絶対に死んではいけないACfa   作:2ndQB

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吹いている、確実に…ッ! 主からのバレンタインプレゼントをどうぞ。




第24話

主人公視点

 

 

 

ステイシス戦から数日が経ったある日、エドガーさんから昼食に誘われたので食堂へと向かうと

 

「ゼンさん」

「「あれは一体!」」

「「「どう言う事なんですか!!」」」

 

扉を開くなりエドガーさん率いるMT部隊の皆さんに取り囲まれた。

 

おおー凄い、このシチュエーション。まるで俺が夢にまで見た『美少女に取り囲まれる主人公』みたいな場面ではないか!困ったことに実際は、俺を囲んでいるのはアイラちゃんを除いて屈強な男性ばっかりなんですがね……字面だけ見たら完璧に騙されるな。

 

つまり、おしょんしょんをチビリそうと言う事。スミカ・ユーティライネンです(´・ω・`)ノシ

 

「それは此方が聞きたい。返すようで悪いが、これは一体何の騒ぎだ」

 

質問に質問で返したらドえらい事になりそうですが、本当にどうしたんですかね。

他のMT部隊やノーマル部隊の方々もそれぞれが何やら話し込んでいるけども――――机に座っているマーシュさんの周りでね!

 

何だ何だ。マーシュさんは机に置かれた……ノートパソコン?を眺めてニヤニヤしてるし。エドガーさんも色んな人達に質問責めに遭っているし。

 

「ああ、ゼン君!よく来たねぇ」

「おいおい、どうしたんだ。何故こんな事になている」

 

「これを見てごらんよ!」

 

首をクイッっと動かしてパソコンを見るように促すマーシュさん。この騒ぎの原因はパソコンなの?とにかくマーシュさんの席の近くに移動してみないとな。

 

「お、どけどけ!ゼンさんが通るぞ!」

 

MT部隊の方の内一人がそんな事を言うと、マーシュさんを囲んでいた人垣が割れる。

や、やめたげてよぉ!俺をヤクザの親分みたいに仕立て上げるのはやめたげてよぉ!

失礼ですが、見た目的にはあなた達の方がヤクザに近いからね?いかん、突き刺さる視線が「兄ちゃん、ショバ代持ってきた?」って視線に思えてきた……

 

そんな恐ろしい体験をして何とかマーシュさんの元へと到達。そしてパソコンの画面を覗き込むと……んん?これは

 

「『フリードマン・レイ』?」

 

「このサイトを経営している彼は軍事専門のフリージャーナリストでね。企業関係はもちろん、反体制勢力や、驚くべき事に一部のリンクス個人にもパイプを持っている」

「で、それを利用して日々各地の戦場で起こった出来事を記事としてまとめているんだけど……何と、今回は君の記事なんだ!」

 

本当ですか。

 

ついに町内のカルチャークリーナー(※慈善清掃員)と呼ばれた俺も世界デビューを飾る日が来たのか……感慨深いな。元の世界に戻ったら、家族に「俺、新聞的な何かに乗った事あるんだぜ」って伝えなきゃ!えーと、何々…

 

――――――――約2週間ほど前、『ネームレス』というネクスト機と共に新たなリンクスがカラードに登録された。近年リンクスは増加の一途をたどっている為、普段ならさして注目する事も無いのだが……面白い事に、このリンクスの所属はあの『ラインアーク』なのだ。

 

地上最大の反体制勢力『ラインアーク』。そこに所属しており、一説では「現最強なのでは?」とまことしやかに噂されているネクスト機、【ホワイト・グリント】の事は誰もが知っているであろうが――――(中略)――――私は密かにこのリンクスについて注目していた。

 

そしてつい先日、私は独自の情報網からこのリンクスに関する衝撃的な情報を入手する事に成功した。何とこのリンクス、カラードランク1に君臨するネクスト機【ステイシス】を退けたとの話なのだ。

 

数日前、旧チャイニーズ上海海域にて小規模な戦闘が起こった。何でもGA社のアームズフォート部隊が停泊していた最中、その『ランク1』に急襲されたらしい。しかし最悪の事態を想定し、ネームレスを護衛として雇っていたGA社は――――――――

 

 

……うん、後は良いかな。何かメッチャ持ち上げられてたし。「この様な実力の高いリンクスが今まで一体どこに隠れていたのだろうか?」とか書かれてたけど、あれ別に俺が退けた訳じゃないんで。

 

向こうさんがトラブルで引き下がっただけだから。

 

「そ、それでゼンさん!これは事実なんですか!?」

「「「どうなんですか!?」」」

 

凄い一体感を感じる……今までにもあった一体感を。

勘違い…なんだろう吹いてきている確実に、着実に、俺の方へ。

中途半端(な弁明)はやめよう、とにかく最後までやってやろうzy(以下略

 

あ~……あのですね、期待を裏切るようで悪いですが

 

「それは―――――」

「真実だ」

 

ちょ、エドガーさん何という事を!皆さん「おおお……!」って目をキラキラ輝かせているではありませんか!ま、まさか工作員の邪魔が入るとは…!

