GANTZ『焔』   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第43話 地球人の反撃が始まったようだね

 空から見ると、この町の圧倒的な広さに改めて驚かされる。

 広い……本当に広い……いや、広すぎる空間だ。

 人間がミニチュアに見える程に大きい巨人の町なのだからでかいのは当然だが、明らかに外から見た時の宇宙船の大きさと内部のサイズが合っていない。

 いくら広いと言っても限度というものがある。

 町と言ってもここは宇宙船の中だ。ならば壁があるはずである。

 だというのにいくら目を凝らしてもこの宇宙船の限界が見えない。

 それどころか海と見紛う程の巨大な河まで存在しており、しかも河を挟んだ向かい側にはまた別の町があるのだから意味が分からなかった。

 外から見ても宇宙船は確かに十分に大きかった。

 数キロ……いや、もしかしたら十キロは超えていたかもしれない。

 だが、それでもここまで巨大な空間を内包出来るとは考え辛い。

 その摩訶不思議な現象に顔をしかめるほむらだったが、答えは肩に乗っているキュゥべえから与えられた。

 

「どうやらあそこにある塔は空間を圧縮して、宇宙船の中に広大な空間を形成しているようだね。

あの塔を破壊する事が出来れば宇宙船は内部から自壊するだろう」

 

 キュゥべえが喋ったことに輪の上の和泉がぎょっとしたが、ほむらはあえて説明しなかった。

 そんな事より、今はキュゥべえの口にした情報の方が重要だった。

 キュゥべえに言われて河の方を見れば、確かに塔のような施設が見える。

 それは天井まで届く巨大さで、一際存在感を放っていた。

 

「とんでもない技術力ね」

「本来なら君達地球人では逆立ちしても戦える相手じゃない。

彼等の技術は子供用の玩具ですら人類の最先端科学の遥か先を行っている」

「妙に詳しいのね」

「巨人は君達地球人ほどではないけど感情エネルギーを持つ種族だからね。

以前から僕らも彼等には目を付けていたのさ」

 

 キュゥべえが目を付けていたというのはつまり、魔法少女候補としてだろう。

 巨人は地球人と姿が多少違うが男と女がいて、感情を持っている。

 その感情はインキュベーターにとっては宇宙の熱的死を延ばす貴重なものだ。

 だから彼等はずっと、巨人を気にしていたのだろう。

 ただ、目を付けているという言い方が少し引っかかった。

 

「契約はまだ誰ともしていないの?」

「そうだね。彼等は地球人よりも文明が発達しているから、僕らの事に気付かれれば逆に攻め込んできかねない。その分接触は慎重にしなきゃならなかったんだ。

それに彼等から搾取出来る感情エネルギーは、地球人と比べてしまえば小さなものでね……巨人百人と契約するより地球人一人と契約した方が大きなエネルギーを得る事が出来るんだ。

つまり資源として、あまり大きな価値はないのさ」

 

 どうやら巨人側にはまだ魔法少女も魔女もいないらしい。

 ほむらは巨大な巴マミを想像し、そんなのとは戦いたくないなと失礼な事を考えた。

 しかし問題はあの塔をどうするかだ。

 破壊すればいいとは言われても、巨大すぎて大抵の攻撃は効果がないだろう。

 ほむらと塔のサイズ差は鼠から見た高層ビルに等しい。

 これではXガンを当てても、高層ビルに画鋲を刺した程度の傷にしかならない。

 Zガンも同様で、高層ビルの天井が五円玉くらいの範囲へこむ程度のダメージしか与えられない。

 それでも続ければ壊せない事はないだろう。

 塵も積もれば山になるように、山を崩し続ければいずれは積もった塵になる。

 家の壁だって画鋲で休まず穴を空け続ければ崩壊するだろう。

 しかしそうやって崩すには時間がかかるのは言うまでもなく、そんな悠長な事などしていられない。

 そう考えていると、塔から少し離れた位置にガンツロボットが何体も転送されてきた。

 

「どうやら地球人の反撃が始まったようだね」

 

