絶対に死んではいけないACfa   作:2ndQB

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初投稿から3年過ぎました。このペースだと終わるまでに少なくとも後3年はかかりそうです。
傭兵諸君はキレずにガレージで待機してて下さいお願いします。



第42話

主人公視点

 

突然だけどみんな。お掃除についてどう思っているかな?

俺はね。掃除はヒトが人として生きる為には必要不可欠だと思っているんだ。

お部屋だったりはたまた道路だったり、人間が日常を送る場所にはホコリやゴミも溜まっていく。

 

そのままでも良い、何て思う人も中には居るだろう。

 

でもそれを掃除することで清浄な空間で生活する事ができ、心の平穏にも繋がるんじゃないかな。心に余裕があればきっと他人にも優しくなれるだろうしね。

そう。だから例えば、こんなタイルの黒ずみとかを見た時は……

 

「消し飛ばしてくれる……ッ!!」

 

綺麗サッパリ落としたくなっちまうよなァアアアア!!!

 

消し飛ばしてしてやるぜ!!この世から跡形も残さず!!!オラオラァ!!(ゴシゴシ)

どうだ痛いか!?このGA社製の洗剤は!!どんなに強力なPA(汚れ)も一瞬で消滅させる事が出来るんだぜ?流石に火力が違いますよフハハh

 

「新人テメェ細かくやり過ぎんじゃねェ!時間かかるし次の場所に行くぞ!」

「了解」

 

先輩にダメ出し食らった。

 

「ほっほ。まぁ、元気なのは良い事じゃ。そう直ぐに怒らんでもいいじゃあないか」

「爺さん!アンタは甘すぎるぜ!コイツこのクソ長い廊下のタイル一枚一枚見る度にこんなんだから、あっと言う間に日が暮れちま……」

「速く次の場所に行こうではないか。日が暮れてしまうだろう、先輩」

「全く、ヨシ君の言う通りじゃ」

「俺のセリフ!!それ今俺が言おうとしてた奴!!」

 

残念だな。もっと綺麗にしたかったのに……と、まあね

 

この通り、今現在わたくしはバイト先で勤務中なのであります。きちんと制服も着て見た目もバッチリ清掃員してます。ちなみに『ヨシ君』ってのはバイト先での俺の仮の名前だ。

いやまあ、実際にはゼンよりもヨシの方が本名に近いんだけどねー。

 

メンバーは爺さん、ヤンキー先輩、俺の3人一組ペア。他にも色々人居たんだけど、なんやかんやでこの二人のトコに配属されたんだ。

 

「ククク……」

「ほっほっほ」

「笑ってんじゃねぇよ!」

 

いやー良いね。すごい日常感があるよこれは。二人とも良い人だし、バイトが楽しい。

ただね。先日の……話し合いの時に出てきた、『謎の清掃員X』ね。フィオナちゃんに手紙渡したとか言う人物が凄い気になる。

 

この二人のどちらかと言うパターンはちょっと怖いんでやめて頂きたい。

しかし……だったとしてもその人はORCA旅団側、つまり今は協力関係にある訳で特に問題はないのか。

 

「ったくよォ……ああ、そうだ。新人、爺さん、あの噂知ってるか?」

 

次の清掃場所に移動している最中、ヤンキー先輩から話題が振られる。むむ……中々興味のそそられる出だしだ。ゼンさんねー、こういう感じの大好きなのよ。さあさあ!どんな噂なんだい?

 

「噂?」

「とな?」

「アレだよ。今話題になってんだろ?突如現れた謎のネクスト『ネームレス』!そして、ソレに因縁のある『ミラージュ』の噂だよ」

 

って俺らの話ですかい!いやもう本人ですから!

でもミラージュさんについてはほぼほぼ情報ゼロだしなー……聞く価値があるかも知れない。

もしかしたら居場所に関する手掛かりが掴めるかも……

 

「いや、特には。爺さんは何か知っているか?」

「うーむ。まぁ、まずはこやつの話を聞いてみんことには……」

「へっ、その様子じゃ知らねぇみてぇだな。まあ、特別に教えてやる。聞いて驚くな……何でもよ。奴ら、禁じられた『身体強化』を施された常人ならざる者だって話だぜ。しかも、ネームレスのリンクスに至っては、ラインアーク上層部との力関係を視野に入れた交渉術を駆使し、裏では現状五分五分の関係を築いている……ってな噂だ」

 

違ああああああああーーーーーう!!!なんてこったい手掛かり0だよ!!

