絶対に死んではいけないACfa   作:2ndQB

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第32話

主人公視点

 

 

出た。

 

《ハアッ……ハアァッ!!全、く……!付き合って……ハァ…………られんな……ッ!》

 

とびきり、ヤバイのが。

 

《『銀色』……!》

《ゴホッ、ゴホッ……ふー、また……会ったな?》

 

逃げ込んだスカートアーマー内には、AF輸送部隊の方から話を聞いた通り、ワンダフルボディが待機していた。カーネルさんお久しぶりです。中身の俺が今にも死にそうなんで、まともな挨拶も出来ずに申し訳ない。

 

《……ゼン。やはり、あれは》

《そ、う……だな。奴は、間違いなく―――》

 

ああ……正直この任務聞いた時から、エドガーさんと二人して話をしてたんだよね。

 

嫌な予感がするってさ。

 

 

 

 

*********************

 

 

 

一週間程前。

 

 

 

あのシミュレーションからどれ位の日数が経過しただろう。

 

ネームレスの武装を未だに紛失している俺は依頼も受諾出来ず、お部屋の中でAMIDAさんと一緒に知恵の輪解体ショーに勤しんでいた。カチャカチャとした金属音が静かな室内に響く……

 

「……」

「アミ……」

 

……お、俺は、俺は……ぉ俺はあああああああ!!!

 

「……フンッッ!!」

 

バキッ。

 

「アミ!?」

 

ハッ!? し、しまった!一体何をしているんだ!余りに力み過ぎて、知恵の輪の一つが壊れてしまったではないか……あれ?でもこれって、力を入れても壊れない様になっているんじゃ……

まあ、きっと偶然力の入った位置が良かったんだろう。スプーン曲げみたいな?

 

……俺は本当にこんな事をしていて大丈夫なのかな。あのギアトンネルの時、スプリットムーンにライフルを斬られたのがここまで響くなんて……はぁ。追い出されたらどうしよう!!ねぇどうする!?

 

「……」

 

それに良く良く考えて、マーシュさんにも迷惑かけてない?『武装』の件について言い出したのは、あの人からだけど……

 

シミュレーションが終った後に一瞬意識が無くなりかけて、転びそうになった。

それを心配したマーシュさんが、たった一回しか戦って無い俺に、部屋で休む様に言ってくれたんだ……マーシュさんにあるまじき、『本気』での注意だったよななぁ。

 

思うに、あれ絶体身体(脳)に負担が掛かった結果なんだと思う。シミュレーション内、しかも三分とは程遠い時間で……はっは。こっちでやったら、下手しなくても死んじゃうんじゃない?

 

「……?」

 

そこでノック音。どうやら誰かが部屋を訪ねて来たらしい……何奴!

 

「ゼン、入るぞ」

 

あっエドガーさんですね。もう幾らでも入って来て結構です。

最近は『武装』の件で奔走しているのか、マーシュさんも中々顔を見せなくなってしまったので寂しかったんですよ。もうAMIDAさんが居なかったら余りの寂しさに精神ヤミヤミって感じ。

 

そして部屋に入って来たエドガーさんは、何やらニヤリとした表情である……こ、これは。

 

「ゼン。朗報だ……予定では、あと一週間以内には武装が到着するらしいぞ」

「!」

「そして、お前さんに『依頼』だ」

 

来たコレェ!!

 

長かったぞ!!日数的には『そこまで』では無いにしろ、精神的には一年位待たされた気分だ!

この間なんかストレイドが色々活躍してるって噂も流れて来てたし。肩身が狭い日々だったでござるよ……

 

「ついに届くか。アブ・マーシュには礼を言わなければな……それで、依頼内容は?」

「依頼主はGA社。内容は『同社のAF輸送部隊の護衛』だそうだ。ロケーションはロロ砂漠……その輸送自体は、本日より丁度一週間後に行われるらしい」

「何ともタイムリーな話だが……問題は、武装が間に合うかどうかだな」

「ああ。GA側もお前さんの状況は把握していてな。ダメ元で依頼を出したらしい。一応『代え』は居るらしいが……可能ならばお前さんに、と」

 

うーん。GA社の方々から依頼を頂けるのは大変喜ばしい事なんだけど、こりゃまた色々な意味で微妙な時期に……

 

「それにしても護衛とは。以前の上海海域での戦闘をを思い出すぞ……」

「フフ……あの時は災難だったな」

「クック……本当にな」

 

