GANTZ『焔』   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第12話 もう誰も死なせねえ

 ほむらは夢を見ていた。

 夢と分かったのは、今見ているものが既に過ぎ去った過去の出来事だからだ。

 色彩が反転したような建物の中でほむらが走り、その後をマネキンが追う。

 ここは魔女の結界の中で、魔女の結界というのはほぼ例外なく魔女の心の深層を映し出している。

 この魔女はどうも衣装に並々ならぬ拘りがあるようで、使い魔はマネキンの姿をしていた。

 しかし本体である魔女は透明であり、その上から衣装を適当に羽織っているという姿で何を着ても似合いそうにない。

 

「くっ……!」

 

 普段ならば時間停止が使えずとも積み上げた経験と戦闘勘で十分倒せる相手だった。

 だがほむらはこの魔女と戦うまでに連戦しており、既にソウルジェムは濁り切っていて満足に魔法が使えない状態に陥ってしまっている。

 浄化するグリーフシードも既になく、加えてこの魔女以外のあらゆる魔女はほむら自身が駆逐した後だ。

 つまりは、これが最後だ。この魔女さえ倒せば地球から魔女はいなくなる。

 前の時間軸のまどかの願いで魔法少女も生まれず、本当の意味でのハッピーエンドを迎える事が出来るのだ。

 だというのに……この最後の最後で、ほむらは限界を迎えていた。

 

「あぐっ!」

 

 マネキンの蹴りがほむらの腹にめり込み、派手に蹴り飛ばした。

 何度も地面をバウンドしてようやく止まるものの、ダメージは深い。

 恐らく骨が何本かいかれているし、内臓も潰れている事だろう。

 それでも震える手で盾から武器を出そうとするが、その腕を踏みつけられた。

 

「ぐっ……う!?」

 

 乾いた音が響き、腕が動かなくなる。

 続けて他のマネキンがほむらに飛び乗り、残った手足をへし折ってしまった。

 歯を食いしばり、悲鳴を上げる事こそしなかったが……致命傷だ。もう動く事すら出来ない。

 その様子を見ていたキュゥべえが、感情の無い声で言う。

 

「ここまでだね、暁美ほむら。君の最後の戦いはどうやら、敗北で終わるらしい」

「ふざ、け……ないで……! こんな、事で……」

「無理だよ。もう君に魔力は残っていない、身体も動かない。傷を治す事も出来ない。

君に出来るのは、ここで魔女に殺されるか……絶望して魔女になるかのどちらかだ」

 

 キュゥべえに事実を告げられ、ほむらの視界が歪む。

 これで最後なのに。

 やっとここまで来たのに。

 なのに、この最後の最後で負けるのか。

 魔女という不安要素を残してしまうのか。

 もう少しで約束に手が届くはずだった。迷路をやっと抜けられるはずだった。

 なのに……結局また駄目なのか? また届かないのか?

 

「……まど、か……」

 

 今まで繰り返してきた時間のまどかの顔を思い出す。

 本当はいつだって助けたかった。見殺しにしていいまどかなんて、見捨てていい時間軸なんて一つもなかった。

 それらを踏み越えてようやくここまで来たのに、諦める事なんて出来ない。

 たとえこの身がどうなろうと……まどかの幸せな明日だけは、守って見せる。

 その決意に呼応してソウルジェムが最後の輝きを放ち、紫の光でほむらを照らした。

 

「これは……なるほど、最後に魔力を暴走させて自爆するつもりか。

恐れ入ったよ暁美ほむら、凄まじい執念だ。

……けど――」

 

 

 ――そして、ほむらのソウルジェムは光と共に砕け散った。

 

 

