GANTZ『焔』   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第10話 貴方に惹かれた者から先に、死んでいく事になる

「あっちでッ、あっちでッ、いっぱいッ、いるぞッ!」

 

 それはほむらが外の敵を掃討しにどこかへ跳んで行った後の事だった。

 北条(ホモ)と一緒に行動していたはずの苫篠(中学生)近藤(DJ)が慌てたように走ってきた。

 それは雑魚仏像と遭遇したような呑気なものではなく、もっと危険なものと出会ってしまったような慌て方であった。

 

「一体じゃないのか?」

「五体はいたぜ」

「気持ち悪い女と男前の兄ちゃんと、それからガラの悪いおっさんが三人で相手してる」

 

 ヤンキー達が言うには、現在本殿で戦っているのは北条(ホモ)鈴村(サダコ)根本(珍走団)の三人だ。

 いずれもスーツを着用しており、戦闘力は高い。

 根本などは暴走族だけあって喧嘩慣れしており、スーツを着た今その戦力は加藤とも並ぶ。

 それでもこうして助けを呼びに来たという事は、それだけ本殿にいる仏像が危険だという事だ。

 加藤は無意識にほむらを目で探したが、見える範囲内にはいない。

 ほむらは加藤の指示で外の敵を追いかけてしまっている。

 代わりに視界に映ったのは、外に残っている仏像と格闘をしている白人のJJだが、スーツのない彼を連れて行っても死人が増えるだけだろう。

 危険なのは外ではなかった……むしろ本殿の中こそが危険であり、ほむらは何となくそれを感じ取っていたのだ。

 だがそのほむらの進行方向を変え、本殿に北条(ホモ)達を行かせてしまったのは加藤である。

 悔いる気持ちと、きっと大丈夫だという自分への慰めが内心を駆け巡り、加藤は突き動かされるように走った。

 

 ――中に入った加藤達が見たのは、上半身だけになった北条(ホモ)鈴村(サダコ)の死体であった。

 

 二人は折り重なるようにして、唇を合わせて目を閉じていた。

 最後の最後で気持ちが通じ合ったのかもしれないが、死んでしまっては意味がない。

 ついさっきまで生きていたのに。動いていたのに。

 なのに死んでしまった。自分がここに行かせたせいで。

 その二人を千手観音像が見下ろし、口元には微笑を浮かべている。

 それが二人を嘲笑しているように見えて、加藤の怒りを煽った。

 少し離れた位置には根本が倒れており、こちらはまるで焼き切られたようにバラバラとなっている。

 後悔と怒り。それが加藤を突き動かし、気付けば口からは慟哭の叫びが漏れていた。

 

「うおおおオオおおおぉ!!」

 

 激情にかられ、加藤はYガンを構えて走った。

 状況確認も警戒もあったものではない。完全に衝動に突き動かされただけの行動である。

 だが迂闊な行動にはそれ相応のツケが支払われるのだ。

 入口の影に隠れていた仏像がYガンを蹴り飛ばし、加藤の動きを止める。

 それでもホルスターからXガンを抜き……発射。

 ここに来て遂に、加藤は相手を殺す武器の引き金を引いた。

 しかしその対象となった仏像は一瞬顔が歪むも、無数にある手の中のうちの一つが持つ時計が逆回りを開始すると何事もなかったかのように元に戻ってしまった。

 

「!?」

 

 驚く加藤に、瓶の中の液体を放つ。

 きっとこれも、何か危険な武器なのだろう。少なくともただの水という事はあるまい。

 それを他人事のように見ながら、攻撃直後の隙を突かれた加藤は動けない。

 だが加藤の危機に、岸本が動いた。

 加藤を庇うように前に飛び出し、加藤に抱き着く。

 その光景はまるでスローモーションのように加藤の目に移り、心臓が鼓動を鳴らす。

 

『貴方が間違えれば、その過ちが味方を死なせることになる』

 

 脳内でほむらの言葉が蘇る。

 しっかりと、聞いていたつもりだった。

 年下だなどと思わず、自分以上の強者の言葉として肝に銘じたつもりだった。

 だが……つもりはつもりだ。本当に身に染みたわけではない。

 

『それを履き違えたまま戦場に踏み込んだなら』

 

 液体が、岸本の胴に当たった。

 岸本はスーツを着ている。今までどんな攻撃を受けても守ってきてくれたスーツだ。

 西も死んだのはスーツが壊れてからで、スーツが無事なうちに死んだ者は今までにいない。

 岸本のスーツはまだ壊れていない。大丈夫だ。大丈夫であってくれ。

 そんな淡い希望を崩すように肉の焼ける嫌な臭いと音が響き、岸本の顔が驚愕と苦痛に染まる。

 そして――。

 

