついてきた。おいおい魂の具現化の次は小人かよ…。いったいどうなってるんだこの世界は?
「小人さん、これに興味があるのかい?」
「こびとじゃないよー」
「ようせいさんだよー」
「ねーねーこれってどうやってつかうのー?」
妖精さんと名乗る小人たちが靴をぺちぺちと叩く。なんだかかわいいな…。
「これは僕が作った靴で、水陸両用なんだ。フル充電すれば一週間は水上を歩行できるんだぜ?」
「おにーさんがつくったのー?」
「あるいてみせてよー」
「いいよ?それじゃあ外に行こうか」
「わーい!」
こうして妖精さんたちに水上歩行シューズのお披露目をする流れになった。そういや不知火さんにここで待ってろって言われてたな…。まあ、どこ行ってたのかと聞かれたらトイレって言い訳すればいいか…。
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「私と霞、そして不知火、3人だけで大丈夫かしら?」
「そうね。3人では少し不安がありそうね」
私たちは遠征の計画について考えていた。大破した叢雲の修復に鋼材が必要なのだが、備蓄の鋼材が底を尽きかけているのでこのままでは修復できない。しかし、鋼材はここから少し離れた場所でしかとれないので、3人では少し不安があるのだ。
「大本営が資材を送ってくれればどうにかなるのに…」
「ほんっとそうよね!あのクズ達、数週間経ったのになんの連絡もよこさないんだから!」
「霞さん、落ち着いて。…でも、確かに大本営の対応が遅いのは腹立たしいわね」
霞さんが苛立つのもわかる。あの事件があって以来、4人でどうにか鎮守府近海の哨戒を行って深海棲艦を撃沈させたり、遠征で資材を確保してどうにか立て直そうとして来た。しかし、それでも日に日に資材は足りなくなってきている。大本営からはいずれ新しい提督を派遣し、資材もいくらか届けるという通達があったものの、それ以降大本営からの通達は何も来ていない。そのため資材のやりくりにかなり苦労し、建造されて間もなかった朝潮さんを遠征に動員させざるをえなくなるほどにまでなったのだ。大本営はよほど余裕がないのか、それともここはもう見捨てられてしまったのか…。
「あれ、不知火さんに霞さん…と、もう一人の艦娘さんじゃん。何話してるんですか?」
不意に後ろから声をかけられた。振り向くと、部屋で待っているように指示しておいたはずの青年が後ろに立っている。
「部屋で待っているようにと言ったはずなのですが…不知火に何かご用ですか?」
「ああ、あの…ちょっとトイレに行きたいなって思いまして…」
「ああ、そういうことですか…。朝潮さん、案内してもらってもいい?」
「はい!」
朝潮さんに彼を案内するように指示し、話し合いに戻ろうとする。その時、彼の周りにいる妖精さんに声をかけられた。
「ねーねーなんのはなししてるの?」
「…あなた達には関係のないことです」
「えーなんでよー」
「こらこら妖精さん、不知火さんが困ってるでしょ」
「えー」
彼が妖精さんを止めようとする。というか、彼も妖精さんが見えるのね…。隣で朝潮が驚いているわ。
「それでさー、なんのはなしなの?」
「いえ、ですから…」
「むらくものこと?」
「…っ!?」
図星だった。妖精さんにはお見通しだったというのか…。妖精さんの一言を聞き、彼も話に加わる。
「あの、叢雲さんってこの前僕を助けてくれた銀髪の子ですよね?手当てしてるのでは?」
「ええ。応急処置だけはしました。でも、全快させるには燃料と鋼材が必要で、その鋼材が今枯渇しています。なので外海まで足を伸ばして確保に向かいたいのですが、人数が足りなくて…」
「そうなんですか…」
彼に話したところで何の解決にもならない、そう思っていた。しかし、彼は意外な言葉を言い放った。
「あの、それじゃあ僕も同行して手伝いましょうか?」
「「「ええっ!?」」」
いくらなんでも無謀なのではないか。この辺りでは稀にではあるがはぐれ深海棲艦が出没する。遠征のルートは深海棲艦が出没する可能性が低いルートを通るのだが、近海の制海権を確立できていないため、深海棲艦に出くわす可能性は0ではないのだ。
「あ、あなた正気なんですか!?普通の人間が深海棲艦に撃たれでもしたら死んじゃうんですよ!?」
「そうよ!あんたが海を走れるってのは叢雲から聞いたけど、深海棲艦を倒すことはできないでしょう!」
朝潮さんも霞さんも、声を荒げて彼の同行を拒む。もちろん、私も反対だ。まぐれで駆逐級の深海棲艦を撃沈したとはいえ、次に深海棲艦に出くわした時も同じようなことができる保証はない。しかし…
「確かに僕は深海棲艦を倒す力はありません。まぐれであのサメ…えーっと、不知火さん、あいつなんて名前でしたっけ?」
「イ級かロ級のことでしょうか」
「そうそう。そいつを倒せはしたけど、ホ級なんかはどうあがいても倒せない。でも、荷物運びぐらいなら手伝えますよ。それに…命を助けてもらった恩を返したいですから」
彼は引き下がろうとはしなかった。こういうタイプの人は、そう折れはしないでしょう…。
「仕方ありませんね…。では、あなたにも同行していただきましょう」
「ちょっと!こんなやつ連れて行って大丈夫なの!?」
「そうですよ!もしものことがあったら!」
「資材の輸送は彼と朝潮さんに任せ、不知火と霞さんで二人を護衛すれば問題ないでしょう。私たちはある程度実践経験を積んでいるので、はぐれ深海棲艦程度ならどうにかできるわ。あなたはそれで問題ないですか?」
反論する二人を制し、最近の近海では駆逐や軽巡しか見かけなくなったから、私と霞さんが出ればどうにかなるはず。…もっとも、あの時みたいな状況になるのであれば考え物だけど。
「わかりました。それではお供させていただきますね」
「それでは、準備をしましょうか。ええと…お名前は」
「ああ、まだ名乗ってませんでしたね。僕は
「では工藤さん、朝潮と一緒に出撃ドックまで来てください。そこで必要なものを渡します」
そう言い残し、私と霞さんとで出撃ドックに向かう。少し不安はあるが、これで人数は揃った。あとは必要な資材を集めて帰ってくるだけ。
「…朝潮さんも工藤さんも絶対にやらせはしない。4人そろって無事に帰港しましょう」
「そうね。叢雲のためにも、失敗は許されないわ。気を引き締めていくわよ」
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朝潮さんに出撃ドックに案内してもらい、そこで不知火さんからドラム缶に紐がついたものを受け取った。これを使って鋼材を運搬するらしい。ひもを腰に巻きつけ、先に準備を終えた朝潮さんの後を追う。
「朝潮、準備完了しました。いつでもいけます!」
「こちらも準備完了しました!」
「全員揃いましたね。それでは出撃しましょう」
「工藤、足手まといにだけはならないでよね!」
「しゅつげきだー!えいえいおー!」
こうして僕たち4人(となぜかついて来た妖精さん達)は、1人の艦娘を助けるため大海原を駆け出した。