GANTZ『焔』   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第23話 見えてんのか、俺達

 ほむらと鬼の戦闘は徐々にほむら優勢の様相を見せていた。

 鬼との戦いが長引けば長引くほど、ほむらは彼の動きを見切り、予測の精度も上がる。

 どんな豪腕も、威力のある雷撃も、当たらなければ意味がない。

 鬼の蹴りをほむらが紙一重で避け、肘打ちを顔面へ叩き込む。

 そのまま流れるように銃底で殴り、怯んだ所で今度は水面蹴り。

 足元を崩し、よろめいた鬼の巨体を蹴り飛ばした。

 好機――!

 ほむらはすぐに銃口を構えるが、しかし何かに気付いたように横へ跳んでからXガンを撃った。

 だがこのタイムロスが災いし、鬼がXガンを避けてしまう。

 標的を外したXガンは道路を破壊し、二人は一定の距離を保って睨み合った。

 

「今……何故撃たなかッた? 絶好の機会だッたはずだ」

「…………」

 

 何故ほむらは撃たなかったのか?

 その事を鬼が疑問に思うも、ほむらは当然答えない。

 しかし鬼は周囲を見回し、何かに気付いたように顔を歪めた。

 

「クックク……フハハハハハ! そうか! そういう事か!」

 

 鬼が笑い、サイドステップを挟んでからほむらへ接近する。

 ほむらはそれを迎え撃つが、何故かXガンを撃たない。

 鬼が雷を落とし、それに追いつめられるように後ろへと跳ぶ。

 そして横に移動して銃を構えるも、同じく鬼が横へ移動した為に再び撃てなくなってしまった。

 何故ほむらは撃たないのか? その理由は、ほむらと鬼を結ぶ一直線の射線上……その先にこそあった。

 ――鬼の背後には、一般人がいるのだ。

 つまりこの位置関係でXガンを撃ち、回避された場合は一般人が死ぬ事になる。

 だからほむらは撃てなかった。

 撃つ事が出来ない位置関係がある……その情報を鬼が知ってしまったのは大きい。

 ここから先、鬼は常に野次馬を後ろに置くように戦うはずだ。

 そうなれば、ほむらは威嚇射撃すら満足に行えないだろう。

 

「……甘く見ないで!」

 

 しかしそれはXガンならばの話。

 局地的に重圧をかけて潰すZガンならば射線上の先にいる一般人を撃ち殺す事はない。

 ほむらがZガンを発射するも、鬼は高速で走る事で回避してしまう。

 Zガンは強力な武器だが、サイズが大きく小回りが利かない。

 そして一度距離を詰められてしまえば、とても使えたものではないだろう。

 何故なら下手に撃てば自分まで巻き込んでしまうからだ。

 

「っ!」

 

 鬼に距離を詰められたほむらはZガンを加藤の方に投げ捨てた。

 腰に戻している暇はないし、その辺に捨てて万一にでも敵に拾われて使われては面倒だ。

 その点加藤ならば、とりあえずは持っていてくれるだろうし自分が近くにいる間は間違えても撃たないだろう。

 一時的に預けるならば、とりあえず加藤に持たせておくのが安全だ。

 鬼が高速移動をしながらほむらへ攻撃し、ほむらはそれを避けながら応戦する。

 繰り出された豪腕を上体を逸らすように避けて、ブリッジから逆立ちへ移行して鬼の腕を蹴り上げた。

 更に逆立ちのまま腕を捩じって回転。上下反転した姿勢で回し蹴りを放ち、鬼の頬を蹴る。

 最後に両足で鬼の顔を蹴り、その反動で離れると地面を転がってすぐに体勢を立て直した。

 しゃがんだまま銃を向けるが、これだけは鬼も避ける。

 すぐに一般人を射線上に挟み、ほむらの銃撃を封じた。この位置関係ならばほむらは決して撃てない。

 そう確信しているが故に鬼は一直線に走る。

 これに対しほむらはXガンを――構わず発射した。

 

「ッ!?」

 

 鬼の後ろには一般人がいる。

 したがってもしも鬼がこれを避けてしまえば一般人を殺してしまう為にほむらは撃てないはずであった。

 しかし、このままでは勝てないと悟ったのだろうか?