『貴方を信じ、貴方に惹かれた者から先に、死んでいく事になる』

 

 

 ――岸本の下半身が、落ちた。

 

 

「うわああアァ! おおおおオォ!!」

 

 岸本が致命傷を受けた事に加藤が茫然としている中、玄野が激昂した。

 加藤を跳び越えて怒りのままに千手観音の顔に膝を叩き込み、倒れた所を踏みつける。

 周囲の仏像がすぐに動くが、これを阻止するように桜丘が戦闘に加わった。

 加藤は何も出来ず、ただ岸本を抱き締めているだけだ。

 

「好き……加藤君……す……き……」

 

 遅すぎた告白。それが岸本恵の最期の言葉となった。

 加藤はもう何も考えられない。

 自己嫌悪と絶望に支配され、その場で止まっているだけだ。

 その間にも桜丘は洗練された蹴りで仏像を蹴散らし、Xガンの連射で敵を減らしていく。

 そして玄野は激情が命じるままに千手観音にありったけの銃撃を浴びせた。

 

 四散し飛び散る肉片。

 終わったと誰もが思った。

 だが次の瞬間、またも時計が逆回りして千手観音を再生させる。

 そればかりか、千手観音の手に触れられた玄野の左足はジリジリと消滅を始めていた。

 恐らく、時計を回して対象に触れる事で相手を消してしまえるのだろう。

 それでも諦めずに玄野は銃を向けるが、その腕を千手観音の剣が切り落とした。

 スーツの防御力など無視した恐ろしい切れ味だ。玄野は初の敗北と絶望に唖然とし、力なく地面に崩れ落ちた。

 悲劇の連鎖は止まらない。加藤の迂闊な行動が岸本を死なせ、岸本の死が玄野から冷静さを奪った。

 

「どッ、どうすればいいのッ? リーダーッ!

玄野君がッ、やられちゃったよッ!」

 

 この中で今、一番冷静なのは桜丘であった。

 彼女はこれまでの戦いを見て、自分では千手観音に勝つのは無理だと理解し、加藤に指示を求める。

 だが加藤は茫然としており、声が耳に入っていない。

 

「こいつあたしじゃ勝てそうもないッ!

どーすればッ!?

リーダーッ! まだ死んでないんでしょッ!?」

 

 桜丘の必死の呼びかけに、ようやく加藤の意識が現実へと戻った。

 もしも彼女がいなければ、無防備のまま千手観音に殺されていたところだ。

 加藤は岸本の死体を抱き締めたまま叫ぶ。

 

「死んだのかッ!? 死んだのか計ちゃんがッ!」

「死んでない! けど、もうすぐ死んでしまいそう!

片手と片足がないの!」

 

 加藤が少し自失している間にも絶望は進行していた。

 加藤は今、自分の背に桜丘と玄野の命を背負っている事を理解して頭を回転させる。

 

「まだ何とかなる! 一旦外に出てどこかに隠れよう! 連れ出せるか、計ちゃんを!」

「わかッた、やってみる!」

 

 優秀な女性であった。

 彼女は千手観音の動きに気を配りつつ、玄野を抱えてその場から跳んだ。

 加藤は何も言わなくなった岸本に口づけをし、彼女の遺体をそっと降ろす。

 そして、その場から逃げ出した。

 

 迂闊な行動の代償はあまりにも重く、そして大きい。

 加藤は逃げながらも、流れ出る涙を止める事が出来なかった。

 

 

 絶望は終わらない。

 加藤達が逃げたならば、当然その後を千手観音も追う。

 その千手観音の背後から迫るのは、危険性をまるで理解出来ていない苫篠(中学生)近藤(DJ)だ。

 二人は今更ながらスーツの重要性を理解して着用しており、手には銃も持っている。

 この装備を得た今ならば勝てると思ってしまっている。

 二人は知らないのだ。今自分達が挑もうとしている相手がいかに危険かを。

 スーツの防御力など容易く突破する怪物である事を知らないまま近付いてしまったのだ。

 

