GANTZ『焔』   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第41話 とにかく一人でも多く救うンだ

 巨人の襲撃から一夜が明けた。

 自分との戦いを終えたほむらは、レーダーで付近に敵が残っていない事を確認してから魔法少女へと変身し、黒翼を展開する。

 その姿を見たまどか達の反応は様々だ。

 まどかやなぎさ、ゆま、キリカは素直に恰好いいとはしゃぎ、杏子は若干呆れ気味だ。

 

「いや、まさか……魔女化してから人間に戻るとかそんなんアリか?

しかも魔女の力すら使い放題って、そりゃもう反則だろ」

「魔女の力を使いこなす魔法少女……さしずめ《闇を抱きし紫炎》といったところかしら」

「おまえはなにをいってるんだ」

 

 ドヤ顔でおかしな事を口走り始めたマミに若干引きつつ、杏子は朗らかに笑みを見せる。

 

「しかし大したもんだよ。魔女になってから戻ってきた魔法少女なんてきっと、アンタだけだ」

「でしょうね」

 

 余談だが大人達はまだ地下室で寝ている。

 地球がこんな事になってしまった今別に隠しておく必要はないのだが、少女が巨人達と戦っているなどと言ったら責任感から「自分も戦う」などと言い出しかねない。

 それに魔法少女だの魔女だのと言った事は説明するのが面倒だ。

 

「ほむらちゃん……行くんだね?」

「ええ。まだ戦い続けているだろう知り合いがいるからね。

私も休んではいられないわ」

 

 まどかの心配そうな声に、ほむらはあの部屋の仲間達の顔を思い出しながら答えた。

 襲撃から一日が経ったが、玄野や加藤はまだ生きているだろうか?

 東郷や桜丘は無事だろうか?

 彼等の事だからきっと、今頃は攫われた人々でも救い出そうとしているのだろう。

 巨人との戦いはまだ終わっておらず、世界では今も誰かが殺されている。

 だからこそ、ほむらもいつまでもここに残るわけにはいかなかった。

 

「大丈夫よまどか。この見滝原は既に私の結界の中にある」

 

 心配そうなまどかを安心させるように言い、右手で髪を掻き上げる。

 それと同時に黒い羽根がどこからともなく舞い散り、カフェテラスのテーブルの上に置かれていた葡萄ジュースがあり得ない程に溢れて地面を濡らした。

 そのまま紫の液体は河へ流れ込み、その不可思議な光景になぎさとゆまがはしゃいで河の上で走り回る。

 往来をほむらの使い魔である着せ替え人形のような子供達が歩き、そのうちの一体がほむらの後頭部目掛けてトマトを投げつけた。

 ほむらはそれをヒョイとかわし、さやかの顔にトマトが炸裂する。

 さやかは倒れた。

 

「さやかぁぁ!?」

「私、これだけは絶対忘れない……アンタが悪魔だって事……」

 

 トマトで倒れたさやかは地面に『あくま』と書いている。

 そんな彼女を放置してほむらは断言するように言った。

 

「いざとなれば使い魔達が貴女達を守ってくれるわ」

「ちょっと! 守るどころか今! トマトぶつけられたんだけど!?」

 

 ほむらの言葉に反発するようにさやかが立ち上がり、真っ赤になった自分の顔を指さす。

 しかし使い魔がさやかを攻撃したというのは間違いだ。

 正確にはほむらの使い魔は、魔女でなくなった主に不満を持ってほむらにトマトを投げたのである。さやかに当たってしまったのはただの流れ弾だ。

 しかし逆に言えば使い魔がやる悪戯はその程度のものであり、基本的にはほむらの言う事に従うし外から侵入者があれば全力でそちらを叩いてくれる。

 加えて悪戯の対象はほむらなので、ほむらが結界内から去れば後は職務に忠実になるだろう。

 とはいえ、主に何かを投げるのも出来れば止めて欲しいものである。

 そんな事を考えながらほむらは、投げつけられた柘榴をヒョイと避けて、その先にいたさやかに柘榴が直撃した。

 さやかは倒れた。

 

「こんな身体でキスしてなんて言えない……だって今、私、柘榴まみれだもん」

「食い物を粗末にすんじゃねえ、殺すぞ」

 

 杏子がほむらの使い魔の首を掴んで脅すと、使い魔達は一斉に逃げ出す。

 自分の使い魔ながら何とも根性のない子達だ、とほむらは思った。

 

「けど、それだとほむらちゃんは魔女の力を使えないんでしょ?」

 

