GANTZ『焔』   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第14話 やはりお前はここの住人だッたんだな

「うわああああッ、危ないッて! 飛ばしすぎだッつーの!」

 

 夜の道路を、一台の車が走っていた。

 いや、走るというよりもそれは爆走という表現の方が正しいかもしれない。

 カーブの度に車体が斜めになり、あちこちぶつけそうになりながら走る様は心臓によくない。

 そんな車の中で玄野は慌てふためいた声をあげていた。

 運転席にいるのはミッションで知り合って以降、正式に付き合う事となった桜丘聖だ。

 

「どお、玄野クン、私の腕は!」

「もッと前! 前見て! こんな飛ばして大丈夫なのかよ!?

アンタ免許取り立てッて言ッてただろ!」

「そうよ! 今日で二度目のドライブ!」

「うわああ! 死ぬ、死んじまう! 降ろしてくれ!」

「大丈夫大丈夫!」

 

 あまりに荒い運転に玄野は生きた心地がしなかった。

 年上の彼女である桜丘は母性本能が強く、甘えさせてくれる、自分には勿体ない彼女だと思っている。

 顔の彫りが深くて日本人に見えないが間違いなく美女だし、スタイルもいい。

 性格も優しく、サッパリしていて頼り甲斐があり、少し付き合い難かった岸本と違って話しやすいタイプだ。

 学校で危うく地味な同級生に告白させられそうになった時も、彼女の写真を見せて『他に彼女いるから他の罰ゲームにしてくれ』と言ったら同級生は何も言えずに黙ったほどだ。

 勿論告白はしていない。代わりに罰ゲームで嫉妬の尻バットをされた。

 制服の下にスーツを着ていたから痛くなかったが、最近転校してきた和泉紫音のスイングが何故か本気だったのは少し腹が立った。自分も可愛い彼女がいるくせに。

 しかしそんな桜丘でもやはり欠点というものはあったらしい。

 まさかこんなに運転が酷いとは思わなかった。

 ……余談だが、桜丘がガンツ部屋に転送された際の死因は、バイクでスピードを出し過ぎての事故死である。

 

「……あッ」

 

 桜丘は何かを感じたのか、慌てて車を道路の端に停車した。

 その直後に玄野も強烈な寒気を感じ、身体が動かなくなった。

 この感覚は、ガンツ部屋に転送される前の予兆のようなものだ。

 強烈な寒気が走り、それから少しして身体が動かなくなり部屋に送られる。

 もう少し桜丘が停車させるのが遅れれば、転送される前に二人揃って事故にあっていた事だろう。

 かくして、今日もまた希望の朝を迎える為の夜が幕を開ける。

 

 

 玄野と桜丘が転送されると、そこには既に先に来ていただろうメンバーが集結していた。

 友人にしてリーダーの加藤。

 狙撃の腕が頼りになるプロフェッショナルの東郷。

 少し日本語が怪しいが、格闘戦だけで敵を薙ぎ払うJJ。

 しっかりと躾けられたのか、前回よりも更に凛々しくなった犬のライスはもう最初の頃の面影がない。誰だお前。

 ライスの現飼い主にして最強の戦力である暁美ほむら。

 これに桜丘と玄野を加えた六人と一匹がこのチームの主戦力だ。

 キュゥべえは……正直、役に立っているのを見た事がない。

 だが今回はそれだけではなく、前回見なかった……そして見慣れた顔があった。

 

「い……和泉?」

「玄野か。やはりお前はここの住人だッたんだな」

 

 和泉紫音。

 三か月ほど前に玄野と同じ学校に転校してきた超が付くほどのイケメン野郎である。

 ただ顔がいいだけではなく、成績もトップで運動神経も抜群と非の打ち所がない。

 その彼の横には何故かパンダがいて纏わりついているが、玄野にはそれどころではなかった。

 

「お、お前……死んだのか?」

「ああ……まあ……ちょッと車にはねられてな」

「そ、そうか」

 

 こんな完璧超人でも死ぬときは死ぬんだな、と思うと何だか不思議な気持ちだった。

 正直この男が車なんかにはねられるというのが想像出来ないが、まあそんなものなのだろう。

 それに信じられない死因といえばトップは他にいる。

 ……暁美ほむら。

 最初は別に疑問など感じなかったが、彼女の超人的な能力を見れば見る程、階段から落ちて死ぬような女ではないと思ってしまう。

 