 キュゥべえが他人事のように言うのを聞きながら、ロボットの巨大さにほむらは若干驚きを感じていた。

 同じガンツのロボットでも、ほむらや岡が使っていた物とはサイズが違う。

 ほむらが乗っていたものは精々20mが関の山だったが、あのロボットはその十倍……いや、百倍はありそうだ。

 何せ巨人の町から見ても尚、怪獣映画の怪獣並みの大きさなのだ。

 あれならば確かに塔を破壊するのも不可能ではない。

 巨大ロボットが一斉に進撃し、それに対して巨人側も飛行物体を出して対抗し始めた。

 恐らくは巨人側の戦闘機のようなものなのだろうが、まるで太刀打ち出来ていない。

 戦闘機の砲撃が当たってもまるで気にせず、逆に殴り返して撃墜していた。

 牛鬼に呆気なくやられてしまった岡のロボットとはえらい違いである。

 このままでは勝てないと思ったのか、今度は巨人側もロボットを出して応戦した。

 右腕が砲身になっているそれはガンツロボットへ向けて砲撃を開始し、ガンツロボットは直撃を浴びながらも怯まず前進を続けた。

 ほむらは巨大ロボット同士の規模が違う戦いを少し観戦していたが、やがて飛行ユニットを発進させる。

 残念ながらここにいても出来る事がない。

 今やるべきは、巻き込まれないように退散してこの宇宙船の司令部を探す事だ。

 しかしこうも広いと流石にどこに行けばいいのか分からない。

 なのでほむらは飛行ユニットに魔力を込めて遠隔操作しつつ、自らは飛行ユニットから飛び降りて巨人の肩へと着地した。

 いい具合に物陰にいてくれたので、他の巨人にも見られていない。

 そのまま巨人の側頭部に魔力を流す。すると巨人の首に砂時計と彼岸花を組み合わせたような刻印が刻まれた。

 

 ほむらはまどかに、結界を見滝原に維持している限りは魔女の能力は使えないと説明した。

 だが実は一つだけ、このままでも使える魔女の能力がある。

 それこそが『魔女の口付け』だ。

 魔女に操られた人間が結界の外に出ても操られたままなのと同じように、この力だけは結界の有無に関係なく使用する事が出来る。

 ちなみに口付けとは言うが、別に接吻をする必要はない。

 ほむらによって刻印を刻まれた巨人は目から生気が失われ、彼女の意のままに動く操り人形へと変わってしまった。

 

「さあ、案内しなさい。この船で一番偉い巨人は何処にいるのかしら?」

「…………アー」

「そう、いい子ね」

 

 巨人と人間は言語が違う。

 だが刻印を刻んだ今、この巨人はほむらの眷属であり下僕だ。

 言葉を介さずとも、テレパシーでその意思は伝わる。

 巨人から情報を抜き出せるだけ抜き出し、そしてほむらは彼の頬を優しく撫でてから飛び降りた。

 すると刻印を刻まれた巨人は奇声をあげながら走り出し、他の巨人へと襲い掛かる。

 そうして哀れな巨人を使い捨てたほむらは背中から魔力の翼を出して飛翔……飛行ユニットへ戻り、巨人から抜き出した情報を頼りに移動を開始した。

 今のほむらならば飛行ユニットなしでも自力で飛び続ける事が出来るが、しかしだからといって無闇に消耗していいわけではない。

 魔女と融合した今、魔力を使いすぎて魔女化する事はなくなったし、むしろ溜め込んだ呪いはそのまま魔女の力として再利用出来る。

 そして呪いを吐き出せば今度は魔法少女がグリーフシードで魔力を回復するのと同じように、魔法少女の力が回復する永久機関だ。

 だが決して疲労しないわけではない。

 自転車より速く走れる陸上競技者が疲れを避ける為に普段は自転車に乗って移動する事もあるように、ほむらも普段の移動はなるべく飛行ユニットやバイクで済ますつもりだ。

 この間、何が起こったのか全く分からない和泉は完全に状況に置いていかれてしまっている。

 

「しっかり掴まってなさい。飛ばすわよ」

 

 この塔はいかに魔女と魔法少女の力を併せ持つほむらでも簡単に壊せそうにない。

 ならばこの戦場はロボット達に任せるべきだ。

 ほむらはそう判断して、司令部を目指した。

 この船のトップを始末するなり操るなりしてしまえば、壊せずとも戦いを終わらせる事は容易いはずだ。

 

 

 無駄に広い宇宙船を翔け抜け、ほむらと和泉は遂に宇宙船の最上部へと辿り着いた。

 最上部は今までとは異なり、いかにも宇宙船の中といった景観だ。

 窓の向こうには宇宙空間が広がっており、ほむらはここで初めてこの宇宙船がいつの間にか地球から離れ始めていた事を知った。

 少し離れた場所では地球人の女性がマイクを握って何かを話している。

 

「地球の皆さん、戦いは終わッたのです!

私は今彼等の船にいます! 感激です!