その情報ほっとんど当たってないよオイ。身体強化の件は前回のORCA旅団との話し合いの時にも出てたけど、別にこの世界で何かされた訳じゃないですって!

 

あと交渉術って何ですかね。そんなん駆使した覚えは無い。むしろ駆使したい側だよ……誰か別の奴と間違えてんじゃないの?

 

「……初耳だな。まあ噂は噂。実際は大した者では無いのやもしれんぞ?」

「はっ……分かってねぇな。この俺から言わせれば、そのリンクスは今流れている噂以上の存在に間違いはねぇよ」

「……」

「あ?何だ新人?もしや俺が何者か怪しんでるのか?まあな、こんなヤバイ情報を持っている奴が側に居たら不安だろうが……安心しな。俺は味方だ。それにラインアーク防衛部隊の奴にもパイプがあるしよぉ……へへっ。ビビらせちゃ不味いな。この辺でこの話は終いとしようや。くれぐれも、今の話は口に出さない方が良いぜ。命を狙われたく無かったらな……」

 

マジかよこの人。口に出しちゃってるよ。ヤバイ情報を俺に伝えちゃってるよ……命を狙われるんじゃね?全く……見てよ、爺さんも呆れて物も言えないのか黙り込んでるし。

しゃーない、一応爺さんにも意見聞いてみるか。

 

「爺さん。この噂についてどう思う?」

「……ほっほ。まぁ、真実はともかくこの者達が只者では無いと言う点には同意じゃ」

 

ん……?何だ。爺さん、ちょっと雰囲気が……

 

「お主ら、例の二機の戦闘記録……見たじゃろう?」

「ああ、まぁ……」

「おぉ!見た見た!!いやーアレはちょっとヤバすぎ……」

「……妙じゃったな」

 

爺さんの一言。妙だった、とは?

 

「あ?妙?」

「気付かんか。あの記録、編集されとっただろう」

「……」

 

……ああ、確かに。カブラカンには無数のカメラが設置されているらしいけど……戦闘中の俺達の映像。二機のネクスト機の動きに合わせて、各カメラの映像が繋ぎ合わされた感じになってたな。

 

要するに、一つのカメラではネクスト機の動きを追いきれない。そのカメラの死角に入った瞬間に、次の、俺達の映っている別のカメラ映像に切り替えられていたと言うか……

 

考えてみればかなり丁寧な編集だ。

 

「だから何なんだよ?」

「ふむ……あの映像、非常に見やすいと感じなかったか?」

「……確かに、そうだな」

「映像記録について今現在アルゼブラ社はノーコメントを貫き通しておるが……流出したのは明らかじゃ。つまり記録を流出させた何者かは、それにあたりわざわざ一般人にも見やすく編集しておるんじゃよ」

 

わざわざ編集……何が目的なんだ? 見やすく……俺達の映像を見た一般人はどう思うんだ。

 

……普通に考えてみれば怖がるはずだな。怖がるはず……ビビったらどうなるんだ。

つーかそもそも一般人だけじゃない。アルゼブラ社からすれば他の企業にも知られたくない・見られたくない映像のはずだ。つまり流出させた人は一般人だけじゃなく、企業の人達にも見やすく、そしてビビらす事も目的としていたのか?

 

いや、だから皆がビビったらどうなるんだよ……

 

……ああ。まあ、一応俺へのメリットはあったな。企業が俺達を……ミラージュさんを恐ろしく感じる事によって、俺が対抗策として見られているってトコ。おかげで今現在俺は暗殺対象から外れているし、こうして気軽にアルバイト先に出る事も出来ている。

 

いやしかし、俺へのメリットは流出させた人の本当の目的の副産物だろうしなぁ。

となるとやっぱり気になるのは

 

