GANTZ『焔』   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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どうでもいいけど、もしほむら以外が主役だったらGANTZ『円』とか『巴』とか『桜』とか『渚』とか『海鮮助六』『彩』になってたと思われます。


第28話 何やねん、お前等

 玄野アキラの他には新規で何も知らない一般人が三人ほど転送されて来た。

 彼等にもいつも通りに加藤がスーツの着用を勧めるが、誰も従おうとはしない。

 ほむらとしても、一々戦力外など気にかけてられないので着たくないというなら、説明してまで着せようとは思わない。

 というより、そういうのが苦手だから加藤に任せているのだ。

 なので加藤で説得出来なければ、どのみち自分で出来ると思わない。

 事態を把握できない者から死んでいく……残酷だが、ここはそういう場所だ。

 

「兄貴……俺、何でこんな所にいるんだ? いや、ッてーか襲撃は大丈夫だッたのか?」

「ああ、それはもう終わッた。アキラ……信じられないだろうが、お前は死んだんだ。

時間がないから簡潔に言うが、ここは死んだ奴が集められる部屋だ。俺達はこれから戦争をする事になる」

「戦争ッて……それに死んだんなら、ここにいる俺は何なんだよ……」

「今はとりあえず、このスーツを着てくれ。ダセェと思うなら上から服を着てもいいからさ。

説明はその後だ。頼む……今は従ッてくれ!」

「わ、わかッたよ……」

 

 アキラの方は兄からの説得という事もあって、一応スーツを着用してくれるようだ。

 彼は吸血鬼の一味の中でも幹部クラスを除けばかなり強い方だったので、スーツを着ればかなりの実力になるだろう。

 少なくとも、単純な身体能力ならばこの中でもほむらに次ぐ2位になるのは間違いない。

 服を着替えに廊下へ向かったアキラを見ながら、西がからかうように言う。

 

「ふーん、玄野の弟ねえ……あっちの方が年上に見えッけどな」

「……あいつ、お前と同じで中学生だぞ。今は確か……14か15だったかな」

「はァ!? あの図体でか!? ウッソだろ」

 

 玄野の言葉に西が驚きを見せるが、これにはほむらも驚いた。

 どう見ても身長180を超えているので弟といっても、玄野とそんなに変わらないと思っていたのだ。

 まさか同い年だとは思わなかった。

 となるとつまり、今ここには15歳の中学生が三人いる事になるわけか。

 ほむらはあまり自分の誕生日など気にした事はなかったが、そういえば誕生日を過ぎていたので今は15になっているはずだ。

 今頃はまどか達も三年生になり、マミは高校生になっている頃か。

 

「着てきたぞ。これでいいか、兄貴」

 

 廊下で着替えを済ませたアキラは再び部屋に戻って来るが、やはりデザインをダサいと思っているらしく上からはしっかりと黒コートを羽織っていた。

 玄野はそんな弟にこの部屋の事やこれから起こる事を大雑把に説明しているが、流石に現実離れしすぎているせいで中々受け入れられないようだ。

 とはいえ、アキラ自身も吸血鬼という特異性の持ち主であり、ガンツチームと敵対する組織の一員だったので一般人よりは受け入れる土壌が整っている。

 

「いいか、アキラ。ここに来ちまッた以上、100点を取らないと自由にはなれない。

絶対に、俺達から離れるんじゃねーぞ」

「あ、ああ……わかッたよ」

 

 とりあえず一人でもスーツ着用を受け入れてくれた事を喜ぶべきだろう。

 吸血鬼の彼ならばスーツなしでもそこらの星人相手ならば互角以上に戦えるだろうが、それでもやはり生存率が違う。

 他の新規三人は……あちらはもう駄目だ。加藤がいくら説得してもまるで聞く姿勢を見せない。

 非情な話だが、ほむら、和泉、西、東郷の四人は新規組を既に死んだものと考えていた。

 

「見ろ。今からこの玉にターゲットが表示される。

俺達はそいつと戦争をするんだ」

 

 玄野が弟に説明すると同時に、ガンツにターゲットが表示された。

 だがほむらはその画像を見て目を細める。

 それは、今回のターゲットが今までの法則から外れていたからであった。

 

 

 てめえ達は今からこの方をヤッつけに行って下ちい。

 特徴 つおい。頭がいい。わるい。

 好きなもの タバコ お茶。

 口ぐせ ぬらーりひょーん ぬらーりひょーん。

 

 

「……星人が付いてないわね」

「ああ……変だな」

 

