絶対に死んではいけないACfa   作:2ndQB

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第19話

主人公視点

 

 

 

来た。フィオナちゃんとマーシュさん来たよコレ。

 

「お食事中失礼するよ! さて、ゼン君はどこかな~!!」

 

一体どうしたと言うんだ。

 

「サイレント・アバランチって超強いよね~」的な話や、アイラちゃんが俺の事を何か凄い奴だと勘違いしてたから、俺まず元々リンクスじゃ無かったからね! って事を話して盛り上がっていた矢先の出来事である。

今現在、この状況にふさわしい名言はこれ。『乱入して来るとは、とんでもない奴だ。』

 

「……申し訳ありません。一応、止めようと試みてはみたのですが…」

 

知ってた。

 

だってもう既に疲労困憊って顔してますし。というか声が聞こえてましたよ……

個人的にはマーシュさんの行動を止めるのって不可能だと思う。もう突発的に発生する自然災害と同じ様なものだと割り切ってあきらめた方がまだ―――って、んん?

 

「俺ならここだ。しかし…その荷物は一体何だ?」

 

マーシュさんが何やら細長い…白い包装紙にくるめられた筒? の様なものを抱えている。一方フィオナちゃんが持っているのは茶色の四角い箱。見た目は段ボールっぽい材質だ。

 

「これ? これが気になるのかい!?」

「あ、ああ…」

 

マーシュさんがもうね、すっごい笑顔なの。絶対何かが起こるじゃん。フィオナちゃんに助けを求める視線を送ると…見事に逸らされました。ハハッ!

それと周りを見てごらんよ

 

「え…あ、あれ本物…?」

「で、でも所属先はアスピナのはずじゃ」

「それにイェルネフェルト氏まで…」

「ゼンさんはあのお二方と知り合いなのか…? 一体何者―――」

 

皆この超展開についていけて無いから。あと、俺が更に凄い奴認定されかけてるんで。二人とも…と言うかマーシュさんにはもう少し落ち着いた行動をお願いしたい! はい無理ですね!!

 

「フフフ、これはねぇ…」

 

これは?

 

「君への贈り物さ!!」

 

ちょっとそれ不審物すぎやしませんか。だってついこの間まで、この世界において知り合いとか誰一人として居なかったんだよ? 一体どちら様からのお届け物なんですかね…テストは3点怪しさ満点とはまさにこの事。ま、まさかマーシュさんからの贈り物だったり―――

 

「ちなみに僕からじゃ無いよ! 少し残念だったかな?」

「…そうか」

 

超良かった。

言っちゃ何ですが、マーシュさんからのプレゼントとか絶対ヤバいよね。

小っちゃいソルディオス・オービットとかプレゼントされそうだし。でもそのマーシュさんからじゃないとすると、やはり

 

「差出人は?」

「そこが分からないんだよねぇ。何故かウチに送られて来てたんだ」

 

「ウチに、と言うと『アスピナ機関』にか」

「そうそう、不思議なことに。勝手に開けるのはマズイでしょ? そこで何と、僕に送り届けてくる様に指示があったのさ!」

 

やっぱり差出人は不明か…それにアスピナ機関って、どこに送ってんすか。

 

「わざわざアナタがここに来なくても、ラインアークに送りつける事は出来たのでは?」

「ん!? 君は?」

「ラインアーク守備部隊に所属している、エドガー・アルベルトという者です」

 

「ほほう。君が『あの』」

「……」

 

確かにエドガーさんの言う通り、わざわざマーシュさんが来なくても良かったんじゃないかな。だってここに来るまでに時間も掛かるだろうし。

 

「フフフ。エドガー君。こんなに楽しそうな…もとい、危なそうなモノを他人に任せてはおけないよ! きっと僕なら責任をもって無事送り届けてくれるだろうとの判断―――」

 

「先程、アスピナ機関から『マーシュの奴がそこに来ていないか』との連絡がありましたが?」

 

「判断だったんだよ!」

 

いや無理! 誤魔化しきれて無いですから! もうフィオナちゃんに裏取られちゃってますから! 途中から本音だだ洩れでしたし……つまりはアレね、中身が見たくてわざわざアスピナからこっちに来た訳ですよね。

 

「…開けるか」

「本当かい!?」

 

うおっまぶしっ! マーシュさんの笑顔が眩しいよ!