 多くの犠牲を出して終わった前回のミッションから一月半が経過した。

 ほむらにとっては慣れない二人暮らしから解放されて一人暮らしへと戻っただけのはずだったが、この一月半は妙な物足りなさを彼女に感じさせていた。

 しかも嫌な夢まで見るし、気分は正直なところ最悪に近い。

 思えばマミと同居した一月を除けば、誰かと一緒に暮らす事はほとんどなかった。

 生まれた時から極度に心臓の血管が細かったほむらは、昔から転院と引っ越しを繰り返し、その果てに大規模な総合病院を抱える見滝原へと辿り着いた。

 見滝原ならば医療設備が充実しており、優秀な医者も多く抱えている。あの街ならばほむらがこれ以上引っ越しを繰り返す必要はない。

 だから病院近くのアパートを借り……そして、生活費の仕送りだけを受けながらほむらは一人で暮らす事となった。

 親の仕事の都合はあったし、資金面での問題もあった。

 だが今にして思えばきっと、疎まれていたのだろうと分かる。

 魔法少女になってから尚更会う機会などなく、一人でいる事にすっかり慣れてしまった。

 だが岸本との同居は、そんな慣れという名の殻に罅を入れるには十分過ぎたのだろう。

 今でも岸本の為に買った日用品を処分する気になれず、彼女の部屋もそのままだ。

 だから嫌だったのだ、他人と慣れ合うのは。

 まどか一人を救うだけで何度も失敗してきた自分がそんなに多くを抱え切れない事などほむら自身が一番よく分かっている。

 大事なものを増やしても、それは掌から零れ落ちて辛いだけだ。

 だから大事な者はまどかだけでいい。それ以外いらない。

 失っても、それが大事でなければ辛くないから。

 

 ほむら以上にダメージを受けているのは玄野と加藤だろう。

 玄野は数日ほど抜け殻のようになってしまったし、加藤は覇気を失った。

 だが喪失の痛みなど時間は考慮せず、無情に過ぎていく。

 そして次のミッションもまた、始まりの時を告げるのだ。

 

 

 

 今夜も悪夢の夜が幕を開ける。

 どれだけ日常を望んでも、どれだけ平和な世界に帰りたくとも、ここに呼ばれた以上は100点を取らない限り助からない。

 前回の生存者である八人と二匹が再び部屋に集結し、そしてそのまま新たな参加者を加える事なく皮肉に満ちたラジオ体操の歌が響いた。

 歌の内容はこれから起こる事と正反対で、腹が立つほどに陽気で明るい。

 亮太などはこの歌が完全にトラウマになっているようで、聞くだけで泣き喚いている。

 

 ――てめえ達は今からこの方をヤッつけに行って下ちい。

 チビ星人。

 特徴 強い。根にもつ。

 気にしていること 背の低さ。

 特技 人マネ 心を通わす。

 

「今回は……追加なしなのか……?」

「あるのか、そんな事ッて」

 

 誰も新規参加がいない事に加藤と玄野が驚きを見せる。

 これで四回目となるが、今までは常に新しく誰かが補充されていた。

 西の言葉を振り返っても、玄野達が来るまでは大体西と犬だけが生き残って他は死んでいたというから、やはりミッションの度に追加されていたのだろう。

 玄野は誰も来ない事に困惑していたが、加藤は僅かな安堵を感じていた。

 

「来ないなら来ないで、俺達だけでやればいい。

考えによッては、今日は誰もこの地獄に連れてこられなかッたッてことだ」

「そうね。こんな事に巻き込まれる人間は少ない方がいいわ」

 

 加藤の前向きな言葉に桜丘も同意した。

 人数は減ってしまったが、それでもまだ合計で八人と二匹もいるのだ。

 ならばこの面子で戦い、勝てばいい。

 むしろ余計な犠牲が増えなくていいではないか。そう彼女は考えていた。

 

「生き残るぞ……今度こそ、ここにいる全員で。

絶対……絶対だ!」

 

 加藤は決意を新たに、自分に言い聞かせるように言う。

 もう死なせない。誰も死なせたくない。

 岸本の時のような悲しみはもう沢山だ。

 死なせない、絶対に死なせない。まるで呪詛のように加藤はそれだけを脳内でリフレインし続ける。

 

「オーケィ、カトウ。ガンバロー!」

 

 JJが不慣れな日本語で加藤に賛同し、親指を立てる。

 前回は胴着だけを着ていたが、今回は胴着の下にスーツを着用していた。

 元々肉体戦闘能力に優れる彼ならば、素手でも十分に戦えるだろう。

 

「……任務了解」

 

