未来人と艦娘と 作:メテオ・ザ=ディザスター・アラシ(以下略
「やれやれ、こんなところでとんだ相手に出くわしたわね」
砲を構える二人の視線の先には真っ白な肌に黒いビキニのようなものをまとった少女の姿があった。右手には真っ黒な盾、左手には鮫の頭のような形の砲を持ち、二人に近づいてくる。
「重巡リ級…。フフ、少しは骨がありそうね」
不知火はリ級めがけて魚雷を発射した。魚雷は直撃したが、リ級は止まるそぶりを見せない。すぐに次の魚雷を装填し、再び発射。これも直撃するが、やはり止まらない。
「中破に近い小破といったところかしら。やはり固いわね」
「どうにかして大破まで追い込むわよ!そうすれば追ってくることはできないはずだわ」
霞は今の自分たちでリ級を撃沈させるのは厳しいと判断した。ならばせめて大破させて追ってこれないようにしてやろうと考えたのだ。
「この先には行かせないわ!くらいなさい!」
霞がリ級に向かって砲撃し、不知火は何発も魚雷を撃ち込む。攻撃に晒され続け、リ級は大破した。足取りもおぼつかなく、今にも轟沈しそうなほどだ。
「これだけやれば追ってこれないでしょう。さあ、朝潮達と合流しましょう」
「もう沈めてしまってもいいのでは?なぜか攻撃してこなかったから、私たちは無傷ですし」
「馬鹿!弾薬も結構使っちゃったし、これで別の敵に出くわしたら戦えないわよ!それに資材を母港に持ち帰るのが最優先事項でしょう!」
そういって霞は不知火の手を掴み、先に行かせた朝潮達を追いかける。
「あいつ…次会ったら絶対に沈めてやるわ…」
不知火は移動中ずっとこう言っていた。リ級を沈められなかったことがよほど悔しかったらしい…。
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「霞さん達、大丈夫ですかね…」
「ええ、あの2人は実戦経験を積んでいるようですし、戦艦が相手でもない限り沈んだりしませんよ」
霞達に襲いかかってきた深海棲艦の足止めを任せ、母港への道のりを進む僕たち。二人に任せて大丈夫かと思ったが、朝潮さん曰く二人なら問題ないとのことだ。それならいいんだけど…。
「…工藤さん、危ない!」
「え!?」
突然僕めがけて砲弾が飛んできた。とっさにかわして前方に目をやると、仮面を被った人型の深海棲艦一体とサメみたいな深海棲艦二体が迫って来ていた。サメみたいなのはイ級か…?いや、よくみるとイ級よりもサメっぽいな。
「まずい…。3対2、しかもこっちはドラム缶持ち。これじゃどうしようも…って、朝潮さん!?」
「工藤さん、私が時間を稼ぐので先に行っててください!」
そう言って朝潮さんは敵艦隊に突っ込んで行った。すでに主砲を構え、サメに向かって砲撃している。
無茶だ。今の朝潮さんは資材が詰まったドラム缶を2つ持っている。そんな状況でまともに戦えるわけがない。ふと見ると、仮面野郎ともう一体のサメが魚雷を発射しようとしている。あんなの命中すれば一撃で沈んでしまう。
「このままじゃやられてしまう…!」
そう思った途端、とっさに体が動いた。レーザーガンを構え、まずは仮面野郎の魚雷に向かってレーザーを発射、その後すぐにサメの魚雷に発射し、爆破した。
「なっ…工藤さん!?」
「そこのサメ野郎と仮面野郎が魚雷撃とうとしてたんで、爆破させてもらいました。無茶しないでくださいよ朝潮さん…」
「え、ええ…ごめんなさい。でも、ありがとうございます…っ!?」
二人の会話を遮るかのように、煙の中から砲弾が飛んでくる。見ると先ほど魚雷の爆発に巻き込まれた仮面野郎がそこに立っていた。ダメージは与えられたようだが、仕留めきれなかったようだ。
「まずいですね、逃げましょう!」
朝潮さんと僕は急いで母港の方へと駆け出す。後ろからは仮面野郎が追ってきている。これじゃあまるでこっちに来た時みたいだ。相手が3体じゃない分まだマシだけど…。
「くうっ…しつこいわね!いい加減沈みなさい!」
朝潮さんが逃げながら砲撃しているが、仮面野郎は沈む気配がない。距離も徐々に詰まっているし、このままじゃ逃げ切れるか危うい。こうなったら…