 

「ゥワァオ!オッツダルヴァ君をやっつけるなんて、僕はビックリさ!」

 

マーシュさんが手を広げて後ろに仰け反るというオーバーリアクションを取っている。あなたそんなアメリカンな口調でしたっけ?すっごい楽しそうにしてるんですけど……うわ、嫌な予感がするな。さっきから腕時計をチラチラ見てるし。

 

「俺たち凄い人と一緒に居るんだな…」

「ああ…今度休みもらったら知り合いに自慢しよう」

「ゼ、ゼンさんってやっぱり凄い人だったんですね!私…私、光栄に思います!」

 

「ランク1を退ける、か」

「ラインアークにもとんだ大物が入ってきたものだ…」

 

「もう少し…もう少し。あと2分…いや1分位かな?ウフフ……」

「………」

 

勘違いを解くタイミングを完全に逃した……いや、今はそれどころでは無い。

それよりも、問題はさっきからマーシュさんが何かブツブツ呟いてる事だ。その不穏な空気にエドガーさんも気が付いているらしく、黙って俺に顔を向けてくるし。

 

あの……俺も何も知らないので。不安なのは俺も一緒なので。だからそんな険しい顔してコッチを見ないで下さい。すっごく怖いから。

 

 

「失礼します」

 

 

二人で不安に駆られる中、扉から一人の人物が箱の乗った手押し台車を押して入って来た。金色の髪に青い瞳の美人さんだ。その人物を確認するやいなや、ブツブツと呟いていたマーシュさんは凄い勢いで席を立つ……ビックリさせないで!

 

「フィオナちゃん、待っていたよ!」

 

その様子はさながら恋人を待っていた男性を彷彿とさせる。でも

 

「その『荷物』を!」

 

マーシュさんに限ってそれは無いですよねー。フィオナちゃんには『彼』が居ますし分かってはいたけども……そうか。荷物を待っていたからソワソワしていたのか。

気持ちは良く分かる。注文した品がAmaz〇nから届くときはワクワクするよね!

 

「貴方の荷物ではありません。と、言うよりそもそも何故貴方がこの荷物について知っているのです?一切情報は知らせて―――――」

 

「凄く大きいね!」

 

アンタのじゃ無いのかい。しかも安定のフィオナちゃんの話をスルーしてるし。

もう新たにフィオキャン(フィオナちゃんの言葉をキャンセル!)と言う言葉を作ろう(提案)。それにしても良く人の荷物でそこまで楽しみにでき……

 

「ゼン君!開けてみよう!」

 

………ん!?

 

「俺宛ての荷物なのか?」

「ええ、相変わらず差出人は不明ですが。宛先は貴方となっています」

 

俺は手押し台車に近づき、それに乗っかっている箱を観察する……うーん。この前フィオナちゃんが手に持ってた奴とは大分大きさが違うな。これは一辺70~80cmはあるぞ。材質は相も変わらず段ボールっぽい……しかし特大サイズだな、こりゃ。

 

「その、中で何かが蠢いているかの様な感じがしましたが」

「む…そうか」

 

中で動いていたって事は、やっぱり今回の贈り物は『生き物』なのかな…この前神様がペットをプレゼントするって言ってたし。部屋で過ごす割合が多い俺としては大いに歓迎したいところだ。寂しさを紛らわせる事が出来るからね!

 

「う、動いたの!?ゼン君、早く出してあげないと!生き物だったとしたら何時までも箱の中に閉じ込めておくのはカワイソウだよ!」

 

マーシュさんが凄く真面目な事言ってる!確かに…箱の大きさや、外から動いた事が分かることから推測するに、中に入っている生き物は結構大きいのかもしれない。

 

「生き物か、何だと思う」

「犬か何かじゃないか…?いやしかし、送られて来たんだぞ。その間食糧等は持つのか?」

「確かにな…」

「となると相当腹が減っている可能性も―――」

 

俺と同じく箱に引き寄せられた皆さんがあれやこれやと意見交換をしている。ううむ、彼らの言う通り食べ物とか持たないんじゃ…しかし神様の事だからその辺は配慮しているのか? 