 それとも多少の犠牲は止むを得ないと割り切ってしまったのだろうか?

 鬼は咄嗟に横に跳び、玄野達が青褪める。

 誰もが、数秒後に一般人が肉片に変わる光景を思い浮かべ……鬼の太ももの肉が弾け飛んだ。

 

「なッ……にッ!」

 

 鬼の口から驚愕の声が漏れた。

 ほむらのXガンによる射撃は確かに避けたはずだった。

 ダメージを受けるのは後ろにいる一般人のはずだった。

 だがその認識が間違いなのだ。何故ならほむらは既に、ロックオンを済ませている(・・・・・・・・・・・・)

 そう、Xガンにはロックオン機能が存在する。これを使えば銃の向きや敵の位置に関係なく確実に当てる事が出来るという優れた機能だ。

 

「貴ッ様……撃たなかッたのは一般人を巻き込まない為ではなく……俺にそう思わせる為ッ……か」

「ええ。貴方ほどのスピードで動き回られてはロックオン機能に捉える事すら難しい……。

だから貴方には『避ける必要がない』と思わせる必要があった……『一般人を射線上に置けば撃って来ない』……そう思う事で貴方は逆に自らの動きを制限した」

 

 Xガンのロックオン機能は捉えさえすれば強いが、その為には相手を一度照準に入れてトリガーを引かなければならない。

 だが鬼ほどのスピードで動き回る相手にそれをやるのは困難だ。

 だからほむらは戦いながらブラフを撒き、鬼自身が動きを止めてくれるように誘導したのだ。

 『射線上に一般人がいれば誤射を恐れてほむらは撃たない』と思わせた。

 撃たないならば横に避ける必要はない。故に動きは直線的になり、ロックオン機能に捉えるのが容易くなる。

 その狙いは見事に嵌り、こうして鬼の足を破壊する事に成功した。

 足さえ潰してしまえばこちらのものだ。自慢のスピードは半減し、戦いやすくなる。

 それでもまだ十分速いだろうが、ほむらならば問題なく捉えられる速度だ。

 

「まだだッ! 人間如きにッ、俺が負けるかッ!」

 

 鬼はそう叫び、近くに転がっていたパトカーを片手で持ち上げてほむらへ投げつけた。

 苦し紛れの攻撃だ。追い詰められた者が近くにある石などを適当に投げているに等しいささやかで無力な抵抗である。

 こんな攻撃はほむらに当たらない。その程度の事は鬼だって分かっているだろう。

 その予想の通りにほむらは軽く避けようとし――。

 

「!!」

 

 自らの後ろに、一般人の少女がいる事に気付いた。

 このままパトカーを避ければ、間違いなくあの少女は潰されてしまうだろう。

 ほむらは反射的に少女の方へ駆け出し、抱えてその場から跳び退く。

 だがそれは鬼を前にしてあまりにも大きな隙だ。

 スピードが半減したといえど、それでも鬼は速い。

 振るわれる拳を前に咄嗟に少女を近くの一般人の方へ投げ、そして自らも後ろへ跳びつつ腕で鬼の拳をガードした。

 

「……っ!!」

 

 枯れ木が折れるような音が響き、ほむらの身体が吹き飛ばされた。

 地面に背中から打ち付けられ、バウンドしてから倒れる。

 そこに鬼が更なる追い打ちをかけようとするが、この危機に咄嗟に玄野達も動いていた。

 

「俺達も行くぞッ! 聖!」

「分かッたわ、玄野クン!」

 

 玄野と桜丘が走り、鬼に挑みかかった。

 これまでのほむらとの戦闘で消耗している今の鬼ならば、玄野や桜丘でも十分戦える。

 玄野の拳が鬼の顎を跳ね上げ、桜丘のキックが腹にめり込んだ。

 鬼が負けじと高速で動いて雷撃で桜丘を吹き飛ばし、玄野の背後へ回り込む。

 だがスピードは半減している。先程と比べれば遅い。

 玄野はしっかりとその動きを目で追っていた。

 そして鬼の脇腹に肘をめり込ませ、動きを止める。

 

「あッ、当たッた!」

 