 東郷は今回もXショットガンを武器に選択し、他の武器に全く興味を示さない。

 今回の服装はビジネススーツの下にガンツスーツだ。

 これで生存率は大分上がったはずだ。

 鷹のように鋭い瞳は既に戦場へ向けられており、戦いのプロは己の心を完全に律して戦いの時を待つ。

 

「ええ、生き残るわよ玄野クン。

まだデートも一回しかしてないんだから」

 

 桜丘は前回同様にスーツ姿だ。

 彼女は勝気に笑い、玄野へ優しい視線を向けた。

 

「ああ……もう誰も死なせねえ。もう、誰も……」

 

 玄野は、岸本の死を通じて何かを感じたのだろうか。

 それとも恋人が出来た事で彼の中の何かが変わったのかもしれない。

 その顔は今までのような頼りないものではなく、どこか鋭いものへと変わっていた。

 分かりやすく言えば、少し男前になっていた。

 

「グルルルル……」

 

 犬は――何か、今までと明らかに様子が違っていた。

 前回までの間抜け面は消え、牙を剥いて唸っている。

 そんな彼に、ほむらは厳しく『命令』をした。

 

「まだよ。おすわり」

 

 すると犬はビシッ、とした姿勢でその場に待機した。

 前回まで呑気な顔でウロウロとし、岸本の股間に飛びついていたものと同一犬とは思えない。

 しかし、これこそがある意味本来の姿なのだ。

 彼――ライス(命名・ほむら)の犬種であるボーダーコリーは元々、体力と運動神経に優れたイギリス原産の牧羊犬である。

 その知力は全ての犬種の中でトップと言われ、人との共同作業を好み、そして家族には愛情深い。

 足場が悪く急な斜面の多い山岳地帯で活躍していたボーダーコリーはエネルギーに溢れ、不安定な足場の上でも活発に動き回れるだけの運動能力と体力を有している。

 ドッグスポーツ競技でも優れた成績を残し、一時は上位を独占したという記録まである。

 ボーダーコリーは決して愛玩犬などではなく、優れた能力を誇る使役犬なのだ。

 こんな犬種をバター犬にしてしまっていた前の飼い主はおかしいとしか言えないだろう。

 岸本の死後、マンションに居座るようになった彼をほむらは徹底的に躾け直した。

 今のままでは戦力外だし、いずれ死ぬのが目に見えているからだ。

 岸本の死が影響を与えたのか、それともほむらの躾が厳しかったのか――どちらかは分からないが、彼はボーダーコリー本来の鋭くも凛々しい顔つきを取り戻していた。

 ここにいるのは、もう役立たずのバター犬ではない。

 ほむらに従順な一匹の優れた使役犬として彼――ライスは生まれ変わったのだ。

 

「これ……あのバター犬だよな?」

「なあ、これ、別の犬連れてきてねーか?」

 

 前回までとは違う犬にしか見えない凛々しさに加藤と玄野は困惑を隠せなかった。

 しかしボーダーコリーとは元々こういう犬なのだ。

 それが前の飼い主によって間違えた育て方をされ、本来の能力を殺されてしまっていたのである。

 

「躾けたのよ。一月半だから付け焼刃だけどね」

 

 ほむらは腕を組んだまま、何でもない事のように答える。

 元々ライスは人の言葉を理解出来るほどに賢かった。

 だからこそ、たったの半年でこうまで変わることが出来たのだ。

 最初からポテンシャルは高かったのである。

 

「転送が始まったわ」

 

 ほむらの言葉に全員の目つきが変わった。

 彼女の言葉の通り、加藤の頭が消え始めている。

 今日も始まるのだ。地獄の一夜が。

 ――必ず生き残る。

 前回の惨劇を知るからこそ、全員がそう強く決意した。

 

 

 今回の舞台は、どこかの高層建築物の屋上であった。

 しかし今更どこが戦場になろうと驚くには値しない。

 値しない……が、ほむらは無言で手に持っていた武器をキュゥべえの耳毛に持たせた。

 その武器の名前はZガンといい、前回の100点で獲得した武器だ。

 ほむらはミッション前にZガンの性能を空き地で試してみたのだが、その威力は驚くべきものであった。

 ZガンはXガンに比べてタイムラグが少なく、上から重圧を発生させて効果範囲を押し潰す武器だ。

 まだ生物には試していないので具体的にどのくらいの威力なのかは未知数だが、今回の戦場とは致命的に相性が悪すぎる。

 こんなビルの上でZガンなど撃とうものなら、確実に大きな被害が出るだろう。

 折角の100点武器だが、残念ながら今回は使用を見送った方がよさそうだ。

 