「知り合いか? 計ちゃん」

「あ、ああ……こいつ、俺の同級生なんだよ。

多分西が作ッたっぽい『黒い玉の部屋』ッてサイトでここの事を知ッてた節はあッたんだけど……まさか本当に来るなんて」

「そうか。まあ来てしまった以上は協力するしかない。

ええと……和泉さんッて呼ばれてたな。俺は加藤だ、よろしく頼む」

 

 加藤が握手を求めるように手を差し出すが、和泉は別の方向に気を取られているようで気付いていない。

 彼の視線はほむらへと向いており、観察するように鋭く細められている。

 

(人形のように整った容姿に、背中で左右に分かれている長い黒髪……落ち着き払った態度に、外見と不釣り合いな気配(オーラ)……そして肩に乗せた奇妙な生物。

間違いない、あいつが暁美ほむらだ。実在したのか)

「和泉さん?」

「ん? ……ああ、すまない。考え事をしていた」

 

 ようやく加藤の手に気付いた和泉が加藤と握手を交わす。

 しかしそうしながらも、彼の目は部屋にいる先住民を注意深く観察し続けていた。

 そして気付くのは、今はなかなかの手練れが揃っているという事である。

 『黒い玉の部屋』ではサイト運営者である中学生以外はどいつもこいつも間抜けですぐに死んでいき、その中学生一人と犬だけが生き残るのが定番の展開だった。

 しかし今、部屋にいるのは強者の空気を纏う精鋭ばかりだ。

 サイトでは馬鹿犬と言われていた犬ですらキリッとしており……いや、あれはもしかして別の犬だろうか?

 

「和泉さん、早速で悪いんだがスーツを着て欲しい。

こいつを着ているかどうかが生死を分けるくらい重要なんだ。

コスプレみたいで恥ずかしいだろうが……」

「ああ、着るよ」

「え?」

「サイトに書いてあッた通りだ。それを着ていないが為に死んだ奴が大勢いるんだろう?

なら俺は着る。死にたくはないからな」

 

 和泉は自分のスーツを取りながら、少しずつ記憶を取り戻していた。

 そうだ、まずスーツを着て、それから武器を取る。これが基本だ。

 更に、ガンツが開いてから入れるようになる部屋があり、そこに刀とバイクが置いてある。

 和泉は記憶を頼りに部屋を開け、そこに無造作に置かれていた刀を拾った。

 

「そ、その部屋の事まで知ッてるのか……」

「俺達は暁美に聞くまで知らなかッたのに……西の奴、そんな事まで書いてやがッたか」

 

 加藤と玄野はどうやら、和泉が迷いもせずにいきなり隠し部屋を開いた事を西のサイトのせいだと思っているらしい。

 しかしそんな中、ほむらだけは和泉へと疑いを持ち始めていた。

 ……素人ではないと一目で思わされた。

 ほむらは和泉に、修羅場を抜けてきた者特有の強者の空気を感じている。

 いかに元々の能力に恵まれていようと、あれは殺し合いの世界を実際に潜り抜けなければ身に付かないものだ。

 やがてガンツからいつもの音楽が流れ始め、加藤が慌てたように辺りを見た。

 

「ま、待ッてくれ。まだあのお婆さんと子供が来ていないぞ!」

「どうなッてるの……?」

 

 加藤に続いて桜丘も回りを見るが、やはりいない。

 その事に全員が嫌な予感を感じ、ほむらは一瞬で予感を確信へと切り替えた。

 

「死んだ、のでしょうね。ガンツとは無関係に」

「そんな……折角、ここまで生き残ッて来たのに」

 

 ほむらは目を閉じ、老婆の笑顔と自分を見る少年の瞳を思い出していた。

 現実などこんなものだ。

 救っても、それで漫画のように恰好よく活躍したりするわけではない。

 生き延びたからといって何か役割を与えられる事などあるはずもなく、ただ死期を延ばすだけで死ぬ者は結局無意味に死んでいくのだ。

 唯一の慰めは、これであの二人が地獄から解放され、人として死ねた事くらいか。

 ミッション中に死ねば、死体すら残らない。

 一般人から見えなくされたここの者達はその死を表の世界では認識されず、やがてその死体もガンツによって処分される事だろう。

 死体すら残らない死、という点では魔法少女と似ていると言えなくもない。

 だがあの二人は外の世界で人として死んだのだ。

 それだけが唯一の救いだ……そう思わなければ、ほむらはやり切れなかった。

 