 ほむら自身は戦場へ向かうが、まどか達を無防備にするわけにはいかない。

 なのでほむらは、既にこの見滝原市全体を自分の結界に閉じ込めていた。

 しかしそれは、戦場でほむらが魔女の力を使えないという事を意味している。

 結界の中でなければHomulillyや使い魔を出す事は出来ない。

 ここに結界を出している限り新たに結界を出す事が出来ず、この先の戦いでは魔女の力を使えない事を意味していた。

 

「問題ないわ。魔法少女の力は戻っているし、そんなものがなくても戦ってみせるわよ」

 

 だがほむらは魔女の力が使えない事を気にしてはいなかった。

 今までずっと、そんなものなしで戦ってきたのだ。

 むしろ魔法少女の力が戻っている分、魔女の力を引いてもまだパワーアップ分の方が大きい。

 腕を振るうと盾の中から使い魔に回収させた飛行ユニットが出現し、座席に乗り込む。

 これも明確にパワーアップした部分の一つで、昔は盾に入れる事が出来るのはある程度のサイズの物までだったのだが、今ではサイズに無理があっても空間を操作して収縮させる事で収納可能になっていた。

 

「ほむらちゃん!」

 

 まどかが慌てて駆け寄り、そして髪を結んでいたリボンを解いてほむらに差し出した。

 

「絶対に……絶対に帰ってきて! もう私達を置いて行かないで……!」

「……ええ」

 

 ほむらは微笑んでリボンを受け取り、カチューシャを外して代わりにリボンを結んだ。

 それから、今まで身に付けていたカチューシャをまどかへ渡し、力強く言う。

 

「約束する。必ず帰って来るわ……貴方達の所へ」

 

 まどかと視線を交差させ、それから皆を見る。

 もう皆から逃げたりはしない。

 死んで楽になろうとは考えない。

 必ず生きて、そして帰って来る。この愛すべき皆の所へ。

 今は使わない翼を消してコートを羽織り、飛行ユニットのエンジンを入れる。

 

「ライス! まどか達を頼んだわよ!」

「ウォウ!」

 

 ライスはここに残す事にした。

 彼がまどか達の近くにいてくれた方が後ろを気にせずに思い切り戦えるからだ。

 ほむらがペダルを踏むと飛行ユニットが浮上した。

 そこに慌ててキュゥべえが飛び込み、ほむらの肩に乗る。

 一瞬叩き落してやろうかとも思ったが、まあいれば投擲用の武器くらいにはなるだろう。

 そう考えてほむらはあえてキュゥべえの同乗に何も言わなかった。

 

 飛行ユニットを全速力で飛ばし、自身の結界を抜けて東京を目指す。

 その道すがら、目についた巨人を手あたり次第にZガンで押し潰した。

 彼等はきっと、地球人を現地の虫程度にしか考えていないのだろう。

 ならばこちらも同じ事。我が物顔で地球を歩く巨大な害虫としか思わない。

 次々と害虫を駆除し、やがてほむらを乗せた飛行ユニットは東京のあのマンションへ到着した。

 飛行ユニットを盾に戻してベランダに飛び降り、中を見る。

 すると中には、驚いたような顔をした玄野達が立っていた。

 いるのは玄野兄弟と加藤、桜丘と東郷、パンダ、西……更には解放されたはずのJJまでが何故かそこにいた。

 いないのは和泉だけだ。まあ元々協調性のない性格なので別に不思議はない。

 他には見覚えのない男が数人いたが、他のチームの人間だろうか?

 ベランダの窓を開けて中へ入ると、玄野が駆け寄って来る。

 

「暁美! 今まで何処にいたンだ!?」

「ちょっと見滝原市の方にね。ところでこれは何の集まりかしら」

 

 ほむらが尋ねると、玄野は思い出したように表情を引き締めた。

 どうやらこれから、何か大きな戦いをする前だったらしい。

 

「俺達はこれから、敵に捕まッた人達を助けに行く。

ここにいる奴等は皆、俺達の呼びかけに応えてくれた人達だ。

暁美……お前も来てくれ! お前が居てくれれば百人力だ!」

「おいおい……そんなお嬢さんで大丈夫なのか? 言ッちゃ悪いがこの先の戦いに付いて来れるようには見えないぜ」

 

 ほむらを連れて行こうとする玄野へ、心配そうに新顔の中年男が不満を口にした。

 決してほむらを馬鹿にした口調ではない。

 ただ純粋に心配している、大人としての反応だ。

 そんな彼に加藤が口を挟んだ。

 