 加藤が驚く中、玄野は更に鬼の嵐のような乱撃を全て刀で防いでみせた。

 ほむらやJJの与えたダメージで鬼のスピードが鈍っているというのは確かにある。

 だがそれ以上に、この善戦を可能としているのは玄野自身が持つ生存能力……センスによるものであった。

 玄野計は決して運動能力に特別優れた男ではない。

 体格も加藤ほど恵まれておらず、頭もそれほど回るわけではない。

 しかし生き残る事にかけて、彼は並外れたセンスを持っていた。

 人は窮地に追い詰められると動揺する。思考も鈍り、焦りは判断力を奪う。

 しかし玄野はそうではなかった。

 むしろ追いつめられれば追いつめられるほどに、彼の感覚は研ぎ澄まされていく。

 決して強いわけではない。速くもないし賢くもない。

 だが彼には分かるのだ……自分が生き残る為に今、何をしなければならないのかが。

 

「きさまァッ!」

 

 鬼が残像を残すほどの速度で玄野の後ろへ再び回り込む。

 今度は目で追えていない。完全に見失っている。

 だが玄野は勘だけで背後に肘打ちを放ち、鬼の顎へめり込ませた。

 

「おのれッ! 知れッ身の程をッ!」

「ぐッ、いッ!」

 

 何度も鬼の打撃が玄野を襲う。

 かろうじて刀で防御しているが、刀から伝わる衝撃だけで腕が痺れそうだ。

 骨の芯まで響きそうな重さが、鬼の拳にはある。

 やがて耐え切れなくなった刀がへし折れて吹き飛ばされるも、道路に手をついて倒れる事を避け、すぐに突撃した。

 

「おぉォオッ!!」

「ガァッ!」

 

 玄野の突撃に合わせて鬼が拳を出すも、玄野は身長差を活かして身を屈めて拳を避け、鬼の脇腹に左拳を突き刺す。

 頭が下がった所で今度は右のフック。

 もう一度左拳を脇腹に叩き込み、渾身の右アッパーで鬼の顎を跳ね上げた。

 

「い……いけるッ……いけるわよッ、玄野クンッ!」

「やッぱ……計ちゃんはすげえ……ッ」

 

 雷撃のダメージで動けない桜丘が恋人の勇姿に勝利の希望を見出し、加藤は玄野の戦いぶりに見惚れていた。

 玄野が殴り、鬼が殴り返す。

 体格の差もパワーの差も、スピードの差も圧倒的だ。

 なのに負けない。

 誰が見ても負けるとしか思えない条件で、玄野計は互角に戦い続けている。

 その隙にほむらは無事な方の腕でガンツソードを抜き、ビルの屋上を一度見た。

 

「おおおォォォッ!」

 

 鬼の蹴りがようやく玄野にクリーンヒットし、彼をバスへ叩き付けた。

 玄野の身体がズルズルと地面へ落ち、スーツからは液体が零れる。

 今の攻撃で玄野のスーツが死んでしまったのだ。

 後一撃でも喰らってしまえば、もう玄野は助からないだろう。

 しかし彼が稼いだ隙を突き、今度はほむらが飛びこむ。

 

「ぬッう!」

 

 鬼がほむらを止めようと腕を伸ばすも、もう遅い。

 ほむらは体勢を低くして地面を蹴り、鬼を正面から串刺しにした。

 刀身が鬼の筋肉を貫いて背中から生え、夥しい血が流れる。

 決まったか――? そんな空気が一瞬流れるも、鬼はまるでこれこそ待っていた展開だとばかりに笑い、抱きしめるようにほむらを拘束した。

 

「あぐっ!」

「暁美!」

「フハハハハ! 油断したな!

お前を無傷で倒せるなどと思ッちゃいない……これこそ、俺が待ッていた好機なのだ!