「ま、問題ないわね。行くわよ」

 

 いきなりZガンが使用不可能になったが、結局のところ今までとやる事は変わらない。 

 ほむらは屋上から屋上へと跳んで移動し、その後を離れる事なくライスが続いた。

 今までの彼からは想像も出来ない俊敏さだ。

 

「いたよ! あそこだ!」

 

 キュゥべえが敵を発見し、ほむらが素早くXガンを発射した。

 今回の標的であるチビ星人はその名の通り、背の低い敵らしい。

 真っ白な肌に感情を感じさせない表情が特徴的だ。

 腕は太く、背中には翼のようなものがあった。

 頬にはナルトのようなグルグルマークがあって少しひょうきんさを出している。

 しかしこんな外見でも恐ろしい星人だ。ほむらの射撃を素早く避け、剛腕を振りかぶってほむらへ肉薄する。

 だがその横を何かが通過し、チビ星人の首から青い血が噴き出した。

 やったのは――ライスだ。

 その口にはチビ星人の肉片がくわえられており、鋭い牙で噛み千切ったのだと分かる。

 

「ウォウ!」

 

 犬の咬筋力は強い。

 小型犬でも本気で噛めば人間の指くらい簡単に噛み千切れてしまう。

 優れた中型犬であるライスならば、その牙はもはや凶器と言っていいだろう。

 そんな生物がガンツスーツを着用し、本気で噛んだのだ。その殺傷力は計り知れない。

 再びライスがチビ星人に噛み付き、動きを止める。

 そこを狙ってすかさず放たれたほむらの銃撃が当たり、チビ星人の頭を吹き飛ばした。

 更に後ろから跳んできたチビ星人も、振り返る事なく銃口だけを向けて引き金を引く。

 するとチビ星人の拳がほむらに当たる直前に身体が弾け、バラバラの肉片だけがほむらを追い越して飛んでいった。

 

「よくやったわ」

「ワォン!」

 

 ライスを褒め、頭を撫でる。

 それからすぐに他へと視線を向け、夜のビルを睥睨した。

 戦いはまだ始まったばかりだ。ほむらの周囲を囲むように次々と新しい敵が降り立つ。

 今の瞬殺劇を見て、一体では手に負えないと判断したのだろう。

 複数のチビ星人がフェンスの上に乗り、ほむらから距離を保ちつつ彼女を見下ろした。

 

『同胞はもう動かない』

『許すまじ』

『お前も同じように解体してやる』

 

 口は動いていないのに、声が直接頭に響く。どうやらテレパシーを使うようだ。

 これまでの何を言っているのかも分からない星人に比べると、随分と理性的というか知性が高いようだ。

 フェンスから飛び降りて、ほむらの逃げ場を塞ぐようにじりじりと距離を詰める。

 それに対しほむらは動かず、あえてチビ星人に自分を取り囲ませた。

 

「コーッ!」

「コッ!」

 

