GANTZ『焔』 作:マジカル☆さくやちゃんスター
キュゥべえ「わけがわからないよおおぉぉ……」ぎゅううう……
・ドアの間にキュゥべえを挟む事でドアが閉まるのを阻止していた。
「まじッすよ、ここ渋谷ッす!」
人通りの多い渋谷の往来の中で一人の吸血鬼が電話をかけていた。
帽子に眼鏡、ラフなコートを着用し、傍目にはただの人間にしか見えない。
実際、普段は人間として振る舞う事で社会に溶け込んでいるので見分けるのは至難の業だろう。
そんな吸血鬼の末端に属する男は名を茂武といい、同じ吸血鬼の組織に属する仲間へと声をかけていた。
その理由は、渋谷を歩いていた時に偶然ガンツメンバーと思われる男を見かけたからだ。
腹が立つほどに整った顔立ちと、男にしては珍しいセミロングヘアー。
それは氷川――組織でも最強と目される四人の武闘派の中でもリーダー格に位置し、先日にガンツメンバーと交戦した中での唯一の生き残りでもある金髪の美丈夫――から仲間達に伝達された、黒い機械の服を着たメンバーのうちの一人と一致する。
無論それだけでは決定打にならないが、氷川が過去にもその男と出会っていたおかげで昔の写真を引っ張り出せたのが大きかった。
氷川曰く、しばらく見なかったので死んだと思っていたらしいが先日に再会した事でそれが間違いであったと分かったのだとか。
その写真の男が今、恋人と思われる女を連れて渋谷を歩いているのを茂武が発見したのだ。
「今一緒に移動中です、はい! 間違いないッスよ!
はい、出来るだけ多人数、強い人お願いします。
……あッ、まじスか? 斎藤さん達近くにいるんスか? はい、充分ス!」
『ああ? マジ? 本物だろーな、おい。
分かった、すぐに行く……』
「はい、お願いします! ……ところで斎藤さん、風邪スか?
なんか、声が普段と少し違うような……」
『あー……今ゲーセンいっからよ、それで変に聞こえんじゃね?
周りうるせーからよー……』
「それよりだ。俺が行くまで仕掛けるんじゃねーぞ。
仲間はなるべく多く集めろ。一人でも多くだ。
先日にこっちは大勢殺られてる……油断せずに集められるだけ集めろ」
茂武が話す電話の向こう側。
そこは地獄絵図であった。
壁や天井の至る所に血液が飛び散り、臓物や肉片が散乱している。
そして電話の持ち主であり、茂武が今話しているはずの斎藤は――物言わぬ屍となって床に転がっていた。
そんな彼を見下ろしながら、電話で話しているのは暁美ほむらだ。
手にはボイスチェンジャーを持ち、血の海の中で顔色を変えずにあまり得意ではない演技を続けている。
「ああ、絶対に先走るな。勝率は高けりゃ高いほどいい。
お前はとにかく、付近にいる仲間全員に声をかけるんだ。
じゃあ……今から行くからよ。待っていろ」
電話を切り、ほむらはボイスチェンジャーを片付けた。
ライスの鼻を頼りに吸血鬼の拠点の一つであるセミナーを潰したのが昨日の事で、そのうちの何人かを『尋問』して、吸血鬼の溜まり場となっているこのゲームセンターの位置や、何人かの名前と顔、住所やその他諸々の情報を得る事にほむらは成功していた。
余談だが今回はライスは留守番だ。
あのガンツがあるマンションの部屋は外からは開けられないので中には必ず誰かを残しておく必要があるからだ。
ライスは犬だが、とても賢いのでほむらが帰ればすぐに気付いて器用に後ろ脚で立ってドアを開けてくれる。
尚、そのライスを連れて行く必要がある場合は、ドアの間にキュゥべえを挟む事で閉まらないようにしていた。
今回ほむらが狙ったのは、斎藤一騎という名の坊主頭の吸血鬼だ。
組織の中では武闘派として知られているようで、彼を慕う者も多い。
ほむらは早速、その斎藤を急襲して他の雑魚諸共抹殺し、そして今度はその斎藤の電話に新しい獲物が連絡を寄こしてきたので咄嗟に演技をして多くの吸血鬼を誘い出したのだ。
また、入手した吸血鬼達の顔と住所は東郷に送信し、遠方からの狙撃で既に十人余りを暗殺している。相変わらず見事な腕前であった。
人の姿をした者を撃つ事に戸惑いが少しはあるかと思ったが……やはり彼はプロだ。
玄野や加藤とは根本から心構えが違う。
そういう点では和泉も躊躇なく撃つだろうが、アレは単に良心のタガが緩いだけである。
自制と理性を働かせた上で、鋼の意思で引き金を引けるプロフェッショナルと、単に自制を捨てて自らの欲望に忠実に動く者は全く違う。
無論言うまでもなく、東郷が前者で和泉は後者だ。同列に並べては東郷に失礼である。
(……私はどちらなのかしらね)