 

とにかく、中身を見ない事には始まらないな。

 

 

「開くぞ」

 

 

前回同様、沢山の視線を集めつつ箱の上部に貼られたテープを剥がしていく……うわっ今箱がモゾッとしたぞ!それを気にしつつテープをどんどん剥がす…すると剥がせば剥がすほどその箱の揺れが大きなものになっていく。

 

怖いッス。もう文字に表すと「モゾモゾモゾモゾッ!!」って感じ。

 

「………?」

 

しかしテープを全て剥がし終えると奇妙な事にその揺れがピタリと止んだ。

な、なんだ、どうしてイキナリ動かなくなったんだ?俺は箱から目を離しぐるりと周りを見渡す…皆さん緊張した面持ちだ。マーシュさんはどちらかと言うと興奮しているみたいだけど。

 

……ゴクリ。

 

唾を飲み込み、中身を確認するべく、意を決して箱へと手を伸ばそうとした―――その時。

 

 

――――――ボンッ!!

 

 

何と、その『中身』がビックリ箱よろしく突然箱から飛び出してきた!

 

「キャ…!」

 

「うおお!?」

「何だ!」

「おわっ!!」

 

アイラちゃんの可愛らしい悲鳴……は男性陣の野太い声にかき消される。一番近くで被害に遭った俺も当然悲鳴を上げたけども、この分じゃ多分気が付かれては無い……と思いたい!

 

それにしても全然見えなかったぞ!何だ、一体どこに―――

 

「ゼン、上だッ!」

 

エドガーさんの声。上…上だって?と、言う事は鳥類なのか?個人的な推測ではACという関係性から「鴉」を連想するけど。いや、今どうこう考えても仕方がないな。ここはとにかく、エドガーさんの指示に従うべきだ。

 

俺はどういった生き物なのかを確認するべく、即座に顔を上へと向けた。

 

するとそこに居た、いや『飛んで』いたソイツは

 

 

 

「なッ…にィ…!?」

 

 

 

『鳥類』では無かった。

 

生物的にどう言った分類に当てはまるのか分からない生物が、そこには居た。

ソイツの形状を極単純に言うのなら『羽の生えたノミ』だ。だがその羽は鳥類と言うよりかは『昆虫』、例えるならカブトムシやテントウムシの様な形状をしている。

 

大きさはざっと見た限りではボーリング玉程度か。足は紫色の前足(触手か?)のみが6本生えており、眼と思わしき物はそれと同じく6つ。そして体表は緑色…おいおいおい!

 

「ゼ、ゼゼゼ、ゼンさん!?あ、あああれは」

「お、俺たちひょっとしてマズイんじゃ…」

「面妖な…」

「NICE JOKE.」

 

「なッ、これは一体」

「す、凄い!凄いよゼン君!あれは一体何だい!?」

 

 

ちょッ!マッ……ジかよ、これっ!

 

 

「いかん、そいつには手を出すなッ!!」

「全員、一旦後ろに下がれッ!」

 

 

俺がそう言うのとほぼ同時にエドガーさんはこの場に居た者全員に指示を出した。それを聞くやいなや、固まっていた人や驚いていた人、誰しもが例外なく皆一斉にその生き物から距離を取る……当然俺もその場から限りなく遠くに離れる事にしました!

 

そして皆が後ろの壁ギリギリまで退避し終えたのを確認したエドガーさんは、俺へと質問を飛ばしてきた。

 

「ゼン、お前さんがあそこまで狼狽えたんだ。当然アレに関わるとただ事では済まないのだろう……一体、奴は何なんだ?」

 

ブゥゥゥ……と言った羽音を出し、空中に停滞している『奴』ですか?あれは

 

 

 

「『AMIDA』だ」

 

 

 

あの姿…間違いない。

 

「『AMIDA』?あんな生物は見た事が無いぞ…そいつは何か良くない事を引き起こすのか?」

 

…うん、良くないって言うか、アレ

 

「奴は『爆発』する」

「なッ……」

 

「ばっばばば爆発って!ゼンさん、あの『変なの』爆発するんですか!?」

「爆発するのかい!?す、凄い!どう言った原理なのか是非とも僕に聞かせて―――」

「マーシュさん、貴方は危機感と言うものを持ち合わせていないのですか?」

 

「爆発だと…」

「一体どれほどの威力なんだ」

「もうここで終わりか…」

 

俺の「爆発する」宣言を聞いた食堂内の皆さんが更に騒ぎ出す。俺も騒ぎ出したいです。

ヤバいな、ここに来てからネクスト戦とか色々あったけど今日が一番危機感を感じている。だってよぉ!アレ、爆発だけに留まらず『酸』とか吐いてくるんだぜ!しかもACが溶けるレベルの。人間にかかったら絶対只じゃ済まないぞ!