 戦いはあっという間に終わった。

 戦いにすらならなかった。

 敵の接近に気が付いた千手観音が二人の腕を斬り落とし、一瞬で無力化する。

 遠くから東郷が狙撃するも、やはり時計が逆回りして致命傷にならない。

 そればかりか、東郷の存在に気付いた千手観音は手にした灯篭からレーザーを発射し、東郷を狙った。

 かろうじて東郷はこれを避けて退避するも、近くにいた二人はそうはいかない。

 鞭のようにしなるレーザーによって身体を寸断され、何も言えぬままに絶命してしまった。

 更にレーザーが唸り、Xショットガンを構えていた岡崎(迷彩服)と、ステルス機能で姿を消していた宮藤(メガネ)をも切り裂いた。

 

「お、おお……ま、待て……わしは違う。わしは……」

 

 続けて千手観音が狙ったのは近くの物陰にいた徳川(坊主)であった。

 目の前で行われた瞬殺劇に徳川は怯え、後ずさる。

 だが千手観音はそんな徳川すらも逃がす気がないようでじりじりと距離を詰めた。

 

「ナ、ナム……シンキ……ミョウライ……」

 

 徳川は震えながら両手を合わせてお経を唱えた。

 そうする事で自分は寺の関係者であって敵ではないと伝えようと考えたのだ。

 すると千手観音はピタリと動きを止め、観察するように徳川を見る。

 

「はッ……そうかッ……そうか。

経を唱えると……大人しくなるのかッ」

 

 動きを止めた千手観音を前に、徳川は確かな手応えを感じた。

 やはり仏像だ。お経は効果がある。

 そう思い、彼は助かるという安堵から頬を緩めた。

 しかし結論から言えばそれは間違いである。

 何故なら今、ここにいるのは仏像などではない。仏像を着ただけの星人だ。

 お経の意味など分かるはずもなく、千手観音が止まったのは単純に『こいつ何やってるんだ?』という疑問から来る物でしかなかった。

 

「ナムアミ……ダブツ……」

 

 尚もお経を唱える徳川へ、無造作に水瓶の中の液体をぶっかけた。

 すると徳川は断末魔の叫びすら発せずに溶けてしまい、後には徳川だった赤い池が残されただけだ。

 続けて千手観音が狙ったのは桜丘だ。

 彼女は玄野の近くから動けず、加藤は落としてしまったYガンを拾いに本殿へ戻っていた。

 故に孤立無援の状態でこの怪物と対峙する事になってしまったのである。

 逃げる事は出来ない。腕と足を失った玄野を抱えたままでは早く動けないし、無理に動かせば玄野が血を流しすぎて死ぬかもしれない。

 戦うしかない……桜丘は、愛した男を守るために命を懸ける事を決意した。

 

「あたし……やッてみる……。

あたしこの仏像と闘ッてみる……」

「馬鹿……逃げろ……」

「あたしキックボクシングのジム通ッてるんだよ。試合もやッてるし」

「無理だ……馬鹿……」

「アイツ倒したら……ちょッとはあたしに惚れる?」

「えッ」

 

 玄野と桜丘は、ここにくる前にあのマンションの玄関で肉体関係となっていた。

 しかしそれは玄野にとっては失恋の痛みを埋める為のものでしかなく、半ば自暴自棄になってのものだ。というより本当にやらせてくれるなどと思っていなかったのだ。

 しかし桜丘は玄野に惚れていた。出会ったばかりだが、きっと理由などないのだろう。

 彼の泣き顔に母性本能が刺激されてしまったのかもしれない。

 どちらにせよ、恋に理由などない。惚れたから守る、それだけだ。

 

「よし、やッてみる。一緒に家に帰るんだよ。

絶対に、守ッてみせる」

 

 勝ち目は薄い。仲間が殺されるのを目の当たりにしてきた。

 それでもやるのだ。そうしなければ玄野を守る事など出来ないから。

 故に桜丘は決死の覚悟で死地へと挑む事を決心した。

 

 

 

「その必要はないわ」

 

 

 

 突如千手観音が弾け、少し離れた石畳の上に少女が着地した。

 それは現状、チーム最大の戦力であり数多くの敵を葬ってきた娘だ。

 逃げ回る外の仏像をようやく殲滅した彼女が、外に出た千手観音に気付いてここに駆け付けて来たのだ。

 ほむらは残っているメンバーの中に岸本の姿がない事に気が付いたが、疑問に思う思考を切り替えて目の前の敵へ集中する。

 

「気を付けて、ほむら。あいつの時計は身体を再生させる効果を持ち、時計を回している時に触れると身体が消えるよ。

まあこんなアドバイス、君には必要ないだろうけどね」

「そう」

 

