生徒会役員選挙当日の体育館。
もうすぐ演説本番だ。
はぁ、緊張する。人前に立ちたくないよお。
「先輩、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない。帰りたい」
「ヒッキー…、私も…」
「由比ヶ浜もか…。よし帰ろう。一緒に帰ろう」
「え?一緒に?えへへ、それも…」
「ダメよ、由比ヶ浜さん」
「やっぱり…」
「一色は落ち着いてるな」
「そんなことないですよ。心臓バグバグですよ。触ってみますか?」
「なっ!なに言っちゃってるの!」
「冗談に決まってるじゃないですか」
「そ、そうだよな…」
横から、視線をふたつ感じる…。
「ヒッキー…」
「比企谷君…」
二人が怖いよぉ。よし、話を反らそう。
「雪ノ下、本当にやるのか」
「やるわ。進行も城廻先輩から、止めないようにお願いしてあるわ」
「…そうか」
「ヒッキー、私もがんばる」
「お、おう。期待しないでおく」
「ヒドイし!」
「リラックス出来たか?」
「あ、うん」
「由比ヶ浜らしくやれば大丈夫だ」
「ヒッキー…、ありがとう」
放送で由比ヶ浜が呼ばれた。
「じゃあ、行ってくるね」
「由比ヶ浜さん、しっかりね」
「任せて、ゆきのん」
『只今、紹介に預かりました、2年F組の由比ヶ浜結衣です。今から私の話にお付き合いください。』
よし、大丈夫そうだ。
『その話は文化祭まで遡ります。実は文化祭までの道のりは大変でした。実行委員の集まりが悪かったり、副委員長が倒れたりしました。そんな中、地味にですが活躍してくれた人がいます。まずスローガン決め』
おい、話の向きがおかしい。
「おい、雪ノ下。由比ヶ浜が…」
「これでいいのよ」
「よくねぇよ」
「今は演説の最中よ。それとも、強引にやめさせるのかしら」
やられた…。
『集団をまとめるにはどうすか?彼は自分が共通の敵となることで、実行委員の出席率を上げました。それと、こんな噂を聞いたことはありませんか?実行委員長がエンディングセレモニーの前に、とある人物に泣かされたと。そして、その状態でステージに立ったと』
体育館がザワついてきたぞ。由比ヶ浜、どういうつもりなんだ。
『それは、事実であって事実ではありません』
おいおい、それ以上は…。
『何故、あの時にプログラムに無い演奏があったのでしょうか?何故、あの時に実行委員長を呼び出す放送が何回もあったのでしょうか?それは、ステージの袖に実行委員長が居なかったからです』
あちゃ~、言っちゃったよ…。
『その彼は、実行委員長を探しに行き見つけました。無理やり連れてくるのではなく、あえて罵倒することによって、自分の足でステージに向かわせました。それによって、エンディングセレモニーを放棄した悪者から、泣きながらもエンディングセレモニーを成し遂げた悲劇のヒロインになったのです。これを聞いて、みなさんはどう思いますか。聡明なみなさんなら、わかるはずです』
由比ヶ浜、聡明なんて知ってたんだなぁ…。じゃなくて!なんで、そんなことを今さら…。
『その彼には、こんな噂もあります。修学旅行の時に、告白に割り込んで邪魔をしたと』
そんなことまで、持ち出すのかよ。
『でも、彼は二つの依頼を受けていたんです。ひとつは、告白してフられないようにしてほしい。もうひとつは、告白される側から告白をされたくないから、阻止してほしい。そんな相反する依頼をどう解決したのか。告白に割り込んで嘘の告白をしました。方法は最低ですが、これしか方法が無かったと言っても過言ではありません』
あ~あ、言っちゃった…。
『そして、今回の生徒会役員選挙になります。本来なら、彼は表舞台に立つことを嫌います。ですが、この生徒会役員選挙では、一色いろはさんの応援演説に立ちます』
悲報!俺氏、過去を暴露される!
『彼、比企谷八幡君が動き、応援演説までするには理由があります。その理由は、この後の雪ノ下雪乃さんにお任せします。そして、投票は一色いろはさんにお願いします』
やっと終わった…。
『最後に、もうひとつ』
まだあるのかよ!
『これは、嘘でも妄言でも罰ゲームでもなく、私の本心です。比企谷八幡君、私は貴方のことが好きです。ご静聴ありがとうございました』
おいぃぃぃ!何、さらっと爆弾投下してるんだよ!みんな、唖然としてるじゃねぇか!
…雪ノ下の演説も思いやられる。