 

ま、待て俺。冷静になれ…あれは神様からの贈り物だ。俺達に危害を加える可能性は低いんじゃないか?それによくよく見てみれば…

 

「アレは本来2~3m程の大きさのハズ…奴はかなり小型だ。もしやすると害は無いのやも知れん」

「2、3mだと?本来はかなりの大きさなのか…確かに、話を聞く限りではアレは大分小さいな」

 

サイズ比的には1/10以下になっているんじゃ無かろうか?だけどそれでもボーリング玉大だしな…

 

「僕、ここに逃げて来る時に手押し台車も一緒に押して来たんだけど…もしかしたらAMIDAちゃんの入ってた箱にはもっと何か入ってるんじゃないかな?」

 

マーシュさんすげぇ。俺なんか手押し台車の存在なんかすっかり忘れて逃亡して来たのに、何という冷静さだ。でも俺は聞き逃さなかったよ、マーシュさんがAMIDAに『ちゃん』付けをしているのを。もしかしてアレを気に入りました?

 

「よいしょ…」

 

マーシュさんがごそごそと箱の中身を調べ始める。

 

その間俺たちは空飛ぶAMIDAとにらめっこだ。こっちに来ませんようにと祈りながら。

だって見た目が怖すぎるんです。どんな生物か知らない人は『アーマードコア  AMIDA』で検索検索ゥ♪

 

「あっ!あったった!『説明書』が!」

 

俺達の祈りが通じたのか、マーシュさんが説明書を見つけるまでAMIDAは空中に静止したまま一切動くことは無かった。いやー良かった良かっt…『説明書』!?

そんな、電化製品か何かじゃないんだから…あるならあるで助かりますけども。

 

「読んでみるよ。えー何々……『名称〝AMIDA〟。全高2m強を誇る生体兵器。攻撃対象に近づくと自爆し、酸をまき散らす。ただしこの個体は自爆機能と言った攻撃特性は一切持ち合わせておらず、体も極端に小さい。その代わりとでも言うのか、人間の言葉を解する程に知能が発達しており、研究対象としては非常に興味深い存在である。』」

 

「『性格は穏やかで、場の空気が読める。ただし繊細で傷つきやすい為この個体の扱いには細心の注意を払う必要がある。優しくされると喜ぶ。雑食で、1回の食事で軽く1ヶ月は活動可能。性別はメス。好みのタイプは優しくて強い人。』だって」

 

凄っ!AMIDA超凄いんですけど!

 

繊細で傷つきやすいとか乙女かよ。いや、性別的にはメスなんだけど…てか好みのタイプとか、もう突っ込みどころ多すぎィ!

ま、まあとにかく、AMIDA…AMIDAさんは空気が読めるって点は大いに理解出来た。だって俺達に一切近づいて来ないし。多分自分が怖がられている事を把握してるんだろう。

 

「ゼン君、話しかけてみよう。彼女は言葉が分かるらしいしさ!何なら僕が――――」

「いや、俺がいこう」

 

「ゼン君……分かった。ここは君にまかせるよ」

 

マーシュさんが話しかけるとか、不安要素が大きすぎますぁ!って事で俺が…よ、よし!

 

「おい、そこのお前」

「……、……」

 

ねぇ、これAMIDAさんに通じてるの?周りから見たら、俺頭がおかしな人みたいになってるんじゃない?そう不安になり後ろを振り向く……すると、皆が無言で頷く。

 

どうやら幸いなことにそんな事は思われて無さそうだ。けど「世界の命運はお前に係っているぞ!」みたいな空気がすごい。なんだ、何なんだ。俺はどうしてAMIDAさんを相手に緊張感溢れる交渉を繰り広げているんだ。

 

でもAMIDAさんは反応しないし…あれか、俺達の態度がお気に召さないのか?

確か繊細で傷つきやすいらしいからな。ここは一つ謝罪するべきなんだろうか。

 

「先程の非礼を詫びよう、AMIDA。我々も君の様な存在には慣れなくてな…つい『酷い』態度を取ってしまった。女性に取るべき行動では無かったな」

 

「……!ア、アミーダ……」

 

!?