 

 

(あの二人は間引きされたようだね。まあそれも仕方ないか)

 

 一方でキュゥべえは、カヨと亮太がいなくなった理由をほぼ正確に把握していた。

 人類よりも高度な文明を持つキュゥべえにとって、ガンツのセキュリティなどすぐに破れる障子と何ら変わらない。

 パソコンが一つでもあればいくらでも情報を抜き取れるし、世界各国のやり取りだって全て把握出来る。

 いや、パソコンなどなくてもいい。何ならほむらの携帯電話を勝手に使って見る事だって出来る。

 故に彼だけはカヨと亮太が排除された理由を把握していた。

 一言で言えば、二人が間引きされてしまった理由は『賭けにならないから』。それだけだ。

 

 以前も語ったように、ガンツのミッションはリアルタイムで世界中の富豪や権力者に配信されて賭けの対象になっている。

 誰が真っ先に死ぬか。誰が生き残るか。誰が点数を稼ぐか。

 そうした賭けの中で、カヨと亮太は完全に邪魔になってしまっていた。

 元々この二人は、言ってしまえば大穴枠であった。

 99%死ぬだろうが、もしかしたら生き残るかもしれない。生き残れば賭けた人はラッキー……その程度の扱いだ。 

 こうしたものは別に珍しくはない。今までにも何度も、どう考えても生き残れるはずがない大穴枠というのは招かれて来たし、悪趣味な賭けの参加者達はその死に様を楽しんで来た。

 生き残る力のない弱者が戸惑い、もがき、泣き叫び、そして死んでいく……そんな姿を自らは安全圏から眺めるという優越感。娯楽。

 それは賭けに参加している者達にとって最高のエンターテインメントだったのだ。

 全くもって効率の悪い話だとキュゥべえは思うが、要するにカヨと亮太は最初から生き残る事など期待されていなかったのである。

 

 だが彼等にとって予想外の事が起こった。

 本来ならばすぐに死ぬはずの二人が、いつまで経っても残り続けてしまったことだ。

 普通はこうはならない。ガンツのミッションは残酷なまでに強い者だけが残って弱い者は間引きされていくように出来ている。

 仮に隠れ続ける事で生き延びても、その時はミッション失敗でペナルティだ。

 次のミッションで15点を取れなければ自動的に死亡が確定するという、徹底的に弱者を間引く為のルールが用意されている。

 しかし暁美ほむらという特大のイレギュラーがそのあり得ない事を起こしてしまった。

 カヨと亮太はミッション中にただ隠れているだけで、賭けの対象にならない。つまらない。

 しかしほむらが敵を蹴散らすのでミッションは成功扱いになる。

 賭けにならなくても戦ってくれれば、その戦いを楽しむ事が出来る。

 だが戦いすらしない。

 いくら映像を見てもミッション開始から終了までずっと隠れているだけ……こんなのは娯楽にならない。

 

 だから賭けを主催している者達……つまりは、マイエルバッハと日本の財閥チームはカヨと亮太を間引く事を決めた。

 同じく賭けになりにくい対象でも、ほむらとカヨ達は違う。

 常にトップしか走らない馬は誰もが賭けるから、賭けの対象としてみればあまり良いものではない。

 しかし一位を取り続ける馬は人気者だ。ファンも出来る。

 何より強ければカタストロフィにも使える。

 カヨと亮太はそうではない。ただの走らない不人気な馬だ。

 だが間引くにしてもやり方というものがある。

 爆弾で殺す事は勿論容易かったが、何かルールを違反したわけでもない二人をおおっぴらに爆弾で死なせてしまうのはあまりスマートではない。

 大勢の観客はカヨと亮太の退場を望んでいるが、それでも『主催者が自分で決めたルールを破るのはどうなのだ』という非難は当然出るだろう。

 いくら内心で退場を望んでいても、ルールというのは大切だ。主催者ならば尚の事守らねばならない。

 例えば競馬で誰も賭けないような足の遅すぎる馬がいたとして、しかしそれはこの後に開かれるいくつかのレースに出馬が決まっているとする。

 当然賭ける側は『あの馬はもういらないだろう』と思うし、賭けは盛り下がる。

 しかし、だからといって主催者側がそれを追い出して別の馬に替えました! ……では、非難される。

 だがトラブル(・・・・)ならばどうか? 馬同士で喧嘩をして止むを得ず(・・・・・)替える必要が出たならば……それは主催者のせいではない。

 

