翌日、昼休み。また殴られた痛みを引きずりながら教室に戻ると、戸塚が心配そうに駆け寄ってきた。
「八幡、顔色悪いけど大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。戸塚に心配かけて申し訳ないまである」
「八幡が調子悪そうなのは、雪ノ下さんのことかな…」
「雪ノ下がどうかしたのか?」
「雪ノ下さんが生徒会長に立候補するって由比ヶ浜さんが…」
それは悪手だぞ、雪ノ下…。
「八幡?」
「ああ、すまん…。そうか…」
川崎も心配そうに声をかけてきた。
「アンタ、大丈夫かい?」
「大丈夫だ…」
「大丈夫には見えないよ。保健室行くかい?」
「いや、少し座れば大丈夫だ…」
すると、由比ヶ浜が声をかけてくる。
「ヒッキー、放課後に部室に来て」
「あ、ああ、わかった…」
ダメだ。最悪の展開しか見えない…。城廻先輩と一色の依頼は破綻、そして、奉仕部は…廃部…。
気がつくと放課後になっていた。授業はまったく頭に入ってこなかった。
部室に入ると、雪ノ下、由比ヶ浜、城廻先輩に一色、平塚先生とすでに揃っていた。
「すいません、遅くなりました」
「早速、始めさせていただきます。今回の依頼ですが、私が生徒会長に立候補します」
やはり…。城廻先輩と一色がこちらをチラリと見たのがわかった。
「いいのか、雪ノ下」
「ええ、もう立候補の届け出はしましたので」
「奉仕部はどうするのかね?」
「由比ヶ浜さんに庶務として生徒会に入っていただくので、生徒会としてやっていきます」
ここは…、俺の居場所はどうなるんだ…。
「奉仕部はどうする?」
「廃部でよろしいかと…」
「比企谷はどうなるんだ?」
「比企谷君、よかったわね、これで無罪放免よ」
最後通告…。俺の居場所はなくなるのか…。
そんな手段ではなく他の方法が…。でも、これを言ったら嫌われてしまうのでは…。言えない…。
「何か言いたいのかしら?比企谷君」
「…いや、何もない」
俯いて、そう答えるのが精一杯だった…。
城廻先輩と一色は何か言いたげにこちらを見ているが、何も言えない。言いたくない…。
「では、私と由比ヶ浜さんは、選挙公約と演説を考えますので」
呆然としながら鞄を取り部室を出る…。
ふらふらとした足どりで下駄箱に向かうと、城廻先輩と一色に呼び止められた。
「比企谷君!」
「先輩!」
「すいません。今は何も考えられません」
そう言って靴に履き替えて、校門を出るとそこには…。
「ひゃっはろー!比企谷君」
「…雪ノ下さん」
「お姉さんとお話ししようか」
「拒否権は…」
「あると思う?」