いやはや。本当、ステイシスが現れた時はどうしようかと思ったよ。まあ結果的に何とかなったものの。そんな、二人して苦笑した後、エドガーさんの表情が至極真面目なものへと切り替わる……

 

あらー、エドガーさんも何となく感づいてるみたいですね。

 

「……今回の件だがな。向こう側からの詳しい情報は得られ無かったが……話様から察するに、何やら焦っていそうな雰囲気だったぞ」

「そうか……エドガー。『どう』思う?」

「勘だがな。この依頼、荒れるぞ」

 

そうなんっスよ。

 

その……俺が聞いたストレイド活躍の噂話に『マザーウィル撃破』が混ざってたんだよね。世間的には、その事について何ら情報は流れて無いらしいけど……

この噂に関しては情報通のマーシュさんから聞いた話だし、それに『物語的』に間違いは無いからほぼ確定だろう。

 

そこでよ?

 

この『chapter1』の大イベントが起こった後の俺への依頼……今までの経験上、確実に何か良くない事が起こるよね。しかもエドガーさんまで感づくとか、相当ヤバイ展開になって来そうで笑えない。

 

「依頼主は当日まで返事を待つらしいが……もし受諾可能な状況になったとして、お前さんはどうするつもりだ?」

 

……そりゃあ、アナタ。

 

「受ける」

「……だろうな」

 

ラインアークに住まわせて貰ってるからには、此方も対価を支払わなければならない。今の俺が最大限貢献出来るのは傭兵稼業だからね……こっちじゃ初めからリンクスとして存在していたからさ。本当なら清掃員みたいな、そんな誰でも出来る様なお仕事でも全然良かったんだけど……

 

ゼンさんだけに、全然良かった。

 

「……ックック」

「?」

「何でもない。気にしないでくれ」

 

しょうもないギャグを思い付いてしまった。しかも自分で笑うとか死にたい。

でも、ネガティブ思考に陥りかけるとストッパーが発動してしまう自分がちょっと好き。

 

「あくまでも、武装到着が間に合えばの話だ。どう転ぶかは今は分からないぞ?」

「……それもそうだな」

 

そうだよ。ま、今はエドガーさんとの会話でも楽しんでおくかな。

 

 

 

*********************

 

 

 

当日、武装が、届きました。滅茶滅茶ギリギリで。

 

 

《ゼン、目標を発見した。そのまま進めば合流出来るはずだ》

《了解》

 

……実質GA部隊との合流が間に合わずに遅刻してますが。

聞いたところによると何やらGA社は、余りにも連絡寄越さない此方に対して『あっこれ無理な奴かな?』って思ったらしく、既に自社のネクスト機に根回ししたみたいだ。

 

ちなみに此方がそれでも合流に向かっている理由だけど、準備が遅れたって事を伝えたら『それでも構わないから合流してくれ』ってな連絡が来たから。

 

《あの焦り様からして、予め何らかの予測はしていたんだろうが……》

《それは此方も同じ事だろう、エドガー。まあ、まさかカブラカン何ぞが現れるとは思ってもみなかったがな》

 

ロロ砂漠、目標地点に近づいた時点で連絡が入ったんだ。「カブラカンと鉢合わせた」って。

原作だとロロ砂漠での撃破対象は、インテリオル社が改造したGA製AF『ランドクラブ』だったはずなんですけどねぇ……何時もの事ながらどうなってんだ。

 

俺が居る事によるバタフライ効果ってのかな?

 

《見えたぞ。輸送部隊に……確かに、更に奥の方にはカブラカンが確認出来るな》

 

ブースト出力を上昇させ、それらに対してさらに高速で接近する。

やがて、護衛対象のAF輸送部隊の元まで辿り着こうとしたその時……俺は妙な事に気がついた。

 

 

《……》

 

まず目を引くのが、機動していないカブラカンの姿。

 

どうやらコンテナ部分は既に開ききっているみたいだけど……この状況。俺の知っている限りでは、今はカブラカンが射出する自立兵器達で一杯のはず。

だけど一機も見当たらないなんて……いや、あの地面に散らばっている物がその残骸?

