MT部隊隊長視点
《ダメ!それはダメです!ゼンさん絶対行っちゃダメです!!》
アイラがここから去ろうとするゼンを引き止め。
《そ、そうです!》
《あなたは俺たちの命の恩人ですよ!》
《せめて直接お礼を言わせてからでも遅くはないでしょう!?》
それに続きエドガーの部下達も引き止めに入る。
だが、今までの態度から察するに……簡単には引き留まりはし無いだろうという確信がエドガーにはあった。何せ無関係の者のために命を懸けるような男だ。こちらの迷惑になるとでも考えていてもおかしくは無い。
だがエドガー自身、決して彼に立ち去って欲しい訳では無いのだ。さて、どうするべきか。
彼が頭を悩ませていたその時、自機のレーダーがまたしても高エネルギー反応を察知した。
本日三体目のネクスト反応である。今日はとことんツイてない日だと、半ば呆れる様にしてエドガーは反応がどこから来ているのかを確認した。どうやら反応先は……ストレイドが消えた方向から逆側。つまりエドガー達が退避している方向からだ。
そこで彼は気がつく。レーダーに映るこの反応が、【赤】では無く【緑】で表示されている事に。
それが表す事は自機の「友軍」であるという事である。つまりは。
《そこのネクスト機、あなたはラインアークの主権領域を侵犯しています。速やかに退去してください。さもなくば……実力で排除します》
この高エネルギー反応の正体は、ラインアークの守護神〝ホワイト・グリント〟だ。
高速でエドガー達に向かい接近してくるホワイト・グリントに対し、エドガーは些かの危機感が募る。そう、このままだとほぼ確実に戦闘になるってしまう。その未来を回避するためには、どうにかして、ゼンが敵では無い事を知らせなければならないのだ。
《ち、違います!このネクスト機は敵ではありません!私達を助けてくれたんです!》
だが彼がその事を知らせるよりも先に、アイラが口を開いた。
《……どういう事です?》
ホワイト・グリントのオペレータ。『フィオナ・イェルネフェルト』が尋ねると、同時に。
ホワイト・グリントはピタリとその動きを止めた。
《このネクスト機は我々をもう1機のネクスト機の襲撃から護衛してくれました》
この言葉はエドガーだ。そしてそこまで聞き、フィオナは黙る。
……どうにか敵では無い事は上手く伝わったらしい。そしてここでエドガーは仕掛けた。
フィオナは、ラインアークの守護者であり、象徴であり、稼ぎ頭であるホワイト・グリントの運用について一任されている。つまりは、彼の言う『上』の人物の中の一人である。
《それにその際このネクスト機はPAを故意的に不展開にし、敵ネクスト機と相対していました。個人的にはまったくの無関係であるはずの我々を、コジマ汚染から護る為に》
実際彼の言うとおりである。防護スーツを着ていない今、汚染される可能性は高かった。
《それと……このリンクスは行く所が無いようです。ここ、ラインアークに移住を希望している様子ですが、どううでしょう。我々は、貴方方の判断に従うまでですが》
残念だが、エドガーに出来るのはここまでだ。後は向こうがどう判断するかである。
《……なるほど、話は聞きました。ですが、にわかには信じがたい話です》
そうであろう。実際にその姿を目にし、会話すらこなした彼らでさえ非常に驚いていたのだから。ネクストやリンクスというものをエドガー達よりも遥かに熟知しているはずの彼女達が信じられないのも無理は無い。
《そのところ……ラインアークに敵意が無いのというのを実際に私達が見ていないので何とも》
その時、エドガー達はドスン、ドスン、と四回ほど地面が揺れるのを感じた。
震源地は彼らの真後ろだ。一体この音の正体は何なんだ、と怪訝な表情をして背後を振り向くと。
《……くく。まあ、つまりこういう男という訳ですよ》
全身の武器をパージしたネクスト機がそこにはあった。
《なるほど……敵意は完全に無いようですね》
エドガーは苦笑し、フィオナは呆れ半分に納得した。
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主人公視点
あ~あ!!こんなラインアーク襲撃じゃあ初心者じゃ絶対クリア出来ないよ!!
最初のミッションでホワイト・グリントとかもう一歩間違わなくても投げ出す自信あるね。
いや、だが待て。ここで敵対する感じにしたら、自然とラインアークから退場出来るんじゃね?
おお!それだよ!よしそれでいこう!で、でも、もし見逃してくれなかったら戦闘に……
《ち、違います!このネクスト機は敵ではありません!私達を助けてくれたんです!》
ってアイラちゃんぬ!!ちょっと待ってまだ悩んでるから!断りづらくなるから!
