未来人と艦娘と 作:メテオ・ザ=ディザスター・アラシ(以下略
「暁よ。一人前のレディーとして扱ってよね!」
「叢雲よ。よろしくね」
「僕は工藤学。暁、よろしくな」
イ級を倒した時に出た艦の魂を顕現していいかと叢雲さんに頼んだところ、倒した方法に驚かれるも了承してくれた。また仲間が増えて遠征が捗ると喜んでいたが…
「それで、あなたが司令官かしら?」
ああ、やっぱりこうなるのか……。睦月といいこの子といい、顕現した艦娘はこの中では唯一の男性である僕のことを提督と勘違いするらしい。艦娘は初めて見た人間の男性を司令官だと認識するのだろうか?
「いいえ、今司令官はいないわ。この人はただの同居人よ」
「あら、そうだったのね」
よかった。この子は物分かりがよかったらしい。叢雲もナイスフォローです、はい。
「それにしても驚いたわ。まさか深海棲艦の艤装で作った武器で深海棲艦を倒せるなんてね。これまで人間が作った武器の攻撃なんて効いたことないのに……」
「じゃあ、艦娘の武器は普通に効くの?」
「そうよ。……まあ、なんで効くのかはわからないんだけどね。私たちには妖精さんの加護が宿っているからとか、艦娘はもともと深海棲艦だったからとかいろいろな説があるらしいんだけど、どれが正しいかは知らないわ」
妖精さんの加護?艦娘は深海棲艦?……だめだ、まったくわからない。
「で、この武器で深海棲艦を倒せたり、艦娘とか深海棲艦の気配がわかるのってどういう原理なんだろう……」
「私にもよくわからないわ。深海棲艦の艤装を素材にした武器なんて、前例がないもの。……もしかしたら、深海棲艦は深海棲艦を傷つけることができるから、その素材で作った武器なら倒せる、って感じかもしれないわね」
「そういうものなのかな…。まあ、僕は別になんでもいいんだけど……」
先ほどの戦いではイ級の魚雷でイ級を撃沈することに成功した。ならば艦娘だけでなく深海棲艦も深海棲艦を倒すことができるのではないか、という考えらしい。正直本当にそうなのかなとは思ったが、深海棲艦倒せるなら別になんでもいいやと割り切ることにした。正直この世界の原理意味わからないし……。
「叢雲、全員揃ったにゃしー!」
「そう。じゃあ行きましょうか」
叢雲と議論している最中、睦月が僕たちを呼びに来た。なんでも緊急の連絡事項があるため、ここにいる全員を会議室に集めるよう睦月に指示していたとのことだ。
「緊急の連絡っていったい?」
「明日行う作戦についてよ。あんたもついて来なさい」
「あ、はい…」
「それじゃあ会議室にレッツゴー!」
睦月に先導され、会議室に向かう。僕まで呼び出すって、一体何について話すんだ…?
「お待たせ。集まってくれてありがとね」
会議室の中には霞に不知火、朝潮、そしてさっき顕現したばかりの暁が待機していた。
「それで、緊急の連絡とは?」
「敵襲ですか?私はいつでも戦えますよ!」
「朝潮、その通りよ。今日の昼ごろ、この鎮守府の工廠、建造ドッグがあるあたりにイ級が二隻現れたわ」
叢雲は僕と睦月が報告したことをみんなに伝えていく。みんな険しそうな顔をして聞いていた。
「あいつら、ここまで攻め込んで来るなんて調子に乗っているようね!」
「たかがイ級二隻なんて、舐められたものですね…」
「そろそろお灸をすえる必要がありますね…!」
「来たばっかりの鎮守府が深海棲艦に攻め込まれてたって、まずいんじゃないかしら…」
「ここに深海棲艦が現れた以上、制海権を奪還して安全を確保しなければならないわ。顕現して間もない睦月と暁、そして人間の学のためにもね。そこで明日の1000より、主力艦隊の掃討作戦を行うわ!」
1000ってなんだ?と思ったが、それを察したのか隣にいる睦月が「朝の10時のことだよ!」と小声で教えてくれた。一方で叢雲は会議室のホワイトボードを持ち出し、作戦の概要を説明していく。
「ここの主力艦隊は軽巡一隻、駆逐級数隻で構成されているわ。旗艦は軽巡ホ級、それに随伴の駆逐級たち。水雷戦隊崩れみたいなものね」
軽巡ホ級。僕がこの世界に来た時、イ級を引き連れて襲撃し、叢雲を大破に追いやった張本人。戦闘能力はこれまでに倒して来た駆逐級以上に高いという。
