絶対に死んではいけないACfa   作:2ndQB

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第40話

主人公視点

 

グレートウォール戦から翌日。俺は自室のベッドに座りつつ、あの時の事を思い出していた。

………。やらかしたな。いやいや本気で。あの時、グレートウォール内に入り込んだのは俺のミスだった。レイテルパラッシュが第三車輌から出てくるまでそのまま外で待機しておくべきだった。

 

そうすりゃ多分三機目の存在、つまりクラースナヤの接敵にも気が付けたはずだ。

よくよく考えてみれば、あの状況から俺がレイテルパラッシュに追いつけたこと自体が怪しい。

ウィンDさんの「だから私はこのグレートウォール『内』で戦闘をこなした」何て言葉から察するに、あの人はワザと機体の移動速度を遅くしていた可能性もある。

 

そう、俺をグレートウォール内に誘い込むために。

 

「アミアミー」

「む、何だAMIDA。心配してくれているのか?」

「ミミ!」

「心配には及ばん。ただな、もう少し冷静に周りを見るクセを付けるべきだと考えていたのだ」

 

やっぱり人間焦るとイカんね。まあ、今回のミスは次への教訓として生かしていこうか。

とは言ってもあの人たちは傭兵として一流の方々ばっかりだし、何とかなるとは限らないけど。

 

……しかしAMIDAさんは気を遣える良い娘だよ本当。

エドガーさん達もそうだけど、俺って周りに恵まれているよなぁ。

 

「―――――ゼン、居るか?」

 

おっと、噂をすればなんとやら。そこで扉の外から聞こえてきたのはエドガーさんの声である。

これは………先のグレートウォール戦についての話の続きかな?

昨日はエドガーさんからすぐ休むよう指示されて、そこまで詳しく作戦内容を振り返らなかったからな。

 

うっし、怒られるとするかぁ!

 

「ああ。入って良いぞ」

 

若干怯えつつ入室許可をする俺。そして室内に入って来た人物は………

 

「失礼する」

「失礼します」

 

エドガーさんと、フィオナちゃん……二人。まさかの二人である。

しかも両名ともに顔が真顔だし、雰囲気がとてもピリピリしている。

おいおい。今まで見た中でもかなり神経質な表情をしているぞ。やっぱり昨日の任務失敗はラインアーク的にもNGだったか? 

 

とにかく確認するしかないな。

 

「どうした?」

「………これを」

「ん?これは……手紙か?」

「ああ。此方の二人は既に読み終わっている。とにかく、中身を見てくれ」

 

フィオナちゃんから渡された一通の封。形状から察するに手紙で間違いは無さそうだ。

しかしながら、エドガーさんの既に読み終わっている宣言。そして二人の発するこの重苦しい空気。つまるところ、この手紙がその原因ととらえるべきか。

 

………あ、怪しすぎる。これちょっと怪し過ぎんよ~。

手紙一通で、二人にここまでクソ重たい空気を出させるんだぜ。一体どんな内容が書かれてんだ。

 

「………」

 

俺は内容を確認する為、封から手紙を取り出す……俺を見る二人の視線が痛い。

さ、さて、一体どんな内容のお手紙なんだろう。えー何々、一行目は……

 

『お初にお目にかかる。ORCA旅団団長、マクシミリアン・テルミドールだ』

 

ブッ!!!

 

「ゴホッ!ゴホッ!」

「ゼン?」

「ああいや。少しむせただけだ。問題はない」

 

え、いきなり!?いきなりこんな感じ!?

怖ぇ~よ……もう既にきな臭い感じプンプンだよ。だってこのテルミドールさんアレだからね。

この俺の居る世界、ACfaの世界においての超重要人物だからね?

 

しっかし何たってそんな人が手紙なんか……何だろうか。もしかして昨日、クラースナヤのリンクスが言ってた『「以後」お見知りおきを』ってのは、この事が関係しているのか?

 

「………」

 

まあ、先を読んでみない事には始まらない。

と言う訳で俺はその文章を一字一句、舐めまわすように視線を這わせるが………

……うん………うん。

……ほほう……。

……。

 

「……ハッハ」

 

マジで?これマジで?

以下、ちょっとこの手紙に書かれていたことについて要約しますね。

 

『・我々ORCA旅団は、噂になっていたAF襲撃犯そのものである。その目的については、今は明らかにすることは出来ない。

・今、ORCA旅団はラインアークの抱える重要な問題(深刻な電力不足)について知っている。

・ラインアークが、旅団に必要な『とある事』に協力すれば、その問題について秘密裏に手助けを行う事が可能。それは近々起こるであろうオーメル主導の『ラインアーク本格攻撃(仮)』時に行ってもらう。

・一考の余地ありと判断したのなら手紙に付随の携帯端末から連絡を。特にネームレスのリンクスには此方としても幾つか話を聞きたい。』

 

「なるほど」

 

超絶略しました。略したこの中に気になる事が多すぎて困るんですけどね。

深刻な電力不足に、旅団への協力依頼。ラインアーク本格攻撃(仮)。そして付随の携帯端末から

 

特 に ネ ー ム レ ス の リ ン ク ス に 話 聞 き た い 。

 

怖すぎィ!もう怖すぎィ!これ下手したら俺の問答次第でよからぬことに発展する事も捨てきれないんでしょ?どどどどうすんだこれぇ!つか話が本格的に進んで来たなオイ!と、とりあえず!