 ほむらの言葉に同意するように玄野が言う。

 今までの星人は少なくとも、全員『星人』と付いていた。

 だが今回は何故かそれがない。ぬらりひょん星人ではなく、ただのぬらりひょんだ。

 これはどういう事なのか……アドバイスを求めるように西を見るが、西にも分からないようでそっぽを向いていた。

 

「こいつと戦うのか……? 何か、弱そーだけど……」

「見た目で判断するな。今までもそう言ッて何人も死んだ」

 

 アキラが気を抜きそうになるが、玄野がそれを窘める。

 それにしてもこの二人が並ぶと、身長差もあってどちらが兄でどちらが弟か分からない。

 まあ兄弟というのは昔から、不思議と弟の方が発育がよくなる傾向があるらしいのでそれほどおかしな事ではないのかもしれない。

 国民的に有名な配管工だって緑の弟の方が大きいのだ。

 

「それにしても……最近の中学生って暁美ちゃんといい、大人びてるのねえ。

年齢相応なのは西クンくらいじゃない?」

「はぁ? 俺が他のガキ共と同じだッて?」

 

 桜丘の言葉に西は露骨に不機嫌になるが、桜丘に悪気はない。

 文句を言おうとした西だが、しかし自分の頭が消え始めている事に気付いて口を閉じた。

 どうやら転送が始まったようだ。

 

 

 今回転送されたのは、駅前と思われる商店街であった。

 玄野アキラを含むメンバー全員がまずはちゃんといる事を確認し、ほむらはレーダーを見る。

 星人の反応は……かなり多い。

 今回は下手をすれば前回以上に厳しいミッションになるかもしれない。

 いや、難易度の上昇は今回に限った話ではない。

 前からずっと、初心者など知った事かとばかりに難易度は上がり続けている。

 これはつまり、地球に残っている星人に強い者しか残っていないという事なのだろうか。

 新規組三人は何か勝手にどこかに歩いて行ったが、もうどうでもいいと割り切った。

 とりあえず、まずは商店街を抜けるべきだ。ここでは狭くて戦いにくい。

 全員が商店街の外を目指して歩き、その最中、アキラがほむらへ話しかけてきた。

 どうでもいいが、ほむらだけはバイクである。

 

「ねえ、君、歳いくつ? 結構、この中だと若く見えるけど」

「15」

「あッ、そうなんだ。俺こー見えても15でさ……よかッた、同じくらいの歳の子もいて」

 

 随分うすらでかい中学生だ……とは思ったが、口には出さなかった。

 ほむらの知っている男子だと、確か上条恭介が175cmくらいだったはずだが、アキラと比べるとまるで作画が違うかのようにアキラの方が大きく見える。

 恐らくは上条恭介の、女に八つ当たりするような卑小な気質と頼りなさが実際よりも彼を小さく見せているのだろう。

 ほむらは以前よりも背が伸びて160cmくらいといったところで、これは西と同じ身長だ。

 女子としては同年代の中ではそれなりに高い方なのだが、実は見滝原の魔法少女(候補含む)五人の中だとマミやさやかより若干劣る身長である。

 といってもまどか以外の四人はほとんど差がなく、まどかだけが目に見えて小さいというのが実情だったわけだが……。

 ちなみにまどかの身長は152くらいである。今頃はもう少し大きくなっているだろうか。

 

「あ……何か向こうに……」

 

 アキラが言い終える前に、ほむらは既に武器を構えていた。

 商店街の出口付近には星人……と思われる奇妙な女がいて、こちらに向かっていたからだ。

 確か妖怪にあんなのがいただろうか。お歯黒べったり……だったか。

 どちらにせよ一般人のコスプレではあるまい。

 ほむらは、早速入手したばかりのマシンガンの引き金を引いた。

 するとお歯黒べったりの身体の至る箇所が抉れ、肉が弾け飛ぶ。

 どうやらこの武器は、Xガンをマシンガンに改良した武器のようだ。

 使えるが、Xガンより大きいので取り回しが難しく、連射出来るが一発一発の威力はXガンに大きく劣る。

 これならば威力を重視するならZガン、取り回しを重視するならXガンを使った方がいいだろう。

 何とも半端な100点武器だ。

 

「すッげ……躊躇なくいッた」

「ここで躊躇なんてすれば死ぬ事になるわ。覚えておきなさい」

 

