居場所   作:おたふみ

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十八話

演説会直後、俺達四人は生徒指導室に呼ばれていた。

「さて、比企谷。あれはどういうことだ?」

「平塚先生、『あれ』とは現国担当らしくない言い方ですね」

「比企谷、私の口から言わせたいのかね」

先生、指の間接ポキポキしないでください…。

「し、知りません。打ち合わせにはなかったです…」

「平塚先生、私のアドリブです」

由比ヶ浜、助かったよ。

「他の二人はどうかね?」

「由比ヶ浜さんには負けられませんから」

「私だって、お二人に負けるつもりはありません」

「比企谷、君はハーレムを作りたいのかね?」

「そんなことあるわけないじゃないですか…。養ってくれるならまだしも…」

「まぁ、そのことは後で聞くとして…。なにはともあれ、ご苦労だったな。私は今から一色の担任と厚木先生と校長室に行ってくる」

「何故、平塚先生と厚木先生が…」

「私と厚木先生は、文化祭の担当だったからな」

「すいません」

「なに。子供の責任を取るのは大人の仕事だ」

カッコいい。なんで結婚出来ないんだろう…。誰かもらってあげて!

「大人のことは大人に任せて、君たちは戻りたまえ」

「はい、失礼します」

はぁ、教室戻りたくないなぁ…。

「ヒッキー、教室行こう」

「行かなきゃダメか?」

「HRがあるからダメだよ」

 

教室に入ると好奇の目が…。川崎さん、何笑ってるんですか。

「八幡!」

「戸塚、どうした?」

「凄いね、三人に公開告白されるなんて」

「い、いや、違うんだ戸塚。何かの間違い…。そう、演説の内容が重いから、軽くしようとしたんだよ…。きっと…たぶん…おそらく…」

「そんなことないんじゃないかな」

戸塚、なんでそんなにニコニコしてるの?

…そういえば…

「葉山と戸部は?」

「演説会の後、サッカー部の顧問に呼ばれてたよ」

なるほどね。

「あ、先生来た。またね」

「おう」

 

HRが終わり、奉仕部に向かう。

その途中、見知らぬ男子生徒に声をかけられた。

「おい、比企谷」

「ん?誰だお前は?」

「ちょっとツラかせ」

「知らない人についていくなと、親に言われてるからな。断る」

「てめえ…!」

「ヒッキー、行ってあげたら」

「…由比ヶ浜」

「だとよ」

「勿論、私も一緒に行くよ。いいよね?」

「は?」

「いや、由比ヶ浜さんは…」

「せんぱ~い…。何をやってるんですか?」

「いや、あのな、一色…」

「いろはちゃん、やっはろー。この人がヒッキーに話があるみたいだから、私も聞こうかと思って」

「へぇ~、そうなんですね。私も話を伺いますよ」

「い、いや、比企谷に話とか…」

「何をやっているのかしら?」

「ゆ、雪ノ下…」

「なかなか部室に来ないと思ったら…」

「す、すぐに行くから、お前ら先に…」

「ダメだよ、ヒッキー」

「ダメです、先輩」

えぇ~、ダメなの。絶対、面倒臭いことになる~。

「どういうことかしら?比企谷君」

「いやぁ…、コイツとちょっと話が…」

「だから、私も一緒に話すよ」

「私もです」

「話は、いいや。じゃあ…」

「待ちなさい」

なんか雪ノ下が怖いんですけど…。

「貴方、比企谷君とどんな話をしようとしたのかしら?」

「そ、それは、もういいんで…」

女子三人に囲まれて、普通なら羨ましいはずなんだけど、なんだか怖い…。

結局、その男子生徒は俺を殴ろうとしていたことを自供して、そのまま、一色に連行されて職員室行き…。

 

余談だが、後日それが噂になり、『比企谷に手を出すと、ヒドイ目にあう』と言われるようになった。

 

時間はかかったが部室に到着した。

椅子は三つ横並びで置かれている。これが最近の定位置になっている。

 

