GANTZ『焔』 作:マジカル☆さくやちゃんスター
引き金を引く。
ビルの下をうろついていた星人が一匹弾け飛ぶ。
引き金を引く。
別の場所で徒党を組んでいた星人を撃ち抜く。
東郷がXショットガンを撃つ度に星人の数が減り、何が起こっているのかも分からぬままに怪物が死んでいく。
東郷十三は現在、見晴らしのいいビルの上でオニ星人達を狙撃していた。
今回初参戦のサラリーマン四人は彼の護衛という事で同じ場所にいるが、結論から言えば全く役に立っていない。
殺し合いを強いられるこの地獄の中にあって、まだ夢の中にでもいるような気分なのか呑気に雑談をしているだけだ。
「あーあ、早く終わんねーかなー……」
「マジ……ありえねーッて、宇宙人とか」
「しかしアイツ……いい腕してるよな。サバゲーか何かやッてんの?」
「あーあ、帰り遅くなッたの何て説明しよう」
ずっとこんな感じだ。まるで危機感というものがない。
だが仕方のない事だろう。
彼等は実際に命のやり取りをする場に立っているのではなく、ただ東郷に任せて棒立ちしているだけだ。
邪魔にならないだけマシな部類と思うしかない。
しかしここは殺さねば殺される地獄だ。初心者であっても慈悲などない。
気を抜けば死ぬ……そんな、地獄では当たり前の事を彼等はこれから身をもって知る事となるだろう。
「あッ、おい。誰か来たぞ」
東郷達しかいない屋上に、誰かが近付くような足音が聞こえた。
サラリーマン達は警戒態勢も取らずに呑気に構え、東郷はすぐに銃を向ける。
一般人か、仲間か……それとも敵か。
高まる緊張の中、現れたのは同じガンツスーツを着た長身の男……加藤であった。
「待てッ、撃つな! 俺だ!」
何だ、仲間か……そんなほっとした、緩んだ空気がサラリーマン達の間に流れた。
しかし東郷は警戒を解かずに、静かな声で加藤へ聞く。
「……お前か。何をしに来た」
「ここはヤバイ! 奴等に居場所がバレている! すぐに離れないと、大挙して押し寄せて来るぞッ!」
「えッ、それ、やばいじゃん!」
「逃げようぜッ、早く!」
加藤の言葉に、サラリーマン四人は浮足立った。
安全と思っていた場所が安全ではない。
その事実に動揺が走るが、東郷の眼は冷たいままだ。
彼はひとまず銃身を降ろし、加藤へ話しかける。
「そうか……すまないな、
「ああ、いいッて事よ。さあ早く行こう」
東郷の言葉に
だが東郷は無言でXショットガンを加藤の頭に向け、躊躇なく発砲した。
その暴挙にサラリーマン達が驚くが、撃たれた加藤はただ舌打ちをしただけだ。
直後に頭が膨らみ、爆発の兆しを見せるもすぐに収まってしまう。
「……何で分かッた?」
「高畑なんて名前の奴は俺達の仲間にいない」
続けて引き金を引くも、加藤の姿をした敵は俊敏に動く事でXショットガンを避けた。
そして彼は驚くべき事に、サラリーマンのうちの一人に飛び掛かるとまるで液体のように彼の耳や鼻、口の中へと入ってしまう。
加藤に化けていた事といい、細胞単位で変身する事が出来る宇宙人なのだろう。
Xショットガンが効かなかったのも、その体質によるものか。
「うッ、おェ……」
体内に潜り込まれてしまったサラリーマンは息が出来ずに苦しそうに呻き、倒れこむ。
それを見ながら東郷は慎重に距離を取りつつ、銃口を向けた。
他のサラリーマン達はただ狼狽える事しか出来ない。
「えッ、死んだ?」
「どうする? 今の内に撃ッとくか?」
「中にアイツ、いるんだよな……」
中に宇宙人がいるのは確かだ。
しかし今撃っても死ぬのはサラリーマンだ。
ただでさえ銃の効きにくい相手に、サラリーマンの身体が壁になってしまうのではほとんど効果がないだろう。
「ちょッと……大丈夫、大丈夫だから……」
そうこうしているうちに敵を飲んでしまったサラリーマンが起き上がった。
顔色は青いが、普通に話せている。
「ちょッとさッき苦しかッたけど……」
「さッきの奴、まだお前の中だぞ」
「あッ、そッか……どうしよう」
どうしよう、などと言っているが結論から言えば彼はもう駄目だ。
いかにガンツスーツといえど、万能ではない。
身体の中に入り込まれてしまえば、もう助かる方法などないだろう。
「あッ、お、えッ!」
宇宙人を飲んでしまったサラリーマンの腹が盛り上がり、中から食い破られる。
出てきたのは巨大な蠅だ。
それが近くにいた別のサラリーマンに飛びつき、またしても耳から入り込んでいく。
そのサラリーマンも撃たないでくれと言っているが、そう言っているそばから背中が盛り上がって破裂してしまった。
再び中から宇宙人が飛び出し、東郷がXショットガンを発射した。