 感心しているアキラへ忠告し、ほむらは更にバイクを走らせる。といっても玄野達に合わせているのでトロトロと進めているという方が正しいだろうか。

 まずは商店街を抜け、そして視界に飛び込んできたのは『道頓堀』の文字だ。

 道頓堀といえば、何かあるたびに恒例行事のように人が飛び込む場所だったか。

 

「東京じゃない……」

「大阪……?」

 

 加藤と玄野が茫然としながら辺りを見る。

 今まで、ミッションで東京から出た事はなかった。

 場所は毎回変わっていたが、それでも東京のどこかというのは共通していたはずなのだ。

 明らかに今までと違う……その空気を感じ取ったのだろう。

 皆が緊張して固まる中、更に異常事態は続く。

 

「何やこいつら笑えるわー」

「コスプレ?」

「あはははははは」

「見てみいホラ!」

「あいつら何やねん?」

「なんやこれパンダ!? ウッソ!?」

 

 前回のミッション後半同様に、一般人から完全に見えてしまっている。

 関西弁で話す通行人達はガンツチームのスーツを笑い、和泉に抱き着いているホイホイを見て驚いていた。

 アキラはスーツの上に服を着て隠しているので、特に何も言われていない。

 そして西は先程、ステルス機能で消えたので今頃はどこかで単独行動をしている事だろう。

 

「うわッ、なんかあの子すッごい武装してる」

「マシンガンにバズーカッて……ほんまもんやないよな?」

「玩具やろ」

「てかアレ、何や? 動いとるけど……バイク?」

 

 ほむらもスーツを下に隠しているが、奇抜さで言えば今回はトップだ。

 何せ今回のほむらは完全武装状態である。

 ある意味では一番目立つだろう。

 

「前回から戻ッてないようだな……」

「どーする? これ」

 

 東郷と桜丘が意見を求めるようにほむらを見た。

 だから何故こちらを見るのか。

 リーダーは加藤なのだから、そちらに聞けばいいのに。

 そう思いながら、仕方なくほむらは指示を出す。

 

「気にしても仕方ないわ。行くわよ」

 

 一般人の目などいちいち気にかけていられない。

 どうせ前回のミッションで大勢に見られてしまったし、日本中が知ってしまった後だ。

 勿論、出来れば名前バレや自分の生存がまどか達に伝わるような事にはなって欲しくないが、こうなった以上周囲の目など気にしていては戦えないだろう。

 星人の反応を頼りに更に進むほむら達だったが、その先にいたのはこれまで以上に驚かされるものであった。

 

「……あ? 何やねん、お前等……」

 

 進んだ先で遭遇したのは……こちらと同じく、ガンツのスーツを着た一団だった。

 手にはXガンやXショットガン、更にZガンを持ち、後ろにはガンツバイクもある。

 

「何やねん、こいつら」

「何でスーツ着とんねん」

 

 向こうも若干困惑しているようで、すぐに武器を構えるような事はしていない。

 両陣営は互いにどうしていいか分からず、睨み合ったままだ。

 その中でほむらはすぐに事態を察し、バイクから降りて声をかけた。

 

「貴方達は、大阪のガンツチームかしら」

「ガンツ? 何や、それ」

「黒い大玉の事よ。私達はガンツと呼んでいるわ……誰が最初にそう呼んだかは知らないけどね。

そっちでは違うの?」

「ああ、黒アメちゃんの事か。お前達は……何で東京弁の奴がここにおるんや」

 

 ほむらは仲間達を手で制し、武器を構えないように促す。

 それから、相手を刺激しないように話を進めた。

 

「私達は普段は東京で活動しているチームよ。ほら、最近テレビで話題になってる渋谷のあの騒動。あれ、私達がやったやつ」

「ああー、あれかあ。アレお前等やッたんかい」

「ええ。普段は東京圏内から出ないはずなのだけれど……何故か今回はここに飛ばされてね。

こんな事は初めてで正直困惑してるのよ。そっちでは、こういう事あるのかしら?」

「いや……ないな。俺等にとッても初めてのケースや」

 

 ほむらは少しばかり考え、それから情報を纏める。

 ここは大阪で、今目の前にいるのは大阪のガンツチーム。

 ならばこの場所は彼等のテリトリーだ。

 自分達はそこに踏み込んでしまったイレギュラーといったところか。

 