 

「ゼン、本当によろしいのですか?」

「ああ。問題ないだろう。それに」

 

うーん。大丈夫なんじゃ無いかな。今、こう言う事しそうな人(?)を思い出しましたし。

 

「隊長、あれって何ですかね?」

「想像がつかんな。しかし箱の方はあの大きさだ。大したものではないのかもしれん」

 

「お前、筒の方はどう思う?」

「兵器だったり…は無いか」

「マーシュ氏が片手で持っているところを見るに、軽そうではあるがな」

 

それにほら……ね?

 

「マーシュ以外にも中身が気になる者が多いみたいだしな」

「…の様ですね」

「そういう事だ。ではまずは、そちらの箱から見てみるとしようか」

 

そう言ってフィオナちゃんから箱を受け取る。触った感じは想像どうり、段ボールみたいな…まあ、問題は中身だ。さて一体何が入っているやら。本当、変な物じゃ無いと良いんだど。

そう祈りつつ、上部に貼らているテープをはがす。そして箱を開き中身を確認しようとすると

 

「何が入っているのかな!?」

 

マーシュさんが興奮して間に割って入ってきた。小さい頃、クリスマスプレゼントを貰った時の事を思い出す反応だ。いや、どんだけ見たいんすか。こっちまで興奮してくるんでヤメて下さい。

 

フィオナちゃんの方はどうかなー、と思ってチラッと見ると…箱を凝視していた。アンタも結局見たかったんかい。そんな俺の視線に気が付いたのか、ちょっと顔を赤くしてるし。

 

超かわE。

 

アナトリアの傭兵本当羨m(以下略  

……溜めるのはここまでにしようか。ではでは、開けーゴマッ!

 

 

「「「こ…これは!?」」」

 

 

そこに入っていたのは何と

 

「…何故、これが」

 

沢山の立体パズル。…これ、俺の部屋にあった奴じゃね? 正式名称はキャ〇トパズル。全国のおもちゃ屋さんに置いてあるであろう『知恵の輪』をモチーフとした金属製の立体パズルだ。

 

一見、その洗練された形状は只のオブジェにすら見える。だがそれは知恵の輪同様に分解・組立が出来、更に遊んだ後には飾って見て楽しむ事も可能と言う優れものなのだッ!! でも何でここに…って送り主もう確定ですよね。絶対あの人だよ

 

人じゃないけど、『神』だけど。

 

「…ゼン、これが何だか知っているのか?」

 

エドガーさんが質問が飛んでくる。何って答えよう…この世界に知恵の輪ってあるの? というかあったとしてもコレもはや『輪』じゃないし。ええと…

 

「これは、そうだな…知能指数を測る道具だ」

「え…これが、ですか?」

 

するとアイラちゃんが一つ、箱の中から金属製のそれを手に取る。裏や表をまじまじと観察し、カチャカチャと動かす…が

 

「…? 私にはただの金属製の立体物にしか見えないですけど…」

 

何も起こらない。…ああーそうか、まずは『バラす事が出来る』ってのを知らないと難しいかもね。どれ、ここは私が一つ

 

「貸してみろ」

「え…ああ、はい。どうぞ」

 

確かここをこうして、こうすると――

 

 

―――カチャリ。

 

 

「どうだ」

「えっ…外れた!?」

 

「そうだ、一見そうは見えなくとも、これらは全て分解・組立する事が出来r」

「かっ、貸して!! へぇ~、これは中々…」

 

おおっとー! 

 

箱を開けてからというもの、一切喋る事なく黙り込んでいたマーシュさんが飛びついたァ!! この人本当楽しそう!

マーシュさんが飛びついたのを皮切りに、食堂内の人たちがぞろぞろと箱の中へと手を伸ばす。

きっと珍しいんだろうなー。

 

「くっ…これ絶対ハズれねぇって!」

「いや、そこを回せば何とか」

 

「最初から動かせる要素0なんですけど…」

「内部構造を想像しろ、と言う訳か。しかし――」

 

「ふぬぬ…!!」

「よせアイラ、力で解決して何になる」

「じゃあ隊長がやって見せて下さいよー」

「…良いだろう。渡してみろ」

 

おおー。リアクションを見る限り結構好評な感じ? 良かったよかった。中身を見た時は正直、皆の期待を裏切ってしまったかとも思ったけどそんな事は無かったみたいだな。

だってほら、マーシュさんに至っては

 

「そこの君! これと交換してくれるかい!?」

「あ…どうぞ」

「これは…こうか。そして戻す時は…こう」

 

