絶対に死んではいけないACfa   作:2ndQB

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第39話

主人公視点

 

《私達の任務は終了だ》

 

ウィンDさんの呟いたこの言葉の直後。

外の……丁度前方車輌が走っているであろう方角から、ものすごく大きな爆発音が響いた。

ヤバい。ヤバいやばい!これメッチャ嫌な予感がするんですけど!!

 

俺は機体を移動させ外へと勢いよく飛び出す。するとそこから見えたのは……

 

車輌中から火を噴き、走行バランスを失っている第一+第二車輌の姿。

この状況から推察されることは一つしかない。

 

《動力部がやられたか……!!》

 

おおい!どうなっているんだこれは!

マイブリスはストレイドが相手をしているだろうし、レイテルパラッシュもつい先程まで俺の目の前に居たんだよ?まさか首輪付き君がマイブリスを逃がした……いや。無いな。ロイさんには悪いけど、首輪付き君がそんなミスをするとは思えない。

 

じゃあ、この状況はどうやって……

 

《エドガー!》

《いや、此方のレーダーには何の反応も示していない!》

 

嘘でしょ。おばけがAF撃破しましたってオチじゃないですよね?

これもうわかんねぇな。ちょっとウィンDさんに聞いてみるしかないですね。

 

《ウィン・D・ファンション。これはどういう事だ?》

《ゴホッ、ゴホッ……『本人』の声を聞いてみると良い》

 

本人?って、どういうこ……

 

《――――――『失礼』します》

 

俺の脳内がクエスチョンマークで埋め尽くされる中、そんな声が通信機からこだました。

それは若い男の声。落ち着き払っており、何とも『冷静』な印象を受けるが……

 

こ、この声は……!

 

《誰だ……!》

 

いや本当に誰!?全然聞いた事ねぇ声なんだけど!

しかも無駄にカッコ良い。知的でありながら、ある意味さわやかともいえる様な……

そんな食レポみたいな事思っている俺ですが、何となくわかる。絶対中の人イケメンだろ!

 

《ああ。彼には、私のスペアとして動いてもらった。この男は……》

《『クラースナヤ』。リンクス、『ハリ』です。()()、お見知りおきを》

 

ネクスト機『クラースナヤ』。

カラードランクは『10』であり独立傭兵。リンクスは特異なAMS適性につき、短期間しか戦闘をこなすことが出来ないが、その実「時間限定の天才」とも評される。

 

え、えええええ!?予想外すぎる人選っ!

 

しかもなんだその『以後』ってのは。単なる挨拶にしては妙な含みが感じられる。

し、しかしまさかクラースナヤが……そういえば、リンクスの『ハリ』さんって、グレートウォール見た事あるんだっけ?小説か何かでそうだった記述がチラホラあった気が……

 

いや、それよりも今気になる事は。

 

《……ハリ。何故レーダーにそちらの機体は何の反応も示さなかった?》

《簡単です。『追従型ECM』を使用したのですよ》

 

『追従型』……?あのBFF製の……ネクスト『アンビエント』も使ってた奴か。

確かにアレを使えばレーダーに映る事は無いだろう。そりゃあ気が付かないはずだ。

……でも確かクラースナヤの武装って、元々はBFFライフル二挺だけだったはず。

 

加えそれを手に入れたってことは、やっぱBFFに何らかのつながりがあるのか……

 

いやでもBFFってGAグループ内にあるしな。

もしハリさんがBFFと強い繋がりがあったとしたら、今回の『グレートウォール撃破』側にはまわらないだろう。となると考えられるのは……

 

『ORCA旅団』つながりで手に入れた説が濃厚っぽいな。あの人達、多分世界の至る所に『同志』が居るだろうし。

 

《成る程……では、もう一つの質問だ》

 

そう考えたとしても、だ。

クラースナヤはVOBを使っていなかった……もしくは使っていたとしても、結構遠くでVOBをパージする必要があったはずだ。じゃないと流石に『目視』で気づかれる。つまり……

 

《俺とレイテルパラッシュの居た位置は第三車輌だ。しかもこの『車輌が切り離されてから』の短期間で……前方車輌までクラースナヤがたどり着くにはそれなりの『速度』が必要だったはずだろう》

《ああ。彼は移動時にOBを使用していた。その外部からの『音』で存在がバレる可能性もあったさ。だから私はこのグレートウォール『内』で戦闘をこなした。ほぼ密室に近いこの状況なら、我々の戦闘時におけるブースト音やグレートウォールの武装、ミサイルの機動音などが反響するだろう。しかも貴方はその時点で入り口に背を向けている……まず見られることは無い》

 

…………。マジか……

 

《クック……》

 

ハッハッハ!!いやぁ~!やられたわマっジでよォ~(怒)!

