未来人と艦娘と 作:メテオ・ザ=ディザスター・アラシ(以下略
「おおーすっごーい!どんどんそれっぽくなってきてるー!」
睦月が顕現してから何日かたったある日のこと。僕は睦月の前で金属を打ち、形を整えている。睦月は目をキラキラさせながらその様子を見ていた。
事の発端は今朝、工廠を見て回っていた時のことだ。ここで普段何を作っているのか、どんな設備があるのかが気になり、妖精さんに頼んで案内してもらっていたのだ。あわよくば艦娘が使ってる艤装の作り方も知りたかったが
「せつびぐらいならおしえてあげるけど、ぎそうのつくりかたはだめだよー」
「ようせいさんのきぎょうひみつでーす」
と言われてしまったので、それは叶わなかった。妖精さんに連れられ、建造ドックの奥に向かう。
「ここでかいはつするんだよー」
「しゅほうとかぎょらいとかきじゅうとか」
「かんさいきだってつくれるんだぞー」
案内された先には、艤装の開発をしているという場所があった。大きな作業机や溶鉱炉、資材が詰まったドラム缶、工具箱が積まれている棚など、作業に必要なものがあらかた揃っていた。入り口、および建造ドック付近と違って、この辺りは荒れている様子はない。
「どうどうー?」
「すごいでしょー」
「うん、すごいね…。設備も揃っててかなり作業がはかどりそうだ」
さすがにこっちの世界みたいな最新鋭の機材はないが、かなり大規模で設備も充実している。
「でしょでしょー」
「ようせいさんのかがくりょくはせかいいちー」
「へえー!妖精さんってすごいのね!」
「あれ、睦月いつの間に?」
妖精さんたちと話していると、いつの間にか睦月が割り込んできた。確か今日は非番で、部屋で遊んでたはずじゃ?
「ちょっとトイレに行こうと思ったら、提督を見つけたの。それで、妖精さんと一緒に歩いて言ったから付いてきちゃった!」
「あー。なるほどね」
「ところで提督、開発でもしにきたの?」
「ううん。僕に艦娘用の艤装なんて作れないもん」
開発というのは、妖精さんと艦娘が協力して新しい艤装を生み出すことだ。主に作業をするのは妖精さんだが、艦娘はそれを補佐するという。また、不思議なことに艦娘によって完成する艤装は変わってくるらしい。…もっとも、人間の僕ではできないことだが。
「じゃああれ?前見せてくれたぷらずまそーど…ってやつみたいなのを作るの?」
「いや、あれをここで作るのは無理さ。特殊な加工を施した合金とか電気を制御して撃ち出す機械とかがいるけど、ここの設備じゃ作れそうにない」
「えー!せっかく提督がなんか作ってるとこ見たかったのにー!」
ええ…困ったなぁ。工廠覗きに来ただけなのに睦月に何か作れと言われるなんて。何かといっても、ここの資材カツカツらしいから勝手に鋼材とか持ち出すのも気がひけるし…。
「ん?待てよ…?睦月、ちょっと待っててね」
工廠を飛び出し、自分の部屋に向かう。そして部屋に飾ってある黒い艤装や金属片をかき集め、箱に詰め込んでいった。
「睦月―、お待たせー!」
「提督!お帰りー!」
箱を持って睦月の元へと向かう。睦月は箱の中身のものを手に取り、不思議そうに見ている。
「提督―。これって誰の艤装なのかにゃ?」
「これは遠征中に出くわしたはぐれ深海棲艦のだよ。撃沈したやつの艤装とか艤装の破片を集めてたんだ」
ここに来てから、何度か遠征の手伝いを依頼された。その途中で出くわし、撃沈した深海棲艦の艤装とその破片を、眺めたり構造を見てみたりするために集めて自室に飾っていたのだ。叢雲や霞からは「変な趣味持ってるのねぇ」と言われたが、それ以来倒した深海棲艦の艤装を回収して分けてくれるようになった。
「これは初めて鋼材集めに行った時にこっそり持ち帰ったワ級のやつ。こっちは昨日倒したイ級の主砲。こっちは不知火がくれたハ級の破片かな。これでなんか作ってみるよ」