「ねえ朝潮さん、これ持って先に逃げてください。あいつは僕がどうにかします」
腰に巻きつけたロープをほどき、ドラム缶を渡す。
「何を言ってるんですか!?あなたにあいつを倒すことはできません!」
「確かに、魚雷爆破するしか攻撃手段はないです。でも、足止めぐらいならできます。お願いです、ここは僕に任せてください」
「…わかりました。絶対無事でいてくださいね!」
僕の説得に納得してくれたのか、朝潮さんはロープを腰に巻き、去っていった。目の前にはこちらに追いついた仮面野郎。どうやらさっきので魚雷を出すと危ないってわかったのか、今度は砲を使って攻撃しようとしているようだ。
「悪いけど、ここでやられるわけにはいかないんでね。逃げ切らせてもらうぜ!」
引き金の後ろにあるレバーを倒す。するとバチバチといった音と共に銃口が熱を帯び始めた。
仮面野郎が砲撃してくる。しかし、ダメージを負っているためか発射するまでの感覚が妙に長く、避けやすかった。しばらく避けていると、レーザーガンから出る音が小さくなった。これで準備完了だ。
「チャージ完了だ。じゃあな、仮面野郎!」
そういって仮面野郎の足元に狙いを定め、引き金を引いた。
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朝潮は母港のすぐそばまでたどり着いていた。あれから深海棲艦に出くわすことはなかったし、ここまでくればよほどの相手が来ない限り逃げ切れる。ただ、深海棲艦の足止めをしている不知火や霞、そして学のことが気がかりだった。不知火と霞はおそらく大丈夫だろう。ただ、人間の学であの深海棲艦から逃げ切れるのかが不安だった。学を信じてあの場を任せてみたが、もしかしたら今頃やられてしまっているのではないか…。
そう思った矢先、後方から爆発音が聞こえた。何事かと思って振り返った矢先、こちらに向かって何かが飛んできた。その後ろには巨大な水柱が上がり、さらに後ろには黒い何かが飛んでいる。その後こちらに向かって飛んできたものが着水し、こちらに向かってくる。その姿を見た途端、朝潮は駆け出した。
「く、工藤さん!大丈夫ですか!?」
あのスピードで着水した影響か、学の足はガクガクと震えていた。持っているレーザーガンからは煙が上がっている。
「ぶっ飛んだけど、問題はないですよ。あの仮面野郎に向かって最大出力のレーザーぶっ放して、爆風でぶっ飛んで離脱しました」
「ええ!?」
仮面野郎こと雷巡チ級をまくべく、レーザーガンに限界までエネルギーをためた学。エネルギーをため終わった後、チ級の足元に向かって最大出力のレーザーを発射した。極太の光線が命中し、付近の海水が急速に蒸発、その途端チ級の足元で爆発が発生。至近距離で爆発したため逃げ切れず、チ級は派手に吹き飛ばされた。一方の学は全力で後退し、爆風に乗って飛ばされて来たのだ。
学が持っているレーザーガンは、最大出力で放てば大型トラックを消しとばすほどの威力となる。その火力でチ級の真下で水蒸気爆発を発生させ、吹き飛ばしてしまおうと考えたのだ。チ級には艤装が少し吹き飛び、レーザーに当たった箇所が焦げる程度のダメージしか与えることができず、自分も巻き込まれてぶっ飛ぶ羽目にあった。しかし、これだけ離れればもう追ってくることはできない。かなり危険な手段だったが、なんとか生きて朝潮と合流できた。
「それ、かなり危ないじゃないですか!でも…無事合流できてよかったです!さあ、早く母港まで帰りましょう。もうすぐそこですよ!」
「ええ、でも…ちょっとひっぱっていただけませんか…足があああ…」
…生きて合流はできたが、その代償として足がやられてしまったようだ。あの爆風にのって吹っ飛んで、そのままの勢いで着地したのだから当然か…。
「わかりました。母港までおぶっていきますね」
「…すみません。ドラム缶に加えて僕まで運んでいただいて…」
「いえいえ、全然大丈夫ですよ」
こうして朝潮と学は無事帰港、少し遅れてリ級と戦っていた霞と不知火も帰港した。途中深海棲艦出くわすというハプニングはあったが、(学を除き)無事鋼材を持ち帰ることに成功したのであった。