 キュゥべえが敵の情報をほむらに伝え、ほむらはそれを基に戦術を組み立てる。

 何故キュゥべえが知っているかは後で問いただせばいいだろう。

 ほむらはXガンを足元に発射して石畳を破損させる。

 そうして出来た隙間に爪先を引っかけ、脚力に任せて蹴り剥がした。

 そして蹴り飛ばし、千手観音へとぶつけた。

 更にその上から跳び蹴り。石畳を間に挟む事で消滅を避け、千手観音を蹴り飛ばして玄野達から遠ざけた。

 ここでの戦闘は玄野が邪魔になるのだ。

 飛んで行った千手観音を追いながら走り、とりあえず再生を見る為にXガンを連射した。

 

「……なるほどね」

 

 瞬時に元に戻って行く千手観音を見ながら少し厄介だとほむらは思った。

 だが少しだ。攻撃そのものが通用しなかったワルプルギスの夜に比べれば大した相手ではない。

 再生するといってもお菓子の魔女のように再生がそのまま攻撃に繋がるわけでもない。

 千手観音の持つ灯篭からレーザーが放たれるも、走る速度を落とさずに避け、一気に距離を詰める。

 レーザー攻撃を知っていたわけではない。ただ光った瞬間に何かあってもいいように念のため回避動作に入っただけだ。

 レーザーは照射されたまま曲がり、ほむらを斬ろうと襲い掛かって来る。

 だがほむらは軽く跳躍してレーザーの上を越え、まるでフィギュアスケート選手のように身を捩じりながら銃を向けてロックオンした。

 撃ったのはYガンだ。再生するというのなら、これで動きを止めればいいだけの話である。

 Yガンから発射された三つのアンカーは光のワイヤーで繋がれ、三角形を形作っている。

 千手観音は跳躍してこれを避けようとするものの、発射されたアンカーは千手観音を追尾して曲がり、千手観音の周囲を廻る事でワイヤーでがんじがらめにした。

 その上でアンカーは上に向けてバーニアを吹かして地面に突き刺さり、完全に身動きを封じる。

 だが千手観音は動けないながらも再びレーザーを発射しようと試みる。

 しかしほむらは既に間近にまで迫っており、銃を持ったまま手の甲で千手の手を弾いてレーザーの軌道を逸らした。

 続けて千手は水瓶の中の液体をかけようとするも、Xガンで水瓶を叩かれた事で逆に自らが浴びてしまった。

 

「きょーーーッ! きょーーーッ!」

 

 自らの武器で半身を溶かされながら千手が叫ぶ。

 ほむらはその隙にYガンを空高くに放り投げ、ホルスターからXガンを抜いて武器をXガン二丁に切り替えた。

 そして二つのXガンを尋常ではない速度で連射。

 時計、灯篭、剣を次々と破壊し、あっという間に千手観音の武装を奪い取る。

 千手観音も何とか残された剣で反撃するが、当たる直前にほむらが身体を捻って剣を避け、更に避ける動作をそのまま攻撃へ繋げてXガンを発射。最後の剣をも破壊した。

 ほむらは避けて撃っているのではない。避けながら撃っている。

 回避と行動が二工程ではなく一工程で終わっているのだ。

 手数の差があるはずなのに、攻撃回数はほむらが上であった。千手観音が一度攻撃する間にほむらは三回は撃っている。

 それでいて敵の出先を優先して潰すものだから、一度ほむらにペースを握られてしまえば成す術などない。一方的にやられるだけだ。

 ワイヤーが千切られかけた所で、落ちてきたYガンをキャッチして発射。またも自由を奪って動く事すら許さない。

 

 だが千手観音もまだ終わりではない。

 転送されていく頭が外れ、観音像の中から異形の生物が飛び出して来た。

 呑気に這い出していてはほむらに狙い撃ちされると判断しての迅速な離脱だろう。案外頭も回るようだ。

 そして恐らくはこれこそが千手観音の正体なのだろう。

 大きさは2m以上はあるだろうか。

 6本の腕を持つ怪物は全身が粘液でテラテラとぬめりながら輝き、生理的な嫌悪感を感じさせる。

 顔はなく、首の中に埋まったままで何とも不気味だ。

 歩く度にヌチャヌチャと音を立てるそれを前に、ほむらはただ無表情で構えた。

 生理的な嫌悪感などどうでもいい。魔女の中にはもっとサイケデリックなものもいたので耐性はついている。

 ……ここまでストレートに気色悪いのはなかなかいなかったが、まあ我慢出来ない程ではない。

 しかしほむらは警戒していた。

 あの怪物の全身を濡らしている粘液……あれはもしかしたら触れれば溶けるのかもしれないし、毒なのかもしれない。

 だからまずそれを確認するために、足元にあった瓦礫の破片を踵で踏みつける。

 すると破片は回転しながら宙を舞い、弧を描くようにほむらの頭上を越えて彼女の目の前まで落ちてきた。

 それを掴んで怪物へ投げつける。

 すると怪物はそれを避ける事もなく受け、瓦礫が地面へ落ちた。

 