「……誰が、そんな事をしたのか」

「そこじゃな。ワシもそれを考えとった。そこを絞り込む事が出来れば目的もハッキリするんじゃがのぉ……ヨシ君はどう思っとる?」

「ミラージュ側から……と初めは思っていたんだがな。しかし考えてみれば、今の今まで姿を隠していたにも関わらず、ここに来て突然自分の存在を認知させるのは……」

「違和感を感じる、かの?まぁ確かに、彼奴はネームレスとは違い……少なくとも世間一般には全く認識されておらんかったしのぉ。流出させたとなると、ミラージュの今までの行動からは真逆にも感じられる」

 

んん〜やばいやばい。戦闘記録の謎が深まってきたわ。流出目的とその人物、それは一体……

ミラージュ側以外のパターンの方が有り得るのかこれ。もうどの陣営が怪しいのか分からんなぁ!!

 

「……しかし、じゃ。あえてその姿、驚異的な戦闘力を晒す事によりミラージュにもメリットがあった。と考えるとまた……」

「ぬぅ……」

「お……オイオイオイ!!何だよスゲェ面白いじゃねぇかよ!!何か俺達世界の闇に足を踏み入れてきてんじゃねェか!?」

 

ちょっ、やけに静かだと思っていたら……ヤンキー先輩が急に超楽しそうなんですけど。

いや分かるよ。ほら、さっきも言った通りゼンさんも噂話好きだし。ただね、何回も思うんだけど実際にそれらの当事者になると面白いってかクソ面倒なだけだからね。

 

渦巻く陰謀とかに巻き込まれたくは無いからね俺は。

 

……いやそれにしても。爺さんアナタもしかして……ちょっとカマかけてみるか?

 

「話は変わるが……爺さん」

「む、何じゃ?」

「宇宙(ソラ)は好きか」

 

突然の問い。少し驚いたのか、一瞬の間を開けた後……爺さんは答えた。

 

「大好きじゃ」

 

……ほっほ!こりゃ分かんねぇわ。そんな良い笑顔されるとさ。

ま、どっちでも良いか。何か良い人オーラ出てるし、多分俺に害を与える事は無いだろう。

で、次は一応ヤンキー先輩にも聞いてみようかと思っ……

 

「クレイドルっつー奴に乗ってみてェな。いや、んな事よりさっきの話の続きだ続き」

 

……ったんだけど、聞く前に答えてくれました。

 

そもそも俺の問いかけに対する答えじゃないんですけどね。

ソラが好きか聞いてるのに、クレイドル乗りたいって。俺の質問にどんだけ興味無いんですか……この人が謎の清掃員X説は無さそうだな。賭け事ならヤンキー先輩はかなりの大穴だろう。

 

分の悪い賭けが好きな人はヤンキー先輩にどうぞ賭けて下さい。

 

「……む?」

 

そんな、先輩に促されるままに話の続きをしようとしていた矢先……胸ポケットに入れていた携帯端末から音が鳴り出した。この端末は俺がラインアークに来たばかりの時に渡された物で、主にエドガーさんやその他ラインアーク関係者との会話に使われる奴だ。

 

ちなみにこの前ORCA旅団から渡された端末についてはフィオナちゃんが所持しています。

 

「何だよ新人。仕事中は携帯切っとけ……つってもまあ、仕事が仕事だしな。そう言う規則もねェ。相手からしたら緊急の用かもしれねぇから、とっとと出て戻って来いや」

「すまない。恩に着る」

 

何だかんだで優しいヤンキー先輩は最高だと思います。

あと確かに俺のマナーがなってない件。まさしくマナーモードにし忘れたっぽいぜ……以後気を付けます。

 

ではでは……と、ポケットから端末を取り出す。なるほど、電話の主はエドガーさんみたいだ。

話し声聞かれるのもアレなんで、通話を初めるのは皆と少し離れてから……よし。

 

《俺だ》

《ああ。ゼンか……今は清掃活動中か?》

《そうだな。真っ只中だ》

《全く。お前さんの事だから心配はしていないが、くれぐれも上手くやってくれ》

《任せろ……清掃帽も目深に被っているからな。完璧な変装だ》

 

エドガーさんが何だかお母さんみたいな事言っててホッコリします。

いやいや違う違う。こうしてコールしてきたって事は、それなりに重要な何らかの用事があるはずなんだ。

 

えーと。

 

《それはそうと、何かあったか》

《ああすまん。次のミッション……依頼について話がしたくてな。今日は部屋に何時頃戻るのかを確認しようと……》

《そうだな。ペースにもよるだろうが、遅くとも19時頃には戻るだろう》

《19時……そうか、分かった。では切るぞ、清掃員?》

《ククク……せいぜい綺麗にさせて貰うさ》

 

通話off。エドガーさんが気を使ってくれてんのか、かなり手短に済んだ。

次の依頼も来てるみたいだし、ここでの生活も中々良い感じになってきたなー……何かやる気出てきたぞオイ!