お前さえッ! お前さえ倒してしまえば他の連中などどうにでもなるッ!」

 

 ギリギリと鬼の腕力で圧迫される。

 いかにほむらといえど、スーツ無しの生身でこれは堪える。

 すぐにほむらを助けようと玄野と加藤がXガンを構えるが、鬼はそちらに振り向く事でほむらを盾にした。

 

「撃てるものなら撃ッてみろ! こいつが死ぬぞ!」

「ぐ……」

「ど、どうする、計ちゃん!?」

 

 ほむらを盾にされてしまっては、玄野達は何も出来ない。

 助けようとして、その対象を殺してしまっては本末転倒だろう。

 しかしほむらの紫色の瞳に諦めの色はなかった。

 むしろ逆……ほむらのその瞳は、勝利を確信したものであった。

 

「気が、合うわね……」

「何……?」

「私も、リスクなしで貴方を倒せるとは思ってないわ……好機を待っていたのはこっちも同じよ」

 

 ほむらの言葉の意味を理解するよりも速く、鬼のうなじが弾け飛んだ。

 続けて体内の心臓が破裂し、夥しい血を吐き出す。

 それはまるでXガンで撃たれたかのように……いや、“ように”どころの話ではない。

 彼は今まさに、Xショットガンによる狙撃を受けたのだ。

 そう……これはビルの屋上で鬼を狙っていた東郷による狙撃だ。

 ほむらは彼が狙撃ポイントに到達した事に気が付いたからこそ、あえて鬼に捕まるような事をした。

 そして鬼が自分を盾にする為に玄野達の方を向く事も分かっていたのだ。

 だがそれは東郷に背中を見せる事となり、故に彼は撃ち抜かれてしまったのである。

 勝負ありだ。いかに屈強な鬼と言えど首と心臓を破壊されては生きていられない。

 むしろ即死しないだけ、十分に化け物と呼べるだろう。

 

「おの、れ! こうなれば、せめて貴様ッ、だけでもッ!」

「っ!」

 

 鬼は血を撒き散らしながら、大口を開けた。

 このままほむらの首に食らいつき、道連れにしようというつもりだ。

 だがその刹那にライスが鬼の顔に喰らいついて動きを止め、更にライスが稼いだ一瞬で玄野が鬼の口にXガンを噛ませ、ほむらへの噛み付きを防いだ。

 更に加藤がタックルをして鬼を弾き、拘束が緩んだ隙に玄野がほむらを抱えて後ろへ跳ぶ。

 

「暁美ィッ! やれるな!?」

「当然よ!」

 

 すぐに玄野の腕から脱し、ガンツソードを構える。

 玄野も同じく刀を構え、二人は同時に鬼へと走った。

 鬼も咄嗟に迎え撃つが、もう遅い。

 玄野の刀が鬼の胴を深々と斬り、ほむらの刀が首を斬り飛ばす。

 そして二人が通り過ぎた後には、三つに分断された鬼の死体だけが残されていた。

 すぐにほむらは振り向き様にXガンを連射し、鬼を粉微塵の肉片に変えた。

 

「ハア……ハア……終わッたな……」

「……ええ」

 

 しばらく注視しても動く気配はない。

 ほむらはXガンを仕舞い、それから玄野へと背を向けた。

 

「今回は貴方に助けられたわね。一応、お礼を言っておくわ」

「えッ、あ、ああ……気にすんなよ。俺だッていつも助けられてる」

 

 今回の戦いは、ほむらにとっても決して楽なものではなかった。

 野次馬さえ邪魔にならなければ一人でも倒せただろうが、そんなものは言い訳に過ぎない。

 結果としてほむらは、玄野がいなければ死ぬか、死なないにしても重傷を負っていた。

 今まで、『同じ敵と戦っているだけの他人』というスタンスで無関心を貫いていただけに、助けられたという事実に少しばかり居心地の悪さを感じる。

 だがそんな気持ちは、次の瞬間に聞こえてきた野次馬の歓声によって思考から追いやられる事になった。

 人々は歓喜の叫びをあげ、何人かは涙を流していた。

 それだけならばいい。自分達の脅威になっていた恐ろしい鬼が死んだ事を喜んでいるだけと取れる。

 しかし歓声の中には『凄い』だの『ありがとう』だのといった声も交じり、人々は間違いなくほむら達を見ていた。

 

「どーなッ……て……見えてんのか、俺達……」

「……そう、みたいね」

「頭の爆弾はッ」

「作動しないみたいね」

「これ……どうなッてんだ?」

「私が聞きたいわよ」

 

