GANTZ『焔』   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第30話 こいつが今回のボスか

「この辺りの星人はこれで全滅のようね」

 

 数多くの星人の屍が山を築き、血の河を作り、その中を暁美ほむらが悠々と歩く。

 大阪チームとの取り決めで南東の方角を譲ってもらえたが、もうこちらに星人はいない。

 レーダーを見るとまだ北西には少し残っているが、それは彼等の獲物だ。

 出しゃばって奪うわけにはいかない。

 ならば後は、向こうが片付くまで待機でいいだろう。

 ……ただし、大阪チームが負けなければ……の話だが。

 

「なァ……これからどうするんだ?」

「大阪チームが終わらせるまで待機するわ。獲物の横取りは好ましくないもの」

 

 アキラの問いに答え、髪をかきあげる。

 こちらは向こうに比べて獲物が少なかったが、それは仕方のない事だ。

 ここは本来彼等のテリトリーなのだから、半分分けてくれただけで太っ腹と思った方がいい。

 そこを履き違えて欲張れば、しなくてもいい戦いをする羽目になる。

 その事をほむらは、魔法少女時代の経験から学んでいた。

 

「それにしても……君、凄いな。

俺の同年代にこんな凄い子がいるなんて思わなかッたよ」

「貴方も初めてにしてはいい線いってたわ」

「はは……そうだといいな」

 

 アキラはほむらに感心しているが、ほむらもアキラの事をそれなりに見直していた。

 吸血鬼としての身体能力もあるのだろうが、彼はこれが初回とは思えない程に活躍した。

 Zガンで敵を潰し、自らの体内から生成した刀で星人を斬る。

 その戦いぶりは、生き延びれば十分にこれからエースになれるだろうと思わせるものだった。

 それにしても気になるのは、自分達がわざわざ大阪に呼び出された意味だ。

 ハッキリ言って、ここまでにほむらが倒してきた星人にそこまで脅威を感じさせる者はいなかった。

 この程度ならば大阪チームだけでも十分殲滅出来るだろう、と思わされるものばかりだ。

 ……となると、向こうにいるのだろうか?

 もっと高得点で危険な敵が。あるいは100点の強敵が……。

 

「……ちょっとここで待ってて」

「えっ?」

 

 アキラを残し、ほむらはガンツバイクの中に置いていたノートパソコンを手にしてからスーツの力でジャンプした。

 元々ビルからビルへと跳び移るだけの跳躍力を持っていたほむらだが、今の彼女はそこにスーツの力が上乗せされている。

 そしてどうでもいいが、ほむらが跳んでいる最中、肩に掴まっていたキュゥべえは風圧で顔が凄い事になっていた。

 一跳びで高層ビルの屋上まで到達し、ほむらは大阪の街を見下ろす。

 残る敵は……やはり北西の方向に凄いのがいる。

 蜘蛛のような下半身を持つ巨大な牛が見えない何かと格闘戦をしており、他にも色々な所で大阪チームが奮闘していた。

 そしてやはりというべきか、加藤の姿もそこにあった。何をしているんだ、あの男は……。

 

「あの見えない何かは、100点クリアの武器かしら」

「恐らくそうだろう。人類の科学力も侮れないね」

「得点は……」

 

 ほむらはコートのポケットからデジカメを取り出し、先程持ってきたパソコンに繋ぐ。

 更にデジカメをXガンと接続し、上のトリガーを引いた。

 2回クリアの時に得たパソコンは今までロクに使ってこなかったが、折角なので敵の点数を計っておくことにしよう、と考えたのだ。

 まず牛鬼を計り、表示された点数にほむらは驚きを感じた。

 

(70点……かなりの大物ね)

 

 続けて、大阪チームのエースと思われる坊主頭の男と黒い男、それから半裸の男が三人がかりで挑んでいる小柄な星人。

 こちらは一見弱そうだが、しかしガンツに最初に表示されたターゲットと同じ姿をしている。

 ぬらりひょんとは恐らくあいつの事だろう。

 そして点数を計り、ほむらは目を細める。

 

「……100点……か」

 