「見た目で判断しない方がいい……暁美は俺達の中では一番の実力者だ。

ミッションも、もう9回も100点を獲得している」

「きゅう……!? そりゃすげえ……」

 

 加藤がクリア回数を口にした事で、全員が絶句した。

 それはそうだ。9回クリアなど正気の沙汰ではない。

 それはつまり9回も、解放されるチャンスを投げ捨てているという事でもある。

 凡そまともな思考で行き着ける境地ではないのだ。

 

「いいわよ。どのみち奴等の拠点には乗り込むつもりだったし……しばらくは玄野さん達と一緒に行くわ」

「ありがとう……助かる!」

 

 その後ほむらは、東京チーム以外のメンバーと軽い自己紹介を済ませた。

 玄野の呼びかけに応じて来てくれた他のチームの戦士は8人だ。

 まずは大阪チームから来た岡八郎と眼鏡の高校生。そして山咲杏。

 金髪の強面は広島チームから駆け付けた前嶋龍二。

 ブロンドの日本人に見えない美女はメアリー・マクレーン。見た目と名前に反して日本語以外は話せない。

 関根誠人は京都チームから応援にやってきた眼鏡の男で、英語も堪能だ。

 吉川海司は群馬チームから来たらしく、短髪で精悍な顔立ちをしている。

 先程ほむらの実力を疑問視した中年男は矢沢年男というらしい。特に語る事のない容貌で、この中では真っ先に死にそうだ。

 

「ところで何でJJさんがいるの?」

「ガンツの玉を管理してるッていう連中に無理矢理呼び出されたンだ。記憶まで戻されてな」

 

 ほむらの質問に、玄野が憤りを見せながら答えた。

 やはり予想通り、100点で解放されても結局はこうなるらしい。

 まあ100点を取るほどの優秀な戦士ならば遊ばせておきたくはないだろう。

 残念ながらこれは予想出来た事だ。

 

「ノープロブレム、アケミ! マタ、一緒ニガンバロー!」

「そうね。ところでもうカタコトでキャラを作る必要はないんじゃない?」

「……それもそうだな。

まァ、あれだ……戻ッてきちまッたが、俺はむしろ好都合だと思ッてるよ。

こうしてまた皆と一緒に戦えるンだからな」

 

 ほむらにJJが話しかけるが、本当は普通に日本語がペラペラな事は皆知っている。

 なのでそれを指摘すると、あっさりと普通の話し方に戻ってしまった。

 部屋にいる時も最初からこうして話してくれていればもっと意思疎通出来たのに、と思わないでもない。

 

「暁美。これから俺達は敵の宇宙船に乗り込ンで一人でも多く助ける」

「それは構わないけど、その前に一つやる事があるわ」

 

 玄野達は既にやる気に満ちているようだが、肝心な事を見落としている。

 敵の宇宙船に乗り込むのは間違いなくガンツの転移によるものだろう。

 だが、転移して乗り込めば敵だってそういう手段がこちらにあると察してしまう。

 あるいはもうとっくに気付かれていて対策されている可能性がある。

 故に、こちらの生命線であるガンツは可能な限り守らなくてはならない。

 

「ガンツ、敵は恐らく貴方にハッキングを仕掛けてくるはずよ。対策は可能?」

「ハッキング……うん、分かッた。何とかしてみるよ……」

 

 技術力では敵の方が圧倒的に上だ。

 地球人のプロテクトなど簡単に突破してガンツを乗っ取るだろう。

 一応ガンツに忠告はしたが、これもどこまでもつかは怪しい。

 残念ながら、少しだけ乗っ取られるまでの時間を稼ぐ程度にしかならないだろうとほむらは考えていた。

 

「ハッキング……マジか……。

暁美、そンなことありえるのか?」

「可能性は高いと見ているわ。多分、転移出来る回数もそう多くはないでしょう。

恐らく転移で乗り込んだ瞬間からガンツの位置はバレると思ってるわ。

もしかしたら帰る事すら出来ないかもしれない……それでもやる?」

 

 ほむらの問いに玄野だけではなく全員が怯んだ。

 ガンツは、ある意味では彼等の中で絶対の存在だったのだ。

 無理矢理自分達を戦わせる嫌な物だが、その決定は覆せないし抵抗も出来ない。

 星人ですらどうしようもない、そんな存在だと思っていた。

 だがそうではない。技術は高度な異星人のものでも、それを管理しているのは所詮人間だ。

 ガンツの絶対性など、もはや無いに等しい。

 だがそれでも玄野は逃げなかった。

 

「……勿論だ! 転送出来ないなら、その時に考える! とにかく一人でも多く救うンだ!」

「行き当たりばったりね」

 