 

「待たせたな……終わったぞ」

「ふむ、やけに早いのぉ」

「定時連絡の様なものだったからな」

「定時連絡……って、何だよ新人。テメェやっぱりこの他にも仕事抱え込んでんだろ?」

 

いやまぁ、そうなんですけど。

 

「良いのだったら紹介してくれよ。体力には自身があるぜェ俺はよ!」

「ほっほ。ワシも歳の割にはそこそこやるぞい!」

「……まあ、機会があればな」

 

うーん!死んじゃうかも知れないからあんまりオススメはしませんよ!

 

あの仕事は本当危険だからね……うっし、やる気出たついでにさっさと仕事終わらせにかかろう。

早く終わればその分、エドガーさんから依頼についてのより詳しい話を聞く事が出来るかもしれないしね。

 

「……でよー、さっきの話の続きなんだが俺的には―――――」

 

……先輩。仕事忘れてませんかね?

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

さて。かくして清掃活動が終わった後、俺は部屋に戻った訳であるが……何と、ドアの前には既にエドガーさんが待機していた。

その際ずっと待っててくれたのかどうか聞いてみるに、デートの待ち合わせで使われると言うあの伝説の言葉……「今来たところだ」と返されました。エドガーさんが言うと普通にかっけぇ。

 

いや、それは良いんだけど。その後すぐに部屋で話し合いが始まって……

 

その……肝心の依頼についての内容がね。まずロケーションが『B7』だったのよ。

もう既に不安要素満載だよね。だってB7って言えばあのトーラス社の保有している施設だからね?トーラス社……いや〜怖すぎるだろ。プレイヤーの選ぶACfa変態企業ランキング堂々の一位。

ぶっちゃけミラージュさん関連でも怪しいと俺は思ってるから。

 

で、次。依頼主は……ORCA旅団。ハァイやばいですありがとうございました〜。

 

これまでに依頼主が原作とは違う事は多々あったけど、ここで旅団からの依頼とか……何でアナタ方がトーラス社を気にしてるんですかねぇ……私、気になります。

まあね、依頼される事自体に関しては別に構いませんよ。話し合いの時に『水没演技以降には迷惑かけない』って言ってたから。

 

つまりそれまでは協力していただきますって事だったんだろうしね。

 

《……》

 

だからね。そこまではね。実はそこまでならまだ良かったのよ。

何だかんだ言っても、これまでは依頼目的から大体の内容が想像できたじゃん。全てがガラリと変わる訳じゃ無かったじゃん。

 

でもね。今回の依頼の目的が……

 

《……「トーラス社が何かを開発している様子だから見てこい」。か》

 

これだよ!思わずしてつぶやいちゃったよ!!B 7 に 侵 入 し た 瞬 間 に よ ォ ! ! !

 

《正確には、「可能なら破壊しろ」だな。しかしゼン、あれは……明らかに破壊について重きを置いた説明だと感じなかったか?》

《まぁ、確かにな》

 

ハァ〜……マジかよー。聞きました皆さん?トーラス社が何か作ってるんですって。

しかもB7で。やべぇよやべぇよ。完全に原作に無かったミッションだよ。超初見だよ……

一体全体何を作っているというんだ。まさかアレか。

 

ソルディオス・オービットか。

 

正直、この世界であの空飛ぶ変態玉を相手にしたくは無い。しかも閉鎖空間内では……いやしかし、それは相手も同じか。室内でソルディオス砲がビュンビュン飛び回れるとはとても思えない。

 

つーかさ。そもそもおかしいんだよ。だって……

 