 見た目で雑魚と侮ると痛い目を見るタイプらしい。

 ほむらは大阪チームとその小柄な星人……ぬらりひょんの戦いを観察する事にした。

 向こうのエリアにいる敵は大阪チームの獲物だ。なので横取りする気はない。

 しかしそれはあくまで、大阪チームが生きている間の話である。

 もしも彼等が全滅してしまえば、次は自分達が戦う事になる。

 ならばその時の為に、今からぬらりひょんを観察しておけば必ず後でプラスに働くだろう。

 

 

「……想像……以上ね」

 

 高層ビルの屋上でほむらは息を呑んでいた。

 あれから大阪チームの戦いを観戦していたのだが……正直に言って、今回はかなりやばい。

 ぬらりひょんはあれから、二度の形態変化を行っていた。

 一度目に変身したのは、何十人……あるいは百人以上の女性の裸体が集合して出来た巨人だ。

 これに大阪チームのリーダー格と思われる坊主頭と、ハゲ頭の二人が取り込まれて殺された。

 更に最後の一人も取り込まれたが、彼は余程の女好きだったのか、逆に女巨人の顔まで這い上がると、女巨人の口に己の一物を突っ込んで謎の白い液体を出していたから驚きだ。

 ほむらは、あいつは死んでもいいと心の底から思った。

 しかしそんな男を加藤が助けてしまい、今度は彼が捕まった。

 そこを狙ってステルスしていた西がZガンを拾い、ぬらりひょんを不意打ちで押し潰し……終わったと誰もが思った。

 ほむらすら、これで終わりだと思ってしまった。

 

 しかしぬらりひょんはそこで二度目の形態変化を行い、今度は悪魔とでも形容すべき姿となった。

 頭部は牛の骨のようであり、身体は恐竜を思わせる。

 腕からは触手が生え、全長は4メートルか5メートルほどあるだろう。

 今度は西のステルスも効果がなく、不可視の攻撃によって彼の片腕が吹き飛ばされてしまった。

 今までの星人とはまるで違う。恐ろしい敵だ、と素直に認める他ない。

 凄まじい再生能力に形態変化。攻撃手段も形態ごとに変わり、まるで底が見えない。

 しかし突破口は西のおかげで見えた気がする。

 ほむらはそれを確認すべく、Xショットガンでぬらりひょんの頭を狙撃した。

 するとぬらりひょんは倒れ、しばらく動かなくなる。

 

(……やはり、意識外からの攻撃……不意打ちが有効……けど……)

 

 先程の西の攻撃の時だけ復帰が遅かった事から不意打ちに弱いと読んだが、これが当たりだった。

 しかし不意打ちだけでは駄目だ。

 腕一本から再生した事からも分かるように、不意打ちで一気に全身を破壊しなければアイツは死なない。

 既に今も、ダメージなど無かったかのように再生してしまっている。

 Xショットガンだけでは威力と、何より攻撃範囲不足だ。

 あれを仕留めるには不意打ちしつつ、もっと広範囲を破壊出来る武器を叩き込まなければ。

 

「やるのかい?」

「ええ。大阪チームもほぼ全滅みたいだし……それに、こっちに向かって来てるわ」

 

 復活したぬらりひょんはほむらの位置を把握していないだろうが、しかし何となく撃ってきた方向くらいは分かるのだろう。

 こちらに向けて移動し始めていた。

 こうなればぬらりひょんとの戦いは避けられない。

 

「ほむら! 来るよ!」

「――ッ!」

 

 しかしそう簡単にラスボスには挑ませてくれないらしい。

 上空から二体の影が接近し、ほむらは咄嗟に跳躍してその場を離れた。

 直後に天狗のような姿の星人と犬神のような姿の星人が着地し、ほむらを睨む。

 

「ゴアアアアアッ!!」

 

 天狗が吠え、ほむらへ腕を振り下ろした。

 それを紙一重で避け、Xマシンガンを向ける。

 だが背後から犬神が腕を薙ぎ、咄嗟に跳躍して回避した。

 そのまま後方宙返りで犬神の頭上を飛び越えつつ、マシンガンを発射する。

 だが犬神と天狗は構わず突っ切り、身体の至る箇所が破裂しながらもほむらへ肉薄した。

 怒涛の勢いで二体が攻撃を繰り出し、ほむらは汗を流しながら避ける。

 その動きはいつもよりも速い――だが、速いが故にキレがなかった。

 スーツのせいだ。自らの感覚と予測よりも速く身体が動いてしまう。

 そのズレのせいでいつもの見切りが出来ない。

 