 つまり、和泉紫音は利用されたのだ。

 賭けを主導している者達にとっては結論から言えばどちらでもよかった。

 爆弾で殺しても、和泉を使っても……どちらでも結果は変わらない。

 ただ、和泉の独断と暴走という事にした方が説明が楽だ。

 

 本当にただそれだけの……それだけの理由で和泉紫音は利用され、そしてあの哀れな老婆と孫は殺されてしまった。

 しかしキュゥべえはこの件に関して何も感じる事はなかった。

 非効率的だとは思うし無駄だとも思う。

 最初から呼ばなければいいではないかとも思う。

 だがそれだけだ。人間の考えが理不尽で効率が悪く、理解の範疇にないのはいつもの事である。

 

 わけが分からない(理解する気もない)……それだけだ。

 

 

 

 ――てめえ達は今からこの方をヤッつけに行って下ちい。

 かっぺ星人。

 特徴 なまる 汗かき。

 好きな物 トカゲ 鳥。

 口ぐせ おーらのどーごがなまっでんだ。いっでみろっつの。

 

 

 今回のターゲットが表示され、それを見てから各々が準備を開始した。

 標的が出てから転送されるまでの時間は短い。

 その間に準備を済ませなければ準備不足でミッションに放り込まれる事となってしまう。

 ほむらは腕にレーダーと周波数変換装置を取り付け、Zガンをキュゥべえに引っ掛ける。

 それからXショットガンとYガンもコートの内側にあるホルスターへ入れ、ガンツソードを腰に差した。

 コートの袖口には既に二丁のXガンが収納されていて、いつでも取り出す事が出来る。

 玄野はXショットガンとXガンを。加藤はYガンとXガンを手にした。

 東郷はいつも通りにXショットガン以外には目もくれない。

 JJは何も持たず、あくまで己の空手のみで挑む。

 桜丘は格闘重視でありながらもXガンとガンツソードを持ち、そしてバイクへと跨った。

 

「使えるのか? それ」

「任せて。あたしバイク得意だから」

「でもあんたの死因ッて……」

「平気平気」

 

 流石に慣れているメンバーは準備が早い。

 いや、今回は慣れている面子だけではなく初参戦のはずの和泉まで準備を完璧に整えている。

 彼は初めてとは思えない程にスーツを違和感なく着用し、Xガンとガンツソードを手にした。

 まるでソードが自分に最も合った武器だと分かっているかのような迷いのない動きだ。

 

「そのパンダ……一応、そいつにもスーツを着せた方がいいな」

 

 加藤は『ホイホイ』と書かれたスーツケースを持ってパンダに近寄る。

 パンダというのは見た目の愛らしさとは裏腹に割と凶暴で人が近付くのは推奨されていない。

 見た目がいくら可愛くてもパンダは熊なのである。

 しかしこのパンダはどうも人に慣れているらしく、和泉にじゃれつく時はしっかりと加減しており、加藤が近付いてもコロコロと転がっているだけだ。

 スーツも抵抗なく着せる事が出来たので、これで生存率も上がるだろう。

 

「始まッたな……今回は東郷からか」

 

 東郷の頭から先が消え始め、いよいよ地獄への入り口が開かれたと全員が緊張を高めた。

 だが今回は自信があった。

 前回に犠牲を出さずに勝てた事もそうだが、今回はほむらに教えを請い、トレーニングを積んできている。

 彼等の実力は確実に前よりも上のものとなっているのだ。

 

「いいか皆ッ、今回も生き残るぞッ! 全員でッ!

