一周間前のお気に入り数10くらいじゃなかったっけ...
いやいやありがとうございます。
主人公視点
「それでは、明日の会議が終わるまではこちらでお過ごし下さい。それと携帯端末を渡しておきます。何か用があるのなら、指定の番号におかけください……何か質問は?」
「いや、無い。こちらへの細かい配慮、感謝する」
「……それでは私は失礼します」
……。
行った?もう案内役の人行った?
くく……ふははは……最高だぜ!! おいおい!この部屋見てくれよ!
就寝用のベッドに机!椅子!シャワールームに何か本が一杯詰まってる本棚まであるぜおい!
いや、日本ではもう当たり前にある物ばっかりなんだけどさ。すごい嬉しい。
だってさ、失礼な事言うようだけど、俺てっきり『牢屋』みたいな所に入れられると思ってたからね。今、俺は完全な部外者ですし。
いきなりランアークに現れて「NE!ここに泊めてyo!!」とか超失礼な事言ったんだぜ?
この部屋に案内されるまでに、毛布位は貸して貰えるかなって凄く不安ではあったんだけど、どうやらその心配は無駄だったようだ。
しっかし、ネクスト機から降りる時はちょっと気分悪くなるね。まあちょっとだけだけど。
たしかAMS適性が低いと『精神的負担』がすごいらしいし。
その点に関しては、かなり俺恵まれているよなぁ……神様本当にありがとう。
……そういえばこの部屋に居るのは明日まで、って言ってたけど明日の「いつ」までかは説明されなかったな。多分、会議の終了時間とか決まってないんだろけど……まあ本は一杯あるし、読んで時間でも潰すとしよう。さて本棚本棚……と、んん?なんだこの本。
「何々……『子供でも分かる!簡単ネクスト機講座』」
なんだコレ、誰がこんな本執筆したんだよ。えーと、著者名は【アブ・マーシュ】……かぁ。
……。あ、アブ・マーシュって。おいおいマジかよ。この人って確か、あのホワイト・グリントを一から設計した人だったよな。所謂、『天才アーキテクト』と言われている人だ。
ゲーム中は名前しか出てこなかったけど……どんな人なんだろう。きっと賢いんだろうなぁ!これはもう読むしかありませんわ。いやー楽しみだ。
早速読ませて頂きます!お、1ページ目は著者挨拶か!さぁてどんな……
『やあ!僕がアブ・マーシュだよ!いやあ、この本を手に取ってくれたという事は君は少なからずネクスト機に興味があるという事だね!』
……。
『ネクスト機って良いよね!君はどんな娘が好みかな?ちなみに僕が好きなのはインテリオル製の“Y01-TELLUS”かな!テルスちゃんの脚部、良いよねぇ……あのムチムチした感じ。思わず見てて興奮しちゃうよ。あと、トーラス製の“ARGYROS”ちゃん!彼女もまるっこくて可愛い……歩行する時のあの必至な姿。あの姿に惚れたって人も中には多いはず!他には……』
おっと、本を取り間違えたかな?間違えてこんな変な本取っっちゃったよ。
さて元の場所に戻して、と。やっぱりネクスト機に乗ると目とかも疲れるんだなー。
マッサージマッサージ……よし!もう大丈夫だ。目も念入りにマッサージしたし。
えーと、ちゃんと表紙と著者を確認して。これだな。よーし、確認OK!読ませて頂くぜ!
『やあ!僕がアブ・マーシュだよ!いやあ、この本を手に取ってくれたという事は君は少なからずネクスト機に興味があるという事だね!』
ああ、やっぱりさっきので当たってたみたい。もう分かった。この人完全に変人だ。
『子供でも分かる!簡単ネクスト機講座!』ってこれ子供に見せたら悪影響が出るんじゃね?俺の中でのマーシュさんの知的でクールなイメージどうしてくれんの?