「くっ……!」

 

 大振りな犬神の拳を跳びつつ避けて横回転――横面に蹴りを一発叩き込んだ。

 更に犬神の顔を踏み台にして跳び、ビルから身投げするように急降下した。

 それを追って空を飛べる天狗が接近してくるが、待ってましたとばかりにレーザー砲を発射した。

 光が散弾銃のように拡散し、天狗の身体を穴だらけにしていく。

 それでも血まみれの天狗がほむらに近付き、捕まえようと腕を振り回す。

 右腕を避け、左腕を上体を逸らして避ける。

 そのまま更に身体を逸らしてサマーソルトキックのように天狗の腕を蹴り、反動で落下速度を上げた。

 地面が迫り、ほむらは上に向かってYガンを発射した。

 射出されるアンカーに掴まって高度を上げ、アンカーが天狗に絡みつくと同時に天狗の頭を蹴って上へ跳躍。

 遅れて追って来ていた犬神へ急接近しつつマシンガンを撃ち、身体を破壊していく。

 犬神が咄嗟に繰り出した爪を体操選手のように身体を捻る事で避けて犬神の頭を蹴り、跳躍。

 離れた場所へ適当にYガンを発射して再び空中移動をした。

 だからそれ、そういう武器じゃないって。

 

「ゴアアアアアッ!」

「グルルルル……ッ」

 

 ほむらの後を追ってワイヤーから脱出した天狗が飛翔し、犬神がビルの壁を蹴って反対側のビルの壁へ跳び移り、またそれを蹴って別のビルの壁へ着地する事でほむらを追う。

 大阪のビルとビルの間をほむらが翔け抜け、それを両側から挟むように天狗と犬神が接近して拳を突き出した。

 挟み撃ち――! しかしほむらは身体を捻る事で二体の腕の間に身体を通す。

 天狗の腕がほむらの背中スレスレを通り、犬神の腕がほむらの胸の前スレスレを通過する。

 巨乳のマミでは絶対出来ない貧乳回避だ。

 天狗と犬神は互いの拳を顔で受ける事となり、その隙にほむらは天狗の顎を蹴って下降し、挟み撃ちから脱する。

 そしてビルを蹴り、ビルからビルへ。大阪の夜空を少女が翔ける。

 その後を二体が追い、ほむらは距離を空けながらXマシンガンで牽制する。

 すると天狗と犬神は互いの足の裏を合わせるように蹴り、左右へと散った。

 二体の姿が左右に聳え立つビルに隠れて見えなくなり、直後にビルの窓をブチ破って突撃してきた。

 

「……っ!」

 

 間一髪で身体を丸めて空中で前転して突撃を避ける。

 そのまま犬神の頭に手を置いて逆立ちし、倒立回転。

 最後に犬神の後頭部を踏み台にして跳び、すぐに身体の向きを変えてマシンガンを撃った。

 天狗が異常な耐久力でそれを耐えながら飛び、距離を詰める。

 重力に引かれて再び地面が近付くが、今度は道路に出てしまった。

 ほむらは走行中のトラックの上に乗り、天狗はすぐ後ろを走るバスの上に着地した。

 

「ゴアッ!」

 

 天狗がほむらの乗るトラックの上に移動し、景色が高速で後ろへ流れる車の上で戦闘が始まった。

 拳を避けてマシンガンで腹を撃ち、天狗の内臓が零れ落ちる。

 それでもまるで動きが衰えずに天狗が拳を振り下ろし、ほむらは跳躍して別の車の上へ避難した。

 しかし今度は犬神が車から車へ跳び移りながら接近してくる。

 足場の揺れる場所での二対一を嫌ったほむらが再びYガンで飛び、その後をすぐに二体が追った。

 もうそういう武器でいいや。

 今度向かった先は建物が密集した繁華街だ。

 ほむらはアンカーから手を放してビルの壁を踏み台に跳び、人々の頭上を越える。

 直後に天狗と犬神が通過し、その非現実的な追いかけっこに人々は何事かと騒いだ。

 追いついてきた犬神の顔を踏んで高く跳び、すかさずYガンを発射した。

 狙いは……案の定飛んで追って来た天狗だ。

 天狗にワイヤーが絡み付き、動きを封じる。よかった、やっぱりそういう武器だ。

 アンカーが上に向けて火を吹き、天狗を地面へ落とそうとする。

 これを天狗も力づくで振りほどこうとするが、その上にほむらが乗った。

 