 前後のチビ星人が拳打を放ち、ほむらは身を捩じって避ける。

 胸の前と背中スレスレを拳が通過し、ほむらはそのまま両側に向けて両手のXガンの引き金を引いた。

 更にXガン二丁を空に放り投げ、胸の前と背中の拳をそれぞれ掴んで回転。

 すると拳を突き出したチビ星人も遠心力に振り回されて他のチビ星人に衝突……時間差でXガンの効果で弾け、攻撃しようとしていたチビ星人の体勢を崩した。

 別のチビ星人がほむらの腕を掴みにかかるも、跳躍してその腕を踏み台に跳ぶ。

 空中で丁度落ちてきたXガンをキャッチして上下反転。地面のチビ星人達へ向けてXガンを連射し、少し離れた位置に着地した。

 そこにチビ星人達が走るが、先程空中から撃たれたチビ星人はほむらに到達する事すら出来ずに弾け、残り僅か五体となる。

 一体目の拳打を避け、勢い余ってほむらの横を通り過ぎてしまった彼にすれ違いざまXガンを撃ち込む。

 二体目にXガンを撃つとそれを避けるが、二体目が視界を遮っていたせいで後ろにいた三体目にXガンが当たる。

 接近してきた二体目の拳を避けて身体を密着させ、腹に一発。

 そのまま蹴りで四体目にぶつけて跳躍し、四体目の頭に逆立ちするように手を置いてXガンを頭部に当てて離れる。

 最後の五体目にはライスが噛み付き、首をへし折って噛み殺していた。

 遅れてほむらに撃たれた順にチビ星人が弾け、肉片へと変わる。

 

 チビ星人の死体を背に、動き回って乱れた髪を手で軽く流し……そしてほむらは次の敵を探して移動を開始した。

 

 

 

「せいやああッ!」

 

 JJは空手の魅力に取りつかれた白人格闘家である。

 日本人よりも優れたフィジカルを持ち、センスに優れた彼は空手歴一月で仏像を素手で破壊するほどに天才だ。

 その戦闘力はスーツを着ていない状態でも、多数の仏像を撃破するほどである。

 そんな男がスーツを着ればどうなるか……それは、今彼が戦っているチビ星人が証明してくれるだろう。

 

「せいッ、はッ!」

 

 JJの拳がチビ星人の顔にめり込み、頭蓋骨を陥没させた。

 チビ星人も負けじと反撃に出る。

 その腕力は一撃でビルの壁すら砕くほどに強い。

 だがJJはあろう事かそれを容易く防御し、またも拳を繰り出した。

 

「イヤーッ!」

『……ッ!』

 

 空手こそ最強の格闘技である。

 事実はどうあれJJは心底からそう信じており、その想いは信仰にも近い。

 かつてJJはただならぬ空手の使い手である日本人と出会い、その強さに魅了された。

 今でも覚えている……目の前で見せられた数々の空手技を。

 正拳突き、足刀、手刀……どれも芸術的であった。鮮烈に記憶に焼き付いた。

 あの領域は遥か遠く、背中すら見えていない。

 それでも目指すのだ。その為にも、こんなところで死んでいるわけにはいかない。

 

『おのれ……許さぬぞ……このような』

「でやーッ!」

 

 チビ星人がその高度な知性でテレパシーを発し、何かを言いかけたが構わずJJは殴った。

 彼はまだ日本に来て日が浅いのだ。

 日常生活で相手の言葉に耳を傾けている時ならともかく、こんな時に日本語で話しかけられても理解出来ない。

 

『お前を決して許しはし』

「せいやあああッ!」

 

 JJの拳がチビ星人を打ち抜く。

 正しい構えから繰り出される正拳突きは彼の誇りであり、最強の武器だ。

 たとえ異星人相手でも負けぬという自負がある。

 

『おのッれ!』

 

 今度はチビ星人が怒りのままにJJの顔へ拳を叩き込んだ。

 だがJJは倒れない。揺らがない。

 敵の拳を受けたまま、その瞳はブレる事なく相手を見据えている。

 

「イヤァァァァァァッ!!」

 

 次々とJJの拳がめり込み、滅多打ちにする。

 チビ星人も負けじとノーガードで迎え撃つが、差はすぐに表れた。

 全身至る所を殴られ、折られ、チビ星人は無事な箇所がないほどに打ちのめされていく。

 やがて、JJの拳に耐え切れなくなったチビ星人は血を撒き散らしながら倒れ、絶命した。

 そんな彼の前でJJは腕をクロスさせ、そして拳を腰に当てた。

 

「押忍ッッ!!」

 

 

 

 