《……どういう事です?》
食いついた!!フィオナちゃん食いついちゃったよ!いやマジで断りづらくなるからヤメテ!
《このネクスト機は我々をもう1機のネクスト機の襲撃から護衛してくれました》
エェドガァちゃんぬ!?何この感じ?何で皆そんなに俺の事好きなの?いやすげえ嬉しいけどさ。
もうこれアレだよね?今更「俺はどっか行くから!チャオ!」とか言ったらブッ○されるよね?
《それにその際このネクスト機はPAを故意的に不展開にし、敵ネクスト機と相対していました。個人的にはまったくの無関係であるはずの我々を、コジマ汚染から護る為に》
エドガーさんパねえ!この人もう、人の良い所しか見てないよ!悪徳商法に騙されるレベルだ!
《それと……このリンクスは行く所が無いようです。ここ、ラインアークに移住を希望している様子ですが、どううでしょう。我々は、貴方方の判断に従うまでですが》
ハイ!来ました!今決定的な一言来ましたよ!
《……なるほど、話は聞きました。ですが、にわかには信じがたい話です》
あら、やっぱり俺のした事ってそんなに変な事だったのね。
いやでも普通に生活していた日本人の視点で考えたら、あの状況は助けに入るのでは?
《そのところ……ラインアークに敵意が無いのというのを実際に私達が見ていないので何とも》
そこで俺の体が反応した。
アンカンジャス
必・殺!!! 無意識(unconscious)パーーーーッッジッッ!!
説明しよう!!無意識パージとは、対戦における刹那の攻防中に俺が生み出した技なのである。パージに気を取られているといつの間にかAPが減ってた……そんな現象を回避する為の技だ!!
つまる所、【パージが必要な場面】だと分かると素早くパージするだけの技ッ!だが、この技には決定的な弱点がある!
そう。技名にもある通りこれは無意識下での行動である為、いつの間にか武器が無くなってると言う恐ろしい事態に陥ることがあるのだ……ハッ!お、俺とした事がやっちまったのか!!
あの技はやはりまだ制御出来て無いか、修行が必要だな……ん?なんか静かになってる?
《……くく。まあ、つまりこういう男という訳ですよ》
《なるほど……敵意は完全に無いようですね》
おお、なんか知らないが戦闘を回避出来たぜ。やったぜじいちゃん。
《そちらのリンクス、聞こえますか?こちらオペレータの、》
《フィオナ・イェルネフェルト》
あ、言っちゃったよ。でもまあ、皆知ってる事だし良いよね。適当に理由付ければ。
《……ご存知でしたか》
《ああ。「有名人」だからな》
俺の中では、ですけど。
《そうですか。それと……こちらの守備部隊の護衛、心より感謝します》
《いや、構わないさ。こちらとて礼を言われる為にやった訳では無い》
ほんとこれ。逆に言うけど、お礼言われる為だけに命を懸けるって、中々ないのでは。
《ふふ、そうですか。それとあなたの待遇ですが……》
おお、笑った。いや、人なら笑うだろうけどさ。何だかfaのフィオナちゃん怖かったからなぁ……実はちょっと嬉しい。やっぱり怒るよりは笑顔の方が人は素敵ですよ、ええ。
《明日、今回ホワイトグリントの出撃で得た報酬の使い道についての会議があります。そこで、あなたの待遇も協議してから決める事になりますが……よろしいですか?》
《なるほど、了解した》
そっかー、まあお偉いさん達で会議してからじゃないと決められないよね。
それは分かったんだけど、それまで俺はどうすんだ。ま、まさか外にほっぽり出したりする……?
いやまぁ、そうなってもしょうがない位の図々しさですけどね!しゅみましぇん!
《貴方にはそれまで此方の用意した部屋で過ごして貰う事になりますが、構いませんね?》
当然じゃないですかー!いやだって部屋ですよ?部屋?雨風しのげる時点で感謝するべきでしょ。
《勿論だ、むしろ部屋を貸してもらえるだけありがたい》
《……。本当に変わってますね、貴方は》
《そうか?おっと、自己紹介がまだだったな 名はゼン、機体名はネームレスだ》
《了解しました。それでは【ネームレス】。そちらにネクスト用ガレージの場所までの道筋を送っておきました。今からそちらに向かってもらいます》
OKでっす。じゃ、行く前にエドガーさん達にお礼言わないとね。
《エドガー、聞こえるか?》
《ああ》
《おかげで助かった。今度改めて礼を言いに行く、部下達にもそう伝えておいてくれ》
《くく……ああ分かった。伝えておくさ》
よし、それじゃあ……発進します!