「いくらしぶとくても……これならどう?」

 

 そして零距離で天狗の頭にXマシンガンを連射した。

 その間もアンカーは地面へ急接近し、遂に天狗を大地へ縫い付けた。

 更にほむらは追い打ちとばかりに天狗の頭を思い切り踏みつける事で天狗の頭をクッションにして着地した。

 地面が砕け、天狗の顔から血が溢れた。

 しかし何と呆れた生命力か。天狗はそれでもほむらに一矢報いようと手を伸ばす。

 だがもうほむらはそこにいない。再び跳躍し、空から天狗へレーザー砲を向けていた。

 これでチェックメイトだ。光が溢れ、天狗の身体を消し去っていった。

 

「…………ッ」

 

 今度こそ天狗は絶命し、その巨体が血の海に沈んだ。

 これで一体。

 しかし遅れてやってきた犬神が地面を砕いて着地し、ほむらを食い殺さんと牙を剥く。

 ガチン、と牙が噛み合う音が響くがほむらは既に退避した後だ。

 猛る犬神を無表情で見上げ、挑発するように手を動かす。

 先程までは二対一だったが、これで一対一だ。この差は大きい。

 

「来なさい」

 

 ほむらの誘いに乗ったように犬神が再び攻勢に出た。

 その一撃一撃をほむらは余裕をもって避ける。

 反撃はしない。まずは敵に攻撃だけをやらせる。

 やがて犬神の攻撃は徐々にほむらに掠るようになり、危うい場面が目立つようになってきた。

 

「や、やッと追いついた……おいッ援護しようか!」

「それには及ばないわ」

 

 ほむらの空中戦に対応し切れず、今更になってようやく追いついてきたアキラからの援護を断り、更にほむらは避け続ける。

 より近く、よりギリギリで、紙一重で……。

 時には髪に僅かに触れさせ、犬神の腕を足場にし、噛み付こうとしてきた鼻先を撫でる。

 ただ無意味に避けているわけではない。

 ほむらは犬神を相手に、スーツと認識との間で起こる誤差を高速で修正しているのだ。

 やはり命がけの戦いの方が感覚が研ぎ澄まされるのだろうか。

 ほむらの動きからは次第に無駄が削ぎ落とされ、犬神の攻撃が突き抜けていると錯覚するほどに当たらなくなっていった。

 

 右腕の突きを、少し身体を捻るだけで背中スレスレで通過させる。

 振り下ろされた爪を、半歩引くだけで避ける。

 噛み付こうと近付いてきた鼻先を撫で、牙が届かないギリギリの位置に下がって回避する。

 

「フーッ……フーッ……」

 

 やがて犬神も勝ち目がない事を悟ったのだろう。

 怯えるようにほむらから後ずさり、そしてジャンプして離脱を計った。

 だがそれと同時に跳躍していたほむらが上からXマシンガンを撃ち、犬神の頭を四散させた。

 念のために着地と同時に更にYガンを天狗と犬神に撃ち、死体を転送して消し去る。

 それからほむらは、レーダーを確認してぬらりひょんの位置を確認した。

 そろそろこちらに来てもおかしくないはずだが……妙だ。ある位置で立ち止まっている。

 その理由にすぐ思い当たり、ほむらはバイクへと走った。

 

「ど、どうしたんだ!?」

「早く乗りなさい! 説明している暇はないわ!」

 

 何故ぬらりひょんが止まっているのか。

 その理由は簡単だ。

 ……ほむらが犬神と天狗に手こずっている間に、東京チームの誰かがぬらりひょんと遭遇したのだ。

 それしか考えられない。

 だからほむらは、急いでバイクを発進させた。

 

 

 ほむらの予想は当たっていた。

 ぬらりひょんと遭遇してしまったのは、玄野達だ。

 駅へと続く歩道橋の上で、彼等は過去最大の敵と向き合っていた。

 今ここにいるのは玄野、桜丘、ライス、和泉、ホイホイの三人と二匹だ。

 玄野と和泉はすぐにガンツソードを構え、桜丘もフットワークを踏む。

 

「こいつが今回のボスか……」

「よし……やるぞッ!」

 