「よし! はい返すよ。貸してくれてありがとう!」

「…え、いぇ…」

 

パズルを外し、組み立てるだけの機械になりつつあるし。何だアレ凄すぎるんですけど。あんな速度で構造が把握出来るもんなの? 周りの人ちょっと引いちゃってるじゃん。

〝アブ・マーシュ〟…やはり天災…あ、いや天才か。

 

そうやって皆が暫くパズルと格闘して一段落ついた後、フィオナちゃんがとある質問をして来た。

 

「ゼン、貴方は昔からこの様な物を?」

「昔から…? ああ、まあそうだな。子供の頃からこれと似たものを使用していた」

 

「…へぇ」

「……」

 

エドガーさんやマーシュさんもその話を聞いていたらしく、何とも言えない反応を示している。

…別に良いじゃん、こういうので遊んでも!

 

小さい頃からパズルとか知恵の輪とか好きだったんですよ。こんなのばっかりしていたせいで小学生の頃は「暗い奴」呼ばわりされてましたけど!?

いかんな、この状況…過去と同じく『暗い奴』のレッテルが貼られてしまうぞ! 早急に解決策を――

 

「ゼン君、もう一つの筒の方も見てみないかい?」

 

ッシャア!!

 

マーシュさんナイスフォロー! 多分、と言うか確実に欲望のままに口から出た発言だろうけど。助かった事には変わりないし…サンキューマッシュ。

 

「そうだな。では、そちらの方も確認するとしようか」

 

脳内であの、V系AC特有の「ピコンピコン!!」って喜びのブザー連打をしつつ、マーシュさんからその筒を受け取る。…おお、これは中々に

 

「結構、大きいですね」

 

うむ、アイラちゃんの感想通り結構大なきさだ。目測だと1M以上はありそうだけど。またしても中身が何なのか想像がつかないね…とりあえずは白い包装紙を筒から取ってみるかな。

 

巻かれていた紙を徐々に外していく。マーシュさんは相変わらずだけど、それ以外の視線もひしひしと感じる。…無駄に緊張する作業だわ、これ。

そしてその包装紙が全て取られた後、その物体を観察すると…一つとある事に気が付いた。

 

「…これ、『筒』じゃあないね」

 

そう、中身は筒では無く『筒状に丸められた何か』だった。…何じゃこりゃ。

 

「広げてみては如何でしょう?」

「おや、その様子からするにフィオナちゃんはこれが『何か』見当がついてるみたいだけど」

 

「…それは貴方もでしょう」

「ウフフ…まあ、ねぇ?」

 

いやいや全然分かんないよ! 見当がついているのはアナタ方2人だけ…かと思ったらエドガーさんや他何人かも、何やら頷いているし。すみません…欠片も予測出来なくてすみましぇん…

 

「皆、少しトレイをどけてスペースを作るぞ」

「「了解」」

 

エドガーさんの指示により、ガチャガチャとトレイを動かす皆さん。そして机の上には広いスペースが出来る。皆様ご協力感謝致します。

 

さて、準備は万端ですな…それじゃあお待ちかね。

 

 

「広げるぞ」

 

 

少しばかり胸を高鳴らせつつ、丸められたそれを机の上へと広げていく。そしてついには広げ終わり、その『筒だった物』の全貌が明らかになった…と、同時。

 

どよめきが起こった。

 

俺はその中には居ない。何故ならちょっとビックリしすぎて声を出すのも忘れてしまっていたから。 いやー、一つ目の箱の中身が私物だっただけに、もう一つの荷物もそういう類の物だと思っていたんだけど…これは凄いわ。

 

「おおお、これが…」

「これ程近くで拝む事が出来るとはな」

 

はっはっは、マジか―。これアレだよね。俗にいう―――

 

 

「た、隊長。こ、これって『エンブレム』ですよね?」

「…どうやらその様だな」

 

やっぱりそうだよね。これは機体エンブレムに間違い無いわ。しっかし、こんな物まで用意してくるなんて『神様』もやってくれる…

 

自慢じゃ無いけど俺のエンブレム作成技術は下の下レベルだ。過去の『ドット打ち』は言うまでもく『複数のレイヤーを組み合わせる』事で、誰でも簡単に出来が良いのが作れる様になった今ですら、見るに堪えない程の物が完成する。

 

見栄えのするオリジナルエンブレムなんて夢のまた夢だったというのに、まさかこんな形でそれが叶うなんて…エンブレム作れなくて良かった…ッ!