この人達対策が完璧すぎるんだけど。本気で任務成功の事だけ考えて、それを遂行された。

さすがと言わざるを得ない。だってこれ、仮に俺のインチキ切り離し作戦が成功して無かった場合、そのままレイテルパラッシュが動力部を破壊していた訳でしょ?

 

そもそも二機の時点でほぼ詰んでいたのに、更なる三機目の存在を最後まで隠し通すとか……

 

《全く……してやられた。この任務、俺達の失敗だ》

 

ゼンさん版Chapter2、最初のミッションは失敗に終わる……と。

はぁー……GAの人には本気で申し訳ないよ。俺たちの事を信頼しててくれたんだろうに。

俺は僚機のストレイド、というかオペレーターのスミちゃんに向けて通信要請を出す。

 

《霞・スミカ。聞こえるか》

《……チッ!ああ、良くな。私の『後輩』と愉快な仲間達にしてやられたんだと?》

《そちらの戦闘は……》

《『帰した』。ここでマイブリスを倒してしまっても私は一向に構わなかったが、『コイツ』の戦う気が無さそうなんでな……どこかの誰かの真似事をしているらしい》

 

誰だ!その『どこかの誰か』は!

 

《僚機は皆、既にこの周辺から退避しているらしい……私もそうさせてもらう》

 

俺が第三車輌の方を向き直ると、その入り口からは丁度レイテルパラッシュが出てきているところだった。……そういやクラースナヤの姿を一切見ていないな。

多分通信している時には既に遠く離れた所に居たんだろう。何という行動の速さ。

 

《もうそちらの妨害をしても意味が無いのでな。好きにすれば良い》

《フッ……しかし、貴方にも出来ない事があるんだな?》

《こうまでされてはな……初めての任務失敗だ。それとウィン・D・ファンション》

 

彼女に向けて、ちょっと一言だけ言っとこうと思う。

 

《俺も、そちらの事が『怖かった』》

《……!フフ……そうか。それは光栄だな》

 

そう返すと、彼女はOBを展開。

 

地平線の彼方へと消えて行った……

 

…………

……

 

《ふー……》

 

『一回』。インチキしちゃったな。

あのウィンDさんのブレードを回避するために。たった一回だけど、これは大きな一回だ。

ミラージュさん以外に、インチキ機動を使わされた。

ウィンDさんのあまりの気迫に押されてしまった。しかもあの人……

 

 

2連QBを発動させていた。

 

 

何の強化も施されていない人間が、そんな常識などあるはずのない人間が。

……俺は今からきっと、戦いを続ける度に弱くなるだろう。

それは身体的にと言う意味であり、相手が俺たちの動きに対応してくると言うことでもある。

 

やっぱりこの世界の人達は違う。戦いの中で生まれてきた戦士達は……

うおーメッチャカッコ良いな!俺って凄い人たちと出会ってるよ!本当、尊敬するぜ!

 

《ゼン。聞こえているか?》

《エドガーか》

《ストレイド達もこのエリアから退避した》

《そうか……では俺も退散するとしよう》

 

俺は撃破されたグレートウォールへと一度だけ目を向けると、ブースターを点火。

輸送機へと向けて動き出した……

 

 

 

*********************

 

エドガー・アルベルト視点

 

グレートウォール防衛『失敗』。

任務の後、ラインアーク自室へと戻ったエドガーは、当時の事を思い浮かべていた。

それは驚きや後悔と言った様々な出来事が起こっただけに、まず何から整理してよいのか悩ましいところではあるのだが……

まず最初に思い浮かんだのが、敵機二機がレーダーに表示された瞬間の出来事。

 

――――『敵機はさ……いや、予定通り二機だ!』

 

ここでエドガーが言いなおした理由。

この時実は一瞬……本当に一瞬だけ、レーダーには敵影数が『三つ』映っていたのだ。

あまりにもそのレーダーへの投映時間が短かった為、見間違いかと思ってしまったのだが……今考えればあれは、幻の三機目『クラースナヤ』の影だったのだろう。

 

つまり、気が付くチャンスはあったと言う事だ。

 

エドガーはその事が頭に引っかかっていた為に、一応、周囲をレーダーにて探索してはいたのだが……何も見当たらなかった。ストレイドのオペレーターにも一度確認を取ってはみたものの、そもそも彼女のレーダーには最初から二機としてしか映っていなかったと言う。

 

「……」

 

ゼンにハッキリ伝えるべきだった。一瞬ではあるが三機映ったと。

そうしていればクラースナヤの接近に気が付けていた可能性もあった。

 

……そしてエドガーは、このことについてゼンに何も話してはいなかった。

 

例えゼンに謝ったとしても、きっとあの男は笑って許してくれるに違いないだろうから。

しかも『本心』から。あの男はとても優秀な上に、優しいのだ。それだけに申し訳ない気持ちで一杯になってしまう。優秀なあの男の足を引っ張っているのは自分なのではないか、と。