彼等はとても紳士的で……」

 

 女性の前にはカメラらしきものがあり、ほむらは凡その事情を何となく理解した。

 恐らくアレは情報操作だ。

 あの女性の言葉を地球の報道に乗せ、あたかも巨人の侵略が終わって和平が成立したように見せかけているのだろう。

 そうする事で黒玉のメンバーを『和平が成立したのに巨人を殺している悪人』に仕立て上げるつもりか。

 あの女性が何故協力しているのかは……まあ、後ろにいる巨人達が怖いからだろう。従わなければ殺されてしまうのだ。

 ほむらは無言でZガンを発射してカメラを構えている巨人を殺害し、飛行ユニットを割り込ませてマイクを持った女性を攫った。

 それから離れた位置に着地し、女性へ声をかける。

 

「もう大丈夫よ。辛かったわね」

「……あッ……あ……うぅぅゥゥ……あァあああ……ッ」

 

 助けられた、と自覚したのだろう。

 気丈にリポーターとしての笑顔の仮面を被っていた女性は堰を切ったように号泣しはじめた。

 さぞ辛かっただろう、と思う。

 侵略者に攫われた挙句に味方を罵倒させられ、敵に利用されたのだから。

 

「和泉紫音、その人をお願い」

 

 和泉に女性リポーターを預け、飛行ユニットを降りる。

 それに同時に、慌ただしく足音が響いて巨人の兵士が湧き出て来た。

 一方こちら側はほむらと和泉のみ。

 他のガンツチームの姿は見えず、まだ誰もここに来ていないようだ。

 

「どうやら私達が一番乗りのようね」

 

 髪をかきあげ、いつも通りの涼し気な声で言う。

 兵士の数はざっと百人ほど。

 いずれも纏う空気からして、この宇宙船の中でもトップレベルの猛者なのだろう。

 だが問題ない。少なくとも巨大ロボに比べれば全然何とかなる相手だ。

 ほむらが挑発するように指を動かすと、憤慨した巨人達が順番争いを始めた。

 どうやら行儀よく一人ずつ戦うつもりらしい。

 彼等なりの誇りか何かなのだろうが、そんな事をされては面倒で仕方ないだけだ。

 なのでほむらは巨人が集まっている個所に適当にZガンを撃ち、問答無用の先制攻撃で二人ほど屍へ変えた。

 

「生憎だけどそちらに合わせる気はないわ。来ないなら好きにやらせてもらうだけよ」

 

 どうせ通じていないだろうが一方的に宣言し、そして跳躍した。

 まずは巨人達の中央へ行き、ガンツソードを伸ばして横回転。

 回避が遅れた巨人の首が宙を舞う。

 仲間をやられた事に激昂した巨人が右ストレートを放つが、それに合わせて今度は縦に回転。

 廻る刃と化したほむらが巨人の腕を斬り裂きながら顔へ接近し、そのまま首を斬り裂いた。

 

「~~~~!」

 

 何かを喚きながら巨人が剣を薙ぐ。

 剣……とは言ってもその形状は独特で、トンファーの昆の部分を刃にしたような形をしている。

 空中で身動きが取れないはずのほむらは、しかし身体を捻る事で剣を回避して刃の上へ乗った。

 更にステップ。回転しながら跳躍して、着地すると同時にまた跳ぶ。

 まるで体操選手のように舞い、剣を薙いだ巨人の頭へ跳び乗った。

 それを見て別の巨人達が一斉に武器の持ち方を変え、刃の向きを前へ向ける。

 そして同時に刃を突き出し、ほむらを乗せた不幸な巨人は四方から串刺しにされてしまった。

 だが肝心のほむらは既にいなくなっており、また別の剣の上を渡っている。

 まるで散歩でもするかのようにゆっくり歩き、そしてほむらは自身を囲む巨人達へ向けて悪魔染みた嘲笑を向けた。

 

「~~~~!」

「!! !? っ!!」

「っっ!!」

 

 巨人達が何かを言い、そしてほむらを乗せた剣の持ち主以外が彼女を囲むように円陣を組む。

 そして逃げ場なしの同時攻撃を放つが……何せ的が小さい。

 ほむらは僅かな動きだけで剣と剣の間に身を潜らせ、易々と回避してしまう。

 続けて繰り出された剣を、上体を逸らして胸の前スレスレを通過させつつ両手を後ろへ向けて、いつの間にか武器換装していたXガンを発砲。

 足元を狙って放たれた剣は軽くステップを踏んで避けながら左右へ発砲。

 胴狙いの剣の上にフワリと着地し、後方宙返り。

 弧を描きながら銃を撃ち、着地と同時に更に撃つ。

 すると時間差で次々と巨人が顔の穴という穴から血を流して倒れ、最後にほむらを乗せた剣ごとその持ち主が仰向けに崩れた。

 トン、と軽やかに地面に着地したほむらに巨人達はすぐには飛び掛からない。

 今の攻防で、ほむらが恐るべき敵であると認識したのだ。

 

「■■■■■■……!」

 