まさか、GA社のネクスト機が既に全滅させ―――

 

 

 

―――はぁ。なんてね……現実逃避は止めよう。俺には、ちゃんと見えている。

 

 

 

一つだけ。よく晴れた青空の中、宙に停滞している『何か』の姿がさ。

……そいつは、余りにも黒すぎた。そう。まるで日の光すら吸収しているかのごとき、漆黒。

ここから見れば、まるでこの青空にぽっかりと穴が空いているかの様にも見える。

 

《こちらGA社、AF輸送部隊……リンクス。良く来てくれたな》

 

そこで輸送部隊からの通信。その声からは緊張の色が窺える。

 

《細かい事は省く。今すぐ、向こうに居る『ワンダフルボディ』の援護に向かってくれ》

《了解》

 

GA社のネクストがワンダフルボディだったとは……

 

だけど、俺も細かい事は聞かない。何故なら、あの宙に浮いてる『何か』。

アレが明らかに異質過ぎる存在感を放っているから。

まず間違いなく今回の障害として立ちはだかるだろう……嫌が応にも想像出来る。

 

《いや、一つ……言わなくても分かるだろうが、黒い『奴』はネクスト機だ》

《ああ》

 

輸送部隊との通信終了。

 

そこで機体を地面から上昇させ、『奴』とほぼ同高度まで持っていく。さて、近づくにつれ『奴』のシルエットが明らかになる訳だが……

 

 

《―――ゼン。俺は、今……お前さんと初めて出会った日に感じた『感覚』に襲われている》

 

 

……ああ。これ、アレだな。

 

 

 

 

 

《――――――こいつは、最高にヤバイ》

 

 

 

 

 

今日、死ぬかもな。

 

 

 

 

 

――――――直後。宙に停滞していた『奴』は、俺に気がついた……いや、ある程度まで此方が接近するのを待っていたのだろう。機体を此方に向け、即座にオーバードブーストを展開する……

と、同時に前方向へとクイックブーストを使用。瞬時に此方との距離を詰めに掛かる為だろう。

 

そして、互いの距離が200を切ったところでOBを切断―――からの『連続QB』。

 

 

『交差』する気だ。

 

 

 

《――――――》

 

 

 

相手のシルエットから、何の武装を積んでいるかの確認は済んでいる。『奴』は所謂ミサイル機。

此方のBFF製フレアは、展開→射出までに若干のタイムラグがある。その為、1、2秒程前には展開……つまり相手がミサイルを撃つタイミングを読む必要があるのだが……

 

今回。一瞬その『展開』させるタイミングが遅れた。

 

妙な言い方になるが、この漆黒の機体が余りに躊躇無く『良く見知った機動』を繰り出した為だ。

……とても正気とは思えない。普通に考えて、そんなふざけた機動を行おうとは思わないだろうに。

 

 

《……ッッ……!!》

 

 

仕方が無いので、此方もその『ふざけた機動』――――連続QBで対応、機体同士が『交差』する。

 

 

……息が出来ない――――圧倒的加速の前に身体が軋む。

 

 

普段からQBは極力使用を控えていた。何度も言う様だが……『苦しいから』。

そう。己の想像以上に、アレは苦しかったのだ。だが、ここでそれが裏目に出た。

QBの加速感に慣れて居ない自分に此方(現実)側での本気の動きは辛い、などと言うレベルでは無い。

 

 

一瞬意識が飛びかける、が。

 

 

《―――――チッ……イ……ッ!》

 

 

気合で持ちこたえる。この身体でなげれば確実に気を失っているはずだ。下手をすればその衝撃・精神的負担に耐えられず、あの世行き。

休む暇さえなく、即座に振り向くが……そこに、既に『奴』の姿は無かった。

 

 

だが、見えなくても分かる。『上』にいる。

 

 

《フ……ッ!!》

 

 

ここで先程のフレア展開が生きる。『奴』の機体構成からは、上方からの「交差際」に大ダメージを狙う事は百も承知。このタイミングでのフレア射出では、『アレ』は行えないだろう。

 

さて、次は此方の番だ。

 

 

フレアの射出中。此方が圧倒的優位に立てる時。

 

 

死ぬ気で機体を動かし再度『奴』を捉える。フレーム構成見たところ、AP的には此方に分がある為に引き撃ちで対応。ライフル弾をばら蒔き、少しでも削りに掛かる。

 

 

 

――――そんな戦闘が約30秒程行われただろうか。その時、俺は――――

 

 

《……ッ……ハッ……アァ!!》

 

 

死にそうだった。いや、本気で。

ふ、ふざけんなよ……!こっちは身体中から『ミシミシ……ッ!』て音すら聞こえてるってのに……

 

あんた本当に人間か?

 

 

 

 

『もう一人』……ッ!