 

「フー……」

 

まあ、終わった事だ。後悔しても仕方が無い。

悔やむ位ならそれを糧にし、次に備える方がずっと有意義だ。

 

「しかしアレは一体……」

 

エドガーが次に思い浮かべたのは、ゼンが取った奇妙な行動についてだ。

マイブリスに最後尾車輛からの入り口を塞がれたゼンは、車輌外部から『四車輛目と三車輛目』の繋ぎ目へと向かった。結果、何が起こったのかグレートウォールは三車輛目以降の全てを切り離した。

 

ゼンの行動には驚かされてばかりだが、今回の事には不可解な点が多い。

 

後にゼンに聞いた話によると「賭けだった」との事ではあるのだが……どういう意味なのか。

あの迷いない行動から、恐らくゼンはグレートウォールの『即時』切り離しについて知っていたはずだ。だが……エドガーが同じくしてGAの者にその事を質問した時、GA社の者は「そんな機能はない」と答えていた。

 

切り離しには段階的な手順が必要、との事だ。

 

ではどうやって。どのようにしてゼンは即時に切り離したのか。

そもそもGA社員でさえ知らない事を何故ゼンが知っているのか……考えられる事は……

 

「『内部』に、か……?」

 

GA社内部に、ゼンの『組織』のスパイが居ると言う事。

つまり今回、こうなってしまう可能性も視野に入れていたゼンは、その同胞に連絡を取った。

その同胞の協力を得て……システム自体に細工を施した可能性が高い。

 

機体が四車輛目と三車輛目の繋ぎ目に入った瞬間、手順を全てすっ飛ばして一瞬で切り離しが行われるようにしておいたのだろう。まあ、今回は相手側がその更に上の策……幻の三機目を用意していた為に、残念な結果には終わってしまったが。

 

「クック……全く、お前さんにはついていけんな」

 

情報やそれを行う為の『繋がり』。また、予測。全てにおいて格が違う。

オペレーターとして抜擢されたエドガーは勿論、ゼンのその様々な意味での『スピード』について行けるように努力してはいるのだが……どうやら、まだまだ不足しているらしい。

 

まあ、実際はゼンの方こそ毎回タジタジの様子ではあるのだが……

 

 

――――――コンコン。

 

 

ノック音だ。さて、誰が訪ねてきたのやら……

エドガーはすぐさま自室のドアへと向かい、その扉を開ける……するとそこに立っていた者は。

 

「任務ご苦労様でした、エドガー・アルベルト」

「貴方は……イェルネフェルト女史」

 

フィオナ・イェルネフェルトだった。

何とも言えない表情をしているが……まあ、大方ゼンの任務失敗についての報告を受けたのだろう。あの男が任務を失敗するなど考えられなかっただけに、その気持ちも分かる。

 

さて、理由として『自分の報告ミス』が原因だとでも報告。お叱りでも受けるとしよう……

 

……と思っていたのだが。

 

「失礼、施錠させて頂きます」

 

室内に入るなり、フィオナ・イェルネフェルトは部屋のカギを閉めた。

……何だ、これは。

エドガー自身に逃げられないように……と、言うより、周囲をやけに警戒している印象だ。

ものものしい雰囲気を感じ取ったエドガーは、何があったのかをフィオナに尋ねる。

 

「どうかしたのですか?」

「……貴方に以前、現ラインアークの抱える問題についてお話したことを覚えていますか?」

「ええ、確か資源が……特に『電力』の不足が深刻になりつつある、と」

 

そうだ。それらの事について一通りの話を聞いた事は覚えて居るのだが……

 

「……これを。私『達』は既に読み終えました」

「この封筒は……手紙、ですか」

 

フィオナから手渡されたのは一通の手紙。

封筒には、『Dear Jarnefeldt&Alberto』とあるが……

イェルネフェルトにアルベルト。つまりフィオナとエドガーの姓名である。

 

裏には……何も書かれていない。が、これは自分達にむけた手紙だ。

 

「…………」

 

エドガーは封筒から手紙を取り出すと、その内容に目を通す。

そして一通り読み終えた後、確認を取った。

 

「………この手紙。ゼンの奴には」

「………まだ」

 

ゼンはまだ読んではいない。読んではいないが………これは、非常に大きな問題となる。

ともすれば、ラインアークの未来にも関わる可能性のある内容。

 

その手紙の本文中には、差出人の名が書かれていた。その名は――――――

 

 

 

――――――マクシミリアン・テルミドール。

 

 

 

 




もうアレです。
『でもBFFってGAグループ内にあるしな。』ってな独白書いている最中は、もう恥ずかしすぎて死にそうでした。

これで何とか修正できたと信じてます。

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