何となくそう思ったが、自分はどちらでもないような気がした。
ほむらが現場に行くと、大勢の吸血鬼が和泉を取り囲んでいた。
近くには見知らぬ女性も一緒だ。和泉に寄り添うようにしているので、和泉の彼女なのだろう。
吸血鬼達は勝利を確信したように、和泉達を完全に舐め切った態度でクラブに連れて行くだの拉致るだの、女は食っていいだのと話し合っていた。
なるほど、クラブに集まっているのか。いい情報だ、とほむらは思った。
とりあえず尋問用に一人だけ残し、後は片付けていいだろう。
そう決めたほむらは姿を消したままXガンのロックオン機能に全員を捉えた。
一人だけはあえて急所を外して四肢に照準を合わせている。
――発射。
和泉を取り囲んでいた吸血鬼達が爆散し、ただ一人残された哀れな吸血鬼――茂武が恐怖と混乱に泣き叫びながら地面を転がった。
「! これは……」
驚きに目を見張る和泉の前でほむらはステルスを解除する。
和泉の服装は学ランだが、よく見れば下にはスーツを着ているので案外彼一人でも何とかなったかもしれない。
唖然としている彼の前を横切って、倒れている茂武に近付くと彼の頭を踏みつけて動きを封じた。
四肢は奪ったが何せ吸血鬼だ。こちらの予想もしない攻撃をしてくる可能性もある。
なので情報は惜しいが、もしも妙な動きをすれば即座に撃ち殺すつもりであった。
「ひ……やめてくれッ! 撃たないでくれッ、なんでも、なんでもするからッ!」
「……私は情報を必要としている。貴方がそれを提供出来るなら、撃たない事を約束してもいい。
先程、『クラブに連れて行く』と言っていたわね。その場所を言いなさい」
「そ、それは……勘弁してくれ、それを教えたら俺が氷川さんに殺されちまう……」
「そう、残念ね」
ほむらはXガンの引き金に指をかけた。
脅しているわけではない。
話さないなら話さないで仕方がないので、本当にここで始末する気なのだ。
その本気を感じ取ったのだろう。茂武はより一層怯えを強くした。
「まッ、待て! 撃つのか!? 少しは取引しようとか、そういうのは……」
「言わなければ撃つ。言えば撃たない。条件は先に提示した通りよ」
「分かったッ、言うッ! 言うからやめてくれッ!」
「なら、早く言いなさい」
ほむらは銃を突きつけたまま、茂武の口から吐き出される『クラブ』の情報を脳に叩き込んでいく。
メモは取らない。携帯にも残さない。
ほむらの瞳は茂武から一度も外れず、油断なく銃口は突き付けたままだ。
やがて茂武は情報を吐き終えたのか、縋るようにほむらを見た。
「い、言ッたぞ! これでッ……」
「ええ、約束は守るわ。
男の前でほむらが銃口を下げ、茂武の目が安堵に染まる。
だが次の瞬間、ガンツソードを出した和泉に彼は絶望した。
「けど、彼を止める約束はしていないわ」
一閃。
ほむらが彼の体の上から退くと同時に和泉の刀が吸血鬼の首を落とした。
自分でも詐欺師のような手法だとは思っているが、禍根は後に残せない。見逃す選択肢は最初からない。
長くに渡ってインキュベーターの『嘘を吐かずに騙す』やり口を見てきたせいで、すっかりそういう言い回しに慣れてしまった自分に少し嫌悪感を覚える。
腹が立ったので、肩の上に乗っていたキュゥべえの顔を両手で挟んで圧迫した。
キュゥべえは蛙が潰れたような鳴き声を出した。
「暁美ほむら……こいつらは……」
「この前の襲撃者のお仲間よ。貴方も災難だったわね。
プライベートでまで襲われるなんて」
刺すような和泉の視線を受け流しながらほむらは銃を仕舞う。
次に向かうべき場所は分かった。
都内にあるクラブ……そこが吸血鬼の拠点だ。
ほむらは踵を返し、早速そこへ向かうべく歩を進める。
だがそれを和泉が呼び止めた。
「待て、暁美ほむら……どこへ行く気だ?」
「今、そこで死んでいる奴から聞き出した場所に」
「ならば俺も行く。一方的に襲撃されるのは性に合わない」
「……それは、そこの彼女さんを家に帰してからね」
和泉の腕の中では、あまりに常識外れな事が続いたせいか彼女らしき女性が気を失ってしまっていた。
そんな彼女を殺戮現場に連れて行くわけにもいかないだろう。
ほむらがそう言うと、和泉は渋々了承を示した。
◇
吸血鬼狩りを始めてから数日。
ほむらと和泉は手分けして情報収集をし、都内にあるいくつかの吸血鬼の溜まり場を潰して回ったが、まだあの時の金髪男とは遭遇していない。
茂武から聞き出したクラブは当初はすぐに襲撃するつもりであったが、あえてまだ残している。