《エドガー。確認するが、ここB7は『採掘施設』なんだろう?》

《ああ。確か地下……最大深度5000mのな》

《採掘施設で、一体何を開発しようと言うのか》

《……ともかく目標地点に到達してみないことにはな。意外に大した事の無いものだったりするかも知れないぞ?》

《で、本音は》

《……まあ、何かしらの兵器の気がしてならないが》

 

だよね〜。まあここ、作業員を生活させるための居住区が備えられているらしいし。

それに、施設のエネルギーをまかなうためにこのB7内に中規模のコジマエネルギープラントも併設されているから。

 

こう考えると、巨大な施設に莫大なエネルギー。人手もあるし、他企業の目の届きにくい地下深くと、ある意味で極秘に兵器が開発されるにはうってつけの様にも思えてくるよね。

 

これもしかして採掘施設ってのは名ばかりで、実は兵器開発局でしたみたいなパターンじゃないだろうな……

 

《む……》

《ゼン、これからしばらく下へと降りる事になるぞ》

《了解》

 

侵入してしばらくは入り組んだ通路を通っていた俺だったんだけど……ここからは先はかなり降るみたいだ。何せ眼下には底なしかと思う様な『穴』が広がっているから。

ここからの景色……何だか見た事ある気がするな。原作だとB7関連ではここがスタート地点だった様な気がする。

 

いやしかし、ここに到達するまでにもそれなりに区間を通過してるからな。そう決めつけるのも良くないか。

 

ではでは……降下します。

 

《………》

 

………

…………深い。

 

落下時にはブーストを使用して適度に速度を調整している。自由落下は危ないからね。

でもそれにしたって深い。数秒下ってはいるものの、未だに地面らしき地面が見えないし。マジで一体どこまで……

 

 

―――――施設内に不明機体が侵入、ネクスト機と推測されます。

 

 

そんな最中、突如、施設内に大音量で警報が鳴り響いた。

 

 

―――――総員、戦闘配置。

 

 

……おうおう。

 

《少し、遅かったな》

《ああ。まぁ、ここに至るまでの区間には隔壁閉鎖なども確認されなかった。トーラス側の旅団が手を貸していた、とも読み取れるが……しかし》

 

エドガーさんが違和感を感じている様子だ。うーむ……

だって仮にORCA構成員がトーラス社に居たとして……今回みたいな依頼説明をするかなー。

だってその説明が「トーラスが『何か』を作ってる」だよ?ちょっと曖昧だよね。 社員として、しかもB7務めならもう少し細かい情報を把握してても良いと思うんだけど。

 

もしや、トーラス内部ですら極一部の限られた者にしか知らされてない……みたいな?

うわーこのパターンありそう。ORCAのスパイですら知らないトーラス社の極秘兵器……

 

いや怖すぎィ!

 

《……!》

 

……とか考えている間に、地面が見えてきました。おまけにレーダーには敵影が。

ってことなんで、

 

ハイ着地しまぁぁあす!!

 

《ぬん……ッ!!》

 

ドンッ!!と言う重量感ある音と共に着地成功。どうやら先は少し開けた場所で、そこに待ち構えているらしい……いや。

 

この場所の更に先の通路にも多くの反応がある。なるほど、どうやら重要そうな場所に近付いているらしい。いやいや、ルートが正しい様で何より……

 

《では行くか》

《ああ》

 

俺は臆する事なく……いやそこそこ臆して反応の元へと機体を進める。

 

開けた場所。複数の反応。普通に考えれば防衛のノーマル部隊だろう。

だが、これまでの経験上一筋縄で行かないだろうと予測をしていた―――――

 

のだが。

 

《!!》

 

俺は驚愕した。何と、その場所に待ち伏せていたのは。

 

《エドガー……普通のノーマル部隊だぞ!!》

《何……だと……!!》

 

そう。原作に良く出てきていた、ただのインテリオル製ノーマルだった。

嘘だろ?こんな事ってあるのか。こんな優しい出来事が……ハッ!!いや違う!!

確かHardモードではPAの自然減衰があったはずだ。きっとここではそれがあるんだ!今すぐ機体のPAゲージをチェックし……減ってない!?

 

何も異変が起こっていない……!