 

 

 

 

しかも、そんな『テンプレ機体』に乗ってるなんて聞いて無いんですけど!?

はい。って事で半分キレかかっている俺ですが、この漆黒の不明機の外装を紹介していきたいと思います。

 

右腕武器『機動レーザーライフル(※ER-O 200)』。

左腕武器『黒板消し(※ハンドミサイル、ALLEGHENY 01)』。

右背部『核ミサ(※大型ミサイル、BIGSIOUX )』。

左背部『重垂直十六連ミサイル(※WHEELING 03)』。

肩には『BFF連動ミサイル(※061ANRM)』。

 

機体本体については、コア・脚部は『ライール(LAHIRE) 』。

腕は『ラトナ(LATONA )』。

あ、頭は~……相手の動きが速すぎて全然分っかんねぇ!クッソ平たい感じからして『皿頭(HOLOFERNES )』か!?

 

多分これを聞いた一般人は「日本語でok」何て思っている事でしょう。

では超簡単に説明します。

 

 

 

ヤヴァイ機体です。

 

 

アーマードコアには代々テンプレート。つまりは強い……『ある程度腕のある奴がこれ使っときゃ、まあ間違いは無いっしょ!』みたいな機体がプレイヤー達によって開発されるんだけれども……フォーアンサーでの機体の一つが、アレ。通称『ミサイラー軽二(軽量二脚)』。

 

これは余談になりますが……お恥ずかしい話、私の愛機ネームレスも、ブースターやらの内装は軽量機体のテンプレにあやかっております。相手の外装を見るに、内装もテンプレ。つまり此方の機体とほぼ同じと見るべきだろう。

 

FCSは長距離用でも積んでるのか?

サイドブースターは、前方への突進力・EN確保を高める為に俺の機体より出力値の低い物に変えてる可能性が高いかな……

 

 

はっはっ。こいつマジヤバい。完全に対ネクスト戦特化型。全力で殺しにきてやがる。

 

 

 

《ゼンッ!ワンダフルボディのオペレーターから通信だ!カブラカンのスカートアーマー内に退避しろッ!!》

《了……解ッ!!エドガー!此方からもワンダフルボディに通信要請を出してくれ!》

 

 

ぬああああああ!!!死……ぬ!!もう、死ぬから!十六連ミサイル避けるのキツいから、まともに息して無いから早く早く早く、つーか連動ミサイルもクッソうざっ……、ああ~ダメダメそんな悪口を考えるなんてダメっ!でもマジでもう勘弁しt……っしゃあ!!

 

通信繋がったァ!!

 

《――――――――――――ッハァァ、ハッッ!!! ドン・カーネルかッ!!?》

《おまっ……お前ッ!?》

《ハッ……ハアッ……! おい!! そちら、に……っ、逃げ込むぞッ!!!》

《んなッ……!!!》

 

ごめんね!情けないけど、今全然余裕無いから!

 

 

 

 

ゼンさんだけに。

 

 

 

 

じゃねぇ!ンな糞ギャグ考えてる場合じゃないよ!あーもう!離脱ッッ!!

 

 

 

 

*********************

 

 

 

《ハア……ハア……》

 

……で、今に到ると。

 

《……ゼン。やはり、あれは》

《そ、う……だな。奴は、間違いなく『もう一人』だ》

 

エドガーさんの質問に答える。あんな機体見たこと無かったし……ああ、『劇中』では見たことが無かった、の間違いか。

オンライン対戦だったりだとテンプレ機体の把握は必須+実際の対戦でも何度か相手にした事があるから……少しでも真面目に対戦やり込んだプレイヤーなら、下手な機体より有名に思うかも知れない。

 

《回線に割り込ませて頂きますが、あなた方は『人間』で間違いは有りませんね?》

《……そちらは》

《申し遅れました。私、ワンダフルボディのオペレーターを務めております。『キャロル』と申します》

 

……えっと。あれ?キャロルって……キャロルの事?(混乱)

 

もう色んな事が起こり過ぎて訳が分からなくなってんだけど。キャロルさんの声・雰囲気・名前が凄く何処かの誰かに似てるし。ってか名前とか完全に一致して……うん。きっと良く似た別人なんだろう。気にしてはいけない。

 

えーと、ちなみにその質問に対する答えなんだけど。

 

《俺に関して言えば、『一応』はな》

《成る程。それだけ聞ければ充分です》

 

相手はどうか知らないですけど……

 