これを鋼材として使えないか妖精さんに聞いてみたが、どうも深海棲艦の艤装はダメらしい。浄化されるまで妖精さんでは扱えないとかなんとか…。原理はよくわからないが、資材として使えないのなら勝手に使ったところで怒られはしないだろう。
「おー!睦月、楽しみー!!」
そして制作を始め、今に至るのだ。とりあえず作りやすそうだからという理由で、剣を作ってみようと考えた。前にネットで見た情報をもとに何回か作ったことがあるし、まあできるだろう。
艤装を近くに放置されていた入れ物に放り込んで溶鉱炉で溶かし、固めて一つの塊にする。余った艤装は…持って帰ってまた飾ろうかな。出来上がった塊を再び熱して叩いて伸ばし、形を整えていく。深海棲艦のものだからと行って特別加工しにくいということはなかった。
「睦月、完成したよー」
「おお、すごいにゃしー!」
刀身を研ぎ、持ち手を作って完成させた。ちなみに持ち手の部分は剣の下の部分を叩いて広げて作った。形は少し不格好だが、冷やして固めると黒く光って綺麗だった。なにより睦月が喜んでくれたのが嬉しい。あとで部屋にでも飾ろうかな。
「提督って鍛治仕事やったことあるの?結構うまかったし!」
「じいちゃんの家でやらせてもらったからちょっとはできるよ。でもじいちゃんほどはできないな…」
じいちゃんは僕の時代では数少ない刀工で、昔からの製法で刀を作り続けて来たという。後継者がいないので、仕事はロボットに手伝ってもらっているというが…。僕が遊びにいくといつも喜んで仕事を見せてくれたり、簡単な作品も作らせてくれた。
「へぇー、提督のおじいちゃんってすごい人なのね!」
「でしょでしょ?でも、すごく酒に弱くっていろいろやらかしたらしいんだ」
「そうなの?その話、聞かせてー!」
「わたしもききたーい!」
このあと妖精さんも話の輪に混じり、会話に花を咲かせた。
「ところで提督、この剣ってなんて名前なのかにゃ?」
「え?名前?」
「うん。前に見せてくれたのには名前があったじゃん。確か…そう、プラズマソードってやつ!」
うん、名前とか全く考えてなかった。どうしようか、なんかいい感じの名前…そうだ
「…アビスブレード、って感じかな」
「おおー!かっこいいですね!」
お、意外とはウケた。まあ、あとで別の名前も考えてみようかな。
「提督、それちょっと構えて睦月に見せてー!」
「うん、いいよ」
剣を両手で握り、適当にポーズをとる…と、その時だった。
「……っ!?」
突然視界がブラックアウトし、その後何か光の玉のようなものが浮かび上がった。目の前には白色の光玉が浮かんでいる。その光玉を見つめると
(提督、なんか変だけどどうしたのかにゃー?)
と声が聞こえた。これは睦月の声だろうか…?さらにあたりを見回すと、少し離れたところにある2つの白い光玉がこちらに向かって来ていた。それを見つめた時浮かんだ声は…
(艦娘…沈める…)
(壊す…壊す!)
おい待て、言ってることからして深海棲艦じゃないか!?思わず剣を手放すと視界が元に戻った。目の前には建造ドック、そして壁に空いた大穴から広がる空と海があった。まさか…!
「…睦月、急いで艤装をとってここに戻って来てくれ。深海棲艦が来たかもしれない」
「ええっ!?…りょ、了解にゃしい!」
睦月は慌てて艤装を取りに行った。
さて、今手元にある武器といえばこの剣しかない。これじゃあレーザーガンみたいに魚雷を爆破させて撃沈することは不可能。叢雲たちも哨戒に行っているから不在。もしあの声の正体が本当に深海棲艦なら、睦月が艤装を装備して帰って来るまでの時間をどうにか稼ぐしかないな…。
「睦月、急いでくれよ。こっちはどうにか食い止めるからさ!」
そうして建造ドックのほうへ走り、壁に空いた大穴から海に飛び出した。
そろそろ書き置きがつきそう...