理由は、下手に自分達の知っている敵の拠点を全て潰してしまうと相手が散り散りになり、捕捉が難しくなるからだ。
それよりは一つくらい、奴らの『逃げ場所』を残しておいた方がいい。
その方が敵も集まってくれるし、居場所を失った吸血鬼もやって来るだろう。
クラブに襲撃をかけるならば、やはりあの金髪がいる時に仕掛けたいというのがほむらの考えだ。
それに何もしていないわけではない。
ほむらは既に、クラブの中に盗聴器とカメラを仕掛けて敵の動きを把握できる状況を作っている。
周波数を変換してのステルスは、吸血鬼達が使う特殊なサングラスやコンタクトレンズを使う事で見破れるが、『そこに見えない人間がいる』と知らなければ、使おうともしないだろう。
更にクラブの吸血鬼達は踊ったり殴り合ったり、連れ込んだ女を餌にしたり……要するに遊ぶ事に夢中で警戒が全くと言っていいほどなかった。
自分達のホームという安心感もあったのだろうが、おかげでほむらは簡単に目的を達成する事が出来た。
――そして今日も、夜が始まる。
次々と転送されてきたのは、顔なじみのいつものメンバーだ。
今回はそれに加えて新たにガンツに呼ばれた者達が現れた。
人数は六人。そのうちの五人はガラの悪い、いつぞやの暴走族を思い出させるような連中だ。
ファッションはややお洒落で、暴走族や不良というよりは、チーマーというべきなのかもしれない。
要するに反社会的行動を格好いいと誤解し、他人に迷惑をかける事を何とも思っていないロクデナシ達である。
最後の一人は……女子大生? もしかしたら社会人かもしれない。
パッとしない顔立ちの、ごくごく普通のどこにでもいるような女性である。
(……大外れ)
ほむらは、今回の新規参加者六人を早々に見限った。
女性の方はどう見ても戦闘力皆無。鍛えている様子もなし。
おどおどした様子から、そもそも性格も闘争向きではない。
言っては悪いが、長生きするか早死にするかの二択しかないだろう。自力での100点獲得は絶望的だ。
残る五人は論外。闘争向きの性格はしているだろうが、むしろこっちは生き残られた方が困る。
下手にガンツのミッションに慣れて力を得てしまうと、その力でどれだけ大勢の人間に迷惑をかけるか分かったものではないし、こちらに攻撃してくる可能性すらある。
生き残るよりは、さっさと死んでくれた方がよほど有難い存在だ。
そんな連中にも加藤は説明をし、生き残らせようと頑張っているがほむらは興味を失ったように壁に寄り掛かってミッションの開始を待つ。
「お? 何かめッちゃ可愛い子いんじゃん~」
「いや、ガキッしょ。いくら可愛くても俺は無理だな」
「いやいやいけるいける、全然いけるッて」
「お前ロリコンかよ」
折角無視していたのに、何故か向こうから絡んできた。
正直面倒なので、どうしてやろうかと思っていたがJJが立ち上がって牽制すると男達はすごすごと退散した。
あと一歩進めば彼の空手の餌食になっていただろう。
JJはほむらへ向き直り、グッと親指を立てた。
続いて懲りないチーマー五人は桜丘にも声をかけたが、こちらは流石に余裕のある大人の女性だ。相手にせずあしらっている。
――てめえ達は今からこの方をヤッつけに行って下ちい。
ゆびわ星人。
特徴 つよい でかい。
好きな物 うま。
自分よりちいさいものを憎んでいる。
口ぐせ 無言。
ガンツに映し出された今回のターゲットは、珍しくストレートに強そうな外見だ。
だが新人以外は皆、修羅場を潜ってきた強者達だ。
誰の顔にも恐れはなく、ただ静かに転送されるのを待っていた。
Q、和泉が襲撃された時、玄野もいなかったっけ?
A、原作でこの時に玄野が同行していたのは、彼女であるタエちゃんが和泉の彼女の涼子と仲が良かったから。
このSSの玄野はタエちゃんと付き合っていないので和泉に同行していない。
Q、わざわざドアに挟まなくてもキュゥべえなら知能も高いし、耳毛で器用に開けれない? 届かないならドアの近くに台を置けばいいし。その辺どうなの?
A、開けれる。
【ゆびわ星人】
ボーナスステージ。
ファイナルファイトでハガー市長に壊される車みたいなもの。
見た目はでかくて強そうだが、実際はスーツさえ着ていればどんな方法でも倒せるくらいに弱く見掛け倒し。
スーツを着ていた西をタイマンで屠った田中星人(5点)よりも弱い。
それでいて恐竜ほど数が多いわけでもなければボスがいるわけでもなく、しかもこの弱さで一体の点数は10点と高得点。
原作では八体いたので、合計80点稼げるステージだった。
美味しすぎる。