雪ノ下さんに捕まり、ドーナツ屋へ…。
そこに、城廻先輩と一色も合流してきた。
「それで、雪乃ちゃんが生徒会長に立候補するっていうのは本当なの?」
「そうなんですよぉ」
「比企谷君は、それでいいのかな?」
「いいもなにも、決定権はないですから」
「一色ちゃんはいいのかな?」
「…よく、ないです」
「どうして?生徒会長にならなくていいんだよ」
「選挙の後に、イジメられるかもしれないからです…」
「比企谷君、さっき何か言いたかったんじゃないかな」
城廻先輩は、部室での俺の顔を思い出してそう言っているのだろうか。
「…いえ。ないです」
「比企谷君、嘘はいけないなぁ」
雪ノ下さんには、見透かされているのか…。
「わかりました。雪ノ下が立候補した時点で、俺の考えは破綻したんですがね」
「うん、それでかまわないから教えて」
「一色に生徒会長をやってもらうんです」
「それって矛盾してない?一色ちゃんは生徒会長やりたくないんでしょ?」
「いいんです。一色は悪意によって立候補させられた。でも、それに負けずに生徒会長になり、サッカー部のマネージャーも生徒会長もやっている。イジメをしてる連中は生徒会長には手が出せないでしょうからね」
「それって、私にメリットがあるんですかぁ」
「まず、それをやめろ。ヒドく不愉快だ。それをやってる限り生徒会長になっても意味がない。それをやめて生徒会長になれば、男子からも女子からも羨望の眼差しを向けられるはずだ。黙っていたって、お前は可愛いんだから」
「…あ、ありがとう…、ございます…」
「ふ~ん、比企谷君はそういう解決方法なんだね」
「それが出来れば、生徒会長選挙も一色さんのイジメも解決するね」
でも、もう無理なんだ…。
「立候補の取り下げはもう出来ない…。選挙戦になれば一色に勝ち目はない…」
無理なんだ…。
「もう奉仕部は…」
「比企谷君…」
「はい?」
「泣いてるの?」
言われて気がついた。俺は泣いている…。
「なに泣いてるんですかね。泣きたいのは一色なのに…。なぜ…俺が…」
あの場所が…、奉仕部が…、三人の関係がなくなることを再認識したら、涙が溢れてくる…。
涙が止まるまで、三人は待ってくれていた。
「すいません。お見苦しいものをおみせして」
「大丈夫だよ。雪乃ちゃんもガハマちゃんも罪作りだなぁ。比企谷君を泣かせて」
「いえ、アイツらは悪くないです。悪いのは俺ですから」
「何があったか聞かせてくれるかな?」
「それは出来ません。守秘義務ですので」
「今なら聞けると思ったのに。雪乃ちゃんにも聞いたんだけど、比企谷君の話も聞きたかったな」
心が弱ってるところを突いてくるとか、やめてほしい。
「城廻先輩、一色。まだ策はないか考えてみます」
「比企谷君、大丈夫?無理しないでね」
「はい」
「先輩、私ももう一度お願いします。今度は生徒会長になれるように」
「一色…。わかった」
俺はどんだけお人好しなんだかな…