 玄野の問いに、ほむらも答える事が出来ない。

 長年の戦歴のおかげで露骨に動揺を見せてはいないが、ほむらもこれでかなり混乱しているのだ。

 この人数の人間に戦いを最初から最後まで見られていたとすると、かなり不味い。

 もしかしたら携帯電話で撮影した者がいるかもしれない。

 それらの映像が出回ると、そこから暁美ほむらという名前に辿り着くかもしれない。

 そうなってしまえば、吸血鬼達が自分の知り合い……つまり、まどか達に手を出す可能性も出て来るのだ。

 

「助かッた……」

「生き延びた……」

「すげーよあんたらッ」

 

 ガンツメンバーの周囲には人々がどんどん集まり、最早気のせいでは済まされない。

 完全に見えてしまっている。

 加藤や、倒れているJJの周囲にも人が集い、救急車を呼ぼうとしていた。

 

「救急車早くしてくれッ」

「あんたらよくやッてくれた!」

「本当にッよくやったよッ! 救急車今呼んでッからッ」

 

 全員が人々に囲まれ、特に鬼を直接倒した玄野とほむらの周囲は人の壁が出来てしまっている。

 彼等は皆、まるでヒーローを見るように二人を見ているが、二人はただ困惑するしかなかった。

 

「――っ!」

「あッ、おい!」

 

 とりあえず、ほむらはその場から跳躍して人々の壁を突破して開けた場所に着地する。

 それから再度跳躍して近くの建物へ跳び、壁を蹴って別のビルの壁へ跳躍……それを繰り返してあっという間に夜の闇へと消えて行った。

 今更遅いかもしれないが、とにかく長い間顔を晒していたくない。

 故に、ひとまずの緊急離脱である。

 ここで玄野を置いて一人で逃げる辺り、絶妙に優しさが足りていない。

 

「あッのッ、やろ!」

「おー……」

「すッげ……」

 

 置いていかれた玄野が恨めしそうに叫び、人々はただ、その超人的な動きに感心していた。

 そうして何とか観衆の眼から逃れたほむらはビルの屋上で座り、キュゥべえへと話しかける。

 

「キュゥべえ、これはどうなっているの?」

「さあね。ただ君も言っていただろう、今回を境に大きく変化する……と。

その変化の一環なんじゃないかな?」

 

 確かに変化するかもしれない、とは言った。

 だが、だからといっていきなり一般人に見えるようになるのは不意打ちすぎる。

 何とも厄介な事になったものだ……そう思っていると、視界がマンションの部屋へと切り替わった。

 どうやら転送が始まったらしい。

 先に転送されていたらしい玄野の、恨めし気な視線が印象的であった。

 

 

 全員が無事に転送され、今回も主なメンバーは誰も欠けずに終わる事が出来た。

 重傷だったJJも無事に帰ってきており、玄野達は露骨にほっとしていた。

 チーマーやサラリーマンは死んでしまったが、あれはほむら的には最初からいないようなものなのでカウントしていない。

 むしろチーマーは邪魔としか思っていなかったので、酷い言い方になるが死んでくれてよかったくらいだ。

 浦中アヤカとサラリーマン達は少し可哀想だったが……まあ、どのみち彼等では生き残る事は出来なかっただろう。

 黒玉から音が鳴り、『それぢわ ちいてんをはじめる』と表示された。

 今回は全員がかなりの高得点を期待出来るが……さて、どうなるだろうか。

 

『とうごう。102てん。

TOtAL154てん。100点めにゅ~から選んで下さい。

100点めにゅ~。

1、記憶をけされて解放される。

2、より強力な武器を与えられる。

3、MEMORYの中から人間を再生でちる』

 