 巨人のうちの一人が何かを呟きながら手元の何かを操作した。

 そして拳を放つと、拳が空間を飛び越えてほむらの背後から迫った。

 だがほむらはこれを初見で軽々と避け、髪をかきあげる。

 この仕草に舐められていると考えた巨人は連続して拳を放ち、ほむらを四方八方から拳が襲った。

 だが当たらない。悠々と髪をかきあげるほむらに掠らない。

 避けていないのではない。避ける動作が最小限すぎて、避けていないように見えるだけだ。

 そのまま拳を避けつつゆっくりと巨人へ歩み寄り、Zガンを向ける。

 その間も巨人は拳を出し続けているが、やがてほむらが発射したZガンによって頭を潰されてしまった。

 

「次は……あら? 来ないの?」

 

 ここまでにほむらによって屠られた巨人の数は二十人ほど。

 まだ八割近くが残っている。

 だが逆に言えばたった一人の小人に、精鋭が二割もやられたのだ。

 巨人達にしてみればこの脅威は無視出来ないものであり、誰もがほむらを警戒して攻め込めなくなっていた。

 唯一恐れを見せていないのは奥で腕組みをしている金髪の巨人くらいか。

 あれだけは別格の空気を纏っている。

 

「Come here!」

「Arrived!」

「hurry up!!」

 

 ほむらと巨人達が睨み合っていると後ろの通路から英語が聞こえてきた。

 それと同時に足音が響き、十数人のガンツスーツを着たアメリカ人が雪崩れ込んでくる。

 アメリカは滅亡したと聞いていたが、やはりそう簡単になくなるような国ではなかったらしい。

 今にして思えばあれも地球側の戦意を失わせる為の偽情報だったのだろうか。

 

「暁美さん!」

「あら、菊池さん」

 

 英語に混じって日本語が聞こえてきたので視線を向ければ、そこには以前知り合いになったフリージャーナリストの菊地誠一がいた。

 もう死んでいるかと思ったが、お互いしぶといものだと思ってしまう。

 

「どうして菊池さんがここに?」

「アメリカのチームに接触して、一緒に連れて来て貰ッたンだ。

今宇宙船から発信されている嘘の報道をどうにかしたくてね」

「何というか……逞しいわね」

 

 ほむらは菊池と話しながらも巨人の出方を伺う。

 わざと視線を外して隙を見せても攻め込んでこないとは、随分警戒されたものだ。

 

「……あの巨人達は?」

「この船を守る精鋭達ってところかしら。多分ね」

 

 実の所、この巨人達が精鋭かどうかはほむらにも分からない。

 雰囲気や守っている場所的にそうだと思うのだが、何せ相手から直接日本語で『僕らは精鋭です』と教えられたわけではないのだ。

 だから所詮は憶測に過ぎないわけだが……まあ、倒してしまえばそれも分かるだろう。

 

「Hey girl!」

 

 アメリカチームのうちの一人がほむらの肩を掴み、歯を見せて笑顔を浮かべた。

 そして何かを話し始めたが、それは日本語に訳すならば『ここからは俺達に任せろ』、『もう大丈夫だ』、『俺達が守ってやる』、『くにへ かえるんだな。おまえにも かぞくがいるだろう‥‥』といった内容だった。

 その提案は素直に嬉しいが、生憎守られるのは性に合わない。

 まどかを守る私になりたいと願ったあの日から、どうにも誰かに守られるのは苦手なのだ。

 だからほむらは肩に乗せられた手をやんわりとどけ、不敵に微笑んで見せた。

 

「それには及ばないわ」

 

 そして再び巨人達との闘争へ身を投じた。




【何故和泉はロボに強制転送されなかったのか】
原作で敵のビームで巨大ロボがやられた際、財閥チームは「全体の3%がやられた」と言っており、全ての戦力を出したわけではない。
恐らく塔を破壊しに出撃した巨大ロボは財閥チームが保有するロボのうちの10%以下でしかなく、和泉はその10%の操縦者に選ばれなかっただけ。
というかそもそも全員分の巨大ロボは流石にないと思われる。

【生きていたアメリカチーム】
原作でカタストロフィの開始と同時に消滅したと言われていたアメリカチームだが、終盤でまさかの無双をして読者の度肝を抜いた。
これに関して、『アメリカは滅んだがアメリカチームは健在だった』可能性と、『そもそもアメリカは滅んでなかった』可能性の二つがあるが、このSSでは滅んでなかった事にしている。
ここで巨人相手に無双するのは本来ならば彼等なのだが、先にほむらが突撃してしまった為に、ただ観戦するだけになってしまった。
まあこのSSはほむら無双だし仕方ないね。
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