 東郷十三は優れた射撃の腕でチビ星人を仕留め続けていた。

 動きがいくら速くとも、狙われている事に気付けなければ回避動作は取らない。

 そして気付いた時には頭を撃ち抜かれている。

 敵を倒すのに曲芸染みた動きや派手さは要らない。

 ただ一発の銃弾と、確実に眉間を打ち抜く腕があれば事足りる。

 生憎と今使っているのは銃弾などないXショットガンだが、武器が変わっても東郷の腕は変わらない。

 撃つ――ビルとビルの間を抜け、先にいたチビ星人の頭が破裂した。

 撃つ――チビ星人が加藤を襲って跳躍するのを先読みして抹殺する。

 撃つ、撃つ、撃つ――一発目でビルの窓を砕き、二発目で対面側の窓を砕き、三発目でビル一つ挟んだ先にいたチビ星人をヘッドショットで仕留めた。

 そんな彼を背後から別のチビ星人が襲撃する。

 だが、それすらも読んでいたように、素早く振り返って銃口を押し当てる。

 

「――俺の背後に立つな……!」

 

 ――射殺。

 そうして余計な障害を排除した東郷は再び『仕事』へと意識を戻したのであった。

 

 

 

「ふッ!」

 

 桜丘の鋭い蹴りがチビ星人の顔へとめり込んだ。

 キックボクシング経験者であり、試合もこなしている桜丘の戦力は女性でありながらそこらの腕自慢を凌駕している。

 チビ星人の拳を俊敏なフットワークで避け、的確に攻撃を当てていく。

 チビ星人は確かに強い。だが背が低く、基本的に拳で戦う彼等はリーチが足りない。

 蹴りと拳では蹴りの方が有利な事は素人でも知っている事だ。

 加えて、桜丘は周囲をフェンスで囲まれた場所を戦場に選択していた。

 あえて狭い場所で戦う事でチビ星人の最大の武器であるスピードを殺したのだ。

 チビ星人を角に追い込み、逃げ場を塞ぐようにして戦う。

 速い相手をコーナーに追い込むのはボクシングなどでもよく使われる手だ。

 チビ星人の脚を執拗に蹴り続け、徹底的に機動力を削ぐ。

 その上で遠心力を乗せたハイキックを放ち、チビ星人の首をへし折った。

 

「ふーッ……ふーッ……あたしも結構やるじゃない」

 

 構えを解かぬまま自画自賛し、恋人である玄野へと視線を移した。

 彼はビルからビルへ跳び移り、追ってきたチビ星人が空中で身動きが取れない瞬間を狙って撃ち落としている。

 この僅かな時間でチビ星人を攻略する方法を編み出し、実践しているのは流石のセンスとしか言いようがない。

 

「さすが玄野クン。惚れ直しちゃうわね」

 

 童顔の恋人の雄姿に桜丘は微笑み、すぐに戦士の目に戻って次の敵を探し始めた。




新たな相棒枠! 意外ッ! それは『犬』ッ!
岸本死亡により、まさかの犬覚醒ルート解放。どうしてこうなった。
ほむらがソロプレイを脱しました。

【ガンツ節】
「っ」が「ッ」だったり、「ん」が「ン」だったりするガンツ独特の特徴。
初期の頃には見られなかったが、千手観音戦前後から増え始める。

・初期段階(1巻~5巻)
大体田中戦終了まで。ほぼガンツ節なし。普通の漫画と変わらない。
あえて言うならば興奮状態の時に「こいつ撃つぞッ!」みたいな感じで台詞の最後にカタカナの「ッ」が入る程度。
そんなに変わった表現は見られない。

・第2段階(6巻~17巻前半)
千手観音戦で「ッ」の頻度が上がる。
キャラクターが興奮状態だと普通の台詞でも「ッ」になる。
特に桜丘さんは玄野が千手にやられて以降はずッとこれ。

・第3段階(17巻後半~26巻)
興奮時だけではなく通常の台詞にまで「ッ」が浸食を開始。勢力を拡大する。
どうしてこうなッた。
大阪編まで行くとほぼ「っ」が「ッ」に駆逐されてしまい、更に時々「ん」が「ン」になる。
ガンツ節の一つの完成と言ッていい。

・最終段階(ラストミッション~カタストロフィ)
ほとんどの「ん」が「ン」になッている。
なンでこんな表現にしてンのかはよく分かンない。
ちなみにほむらを始めとするまどマギのキャラクターにはガンツ節は適用されない。

Q、チビ星人増えてません?
A、増えてます。(原作では10体)
まあゲームではモリモリ出て来るから……。
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