 これで東郷という強力な狙撃手ともお別れか。

 そう思い、ほむらは少しだけ彼という戦力の喪失を惜しんだ。

 他のメンバーと違い、東郷は最初から戦いの心構えが出来ていたプロフェッショナルだ。

 今後、彼のような優秀なメンバーが来るかどうか分からないので、東郷の離脱は正直痛い。

 とはいえ、自由になれる権利は誰にでもある。

 ほむら自身は以前に『1番は記憶と自衛手段を失うだけの論外』として切り捨てたが、それは既に帰る場所のないほむらだからこそ出した答えである。

 解放されても星人は地球のどこかに今も潜んでいるし、ミッション外で吸血鬼などの輩に絶対に襲われないという保証もない。

 だが、だからといってここに留まって次以降のミッションで生き残れる保証もまたないのだ。

 だからほむらは、この100点選択に対して一切口を挟む気はなかった。

 忠告は簡単だ。だがその忠告はこの部屋に留まるようにする誘導でもある。

 答えを出した後ならばともかく、答えを出す前に決定そのものを曲げてしまうような事を言うつもりはない。

 

 願いは徹頭徹尾、自分の為だけに使うべきだ。

 他人に誘導されたり、他人の為に使うものではない。

 それを履き違えた者の末路は、もう何度も目にしてきた。

 周りを巻き込みながら破滅への道を突き進んだ少女がいた。

 家族の為に願い、家族を死なせてしまった少女がいた。

 そして……何度も繰り返す迷路に閉じ込められた、愚かな少女がいた。

 それを今でも覚えている。故にほむらは何も言わず、東郷の選択を見守る事にしたのだ。

 

「……2番だ。強い武器を用意してくれ」

 

 そして東郷の選択は自由ではなく、戦いを続ける事であった。

 これに玄野達は驚くが、東郷は不敵な笑みを見せる。

 

「いいのかよ……せッかく自由になれるのに」

「ああ。この部屋で行われているものは……何というか、ただのゲームじゃない。

これから、大きく何かが動くような気がしている。

俺は戦場に留まる事にした……何が起こるのかを、見届けたい」

 

 このゲームから自由になっても、星人はいるし戦いは続く。

 ならば留まって見届けたい。それが東郷の選んだ答えであった。




【オニ星人クリア後の得点に関して】
原作だとオニ星人クリアで玄野の獲得点数は135点でトータルも135点になっています。
しかし玄野はこれ以前のかっぺ星人で58点を稼いでおり、更にゆびわ星人を最低でも一体倒しているので(最低でも)68点を稼いでおります。
なので玄野のトータルは203点以上になるはずなのですが、何故か前までの点数が丸ごと消えています。
ちなみに同様の現象は全員に起こっており、何故こんな事になっているのかは不明のままです。

1:100点を超えた場合は獲得点数にもトータルが表示される。
実はオニ星人編で玄野が稼いだ点数は67点だったとする説。
しかしオニ星人編では前2回のミッションでほとんど敵を倒していなかったおっちゃんやレイカも100点を超えており、つまり玄野はあれだけバンバン敵を倒して幹部鬼まで撃破したのに二人より得点を稼げていなかった事になる。
仮にボス鬼の点数を和泉に取られていたと考えても、レイカやおっちゃんより稼げなかったとは考えにくい。
なのでこれは違うと思われる。

2:獲得点が100点を超えると前までのトータル点数は消える。
とりあえず矛盾らしい矛盾は見付からないような気がする説。
これならば大阪編でぬらりひょん以外も倒してたはずなのに何故か獲得点が100点だった加藤の説明も出来る。
しかしこれだと、クリア寸前の者にとって頑張る意味がなくなる。
仮に前までのトータルが99点だったとして、1点の雑魚を二体だけ倒した奴がトータル101で、頑張って100体倒した奴はトータル100になるのは……どうなんだろう。
ある意味理不尽でガンツらしいといえばガンツらしいが……。

3:ガンツの気分次第
ガンツは適当なのでトータル点数を獲得点数として表示してしまう事もあるし、100点を超えた場合は「前までの点数とかいらなくね」と勝手に捨ててしまう事もある。
100点星人を倒した時も「どうせ100点なんだから他の雑魚の点とかいらんやろ」と捨ててしまう事もある。
勿論逆にちゃんとやってくれる事もある。
まさに適当。

【結論】
とりあえずこのSSでは上のどれにしても作中での説明が面倒になるというのもあるので、ややこしい事はせずにシンプルに獲得点数がそのままトータルに加点されていく方式でいきます。
トータル90点の時に105点稼いだらトータル105にされるのではなくトータル195になります。
100点星人を倒した時だけは例外で100点獲得で固定とします。
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