居場所   作:おたふみ

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十一話

次の日、大岡と大和の姿は教室になかった。処分は二人の停学と野球部・ラグビー部の3ヶ月の活動停止及び半年間の対外試合禁止となった。

変わったのは、葉山と戸部もだった。二人とも黒髪になっていた。戸部に至っては短髪だった。二人はイジメを助長したということで、厳重注意と反省文の提出。サッカー部は3ヶ月の対外試合自粛になった。

三浦は不機嫌そうに携帯をイジり、苦笑いしながら話す由比ヶ浜に相づちをうっていた。

海老名さんは席で一人本を読んでいた。って、おい薄い本じゃねぇか。しかも堂々と…。

葉山グループの崩壊は目に見えて明らかだった。それに乗じて相模一派が葉山にすり寄っている。

相模の声に嫌気を感じていると、戸塚と川崎に声が声をかけてきた。

「おはよう、八幡」

「おはよ。あのあと大丈夫だった?」

「おはよう。二人とも、ありがとうな。今まで通りとはいかなくても、なんとかなりそうだ」

「良かったね、八幡」

「あぁ。なぁ、ひとつ聞きたいんだが…」

「なに?」

「ん?」

「平塚先生から、なんか言われてたか?」

「バレちゃった?」

「なんとなくな」

「平塚先生に言われなくても、アンタの様子はおかしかったからね」

「そうか。改めて、ありがとな、二人とも」

「次はあんなことしちゃダメだよ」

「わかった」

「まぁ、やらせないけどね」

「怖ぇよ、川崎…」

「アッチはあんな感じなんだね」

川崎が少し寂しそうに海老名さんを見る。

「川崎、気になるのか?」

「ちょっと悪いことしたかなってね」

川崎も基本的には、優しいヤツだ。それに、川崎が学校で話す数少ない一人だ。

「川崎」

「なに?」

「川崎だけでも、話しかけたらどうだ?」

「いいのかな?」

「仲間の暖かさを知ったら、簡単には孤独になれないさ」

俺がそうだったようにな。

「やってみるよ」

「海老名さんが、三浦たちとやり直したくなったら、言ってくれ。力を貸す」

「アンタ…。お人好し過ぎ…」

「でも、それが八幡の良いところだから」

 

そして昼休み。

さて、購買にと教室のドアを出ようとしたら、雪ノ下に出くわした。

「よう、雪ノ下。由比ヶ浜なら中に居るぞ」

「え、あの、比企谷君に用事があって…」

「ん?俺に?」

「お昼ご飯は…」

「今から購買に行くところだが」

「その…、お弁当を作ってきたの」

「ほ~ん。それを俺に見せに来たのか?」

「違うの。あ、貴方の分を作ってきたから、部室で一緒に…」

比企谷八幡は混乱している!

「えっと…、うん。なにかの罰ゲームか?」

「違うの。…貴方に食べて欲しくて…。ダメ…かしら…」

雪ノ下さん、頬を赤くして上目遣いとか、ズルいです。断れないです。告白してフラれますよ。

「わ、わかった。いただくよ」

「そう…よかった…」

「ゆきのん、ズルいし!」

そうだよな、由比ヶ浜。雪ノ下の手作り弁当を俺が食べるなんて。お前が食べたいよな。

「私もヒッキーにお弁当作るし!」

「そっちかよ!」

「由比ヶ浜さん、友人が殺人を犯すの見過ごせないわ。例えこの男でも…」

「すまん、由比ヶ浜。まだ死にたくない」

「二人とも辛辣!」

「よく『辛辣』なんて知ってたな」

「エライわ、由比ヶ浜さん」

「えへへ…。じゃなくて!」

「とりあえず、部室行こうぜ。腹へった」

葉山が何か言いたそうにこっちを見ていたが、気にしない…。

「私も一緒していいかい?」

「あ、僕も」

川崎と戸塚が話に入ってきた。

戸塚と昼飯…、最高です。

「ちょっと言っておきたいことがあるから」

「僕もかな」

「雪ノ下、由比ヶ浜、いいか?」

雪ノ下と由比ヶ浜に確認する。

「私はかまわないわ」

「私も」

「じゃあ、行くか」

 

昼飯を食べ終わり、川崎が話を始める。

「アンタたちさ、比企谷に対してヒドクないかい?」

「僕もそう思う」

戸塚が続く。

「由比ヶ浜さんは八幡のこと、キモイって言ってるよね」

「雪ノ下も、『この男』なんて言い方してるけど、もっとヒドイこと言ってるんじゃない?」

「いや、いいんだよ…」

「良くないね」

川崎がピシャリと言う。

「信頼関係の上で言ってるのつもりだろうけど、比企谷だって言われ続けたらキツイと思う」

「八幡は、『ボッチだから』とか『キモイから仕方ない』とか言ってるけど、絶対にそんなことないと思う」

「いや、俺は大丈夫…」

「黙ってて」

「はい」

「今回の件でわかっただろ。比企谷は悪口言われても殴られても、自分の中に圧し殺してしまうんだよ」

雪ノ下と由比ヶ浜は黙っている。

「このままじゃ、いつか比企谷はパンクするよ。例えば自殺とか」

「いや、川崎。それはないだろ」

「本当に、そう言い切れるのかい?」

「それは…」

「だろ?」

「僕は八幡の友達として、二人に態度を改めて欲しい」

「出来ないなら、比企谷は私が貰う」

ん?川崎さん?表現おかしくないですか?

「そうね、比企谷君のそういう態度に甘えていたわね。比企谷君、ごめんなさい」

「ヒッキー、ごめんなさい」

「い、いや 、いいんだよ」

「今度あったら、力ずくでもアンタ達から比企谷を引き離すからね」

「川崎さん、戸塚君、そうならないよう、約束するわ」

「私も…。だって、ヒッキーと離れたくないモン…」

「それなら、いいけどさ」

「改めて言うわ、川崎さん。比企谷君は渡さないわ」

「それは比企谷が決めることだろ」

「わ、私だって負けないし!」

小声で戸塚に問いかける。

「なぁ、戸塚。これはどういうことなんだ?」

「八幡は女心を理解しようね」

うむ、よくわからん。

 


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