(……瓦礫が溶ける気配はない。少なくとも触れてもすぐに溶かされるとかはなさそうね)

 

 怪物がほむらへ向かって走り出した。

 6本の腕でほむらへ拳を放つが、ほむらはその全てを軽々と避けてバックステップを踏む。

 そしてXガンを向けると怪物は跳躍するが、それを読んでいたようにほむらも銃口を上へ向けて引き金を引いた。

 怪物が落下しつつ拳を地面に叩き込むが、ほむらの姿はない。

 次の瞬間怪物の腕の一本が弾けて千切れ飛び、そして怪物は自分のすぐ後ろにほむらが背を向けて立っている事に気が付いた。

 

「……」

「……」

 

 両者が背を向けたまま数秒の沈黙が流れ、そして弾かれたように二人が同時に振り向いた。

 残された5本の腕で殴ろうとするも、ほむらの小柄な身体には掠りもしない。

 格闘戦というのは大きくて重い方が有利なのは語るまでもないが、懐に潜り込まれてしまえば小さい方が有利になる。

 怪物の右ストレートをほむらが紙一重で避け、続く拳を身を捩じる事で避ける。

 ほむらの背中スレスレを拳が通過して、回転しながらほむらがXガンを発射した。

 そこに間髪を容れず次の拳打が飛ぶが、これも当たらない。

 更に続けてアッパーカット。ほむらはこれに足を乗せて拳の勢いにあえて逆らわずに後方宙返りを決めつつ着地と同時にXガンを撃った。

 Xガンの時間差ダメージによって怪物の腕がまた一本千切れ、更にそこから遅れてもう一本が千切れる。

 

「きょーッ!」

 

 3本になってしまった腕でほむらに殴りかかろうとするも、ほむらはこれに対し背を向ける。

 そして大きく後方に宙返りをして怪物を飛び越え、怪物の背を取ってXガンを連射した。

 怪物の腕が3本千切れ、とうとう腕を失う。

 これに加藤達は拳を握り、ほむらの勝利を確信した。

 だがまだ終わりではない。最後の一瞬まで戦いは分からない。

 怪物の尻尾が動き、槍となってほむらの心臓目掛けて突き出される。

 

 血飛沫が舞う。

 肉片が飛び散る。

 

 切断された怪物の尻尾が宙を舞い、そしてガンツソードを手にしたほむらが怪物へ肉薄した。

 剣の扱いは決して得意ではない。

 だが数多の時間軸の中では時にはさやかと敵対する事もあった。

 その時の動きは記憶しているし、見様見真似程度ならば不可能ではない。

 剣閃が走り、怪物とすれ違ったほむらが背を向けたまま停止する。

 そして怪物は、真っ二つになって崩れ落ちた。

 二つに分かれた死体を一瞥し、ほむらは不満そうに目を細める。

 

「切り口が雑……やはり見様見真似では上手く行かないわね」

 

 そう言いながらXガンを連射して、念のために怪物をバラバラにした。

 やはり剣は銃に比べて苦手だ。

 とはいえ、これは強力な武器である。

 この剣の扱いに慣れておく事は、スーツと併せて今後の大きな課題になるだろう。




千手観音「きょーッ! きょーッ!」
訳:初心者チームだと思ってたのに何だあの小娘!
難易度調整ミスってんじゃないのかこれ!?
クソゲー! クソゲーだね!

ほむらの到着が遅れた結果、結構な数の死人が出てしまいました。
それでも一応駆け付けてくれたので、原作のように全滅まではしません。

【現時点での生存者】
・暁美ほむら
・キュゥべえ
・玄野計
・加藤勝
・桜丘聖(トゥームレイダー)
・東郷十三(ゴノレゴ)
・犬
※ほむらが迅速に仏像を処理して回ったので生存。
今回の選択肢は実は岸本とこいつの生存二択だった。
ほむらが本殿に行けば岸本、外に行けば犬が生存する。

・JJ(カラテカ)
※外にまだ仏像がいたので、そっちの相手をしていて千手戦回避。生存。

・杉本カヨ
・杉本亮太
※寺院の門を通らずにずっと隠れていた。
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