いや、だって本当に何の躊躇も無かったから。何時も通りに機体動かしてる体で、超加速しまくってたからね。

今、奴さんはスカートアーマーの『外』で停滞してるけど……正直、中の人はちょっと頭のネジが吹き飛んでると思う。

 

 

本当に中身が居ればの話だけど。

 

 

《ところで、このカブラカンを止めたのは……》

《それは、俺だ》

 

うおお。カーネルさんがやったんだ。

 

《クック……やるな》

《……! ふ、ふん! 当然だ! その位、この俺にかかれば――――》

《甘やかしてはいけません。結局のところ、多数の自立兵器を破壊したのはあの「不明機」。加え、今のワンダフルボディのAPは残り約40%です。『相性』が良くてこれでは……》

《お前。何時か覚えてろよ……》

 

キャロルさん毒舌ですね。『あの人(?)』に雰囲気は似てるけど、やっぱ別人みたいだ。

後、何となくだけどカーネルさんが少し丸くなっている気がする。

きっとキャロルさんに色々と絞られまくってんだろうなー……いやはや、お疲れ様です。

 

《あー、お前さん方。世間話も良いがな……外の『アレ』、どうするつもりだ?》

 

ここでエドガーさんの最もな意見。そうだよ。こんな会話している場合じゃ無い。

外で待機中の不明機をどうにかしないと……しかし、そうは言ってもなー。

 

本当、少しだけ戦って分かった事があるんだよね。それが何なのかと言うと……

 

《『奴』は強い》

 

これね。馬鹿みたいな意見だけど、この超短時間で嫌でも分かった。

 

《……感覚的にはどの程度か教えてくれ》

《まともにやりあったとして....現状は『4:6』で向こうに分がある、と言ったところか》

《ほう。現状ですか。では、私からは『推移』をお聞きしても?》

《外の不明機は所謂『ミサイル機』。此方のフレアが無くなれば『3:7』にまでその差が広がるだろう。少なくとも、俺には身体的負担もあるしな。要は長引けば長引く程に勝つ可能性が下がると言う訳だ》

 

皆にはハッキリ言わないけど、正直相当厳しいっす。

腕的には互角orそれ以上で……機体自体の戦闘力に関しては完全に向こうに分がある。

 

 

《中々に由々しき事態だな》

 

 

……本当、アーマードコアってバリバリ現実を直視させて来るよね。 何と言うかさ。

「不思議パワーとかそんなん無いから、勝ちたけりゃ強いフレームとか武装使えや」みたいな。

 

対戦なんかだと、格好良く・正面から正々堂々と戦いたい初心者なんかに、偉大な先輩方が「引きうち」やら一機に対して全員でフルボッコにしてかかる、通称「鳥葬」やらを繰り広げてくるし。

 

まさに勝てば正義を体現する世界である。例えそれがどんな手段であれ……うん。

冷静に考えるとACってやべぇ。もう修羅じゃん。修羅達の訓練場じゃん。

夢も希望もあったもんじゃないよコレ。

 

《銀色。お前……まさか、『勝てない』なんて事を抜かす気じゃ無いだろうな?》

 

カーネルさんが凄くガッカリした声を出してるんだけど。

本当に情けなくて御免なさい。しかしカーネルさん……ある重要な事を忘れてないかね?

 

 

 

 

《俺『達』は負けん》

 

 

 

 

……そう。ACってのは中々に現実的なんだ。

 

対戦では、秘めた力の覚醒だったりも無ければ、リベンジマッチで負けるなんてザラ。

強い奴には、何回戦っても勝てないもんは勝てない。怒りに任せて戦う人なんかはもう負けているも同然で、より冷静・合理的な判断を下せる人が勝利に近づける。

 

 

 

 

そして、味方の数は多ければ多い程良い。

 

 

 

 

《ドン・カーネル。そちらの力が必要だ》

《……! ま、まあ、協力するのは癪だが……良いだろう。この際仕方がない!》

《作戦だがな。まず――――》

 

 

――――――さて……

 

 

《ネームレスのオペレーター。そちらの担当するリンクスは優秀な様子で何より……此方のリンクスにも見習わせたい限りです》

《クック……なまじ優秀だと、此方のやる事が少なすぎてな。暇になるぞ?》

 

 

ああは言った物の、これでダメならもう無理だ。気合いを入れて――――

 

 

 

 

《……行くぞッッ!!》

 

 

 

マジでやります。

 

 

 

 


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