 

《何と言う事だ。この俺が普通にノーマル部隊を相手にする日が来るとは》

《奇跡的だな》

 

エドガーさんの台詞が悲しい。いやマジ今日奇跡じゃね。

 

何だか鉢合わせの相手のノーマル部隊の皆さん方も動く気配全く無いし。

これ俺の事祝福してくれてんじゃない?ちょっと通信かけてみて良い?いやもうかけるからね俺。

全周波のオープンチャネルで。

 

《おい》

《ひっ……!!》

《ね、ネームレスの……!?》

《な、なに?!一体!一体何の……っ》

 

何の用って、そりゃあなた。

 

《お前達、最高だな》

《《……は?》》

 

通信終了。防衛部隊はシカトして先へ進みます。

邪魔な隔壁はライフルでぶっ壊してからね。はいドンドン行くからね〜危ないからちょっと離れてた方が良いかもよ〜

 

あっ、ノーマル君。隔壁壊した瞬間とっつきで突いてくるのはやめようね〜普通に死ぬからね〜。

 

――――――――――

―――――

―――

 

 

それから俺はめっちゃ進んだ。曲がりくねった〜♪道の先に〜♪とか言う歌が脳内をグルグルとループする位進んだ。もう俺一人では帰り道とか分からないんですけど。

これ本当にACfaの世界?AC3系を思い出すレベルで入り組んでね?って感じ。

 

アームズフォート見てて思った通り、この世界はやっぱり原作と比べてスケールが大きく感じますね……

 

でだ。で、遂に俺達は辿り着いた……

 

《ここが》

《目標地点、となっている》

 

……正確には、そこに至る隔壁の前にだけどね。

 

ああ……来てしまった。ついに来てしまいましたよ〜……俺考えたんだけどさ。

多分、今まで見てきた普通のノーマル部隊は、これから起こるヤバイ事を示唆しての事だと思うんだよね。

 

分かるでしょ?ま、最初は良い思いさせとくか。みたいなね?

 

しかも今回のこれは完全に初見。ゼンさん版オリジナルACfaだからね。正直クッソ怖いわ。

予備知識が無いミッションをリアルにやる羽目になるとは……でも、こうしていても始まらない。

 

《……さて、鬼が出るか蛇が出るか》

 

行くしかな―――――

 

《まぁ、お前さんは怪物だがな》

 

―――――………。ふっ、ははは!何ですかそれ。エドガーさん、俺の事を励ましてくれてるの?

いやいや……まぁ、例え怪物だったとしても俺は掌サイズの可愛い奴だからね。

ったく。でも、そんな応援されちゃあ頑張るしかないぜオイ……

 

《……フッ!!》

 

俺は意を決して隔壁を破壊。目標地点へと勢い良く乗り込んだ。

オッラァ!!!手乗り怪物の登場だゴラァ!!!

 

《!! ここは―――――》

 

かくして本当の意味で到着した目標地点。

そこの特徴をまず挙げるのなら――――ドーム状、だったと言う事だろうか。

AC世界におけるドーム。これを聞いてまずイメージに『アリーナ』を思い浮かべる人も多いだろう。しかしこの場所は違った。

 

アリーナにしてはあまりに狭すぎる。

 

しかしそれはあくまでも、アリーナにしてはと言うだけであり……一般的な実験施設にしてはむしろ十分な広さを誇っていた。イメージとして最も近いのは……この世界の十年前。つまりAC4時における、『レイレナード製自律型ネクスト』初出時の実験場か。

 

地面は白い砂の様な物質で埋め尽くされており、ますますあの場所を想起させる。

 

……だが、しかし。

 

《……》

 

違う。似ているが、あの場所とは違う。何だ、『突貫工事』で作った実験場とでも言うのか。

とにかく、整っていない印象だ。

 

そして、そんな実験場の端……丁度俺の入ってきた場所から反対側に―――――

 

そいつは、立っていた。

 

《……フッ。いや、まぁ、出たな》

 

あ〜あ〜あ〜……出ちゃったよ。

 

《ゼン、あれは……『未確認兵器』で、良いな?》

 

鬼でも蛇でも無い。全くもって見知らぬ、「変なの」がさぁ……!

 

 

 

 


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