 

「……イェルネフェルト。この手紙、『どうやって』受け取った?」

 

重い沈黙の中切り出す。そりゃこんな手紙みりゃこんな空気にもなるわ。

俺がまず気になっているのはこの手紙の出処。受け取り方によっちゃあ、ラインアーク上層部が既にORCA旅団に繋がっているのかどうか判断する材料になるかもしれない。

 

「……すれ違い様に」

「何?」

「『清掃員』の格好をした者が私とのすれ違い様に手紙を『落とした』のです。いえ、あれは清掃員が手紙をわざと落とした。私に拾わせた……のでしょう。手紙を拾った私はその者にに声をかけたのですが無反応でどこかへ……」

「で、その手紙の封を見てみるとそこに書かれていたのはイェルネフェルトとアルベルト。つまりこの手紙はそちら両名に向けられたものだった、と」

「ええ。後に確認を取ったのですが、私とその清掃員がすれ違った場所の監視カメラはご丁寧に『使えなく』されていました。昼食時で人の移動も多く行われていたため、上下階のカメラからの個人の判断は難しく……と、言うかお恥ずかしい話、全ての監視カメラが性能の良い物では……」

「……分かった」

 

うーん。上層部から手渡された、とかの正式なルートって訳じゃあ無さそうだな。

 

にしてもだ。すれ違い様……しかもよりにもよって『清掃員』とは、タイムリーすぎる。

これもしかして俺のバイト先のメンバーの中に既に紛れ込んでいるとか無いよな?

……無いと言いきれない、と言うかむしろ有りそうなのがな。

 

よし、じゃあ、

 

「次の質問だ。ラインアークの電力供給問題に関してだが………実際、どの程度『苦しい』?」

 

そもそも俺はラインアークの電力問題について何も知らされていない。

元は部外者の俺にそう簡単に内部事情を話すなずも無いのは分かっているけどね。

でも俺的にはこれが最も気がかりだ。だってここには俺の友達が沢山いるから。

 

……相手がどう思ってようと、俺が友達だと思ってたらそいつはもう友達だから。(狂気)

 

「このペースでは、年内にはラインアーク内の方針を変える必要が出てきます。つまり、『来る者拒まず』では無くなると言う訳です。ここも他の地上勢力と同じくして、人数を絞らなければなりません」

「なるほど」

「ですが、もし……もし、貴方がこのままラインアークに居続けると言うのならば。長期的な目で見れば貴方の稼ぐ報酬から解決策を――――」

 

フィオナちゃんがそこまで言いかけた時、俺は思わずして口ずさんでいた。

 

「無理だ」

 

そうそうそれは無理なん……

 

「ゼン……」

「アミ……」

「……」

 

……3人共なんでそんなに残念そうな表情をしているんだよ。俺の心が痛くなるんだけど。

え?何?もしかして皆俺のこと好きなの?俺は皆のこと大好きだけど?部外者だった俺に皆は優しくしてくれるし。特にエドガーさん。出会って短いながらに何度も俺の事を助けてくれるしさ。

いや違うか、大事な金づるが居なくなって残念的なアレでしょ?

 

いやっハッハ!困ったな!……困った困った。

 

「ゼン……俺に理由を聞かせてくれないか?」

「期限があるんだ」

「期限?」

「ああ。そうだな……そもそも、俺はこの世界あと1年も存在できるかどうか分からん」

 

「「「ッッ!!!」」」

 

さ、更に悲壮感が増したぁぁぁっぁあああ!!

ゆ、許してくれ!そんな悲しそうな顔をしないでくれ!こ、心が痛い!

 

「何故それを先に言わ……ッ!……いや、すまないゼン」

「俺は元々この世界に存在するべき人間では無いんだ。だから……」

「ゼン……」

「アミ……」

 

エドガーさんが怒ってらっしゃる。

……あのさ。今更だけどさ。この言い方、何か俺が余命1年しか無いみたいな言い方じゃね?

