未来人と艦娘と 作:メテオ・ザ=ディザスター・アラシ(以下略
「ねーねーひまー」
「まだつかないのー?」
「おさかなさんいないかなー」
出発してから数分後、妖精さんたちが肩の上で騒ぎ出した。出発した直後は
「わーまなぶがうみをはしってるー!」
「すごいすごーい!」
「かっこいいねー」
なんて言ってかなりテンション高かったのに、いったいどうしたのやら…。妖精さんは飽きっぽい性格なのか?朝潮さんからも
「もう!目的地はまだまだ先なんですからしっかりしてくださいよ!」
と叱られる始末である。
「うー」
「しっかりするかー」
「まなぶはだいじょうぶー?」
「ああ、僕は全然平気だよ」
輸送用のドラム缶を海に浮かべ、それをロープで腰と連結しながらの航行。少し腰が痛いが、航行に支障をきたすほどではない。
「工藤さん、辛かったら代わりに持ちますので、いつでも言ってくださいね!」
朝潮さんがこう言ってくれたが、彼女はドラム缶2つ持ちである。正直これ以上増やすとかなり負担がかかりそうだし、僕が出てきた意味がなくなってしまうので、どうにか帰るまでは頑張ろうと思う。持ち帰る鋼材がよほど多くない限り大丈夫だろう、うん。
「右弦に敵艦を発見よ。まだ気づかれてないようだし、避けて通りましょう」
「「「了解!」」」
前衛の2人(と円盤状の何かを持った1人の妖精さん)が敵艦を捜し、交戦せずにすむルートを模索してくれている。おかげで目的地までは安全にたどり着けそうだ。このまま戦闘なしで終わってくれればいいのだが…。
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「さて、この辺りね」
不知火さんが立ち止まった。どうやらこのあたりに鋼材があるらしい。
「私と不知火とでこのあたりの見張りをしておくわ。敵艦は近づけさせないから、2人は資材集めに専念してちょうだい。朝潮、あんたは工藤に鋼材の集め方を教えてあげなさい」
「はい!行きましょうか、工藤さん」
朝潮さんに続き、近くの島までやってきた。海岸にはひしゃげた砲や銀色の破片が落ちている。
「この12.7cm砲、もう使えなさそうですが解体すればいい資材になりそうですね」
そういって朝潮さんは、使い物にならない砲を集めてドラム缶に放り込んでいく。それに続いて、僕も使い物にならなそうな装備を拾っていった。
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「不知火、そっちに敵艦はいる?」
「いえ、まだ一隻も見当たりません」
幸運なことに、今のところ敵艦を見たのは道中の1回しかなかった。不知火とともに周囲を探索するが、このあたりはイ級1隻いない静かな海だった。資材集めには最適と言ったところか…と思ったその矢先、遠くで何かが爆発する音がした。
「霞さん、向こうから爆音が!」
「ま、まさか工藤や朝潮が!?」
冗談じゃない、2人に危害なんて加えさせるもんですか!私達は急いで音がした方向へ向かうが…
そこには大量の鋼材や壊れた艤装をばらまいて力尽きている深海棲艦と、工藤の姿があった。深海棲艦の頭は無残にも吹き飛んでしまっている。
「ちょっとあんた!一体何したのよ!」
「いや、そこの深海棲艦がミサイル食べてたんで、やられる前にやってしまえって思ってレーザーで爆破したんですよ」
力尽きた深海棲艦をよく見ると、どうやら輸送ワ級のようだった。腹部に資材を詰め込んでいるあたり、このあたりに資材を回収しに来たのだろう。それにしても、攻撃能力もないただのワ級がなんで随伴艦もつけずにこんなところに?艦娘がいないと踏んで単艦で資材を集めに来たのかしら。
「まあ、よかったじゃないですか霞さん。これだけ資材があれば十分でしょう」
「ええ、不知火の言う通りね。でも!深海棲艦を見つけたんならまず私たちを呼びなさいな!今回は攻撃能力がない置物だったからよかったものの、相手が戦艦で魚雷爆破で倒しきれなかったらどうする気だったのよ!」
魚雷(なぜか工藤はみさいると呼んでいるが…)を至近距離で爆破させて駆逐級の深海棲艦を撃沈したことは不知火から聞いている。でも、それで調子に乗って危険な深海棲艦に喧嘩を売られたらたまったもんじゃない。ル級やヲ級は魚雷一発で仕留め切れるか怪しいし、ワ級だってeliteクラスだったら砲撃してくるようになる。正直普通の人間にそんな真似はして欲しくない。
「す、すみませんでした…」
「わかったならいいわ。資材集めに戻りなさい」
工藤はワ級が集めていた資材をドラム缶に詰め始めたのを見届け、私たちは哨戒に戻る。
「霞さん、彼のこと心配してたんですか?」
「別に。勝手に危険な深海棲艦に喧嘩売られたら困るだけよ」
「そうですか…。ところで、ワ級が運ぼうとしていた魚雷とこれはどうしますか?」
「一応はまだ使えるみたいね…。回収しておきましょう。これも持ち帰って、顕現させましょうか」
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「よし、一つ目のドラム缶はいっぱいになったわね」
海岸に流れ着いた艤装を集め始めて十数分、やっと一つ目のドラム缶は満タンになった。工藤さんはちゃんと集められているだろうか…とその時、後ろの方から工藤さんの声が聞こえて来た。
「あ、工藤さん…って、ええっ!?どうしたんですかその資材!」
工藤さんは大量の資材や艤装をかかえ、こちらに駆け寄って来た。周りにいる妖精さんも運搬を手伝っている。
「ちょっとこれ朝潮さんのドラム缶に入れてもらっていいですか?もう僕のいっぱいになっちゃって…」
「いいですけど…どうやってこんなに集めたんですか?」
「それが、なんかワ級?ってのを倒したら出て来たんですよ」
「…もしかして、また例の魚雷爆破をやったんですか?」
工藤さんはうんうんと頷く。こんなところにまでワ級がやってきて魚雷とか鋼材を回収しに来るのね…じゃなくて!
