意気揚々と雪ノ下が戻ってきた。
「ゆきのん、良かったよ」
「雪ノ下まで、あれは…」
「今、私がゆきのんとしゃべってるの!」
「はい…」
「ゆきのん、最後のは…」
「私だって、由比ヶ浜さんに負けてられないわ」
「そっかぁ。えへへ」
「うふふ」
「仲睦まじいとこ申し訳ないんだが、二人ともあれは…」
ついに、俺の名前が呼ばれた…
「ほら、比企谷君」
「ヒッキー、がんばって」
「お、おう」
なんか、はぐらかされた気がするが…。まぁ、行きますか。
「じゃあ、逝ってくる」
「ん?なんか違和感」
「気のせいよ」
視線が痛い。特に男子の…。そりゃ公開告白されたなぁ…。
さて、やりますかね。
『今、紹介していただきました、2年F組の比企谷八幡です。
前の二人の演説の最後は一先ず忘れてくれ。俺もお陰で頭の中に叩き込んだ演説文がフッ飛んでる。
だから、この場での俺の言葉で喋らせてもらう。
まず、文化祭の件だが、委員長を泣かせたのは事実だ。舞台袖に委員長が居なくて、探して見つけた結果、あんな方法しかとれなかった。もっと別の方法があったかもしれない。だが、あの場で思い浮かんだ方法がそれしかなかった。委員長には大変申し訳ないことをしたと思っている。この場を借りて謝ります。すいませんでした。舞台袖に居なかった委員長が悪いという人も居るだろうが、文化祭のトップとしてあの場に立つのは極度の緊張やプレッシャーがあったんだと思う。それはあの場に立つ人間にしかわからないことだ。文化祭は成功した。それで、無かったことにしてほしい。伏してお願いします。
告白の邪魔をした件だが、俺は人付き合いが苦手で、あの場ではそうするしか方法が浮かばなかった。二人には、改めてお詫びをしたい。
それで、本題に入るんだが…。一色は悪意によって立候補させられた。これは事実で、あってはならないことだと思う。しかし、現実に起きている。この問題をどうしたか?さっきもあった通り、一色に生徒会長になってもらう。最初は逃げ道としての提案だったが、本人も段々とヤル気になっているし、何より意外と言っては失礼だが、能力が高い。演説文を考えてる時にそう思った。実務能力なら、先に演説した雪ノ下の方が圧倒的に高いだろう。だが、雪ノ下には無い能力を一色は持っている。それはコミュニケーション能力だ。生徒会長ともなれば、その辺りの能力も必要になってくる。そこを加味すれば、校内一優秀といわれる雪ノ下と肩を並べる実力だ。もし、ミスがあっても一年生だ。そこは大目に見てやってほしい。
ここまで話せば、一色を不信任にする理由はないはずだ。一年生にして生徒会長になろうという一色の心意気を無駄にしないでほしい。
俺からは以上だ』
もうメチャクチャだ。
…帰りたい。…帰って布団の中で悶えたい。