俺達はッ、誰も死なない! 生きて帰るんだ!」

 

 加藤が声を張り上げて鼓舞し、玄野、桜丘、東郷、JJ、ライスが頷いた。

 やがて全員の転送が終わり、素早く状況の確認をする。

 今の所、付近に敵はいない。レーダーを見てもとりあえずすぐ遭遇する位置にはいないようだ。

 続いて場所。どうやら今回の戦場は駅近くの国際展示場らしい。

 現在は『大恐竜博』の会場となっており、中には恐竜の骨などが展示されているはずだ。

 

「敵は……近くにいないな」

「中にいるッぽいわね」

 

 玄野がレーダーを慎重に確認しながら言い、桜丘は『大恐竜博』に複数の反応を発見した。

 東郷は早速移動を開始し、建物の上へと跳躍する。

 彼のスタンバイした位置を中心に陣形を組み、敵が東郷に近付かないようにしつつ、東郷の援護狙撃を受けながら戦う。それがベストの戦法だ。

 そしてどうしても援護を受けられない建物の中には格闘能力に秀でたJJと桜丘を先頭にして突入するというのが皆で考えて出した最善の戦い方であった。

 また、東郷の近くには必ず一人が待機して不意打ちを防ぐ事になっている。

 そしてほむらは基本的に自由行動の遊撃だ。

 とにかく片っ端から敵を駆逐して回るのが彼女の役割である。

 一応この中で一番の実力者であり、今は全員にとっての師のような立場になってしまったほむらだが、だからといって今更協調性の無さが改善するわけでもない。

 というより、連携が取れないというのが正しい表現かもしれない。

 ほむら一人だけが突出しすぎている為に、玄野達が下手に援護をしてもそれはかえって彼女の邪魔になってしまう。

 かろうじて彼女のスピードについていけるのは、ライスしかいない。

 だからほむらは現状ではスタンドプレーに徹するしかないのだ。

 そして、協調性がないといえばもう一人……。

 

「お、おい、和泉がいないぞ?」

「あいつ……どこに行ッた」

 

 和泉紫音もここに来ると同時に一人でどこかへ行ってしまい、彼の後をついていったパンダもまた姿を消していた。

 彼にしてみれば他のメンバーとの共闘などまるで興味がなく、興味があるのはここにどんな敵がいて、どんなスリルを与えてくれるかだ。

 何をしてもつまらない外の世界とは違う、生きるか死ぬかの快感がきっとここにはある。

 それだけを望み、彼は一度解放されたはずの地獄に自ら帰ってきたのだ。

 

「気にする必要はないわ。それより陣形を乱さないで」

「しかし……」

「レーダーを見る限り、博物館に向かったらしいわ。

私も今から行くから、見かけたらついでに拾ってくるわよ……必要があればね」

 

 早くも浮足立っている加藤に、余計な動きをしないようにほむらは釘を刺した。

 そうしなければ彼は和泉を探そうとして陣形を崩し、そして無駄な死者を出してしまうだろう。

 やはりこの男はリーダーに向いていない、とほむらは思う。

 善人である事は美徳だが、リーダーが迷走すれば全員が迷走してしまうのだ。

 故に皆を引っ張る者に必要とされるのは優しさなどではなく、状況を理解し最適解を出す機転と冷静さである。

 何より加藤にはカリスマ性がない。彼にはリーダーに必要な素質が抜け落ちているのだ。

 

(強制的にでも玄野さんにリーダーを交替させるべきかもしれないわね)

 

 そんな、本人に言えば落ち込みそうな事を考えながらほむらは地面を蹴って走り出した。




マイエルバッハ(おかしい……何故あの変なのは爆発しない……?
というかアレは何なんだ……?)
※他人事のように言っていたが実はQBも普通に間引き候補。

【賭けに参加しているような人達】
権力者A「せっ‥‥押せ‥‥っ!」
権力者B「たたかえ‥‥っ! ワシはお前に賭けてるんだ‥‥っ!」
権力者C「何をしている‥‥っ! 動け‥‥っ! 戦え‥‥っ!」

【ただ人の死を眺めているだけの人達】
富豪A「カカカ‥‥っ!」
富豪B「キキキ‥‥っ!」
富豪C「クゥクゥクゥ‥‥っ!」
富豪D「ケケケ……!」
富豪E「コココ‥‥っ!」

あんなもの(ギャンブル)は‥‥貧乏人のすること‥‥!
賭けずとも‥‥十分楽しめる‥‥!
人が恐れおののきながら 戦う‥‥‥‥なきながら戦う‥‥その様を‥‥
こうした安定した場所で見ていると もうそれだけで‥‥‥‥しみじみ幸せを感じられる‥‥‥‥!

普段感じることのできぬ「セーフティ」という名の悦楽‥‥‥‥!
「安全」であることの愉悦‥‥‥‥!
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