「もう!なんで不知火達に知らせなかったんですか!もし随伴艦がいたらあぶなかったでしょう!?」
「すみませんでした…」
「まーまーゆるしてあげなよー」
「しざいもこんなにてにはいったし」
「かすみにもおこられてたよねー。どんまい」
妖精さんが資材をドラム缶に詰めながら弁明してくる。霞にも同じこと言われてたのね…。
「まあ、これだけあればしばらくは大丈夫ね…。でも、次からは一人で深海棲艦と戦おうとしないでくださいね?」
「はい…」
これだけ言っておけば、もうこんな無茶はしないでしょう。ドラム缶もちょうどいっぱいになったし、そろそろ帰りましょうか…。
「ねーねー、あっちー」
「妖精さん、どうしたの?」
出発しようとした時、妖精さんが私たちを呼び止めた。どうやら近くの岩陰になにかがあるようだ。
「このあたり、においますなー」
「ばけつある?ばけつー」
「あ、修復材のことね。それじゃあお願いします!」
ドラム缶と一緒に持って来たバケツを妖精さんに手渡す。バケツを受け取った妖精さんは、水面でなにやら作業し始めた。
「あのー、何が始まるんです?」
「ああ、妖精さんが高速修復剤を集めてくれてるんですよ」
妖精さんが作業していた海面を見ると、その部分だけ海面が輝いている。バケツを持った妖精さんは輝く海面の水を掬い、手渡して来た。
「ばっちりとれましたー」
「はいこれー。こぼしちゃだめよ?」
「しっかりふたしてねー」
「ありがとうございます、妖精さん!」
隣では、工藤さんが不思議そうに妖精さんを眺めている。
「あのー、これはいったい…」
「これは高速修復剤といって、艦娘の傷を治すのを促進する不思議な薬剤なんです。妖精さんがいつも集めてくれるんですよ」
燃料と鋼材、そしてこの高速修復材があれば、どんな艦娘の傷もあっという間に治ってしまう。治すのに何十時間もかかる戦艦の傷ですら一瞬で治せるので、鎮守府では重宝されている代物だ。しかし、どうにも妖精さん以外は集め方を知らないらしい。昔どうやって集めているのかを聞いて見たが
「だめー」
「おしえてあげないよー」
「ようせいさんのきぎょうひみつでーす」
と返された。本当に不思議な存在ね、妖精さんは…。
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「さあさあ、かえりましょー。むらくもがまってるよー」
「かえったらおやつたべよー」
「やっほーい」
僕たちは不知火さん達と合流し、帰路についた。ドラム缶には集めた(というかワ級から強奪した)資材が満載、行き以上に重かった。ドラム缶が沈まないか不安だったが、航行中は妖精さんが支えてくれるから大丈夫らしい。さっきの修復材の下りといい、ほんとにすごいな妖精さんは。
「これだけあれば叢雲さん治療できますよね?」
「ええ、余裕で治せるわ。というか当分は集めに行かなくて大丈夫そうね」
霞さんは満足そうな口調だった。手にはミサイル…じゃなくて魚雷とキラキラ光るオーブみたいなものを抱えている。あれはいったいなんだろう、後で聞いて見るか…。
「…敵艦発見!まずいわ、どうやらこっちに気づいたみたいよ!」
不知火さんが声を荒げる。視線の先には、こちらに向かって走ってくる黒い人影があった。
「まずいわね…。私と不知火で足止めするから先に行きなさい!このまままっすぐ行けば帰れるわ!」
そう言い残し二人は人影に向かって走っていった。