しかり当たりながらもサラリーマンに飛びつき、またしても中から食い破る。
気が付けば四人いたサラリーマンは全滅しており、東郷とオニ星人の一騎打ちとなっていた。
「次は……お前を中から食い破ッてやるよ」
「……」
東郷は動じずにXショットガンを連射した。
しかしそれだけでは効果が薄い。
効いていないわけではないのだが、連射しなければダメージを通す事も出来ないほどに相性が悪いのだ。
オニ星人が俊敏な動きで東郷へ接近し、飛び掛かる。
東郷はすぐにその場から横に跳び、Xショットガンを連射した。
オニ星人の頭部が膨れ上がり、更に同じ場所を立て続けに東郷が撃ち抜く。
「ぐッ……てめえ……」
オニ星人の顔が今までと違い、苦悶に歪んだ。
いかに細胞を変化させてダメージを逃がそうにも、連射されては対応し切れないらしい。
咄嗟にオニ星人が跳んで東郷の狙いを外そうとするが、彼の射撃の腕はそれを許さない。
動く標的相手だろうと寸分違わずに同じ場所を撃ち続け、とうとう耐えきれなくなったオニ星人は逃げを選択した。
蠅に変身して空を飛ぶも……それでも東郷は決して的を外さない。
正確無比な射撃が僅かなズレもなく同じ箇所を撃ち続け、500m近く離れてもまだ当て続ける。
やがてオニ星人が化けた蠅が空中で血を撒き散らして落下し、それを更にXショットガンで撃ち、バラバラにした。
そうしてからようやく、東郷は敵の無力化を確信してその場を立ち去った。
◇
オニ星人のボス……最初にガンツにターゲットとして表示されていたその男は憤っていた。
黒いスーツのハンターを根絶やしにする気であった。
出来ると信じていた。疑ってすらいなかった。
だが蓋を開けてみればこちらの幹部が全滅したとの報を知らされ、更に下っ端も皆殺し……誰一人として生きていない。
その事を同盟相手である吸血鬼から伝えられた彼は、憤怒に顔を歪めていた。
「全滅だッてよ……予想してなかッたな、こんな結果は……」
煙草を吹かしながら、金髪の吸血鬼――氷川が言う。
ハンターによって痛手を被っているのは彼等も同じだ。
ここ連日で、暁美ほむらの襲撃を受け続けた吸血鬼は著しくその戦力を削られてしまっていた。
だからこそ今回はプライドを二の次にしてオニ星人と共闘すべくここに来たのだが、それを蹴ったのはオニ星人の方である。
故にこの現状は、氷川から見れば自業自得でしかなかった。
「ハンターをなめすぎてたのさ……どうする気だ?」
「…………」
オニ星人のボスは無言で歩き始めた。
返事はない。だが返事がない事こそが、彼の無言の怒りを何よりも雄弁に語っていた。
彼はこう言っているのだ……『俺が全員殺す』、と。
そんな
「教えといてやるよ。奴らの中にも猛者がいる。
黒髪ロンゲの男と……それと、黒髪の小娘だ……。
特に小娘の方……年齢は中坊くらいだが、見た目に反してこいつが一番ヤバイ。俺達の兵がかなり殺られているが、実行犯は多分こいつだ。
まあ……お前なら勝てるとは思うが気は抜かない事だ」
ボスはその声に返事をせずに、足を進める。
まず最初に向かったのは、岩の鬼の死体が見付かった道路だ。
そこにいけば、確かに見間違えようのない同胞が物言わぬ死体となって転がっていた。
次に道路……ここでは変身の能力を有していた鬼が空から落下したのか四散し、ゴミのように死んでいる。
公園に行けば、そこにあったのは何かで潰したような破壊跡と、火事の跡のような焦げ目だけだ。
炎の力を有していた仲間は死体すら残っていない。
他にも、街中の至る所に同族の死体が転がっている。
人間達はその死体を見ながら「気持ち悪い」、「早く片付けろ」と好き勝手に言っており、死体の首を蹴り飛ばしている者すらいた。
ボスの顔が憎悪に歪み、拳が強く握られる。
彼は駅前に大勢の人間が集まっているのを見付け、怒りのままに叫んだ。
「ハンターッ!」
もう人間社会に溶け込むだの、擬態するだの、そんなのは止めだ。
仲間を皆殺しにされた上で自分一人だけが大人しくしていても、何の意味もない。
ならば、同胞の恨みを晴らそう。
仲間を皆殺しにしたハンターと同じように、奴らの同胞である人類を皆殺しにしてやる。
「ハンター!」
その感情に突き動かされるままに叫ぶ。
まずは仲間を皆殺しにしたハンターを殺す。
ここにいる一般人は全員、その為の人質だ。
何人か殺し、脅せばハンターも出て来るしかなくなるだろう。
「ハンターッ! 俺を止めてみせろ!」
これは戦争だ。
人類が死滅するか、自分が死ぬかの戦いだ。
「誰? 何だ? 何叫んでんの?」