もしかして皆さん勘違いしてね?俺は予定では普通に元居た世界に帰る感じだから。

 

元の世界では元気いっぱいの予定なんですけど。やっべぇ~。しんみり空気にしちゃったよ。

 

「……とにかくだ。そういう訳で、俺がずっとラインアークに居続ける事は出来ない」

「……」

「何だ。その……出来る限りはここに居る予定だからな。その時までよろしく頼む。と、言う事で話を次に進めるぞ。イェルネフェルト、この『協力』について、そちらとしてはどう考えているんだ?」

 

ハイハイ!ゼンさんの話はもうヤメ!次行こうぜ!

 

「……はい。そもそも私はこの手紙の『真偽』すらまだ疑わしいとは思っています。ORCA旅団など本当に存在するのかどうかも」

「旅団は実在する。これは確実だ」

「貴方『方』は確信を得ている様子ですね……となると、この手紙の本文が全て真実であるとして話を進めましょう」

 

貴方『方』。方って何?俺が旅団について知っている事で確実に質問来ると思っていたんだけど。

まさかスルーされるとは。もしかして俺の知らないところで勘違いが花を咲かせてたりするの?

……それはさておき。さてさて、この解答次第ではこの先の未来も大きく変わってくる気がする。

 

…………

……

 

室内に緊張が走る中。フィオナちゃんは一呼吸を置くと、凛とした声で言葉を発した。

 

 

「――――この取引。私は受けるべきだと考えています」

 

 

来た……!

 

「と、言ってもです。実際にそう決断すべきかどうかは、この携帯端末で詳しい話を彼等から聞いてからですが」

 

そういってフィオナちゃんは上着の胸ポケットから携帯端末を取り出した。

ああ、これか~。『手紙に付随の携帯端末』とやらは。フィオナちゃんはその端末を弄ると……どうやら連絡先が見つかったらしい。室内のメンバー全員にその画面を確認させる。

 

……これはこれは。ご丁寧に連絡先は一つだけしか載って無いらしい。かけ間違う心配もないぜ!

 

「どうする。今、連絡するのか?」

「ええ。清掃員の手渡し方から、まだ上層部には伝わっていない可能性があります。つまり、まずは我々だけに話をしておきたい、との相手方からの意思表示でしょう」

「フッ……イェルネフェルト女史。本当に上に知らせずに事を進めてもよろしいので?」

「ええ……エドガー・アルベルト。この事はくれぐれも内密にお願いしますね?」

 

にっこり微笑むフィオナちゃん。けど威圧感がやべぇ。

エドガーさんちょっと汗かいてるじゃん。さすがにリンクス戦争の英雄のオペレーターだ。

威圧感が違いますよ!あと実はちょっとマーシュさんに近いんしゃねこの人。

 

何かワクワクしてる感じが凄いんですけど。普段悪い事しない人がチョイ悪するとこうなるのか。

 

「では……早速ですが、連絡を取りたいと思います」

 

フィオナちゃんはダイアルボタンを押したらしく、端末を耳に当てた。

しかしORCA旅団の誰が電話に出るんだろう。もしかして受付さん的な人が居たりするの?

でも旅団だったらそれ位居てもおかしく無い気がする。

 

「……」

 

暫くのコール時間。相も変わらず室内は静かそのもの……き、緊張する。

……すると電話が繋がったのか、フィオナちゃんの表情が一気に険しくなった。

で、出るのか!?

 

「……はい。私は―――ネクスト、ホワイト・グリントのオペレーターを務めさせていただいております。フィオナ・イェルネフェルトと申します」

 

出たぁ!

 

「……3人ほどですが。私と、アルベルト。そしてネームレスの……いえ、『彼』は今ここには……はい。その点についての心配をする必要は……承知しました」

 

何の話をしてるんだ、と思った矢先。

フィオナちゃんは端末から耳を離し、室内のメンバー全員の顔をぐるりと見回した。

どうしたどうした!

 

「向こうから『ハンズフリー機能』にて話をしたい。との要望が」

 

あれか……話し声が周りに聞こえるようにする機能の奴か。

それは当然俺たちの3人の声も相手側には聞こえるようになる訳だが……この要望。

もしかするとフィオナちゃんが喋っていた相手はORCA旅団内でも結構な上層部の人なのか?

 

俺とエドガーさん……と幻の4人目のAMIDAちゃんはそれぞれ顔を見合わせると、OKの意を込めてフィオナちゃんに頷いた。

 

「では……」

 

フィオナちゃんは端末の機能を変更。ドキドキしつつそこから聞こえてくる声を待つ俺達。

さ、さあ!一体どんな人間がこの端末の先に待ち構えているんだ!出てこいやオルァ!!

 

かくして聞こえてきた声はと言うと。

 

 

《まずは自己紹介といこう。私はORCA旅団副団長―――メルツェルだ》

 

 

ふ、副団長様ー!実質、今団長代理を務めている人だったー!!

このスーパー切れ者が通話相手かよ!マーシュさん辺りとかと会話させた方が良くない!?

 

俺腹芸とか結構厳しめなんですけど!

 

 

 


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