 

「しゃ、喋った…!ゼンさん、今アミーダって喋りましたよ!」

「何と…!」

「さすがはランク1を退けた男だ。我々とは違うな」

「うむ……」

 

「エドガー君、今僕は感動しているよ。ゼン君は僕を危険な目に遭わせない為に自ら…」

「……そうですか」

「いえ、あれは恐らく貴方に任せると危険との判断だったのでは?」

 

外野が騒がしいけど、俺は今それどころでは無い。いかにしてAMIDAさんを畳み掛けるかを必死で考えているからだ。

喋ったと言う事は俺の『謝る』と言う判断に誤りは無かったはず。だがこの後は一体どうすれば良い?確か「優しくされると喜ぶ」だったか…しかしこのまま話しかけるだけでは決定力に欠けるな。

 

 

――――アレを使うか。万国共通、皆がハッピーになるアレを。

 

 

俺は皆の元を離れAMIDAさんへと歩を進める。

 

「ゼンさん!?」

「アイラちゃん落ち着いて、きっと彼には何か考えがあるんだ。見守ってあげよう」

 

そう、俺にはまだアレがある…!ファンタズマじゃ無いよ。

 

AMIDAさんは俺が近づくにつれて徐々にその高度を下げ…そこにたどり着くまでには飛ぶ高さが俺の胸のあたりにまでなっていた。

 

ち、近くで見るとますます怖ぇえー!

 

脳内俺の一人が『作戦放棄を提案します!』って凄く語りかけてくる。いや、でももうここまで来ちゃってるんだぜ?今更諦めるなんて…でも確かにこれは危険だよな。自爆は無しと言っても、腕を噛まれたりでもしたら…

 

『作戦、続行する』

 

お、お前は、脳内俺2!

 

『敵も無反応では無い、君ならやれる。幸運を』

 

クッソ、何か腹立つ言い回しだが通りだ…そうこれはチャンスなんだッ!

 

そこで俺は勇気を振り絞り、一気にAMIDAさんへと手を伸ばすと――――

 

――――ギュムッ

 

「アミッ!?」

 

ハグをした。……これは意外に軽い!

 

「なッゼンさん!羨ま――――じゃない、何してるんですか!」

 

アイラちゃんから激が飛ぶ!いやね、これは所謂AMIDAさんと仲直りをする為の行動なんだ。ハグされると皆ハッピーになるって言うでしょ?昔ドラ〇もんの歌にもあったじゃん。

 

ほら、AMIDAさんもこの表情ですよ。

 

「アミ…アミダー…」

 

いや顔は分かんないけど、何となくリラックスしてるっぽい。

 

「どうだ、これで先程の出来事は水に流してはくれまいか?」

 

そう聞くと、AMIDAさんは俺の腕の中から這い出し地面にポトリと落ちる。ちなみに触った感触は、ゴムみたいなぷにぷにした感じでした。正直ヌメヌメしてると思っただけにかなり意外だった。

 

「アミッ!アミーダッ!」

 

おおーピョンピョン飛び跳ねてる。これは仲直り成功と取ってもよろしいか。しかしこの姿をみると自爆しないか不安に駆られるな!

 

その姿を見て少しは安心したらしく、遠くから様子を伺っていた皆さんも恐る恐るこちらへと歩み寄ってきた。あ、マーシュさんはダッシュです。ハイ。

 

「ゼン君お疲れ様。君ならやれると信じていたよ!あ、AMIDAちゃん、ちょっと君の体を触ってみても良いかい?」

「アミー…」

 

「ん?あまり気乗りしない?しかし僕としても君みたいな存在を見るのは初めての事でね。一技術者として非常に興味があるんだ。そこを何とか頼めないかな?」

「アミミ?」

「うん、ベタベタ触ったりはしないよ。僕は美人さんに嫌な思いをさせたくは無いからねぇ」

 

「アミーダ!アミアミ!」

「フフフ、何を言ってるんだい。僕は本当の事を言ったまでだよ。しかし君は本当に頭が良いねぇ。どこかで僕たちの言葉について――――」

 

何だこの人。

 

ジェスチャーとかで判断するんじゃ無くて、もう普通に会話が成立してるんですけど。

完全にAMIDA語を理解しているよねこれ。何?もしかして、そう言う言語があるの?どこかで習えるの?つくづく思うんだけど、マーシュさんって一体何者なんだ…

 

ふぃ~、まあとにかくAMIDA騒動は一件落着か。お腹もすいたし、お昼ご飯食べよう。

 

 

 

 


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