「比企谷君!」
肩を叩かれた激痛と大きな声で振り返る
「痛っ!!雪ノ下さん…」
「ごめん、そんなに強く叩いたつもりはなかったんだけど…」
「いえ、ちょっと…」
「ちょっと、何?」
「自転車で転びましてね」
「…ふ~ん、そうだったんだ。ごめんなさいね」
「知らなかったことなんで、仕方ないですよ」
「そ・れ・で!比企谷君は、なんでこんな時間にここに居るのかな?部活の時間じゃないの?」
「ちょっとやらかしましてね。戦力外通告をされました」
「今度は何をしたのかな?」
「守秘義務ですので」
「ふ~ん、まあいいや。雪乃ちゃんに聞いてみよ」
「そうしてください。きっと俺のことを嫌いになれますよ」
俺から口にすれば、俺の主観になってしまう。
本当のことを言えば味方になってくれるかもしれない。
味方になってもらっても、雪ノ下さんは信用出来るのか?答えは否だ。
「それで、部活は辞めたんだ」
「いえ、強制入部なんで辞められませんから。新しい依頼が来たので、席を外してそのまま直帰です」
「じゃあ、お姉さんとデートしようよ」
「転んで打ったところが痛むので遠慮します」
「じゃあ、デートしないでいいから、ここで少しお話ししようか」
「嫌ですよ。こんな美人と長話してたら、周りの目が痛いじゃないですか」
「もう美人なんて、このこの」
雪ノ下さんが肘でグリグリしてくるところも痛い…
「痛いですよ…」
「ごめんね、そこも痛いんだ」
「ええ、まあ」
「本当に転んだだけ?」
「そうですよ。間抜けな転び方しただけです」
「気をつけてね。未来のお義弟くん」
「その未来は来ないと思いますよ」
「どうしてかな?」
「やり方はマズかったにしろ、嫌われたと思いますんで」
「じゃあ、比企谷君は今回の件で嫌われなければ、その未来はあったと思う?」
少し考えてみる…。初めてあの部室に入った時に、その姿に心を奪われ、成長を目の当たりしてきた。嫌われてないとは思っていた。だが…
「無理でしょうね?」
「雪乃ちゃんのこと嫌いだったの?」
「むしろ逆です。憧れていました。雪ノ下に好かれてはなかったでしょう。好きな相手にあの罵詈雑言はないと思いますよ。小学生じゃあるまい…」
「そうかなぁ?雪乃ちゃん子供だからなぁ。仮に今告白されたらどう思う?」
「仮定の話をしても…」
後ろから凍てつくような声が聞こえてきた。
「何を話しているのしら?」
「雪乃ちゃんにガハマちゃん、ひゃっはろー。もうちょっとで比企谷君の本音が聞けたのに、思ったより早かったね」
「なんで、この男が居るのかしら」
「っ!す、すまん」
「なんで比企谷君が謝るのかな?」
「雪ノ下と由比ヶ浜は、俺の顔を見るのも嫌だろうから…」
「そっかそっか。三人揃ったから、まずは比企谷君が戦力外になった理由を聞こうか」
「俺は失礼しますよ」
「えぇ、そうしてくれるかしら」
「ヒッキーと話すこと無いモン」
雪ノ下と由比ヶ浜が睨んできてるのがわかった。
「う~ん、仕方ないけど帰っていいよ。二人が来たら顔色悪くなっちゃったし」
実際に、息苦しい…。雪ノ下さんが察してくれて助かった。
とりあえず、帰ろう。小町とは、まだ険悪だけど…。