 さしもの和泉も敵の威圧感に呑まれかけているが、玄野がまず最初に斬りかかった。

 遅れて和泉が飛び込み、二人の剣がぬらりひょんへ近づく。

 だがその瞬間、二人は何か衝撃を受けている事を感じた。

 まるで身体が激しく揺さぶられているような、妙な感覚だ。

 咄嗟に玄野と和泉は左右へ跳び、不可視の攻撃から逃れた。

 だがスーツから液体が漏れ、剣が重くなる。

 

「スーツが……スーツがオシャカになったッ!」

「馬鹿なッ!」

 

 ほんの少しの間でスーツが破壊されてしまった。

 もしもあのまま突っ込んでいれば今頃、二人の手足は引き千切られていた事だろう。

 しかし助かったわけではない。ぬらりひょんが二人へ視線を向ければ、今度こそ終わりだろう。

 だが背後に回り込んでいたライスが脇腹の肉を噛み千切る事で一瞬動きが止まり、その一瞬で桜丘が行動を起こした。

 

「――ふッ!」

 

 桜丘が突撃し、ぬらりひょんの足へ蹴りを叩き込んだ。

 ぬらりひょんの巨体が僅かに揺れ、更に続けて跳躍。三日月蹴りを脇腹へ炸裂させた。

 着地と同時に地面が抉れるほどの力で踏み込んで回転し、回し蹴り。重い打撃音が響いてぬらりひょんがよろめく。

 しかしぬらりひょんは桜丘へ視線を移すと、またしても不可視の攻撃を放とうとした。

 それを察知して素早く顎を蹴り上げて照準をズラし、飛び上がってぬらりひょんの顔にスーパーマンパンチを打ち込む事で牛の骨のような頭部を破壊する。

 あの不可視の攻撃がどこから放たれているかは分からないが、後ろに回ったライスが被害を受けなかった事から前にしか撃てないと桜丘は考えた。

 ならば恐らく攻撃の出所は――視線!

 視界内に入る事でしかあの攻撃を受ける事はないと桜丘は推測していた。

 だから顔さえ破壊してしまえば恐れる相手ではないはずだ。

 

「ふーッ、ふーッ……」

 

 軽く呼吸し、リズミカルにステップを踏む。

 いける……桜丘は確かな手応えを感じていた。

 ここまで培ってきた経験は決して無駄ではない。間違いなく自分を成長させてくれている。

 この恐ろしい相手にだって今の自分ならば勝てると彼女は信じた。

 JJがいなくなった今、敵に近付いて殴り合いが出来る者は少ない。

 だからこそ、敵の前に出て仲間を……何より玄野を守るのは自分の役目だと彼女は考えていた。

 だが次の瞬間、桜丘は信じられないものを目にする事になる。

 

「うふ……うふふふふふふ……」

 

 ――ぬらりひょんが、何事もなかったかのように再生した。

 砕けた顔が復元され、不気味な笑い声をあげる。

 かつて絶望感を味わわされたあの千手観音以来の再生能力持ちだ。

 ぬらりひょんの背後に千手観音の幻影が、恐怖と共に浮かび上がる。

 だがぬらりひょんを千手観音と同格と考えるのは大きな間違いである。

 千手には再生出来るギミックがあった。手にしていた時計がなければ再生出来なかった。

 ぬらりひょんはそうではない。

 この怪物は……そんなものがなくとも、再生し続ける。

 

「そん……な……」

 

 絶望感に動きを止めてしまった桜丘を、ぬらりひょんの視線が捉えた。

 直後にスーツが不可視の攻撃を受けて瞬く間に機能を停止してしまう。

 

「あああ゙ッ! ああうああ゙あ゙あ゙あ゙ッ!!」

 

 スーツの防御など意味がない。そう告げるかのように桜丘の四肢が捻じれる。

 そして嫌な破裂音が響き、彼女の手足が千切れ飛んだ。

 その光景に玄野の怒りが臨界に達し、Zガンを向ける。

 

「野郎ォォォォ!」

 

 重圧がぬらりひょんを押し潰し、血の池を作り上げた。

 それを確認もせずに玄野は桜丘へ駆け寄り、傷口をきつく縛る。

 しかし桜丘の出血が酷過ぎる……このままでは長くは持たないだろう。

 

「くそッ、転送はまだか! ガンツ!」

 