 玄野の出した答えに若干呆れつつ、しかしほむらは笑った。

 先の見えない挑戦にも恐れず突き進む勇気。それが玄野にはある。

 それが今は眩しく思えた。

 

「いいわ。ならそれでいきましょう」

 

 どのみち、何が正しいのかなど今は分からないのだ。

 やってみなければ答えは分からない。人生はいつだってそうだ。

 ならば今はただ、暗闇の道を突き進むしかない。

 その先に行き止まりがあったらならば、行き止まりごと破壊してしまえばいい。

 

「よし! ガンツ、俺達を捕らわれた人達の所へ送ッてくれ!」

 

 玄野達が一斉に、巨人の宇宙船へと転移した。

 

 

 巨人の襲撃により廃墟と化した町の中で、和泉は茫然と立ち尽くしていた。

 その視線の先にいるのは、物言わぬ死体となってしまった恋人……涼子の遺体だ。

 何故こんな事になってしまったのか……それは巨人の襲撃から一夜が明けた後に財閥チームによって強制的に転移させられてしまったからだ。

 戦いを終えて何とか帰って来てみれば、全ては手遅れだった。

 ただの少女に過ぎない涼子が一人で生き残れるはずもなく、和泉は守ると誓った少女を守る為に戦う事すら出来ずに失ってしまった。

 

「あ、ああァ……ああァぁあアァああ……嫌だァァ……!

涼……子……目を、開けてくれよ……また遊園地……行くッて約束したろ……」

 

 愛した少女はもう何も言わない。

 これからだったのに。

 ずっと素っ気なく扱ってしまって、辛い思いをさせてしまった。

 その償いをこれからしなくてはならなかったのに。

 だというのに、もう出来ない。もう償えない。

 愛していると伝える事も出来ない。

 

「……殺してやる」

 

 フラリと立ち上がり、剣を手に取る。

 何もかもが憎くて仕方がなかった。

 巨人も、財閥チームも……涼子を死なせた全てが憎らしい。

 頭に爆弾だとか、そんなものはもうどうでもいい。

 奴等を殺さなければ気が済まない。

 奴等が生きている事が我慢ならない。

 

 和泉は幽鬼のようにおぼつかない足取りで、どこかを目指して歩き始めた。




カルマ値「いっけなーい! 遅刻遅刻ゥ!」

武田彪馬(神奈川チームのロンゲ)「あれ? 俺は?」
・武田さんは黒髪ロンゲイケメンという点で和泉とキャラ被りしているので参戦しませんでした。
というか本編でもこの人は玄野の呼びかけに応えたわけではなくレイカ目当てで来ただけの人なのでレイカがいないこのSSでは来てくれません。
まあその辺で戦ってるんじゃないでしょうか。
代わりに大阪から岡八郎が参戦しました。

【ライス離脱&JJ再加入】
ライスはまどか達の護衛の為ここで戦線離脱。
ほむらの中での信頼度はライス>>>自分の使い魔。
そんなんだからトマト投げられるんやぞ。
そしてJJ再加入。
まあ100点クリアするような猛者を財閥チームが放っておいてくれるかなというと、多分ないだろうと思ってこうなりました。

【涼子死亡】
和泉のカルマ値が28話遅れで到着した結果、個人的にガンツキャラ一番の美少女と思っている涼子ちゃんが残念ながら死亡してしまいました。悲しいなあ……。
生き残らせる事も考えたんですけど、和泉が強制転移でいなくなった後にこの子一人で生き残れるかというと……。
まあ無理やろと思ってこうなりました。

【未登場の原作キャラ達は今】
・レイカ
ガンツで2回も100点を取ったりするなど、意外とバイタリティに溢れているアイドルなので多分自力で生き延びてる。

・筋肉ライダー
スーツなしでも巨人倒してそう。
まあ放っておいてもまず死なないだろう。

・おっちゃん
多分生きてる。

・稲葉
多分死んだ。

・チェリー
師匠と一緒にトンコツを守っている。
寿命は激しく縮むだろうが生存。

・トンコツ
原作のようにチェリーが強制転移をくらわないのでチェリーに守られて生存ルート突入。
代わりに彼女が本来辿るはずだった運命は別の人間の所に引っ越してしまった。

・師匠
超能力の使い過ぎでそろそろ死にそう。

・タエちゃん
多分原作通り巨人に攫われて宇宙船の中にいる。

・たけし
通りすがりの筋肉ライダーが助けてくれた。

・桑原
大阪で元気に巨人女を襲ってたら教え子に目撃された。
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