「近いんですけど…」

「そんなことないわよ」

「えへへ」

「それに、あの演説はなんなんだよ…」

ため息混じりに聞いてみた。

「だって、普通に告白してもヒッキーは信じてくれないでしょ?」

「貴方にはこれくらいしないと伝わらないでしょ?」

「だからって…こんな…」

ふと、頭にあの言葉がよぎる。

「雪ノ下、お前のやり方、嫌いだわ」

雪ノ下が驚いた顔をする。続けて

「由比ヶ浜、もっと人の気持ち考えろよな」

由比ヶ浜も鳩が豆鉄砲くらったような顔をする。

「比企谷君…」

「ヒッキー…」

「くくくっ、あはははっ!悪い悪い。でも、言い返してやったぞ」

「比企谷君」

「ヒッキー」

「これで、オアイコだぞ。お前ら」

雪ノ下も由比ヶ浜も涙をこぼしながら笑っている。

「お前ら気持ちは俺に伝わったよ。だがな、こんな正面きって好意を向けられたことがなくてな、正直戸惑ってる。だから、返事は待ってくれないか」

「えぇ、わかったわ」

「うん、待つよ」

「由比ヶ浜さん、恨みっこ無しよ」

「わかってる」

 

しばらくすると、生徒会室に寄っていた一色と城廻先輩が来た。

 

「一色、当選おめでとう」

「おめでとう、一色さん」

「やったね、いろはちゃん」

「はい、ありがとうございます。みなさんのおかげです」

「まぁ、これから大変だろうけど、がんばれよ」

「先輩、何を他人事みたいに言ってるんですか?」

「だって、選挙終わっただろ」

「先輩のせいで生徒会長になったんだから、責任取ってくださいね」

「責任って、それのことね」

「それだけじゃないですよ。私をこんな気持ちにさせた責任も取ってくださいね」

あざとくウインクをしてくる一色。雪ノ下に由比ヶ浜、なんでそんなに睨むの。やめてください。

「そっか~。私も負けられないね♪」

ん?城廻先輩、どういうことですかね?

「私も比企谷君の彼女に立候補しま~す」

可愛く手を挙げる城廻先輩…。癒される…。って、なんですと!

「比企谷君、これはどういうことかしら?」

「ヒッキー?」

「先輩?」

「いやいや待て待て。俺が聞きたい」

「だって、泣いてる比企谷君見たらキュンて来ちゃって…」

モジモジする城廻先輩…。いい…。

「そ、そんなこと言われましても…」

ワタワタとしていると、扉をノックする音が。これは天の助けか…。

「どうぞ」

雪ノ下が返事をすると、川崎が入ってきた。

「なんだか賑やかだね」

「川崎か、どうした?」

「比企谷。アンタ予備校行くよね?」

「ん?ああ、行くぞ」

「ちょっと教えて欲しいところがあるから頼むね」

「文系なら任せろ」

「期待してる。じゃあ、それだけだから」

川崎が扉のところで止まった。

「そうだ、比企谷。スカラシップのお礼、ちゃんと言ってなかったよね」

「そうか?まぁ、気に…」

言いかけた時に、川崎が先に言葉を放った。

「サンキュー、比企谷。愛してるよ」

そう言った瞬間に川崎は真っ赤な顔をして逃げて行った。

 

「比企谷君…」

「ヒッキー…」

「先輩…」

「比企谷くん…」

なんで、みなさんハイライトの消えた目でボクを見るんですか?

怖い怖い、あと恐い。

 

どうやら、神様は悲劇ではなくラブコメ展開をお望みのようだ。

 

俺は静かに暮らしたいだけなのに…。

 




―――――――――――――――――――


アンチ・ヘイト要素を含んだモノが初めてでした。、ご批判・意見をいただいて、ありがとうございました。
一応、完結になります。
この展開の川崎ルートがベースにあったので、機会があれば公表したいと思っています。

お付き合いいただいて、ありがとうございました、

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