居場所   作:おたふみ

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五話

雪ノ下さんに捕まり、ドーナツ屋へ…。

そこに、城廻先輩と一色も合流してきた。

「それで、雪乃ちゃんが生徒会長に立候補するっていうのは本当なの?」

「そうなんですよぉ」

「比企谷君は、それでいいのかな?」

「いいもなにも、決定権はないですから」

「一色ちゃんはいいのかな?」

「…よく、ないです」

「どうして?生徒会長にならなくていいんだよ」

「選挙の後に、イジメられるかもしれないからです…」

「比企谷君、さっき何か言いたかったんじゃないかな」

城廻先輩は、部室での俺の顔を思い出してそう言っているのだろうか。

「…いえ。ないです」

「比企谷君、嘘はいけないなぁ」

雪ノ下さんには、見透かされているのか…。

「わかりました。雪ノ下が立候補した時点で、俺の考えは破綻したんですがね」

「うん、それでかまわないから教えて」

「一色に生徒会長をやってもらうんです」

「それって矛盾してない?一色ちゃんは生徒会長やりたくないんでしょ?」

「いいんです。一色は悪意によって立候補させられた。でも、それに負けずに生徒会長になり、サッカー部のマネージャーも生徒会長もやっている。イジメをしてる連中は生徒会長には手が出せないでしょうからね」

「それって、私にメリットがあるんですかぁ」

「まず、それをやめろ。ヒドく不愉快だ。それをやってる限り生徒会長になっても意味がない。それをやめて生徒会長になれば、男子からも女子からも羨望の眼差しを向けられるはずだ。黙っていたって、お前は可愛いんだから」

「…あ、ありがとう…、ございます…」

「ふ~ん、比企谷君はそういう解決方法なんだね」

「それが出来れば、生徒会長選挙も一色さんのイジメも解決するね」

でも、もう無理なんだ…。

「立候補の取り下げはもう出来ない…。選挙戦になれば一色に勝ち目はない…」

無理なんだ…。

「もう奉仕部は…」

「比企谷君…」

「はい?」

「泣いてるの?」

言われて気がついた。俺は泣いている…。

「なに泣いてるんですかね。泣きたいのは一色なのに…。なぜ…俺が…」

あの場所が…、奉仕部が…、三人の関係がなくなることを再認識したら、涙が溢れてくる…。

 

涙が止まるまで、三人は待ってくれていた。

「すいません。お見苦しいものをおみせして」

「大丈夫だよ。雪乃ちゃんもガハマちゃんも罪作りだなぁ。比企谷君を泣かせて」

「いえ、アイツらは悪くないです。悪いのは俺ですから」

「何があったか聞かせてくれるかな?」

「それは出来ません。守秘義務ですので」

「今なら聞けると思ったのに。雪乃ちゃんにも聞いたんだけど、比企谷君の話も聞きたかったな」

心が弱ってるところを突いてくるとか、やめてほしい。

「城廻先輩、一色。まだ策はないか考えてみます」

「比企谷君、大丈夫?無理しないでね」

「はい」

「先輩、私ももう一度お願いします。今度は生徒会長になれるように」

「一色…。わかった」

俺はどんだけお人好しなんだかな…


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