「しかしあの日以来、稀ではあるけれど重巡級以上の深海棲艦も目撃されているわ。もっとも、そいつらがここまで攻め込んで来たことはないけれど…。それを踏まえた上で、今回の作戦を発表するわ」
ホワイトボードに、作戦に関わる艦娘の名前が書き出されていく。まず発表されたのはここの防衛メンバーだった。
「まずはこの鎮守府の防衛。また建造ドックあたりから敵が来る可能性があるから、そいつらが来ないかを見張ってもらう役よ。これは朝潮、睦月、暁で担当してもらうわ。睦月と暁は戦闘経験が皆無だから、3人1組で行動しなさい。くれぐれも離れないように」
「わかりました。ここは守り抜いてみせます!」
「睦月に任せてー!」
「暁の出番ね!」
次に、主力艦隊の討伐メンバーが発表される。この主力艦隊を倒せば付近の深海棲艦への抑止力となり、制海権を握れるとのことだった。ここは戦闘経験が豊富な3人だろうと思って見ていたが…
「次に主力艦隊の掃討艦隊。これは戦闘経験および実績を十分に積んだメンバー+αで行うわ。私が旗艦、随伴は霞、不知火。そして…学、あんたよ」
なんと討伐メンバーの中に僕を入れて来たのだ。攻撃手段は得たといえ、一発でも砲弾を撃ち込まれれば死にかねない。僕としてもあの幽霊野郎に報復してやりたいとは思っていたが、危険過ぎないか…?当然、室内からは反対の声が上がる。
「あんた、何考えてるのよ!こいつを殺す気なの!?」
「駆逐級の深海棲艦を何度か撃沈したという実績があるのは不知火も知っています。ですが、軽巡を相手どるのは無謀では?」
「そうですよ!工藤さんが死んじゃいます!」
「いいえ、学は戦闘に出すつもりはないわ。やってもらうのは索敵よ」
「「「「「「えっ?」」」」」」
室内のみんなが困惑する中、叢雲は僕の剣を手にとってこう言った。
「学と睦月曰く、今日現れたイ級はほぼ学の力で撃退したらしいわ。一隻は相手の魚雷を命中させ、同士討ちという形で。そしてもう一隻は、このあびす…ああもう、よくわからない名前つけるわねほんと!この深海棲艦の艤装で作った剣で真っ二つにしたというのよ!」
「…変な名前ですみませんねほんと」
アビスブレードのネーミングはさておき、深海棲艦の艤装で武器を作ったこと。そしてその武器で深海棲艦を撃沈したということにみんなは驚きを隠せなかった。ざわめく室内の様子をものともせず、叢雲は説明を続ける。
「で、どういう理屈かは知らないけどこの武器には二つの力があるのよ。一つはさっきも言ったように深海棲艦にダメージを与える力。そしてもう一つは深海棲艦や艦娘の気配、そして考えていることを知る力よ。まあ、後者は私には使えなかったみたいだけど…」
両手で剣を握った時に見える艦娘や深海棲艦の気配、そして聞こえる声。睦月と叢雲にも試してもらったが、何も起こらなかったという。おそらく他の艦娘もできないだろうし、見えるのは僕だけだろう。
「それで、学には戦っている間に他の深海棲艦が近づいていないかを調べてもらいたいの。さっきも言ったけど、この辺りには重巡以上の深海棲艦が現れたケースもある。もし戦艦や空母が現れたら、今の私たちではほぼ確実に轟沈してしまうわ。それ、結構遠くの方の深海棲艦も察知できるのでしょう?」
「うん。正確な距離はわからないけど、割と察知できる範囲は広いと思う。ただ、具体的にどんな敵がいるのかまではわからないし艦娘と深海棲艦の区別もつかないけど…」
「最近この辺りを通る艦娘は私たち以外いないはずだし、それだけ索敵できれば十分よ。私たちがあんたを守るから、索敵に集中してこっちに近づいて来る気配があったらすぐに知らせてちょうだい。あと、余裕があったら駆逐級の掃除もお願いするわ」
叢雲の説明を聞き、みんなは納得した様子だった。それを確認した叢雲は解散の指示を出す。僕はすぐに部屋に戻り、準備をすることにした。
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アナタハコノ力ヲ何ニ使ウノ?
私タチノ無念ヲ…晴ラシテクレルノ?