「いッちゃッてる奴じゃない?」
「何アレ? 誰?」
「アソコ……ホラ」
「ハハハハハハハ」
「ヤベー奴……」
「笑ッちゃう……」
「ハンターッてなんだよ」
「撮影じゃないよね……?」
「役者……?」
未だに状況を把握出来ていない間抜けな一般人達はボスを見て笑っている。
だが直後に彼等の笑みは凍り付く事となった。
一般人が見ている前でボスがみるみる変化していき、宇宙人としての姿を晒したからだ。
上着を破いて現れた筋骨隆々の身体は2mを超え、顔の至る箇所からは角が生えている。
背中や肘からも角が生え、その姿はまさしく“鬼”と呼ぶに相応しいものだ。
「ハンターッ! 俺を止めてみろォッ!!」
明らかに人ではないそれを見て、人々がざわめく。
何人かはまだ映画の特殊メイクか何かと思って呑気に構えているが、ただならぬ雰囲気に怯える者も出始めていた。
それでもまだ彼等に余裕があるのは近くに警察がいて、いざとなれば守ってもらえる……などと思っているからだろう。
まるで対岸の火事だ。
今、この場所こそが火災現場だというのに、平和に慣れ過ぎた脳はそれすら認識出来ていない。
「撮影? 何やッてんだよ、責任者どこ~?」
「おいッ、お前に言ッてんだよッ」
まるで現実を認識出来ていない間抜けな警官が二人、無防備に鬼に近付いた。
あまりにも軽挙……人間を憎む野生の大熊の前にノコノコと出歩いて職務質問をする馬鹿はいない。
彼等はそれと同じ……いや、それ以上の間抜けだった。
鬼が残像を残すほどの速度で移動し、直後に二人の警察官が電車にでもはねられたかのようにバラバラになる。
人外の膂力とスピードを持つ鬼ならば、ただの体当たりですら人間などバラバラに出来てしまう。
肉片と臓物が道路に散らばり、ここでようやく人々は現実を認識した。
CGではない。特殊メイクでも映画の撮影でもない。
……これは、
「きゃァァァァ!」
「わァァァ!」
死体を見てしまった人々が叫び、我先にと逃げようとする。
警官隊も慌てて動き、ライオットシールドを前に構えて鬼へと向かった。
「おさえ込めッ!」
だがそんなもので鬼は止められない。
またしても高速で動いた鬼が、一瞬で盾ごと警官隊を肉片に変えてしまう。
「止まッたぞッ!」
「発砲許可ー!」
「撃て! ガス弾撃ち込めッ!」
続いて銃を撃つが、これも効果がない。
銃弾などものともせずに鬼が走り、またしても警官隊が肉片へ変わる。
気付けば二十人以上いたはずの警察が全て残骸と化しており、人々を守る者はいなくなっていた。
「野次馬の連中! よく聞け! そこから一歩も動くな!
逃げた奴から殺す! 動いても殺す!
今日! この場にいる事を呪え!」
人々は震え、恐怖した。
もう、呑気に構えている者など誰もいない。
皆が思い知ったのだ。自分達が興味本位で来てしまったこの場所は地獄だったのだと。
特に、宇宙人見たさにわざわざ遠くからここまで来た者など後悔しかないだろう。
彼等はこれから、好奇心の代償を命で払う事になるのだ。
そんな人々から鬼が視線を外し、横を見た。
そこにはまさに目当ての、黒いスーツに身を包んだハンター――和泉が立っている。
高得点のターゲットとして、分かりやすすぎるくらいに目立っていた鬼を仕留めに来たのだ。
そして、一般人を巻き込みながら鬼と和泉の戦いが始まった。
【東郷&サラリーマンズ VS 変身鬼】
何気にガンツでもトップクラスにえげつない攻撃をしてくる敵。
レイカに変身して稲葉と【魔法カード融合!】をしたやばい奴。
やらないか。
レイカに化けて稲葉を騙すまではいいにしても、その後行為に及んだ理由は分からない。稲葉が好み♂だったのだろうか?
Xガンがやや効きにくい相手なので東郷との相性は悪かったが、何とか勝利した。
サラリーマンズは全滅。可哀想だが、この後のミッションはぬらりひょんとダヴィデという地獄しか待っていないのでどのみち彼等では生き残れなかっただろう。
【オニ星人(ボス)】
これまでのミッションと明らかに違うオニ星人編のボス。
いい意味でガンツらしからぬ正統派の敵。
これまでと違い、ターゲットに表示された奴が本当にボスで強い。
過去の星人のような何を考えてるかも分からないような得体の知れない怖さはなく、ストレートに強くて凶暴で怖い相手。
このオニ星人ボスとの戦いの時だけは、ガンツらしからぬ少年漫画感が溢れていた。
個人的には、この時の玄野が一番主人公していたと思っている。
得点は不明だが、大阪の犬神(68点)や天狗(71点)に劣っているようには見えないので70~75点くらいだと思われる。