しかし嬉しい事には嬉しいんだけど、このエンブレムは―――

 

「…不気味、だねぇ」

 

その通り、描かれていたのは何とも不気味な絵だった。

 

―――まず最初に目に飛び込むのは『鉄格子』だ。所々が錆びついた様に茶色く変色している事から、何やらそれが長い間使用されてきた物だと想像させられる。

そして奥の方には灰色の壁が…何だろうか、状況的には牢屋、いや檻? を真正面から覗いているのか?

 

だが、それが只の檻では無い事は目に見えて明らかだ。何故ならその中には…黒いシルエットでしか確認出来ないが、『鎖に繋がれた何か』がうずくまっていたのだ。形状から見るに人間では無いだろう。だが…既知の生物に当てはめる事も出来ない、正に『異形』とも言うべき何かだ。

 

唯一そのシルエットから分かるのは、その生物が〝鋭く長い爪〟と〝尻尾〟を持っている、位のものだ。

 

そしてエンブレムの右上…つまりは描かれた鉄格子の右上付近には白いネームプレートらしき物が掛けられており、こう書かれていた―――

 

―――――――――――――――『Name Less』――――――――――――――――

 

……。

 

「ネームレスって…」

「あ…」

「…ゼンさんの」

 

……ちょ、ちょっと強そうすぎやしませんかこのエンブレム!?

 

神様これはやりすぎだって! もうそのあまりの迫力に皆さん言葉を失ってますよ…まあ、うん。正直俺もちゃんと見るまではここまでの出来だとは思ってなかったし。そうなるのも仕方ない…だけどこの絵、ある曲を連想させるな。あのノリノリの曲を。

 

「『名前の無い怪物』」

「……、ゼン?」

 

確か、歌詞はどんなんだったっけな。

 

「『黒い鉄格子のなかで私は生まれてきた』」

「おい、ゼ―――」

 

次は何だっけ? くっそ、思い出せない……サビの部分なのに。結構好きな曲だったんだけどなー。……ああー、しかもこのタイミングで片頭痛がッ! 痛い、右側頭部が痛い!

でもやれる。頑張れ俺! もうそこまで出かかっているぞ!

 

「……」

 

「―――!」

「―――?―――ッ!」

「…ン…オ」

 

でももう

 

「……痛……ッ!」

 

無理ィ! あったま痛い―――って、うおっ!!

 

「ぉぃ…オイ! ゼン!!」

「ゼン君!」

「ゼンさん!?」

 

「あ、ああ、何だ」

 

凄く大きな声で皆に名前を呼ばれている。全然気が付かなかった…あの、別に無視していた訳では無いんです。ただちょっと、頭痛と戦いつつ物事を思い出すのには多大な集中力が必要な訳でして…つまり何が言いたいかというとですね。

 

「…すまない」

「いや、気にする必要は無い。しかしゼン…お前さん、大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だ。少し、昔の事を思い出していてな…」

「………」

 

エドガーさんに心配されてしまった。…違うな、皆が心配そうな目でこっちの事を見てる。多分片手で頭を押さえてるからかな? 何と心優しい人達なんだ。あの普段はニコニコ顔のマーシュさんでさえ真剣な表情になっている。

 

「…ゼン、もう昼休憩も終わります。貴方は一足先に自室へと戻り、休息を取った方が良いかと」

「そうか…そうだな。そうさせてもらおう」

 

これじゃ、そのまま居ても皆に心配かけるだけだ。フィオナちゃんの言う通り今日はもうゆっくり休んだ方が良いな。

 

「荷物の方は後で僕が運んでおくよ。今はゆっくりお休み」

 

有難うマーシュさん! やっぱり良い人だよな…変わり者だけど。

 

席を立つ。

 

そして去り際、MT部隊やノーマル部隊の方々からも色々とエールを貰った。アイラちゃんからは、「ま、また一緒にご飯食べましょうね!」という何とも可愛らしい別れの挨拶を…じいちゃん、俺感動してるよ。こんなに沢山の人達から心配される日が来るなんて。

 

皆、絶対良くなるから。良くなって帰ってくるから…!そしたらまた一緒にお昼ご飯食べようね!

 

 

…まあ、只の頭痛なんですけど。

 

 




古王さんの犯罪係数はやばい(確信)

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