 玄野が叫ぶが、転送される気配はない。

 それもそのはずで、転送は敵が全滅しなければされないのだ。

 血の池の中からまたしてもぬらりひょんが現れる。

 確かに潰したはずなのに、まるで何事もなかったかのように。

 しかもただ再生しただけではなく、先程よりも一回り大きくなっている。

 

「お……終わら……ない……。

こんな奴……どうすれば……」

 

 Zガンで叩き潰したのに死なない。

 効かないならまだ分かるが、効いたのに平気で復活してくる。

 そんな奴をどうしろというのか。

 絶望しかける東京チームだが、しかしぬらりひょんは彼等を無視して後ろへ振り向いた。

 それはまるで、目の前の東京チームよりも大きな脅威を感じ取ったかのようだ。

 

「何だ……?」

「何かが、こッちに近づいて来ている……」

 

 ズシン、ズシン……と。

 重い足音を立てて何かがぬらりひょんへと近づいて来ていた。

 そしてぬらりひょんはこの足音の主を玄野達よりも優先して対処すべき相手であると感じ取っている。

 やがてぬらりひょんの視界の先には、奇妙なスーツを纏った男が……。

 

 ――七回クリアの男、岡八郎が姿を現した。




・ほむらが空中戦をしてる間のキュゥべえ

QB「ぬおおおおおお!? ほむら、落ち……落ちる!」
※必死にしがみ付いている

QB「おおおおおおふ! 方向転換する時はせめて一言おおおおお!」
※必死にしがみ付いている

QB「うっぷ……ミッション前に飲まされた消費期限切れの牛乳が喉から込み上げ……」
※必死にしがみ付いている

QB「わけがああああああ!」
※必死にしがみ付いている

QB「わからないよおおおおお!」
※必死にしがみ付いている

【ぬらりひょん】
ガンツに登場する敵の中でも最強と名高いキャラクター。
意識外からの攻撃(つまり不意打ち)以外の方法でいくらダメージを与えてもすぐに再生する上に、再生するたびに変身してパワーアップしていくという悪夢のような星人。
しかも意識外の攻撃すら、西のステルスZガンで死ななかったの見るに腕の一本すら残してはいけない。
(ただし次の形態でステルスを見破ってあっさり西を倒しているので、もしかしたら女巨人の時点で西の姿が見えており、そもそもアレは意識外の攻撃ではなかった可能性もある)
不死身に加えて攻撃力も千手クラスであり、スーツ無視の超能力やレーザーなどを使う。
格闘では作中最強の筋肉ライダーを一撃KOするなど、打撃力もやばい。
ミッションでこいつが出てきたら、その回の点数は諦めて時間切れを待つのが多分一番いいのだろうが、大阪ミッションには制限時間がなかった。まさに絶望。

【岡八郎】
史上最強の銀行員。
大阪チーム最強にして7回クリアの男。
通信教育で空手をやっており、学生時代には卓球(ピンポン)もやっていたらしいが、空手はともかく卓球が戦闘において何の役に立つのかは不明。
過去には100点星人を単独で討伐した事もあるらしい。
原作における彼とぬらりひょんの一騎打ちはガンツにおける『人間最強』と『星人最強』の頂上決戦。
ハードスーツの性能を発揮して何度もぬらりひょんを倒すが、再生し続けるぬらりひょん相手では流石に分が悪く、『意識外の攻撃が有効』と分かった時には既にほとんど武装が残っていなかった。
ぬらりひょんに止めを刺さずに退却した理由として考えられるのは、ぬらりひょんは意識外からの攻撃から間髪を容れずに全身を完全に破壊しなければ倒せないので、あの時点で既に止めは不可能と考えたからだと思われる。
もしかしたら意識の外に一度出て遠距離から狙撃などを試すつもりだったのかもしれない。

まさか時間制限がなくなっていた事に気付かず、時間切れ狙いだった……とかは流石にないと思いたい。

【謎の白い液体】
まどか☆マギカの放映において、10話から最終回12話までのクライマックス3話分を一挙放送した際に何度も何度もしつこいくらいに流れたCMに出たフレーズ。
この謎の白い液体の正体とは!?

【何故天狗と犬神は原作のように大阪チームに挑まずにほむらの方へ来たのか】
天狗「アイツ……頭高くない?」※ビルの上から見てる的な意味で
犬神「どうする天ちゃん。処す? 処す?」
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