「悪いわね、貴方達のテリトリーに踏み込んでしまって。

これは憶測なのだけど……多分もう、東京に星人がいないって事なんだと思うわ。

実は前回の後半辺りからミッションの法則が変わり始めていてね……貴方達も気付いてると思うけど、もう一般人に私達の姿が見えているし、制限時間もない。

きっと次回からも、同じように他エリアのチームが来たり、逆に貴方達が他のエリアに行く事があると思うわ」

「マジか……いや、言われてみれば納得出来る話や。

そら星人も無限にいるわけないわな」

「それでまず交渉したいのだけど……ええと……そっちのリーダーは誰かしら」

「俺や。そッちは……嬢ちゃんか? 子供なのに随分落ち着いとるなあ」

 

 大阪チームのリーダーを呼ぶと、先程から話していた坊主頭の男が一歩前に踏み出した。

 ほむらは彼を見上げ、なるほどと思う。

 確かに、それなりに修羅場を潜ってそうな凄味があった。

 

「いえ、リーダーは後ろのヤンキーみたいな人よ。けどここは、貴方達の狩場。

なら今回は貴方の意見を聞いておくべきだわ。それが筋というものでしょう?」

「はッ……分かッとるやないかい。ガキのくせに肝が据わッとる。

それにいくつか、100点クリアの武器も持ッとるな。

ええで、お前気に入ッたわ……で、俺に何が聞きたいんや?」

「今回、私達はどうすればいいかしら? 敵を狩ってもいいならば貴方達とは別の場所で星人を狩るけど」

「お、おいッ暁美! 何でこいつ等の許可なんて……」

 

 交渉を始めるほむらに、加藤が慌てたように声をかけた。

 そんな彼を一睨みし、それから仕方なく説明をする。

 

「今回、狩場に侵入してしまったのは私達の方よ。

彼等だって余所者に獲物を取られてはいい気はしないでしょう。

こういうのは最初に決めておかないと、獲物の取り合いから最悪、味方同士の殺し合いにまで発展するわ」

「そういう事や。嬢ちゃんの方が断然分かッとるやないかい」

 

 テリトリーというのは、加藤が思うよりも遥かに重要なものだ。

 獲物をいくら狩るかが生存に直結するならば、尚の事ハッキリと決めなければならない。

 魔法少女の時と同じだ。不用意に相手の狩場に踏み込めば殺し合いにだってなり得る。

 そして今回、踏み込んでしまったのはこちらなのだ。

 ならば相手側の譲歩を引き出し、味方同士での衝突は未然に防いでおかなければならない。

 それを怠れば、後で痛い目を見るだろう。

 

「そやな……嬢ちゃんはかなり出来そうや。

なら、俺等はこッちからこッち……北と西をやるから、嬢ちゃんは東と南をやッてええ。

ただ、俺等がそッちに行ッたら……」

「分かってるわ。その時は貴方達に獲物を譲る」

「そんならええ」

 

 交渉により、とりあえずエリアの半分を分けてもらう事が出来た。

 それでもレーダーに表示されている星人の数は北、西の方が圧倒的に多いが文句は言うまい。

 むしろ半分もエリアを分けてくれる辺り、荒くれ者のような外見に反してかなり寛大で話の通じる男だ。

 ほむらはすぐにガンツバイクに乗り、玄野達へ声をかけた。

 

「話は決まったわ。私達は向こうをやる……行くわよ」

 

 こういうのは変に馴れ合うより、互いの区分を決めて後は不干渉を貫くのが一番いいのだ。

 そのほむらの判断に、加藤だけが不服そうな顔をしていた。




【大阪チーム】
大阪を担当エリアにしているガンツチーム。
彼等は黒玉をガンツではなく黒アメちゃんと呼んでいるらしいので、黒アメちゃんチームと呼ぶべきかもしれない。
原作の東京チームとはレイカ曰く『レベルが違いすぎる』。
100点クリアを達成した猛者揃いであり、100点武器を持つ者が多い。
全員を合計すると24回も100点クリアを達成しているというとんでもないチーム。
原作ではほぼ全滅してしまったが、相手が悪すぎただけであって普段ならば恐らく遊び感覚で余裕のクリアが出来たのだろう。

【室谷信雄】
今回ほむらが交渉した相手。一応大阪チームのリーダー。
リーダーの割に影が薄いのは、天狗と相打ちになる形で死んでしまったから。
最後は仲間に助けを求めるも見捨てられてそのまま死ぬという哀れな退場の仕方をした。
(ただし見捨てた二人も本当に死ぬとは思ってなかった)
正確には天狗戦直後はまだかろうじて生きていて、その後死亡した。
間違いなく強いのだが、何と言うか色々と運が悪かった。

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