まあ良いか、せっかく手に取ったんだし読んでみる事にしよう……
………。
……。
やべえ、認めたくないけど説明超分かりやすいんだけど。【アブ・マーシュ】やはり天才か。
この本に書かれてあったんだけど、なんでも機体の総耐久値(AP)が0になってもリンクスは必ずしも死ぬ訳じゃないらしい。機体の大破を防ぐ、つまり数の少ないリンクスの生存率を上げる為にAPが0になったら機体自体は強制的に停止する仕組みになっているんだとか。
じゃあ何でリンクス死ぬの?って思ってたら、マーシュさんの本にこう書かれていた。
『いや~、ぶっちゃけリンクスの主な死因は機体が強制停止した後に攻撃されるからなんだよね。じゃあその機能いらないんじゃない?とか思うだろうけど、まあ有っても無くてもそこまで追い詰められた時点で死はほぼ確定だよね。だったら機体大破前に強制停止させた方がまだ良いんじゃない?って考えらしいよ』
そして最後には、『僕はそうは思わないけど』。とも。
う~む、なるほど。一応、一つの不安は解消されたな。
ネクストのAPが0になった後に攻撃しなければ相手は死なない……つまりですよ。俺が相手より強ければ、基本的にはネクスト戦でその相手を殺さずに済むという事だ。やったぜ。
この先ネクスト戦しないとも限らないから不安だったんだよね。
しかし『僕はそうは思わないけど』、か。ゲーム中、ハードモードの【ホワイト・グリント撃破】の〝あの〟現象はマーシュさんのこういう考えが反映された結果なのかな……まあ俺に分かる訳無いんだけど。気になるよね。
「ふむ……」
読んでる途中だけど眠くなって来たな。ちょっと昼寝しよう。「目が覚めたらお家でしたー!」とか無いですかね。夢オチを期待しているんですけど……うん。わかりますよ。
無いんですよね、そんなことは。
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――
……あれ?ここは何処だ?真っ暗なんだけど。俺確かお昼寝したはずじゃ……
《やあ、どうも》
うおおおおお!びっくりした!って何ですか、声しか聞こえないんですけど。
《突然だけどね……ここは夢の中だよ》
はい?
《いやだから夢の中だって》
……おいおいマジかよ。俺もついに何かに目覚める時が来たんですかね。
《何にも目覚めないよ。あー、いや、今はある意味〝リンクス〟として目覚めてるかな》
……あの、今〝リンクス〟って言いました?すみませんがどちら様でしょうか?
《神だよ》
なるほど……あなたが神か。
《君は全然驚かないね》
いやだってこの短時間で色々濃すぎる体験しましたし。
《しかしそれでも君は変わってるね。普通の人は何かと私を「質問責め」にするけど》
普通の人はって。さては何回か似たような事してますね?
んー、聞きたい事か。あんまり無いな。あー、それじゃあ1つだけ聞いても良いですか?
《良いよ》
あー、俺って【帰れます】?
《帰れるよ、パターンが2つあるけど。1つ目のパターンは死ぬ事かな》
ハードですね。
《いや、ハードですねって。言う事それだけ?》
いや、他に何を言えと。だって死ぬの怖いし。自分には厳しいです。
《じゃあパターン2。どれか1つのルートが終わるまで過ごす事》
え?それだけですか?
《それだけだよ。でも……多分、君は苦労するだろうねぇ》
……?
《君はどうにも勘違いされやすいらしいから》
そうですか。
《まったく、こっちは真面目に話してるのに君は。そうだ、君にも伝えておくことがあるんだ》
おお!そ、それは……
《この世界、君の他にもう一人〝外〟からやってきたリンクスが居るよ》
え?
《それじゃあ、私はこれにて。会えたら、また会おう》
ちょ、ちょっとまって。今、何て……
《……》
反応無し。行っちゃったか……
……。
さらっと流してはいたけど、これ、衝撃的事実なのでは?