GANTZ『焔』   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第45話 感謝する必要はない

 戦いは終わった。

 巨人側は軍神イヴァ・グーンドが敗北を認めた事で地球に全面降伏し、後は地球に帰るだけとなった。

 降伏した巨人をどうするかは政治家に委ねられるが、巨人はいざとなれば母船で宇宙に逃げてしまえるので、それほど一方的な展開にはならないだろうとほむらは思っている。

 それに無茶な要求……例えば『巨人はこれから人類の奴隷な』なんて事を下手に言えば巨人が怒り狂って再び戦争になる恐れもあるし、流石にそんな事も分からない無能な政治家は……多分いないはずだ。

 

「暁美! 戻ッたぞ!」

「くッそ……マジか……くッそ」

 

 少しすると玄野が転送され、無事に西を止める事が出来たと報告をしてくれた。

 その後ろには西もおり、悔しそうに爪を噛んでいる。

 流石の彼も、塔を壊せば地球が壊れると言われては引き下がるしかなかったようだ。

 しかしそれは、西にとって苦難の始まりを意味している。

 彼はこのカタストロフィで巨人を滅ぼし、その功績で英雄として上り詰め、いずれは世界の頂点に立とうと夢想していた。

 そんな事が実際可能かどうかはともかく、少なくとも巨人を滅亡させればその功績で過去の罪に口出し出来る者はいなくなっただろう。

 しかしその道は断たれてしまい、そうなると西はただの指名手配犯だ。

 これから先の事を考え、憂鬱になっても仕方がないと言える。

 

「皆さん! 人類は勝ちました!

今、歴史的瞬間を迎えたのです!

世界を救った英雄達がこれから地球へ帰還します! 英雄の凱旋ですッ!」

 

 菊池はカメラに向けて演説しているが、よく考えたら彼が来てから先の戦いはずっとリアルタイムで地球に放映されていたのだろうか。

 そう考え、ほむらは流石に少し憂鬱になった。

 それはつまり、巨人達を次々と倒す姿もばっちり映されていたという事で、どう考えてもこの先平穏に暮らせる気がしない。

 テレビ局の取材やら何やらでも煩わされそうだ。

 

「暁美さん、こッち来て! カメラの前! 皆に何か一言!」

「……やめてよ、そういうの」

 

 菊池が何か喚いているが、ほむらは移動しなかった。

 カメラの前で話すなど柄ではない。

 昔に比べれば多少マシにはったが、ほむらは元々重度のコミュ障である。

 過去の時間軸では初対面のまどかに電波全開な発言をしてドン引きされた事もあった。

 そんな自分がカメラの前で何を言えというのだろう。

 しかも今の恰好は復活した魔法少女衣装である。

 玄野達の全身ピッチリ黒スーツに比べればコスプレ感は薄いが、それでもコスプレ染みている。

 人前にあまり出たい恰好ではない。

 

「はははッ、帰ったら大英雄だな暁美は。見た目はいいからきッと大人気になるぞ」

「やめてってば……」

 

 玄野にからかわれ、ほむらは頬を膨らませて拗ねた。

 すると普段クールな彼女のそんな姿が面白いのか、ますます玄野が調子に乗る。

 何はともあれ、先の事が思いやられるもののひとまずハッピーエンドだ。

 地球は救われ、巨人も降伏した。

 この先の人類と巨人の交渉やら戦後の保証やら賠償やらはあるだろうし、巨人に対する怒りや不満も出るだろう。

 だがそれはその時に考えればいい。

 今はただ、平和を勝ち取った事だけを喜びたかった。

 

 

 

「……ん?」

 

 全てが終わったと思った矢先……不意に、見える景色が切り替わった。

 それは一面が真っ白な、何もない空間だ。

 見渡せば各国のガンツチームがいて、何かに祈りを捧げている。

 その対象は……部屋の中心にいる、巨大な何かであった。

 巨人ではない。だが巨大な人間の姿をしている。

 裸の人間体が二人、背中合わせて立っており、顔や胸の部分は空洞だ。

 そして空洞の中には過去の偉人やいつか戦った星人、あるいは動物などの顔が生えていて気持ち悪い。

 

「暁美……ここは一体……?」

「私が分かるわけないでしょう」

 

 遅れてやって来た玄野がほむらに問いをぶつけるが、むしろそれはほむらが知りたい事だ。

 更に続けて東郷や桜岡、加藤……この宇宙船まで乗り込んできた全員が転送され、一体何が起こったのかと周囲を見回している。

 

「なンやここ……気味悪いな」

「アイツは……敵なンか?」

 

 大阪チームの山咲と岡が警戒を露にしつつ、中央の巨大な異星人を見た。

 すぐに飛び掛かるような真似はしないが、流石に歴戦の戦士だ。

 いつ戦いになってもいいよう、既に身構えている。

 そんな彼等に、他のガンツチームのメンバーが声をかける。

 

「ここは真理の部屋だよ……ここで彼等がどんな質問にも答えてくれるンだ」

 

 そう言われ、改めて部屋を見る。

 確かに他のガンツチームのメンバーは、それぞれの国の言葉で何かを異星人に聞いているようだ。

 それに対し、同じくそれぞれの国の言語で返答している事から見て、どんな言葉で質問してもいいのだろう。

 

「俺……俺、グラビアアイドルのレイカのめッちゃファンなんやけど……レイカと〇〇〇出来る日ッて来るかなァ!」

「無理だ、諦めろ。

この次元で関わりのあった者同士の関係は永遠に続いていく……。

だがお前と、下平玲花がお前の望む関係になる事は未来永劫ない」

 

 異星人に即答され、意気消沈しているのはよく見れば大阪チームの桑原であった。

 どうやら彼もここに来ていたらしいが、質問の内容が何とも馬鹿馬鹿しかった。

 そんな間抜けを放置して玄野と加藤が前に踏み出し、声を発する。

 

「質問したい!

今まで俺達は何で!! 何のために!!

何のために!! 俺らは闘わされてきたのか!!」

「その問いに答えよう」

 

 玄野と加藤のその問いは、意外な事にこの場の誰もまだ聞いていない質問のようだった。

 ガンツ……いや、ブラックボールによって再生された人間ならば誰もが気になる事だろうし、真っ先に聞こうと思うだろう問いだ。

 だがそれを誰も聞いていないのは、恐らく答えが恐ろしいからだ。

 世の中には知らない方が幸せな事がある。開けない方がいいパンドラの箱がある。

 この異星人に真実を聞く勇気が、誰にも持てなかったのだろう。

 

 そして彼等は語った。

 ある惑星系が消滅の危機を迎え、三十年以上前から地球が移住先に選ばれていた事を。

 この異星人もまた、巨人を始めとする星人に移住先にされた惑星の住民であり、高度な科学力を持つ彼等は星人を撃退した。

 その後彼等は地球に情報を送り……後はほむらも知る通りだ。

 つまり、地球はこの異星人によって救われていた。

 この異星人が技術を送ってくれなければ、地球は成す術なく巨人に蹂躙されていただろう。

 その事を理解した人々は異星人に感謝を述べる。

 だが……。

 

「感謝する必要はない。

私達は地球人に同情して情報を送ッたのではない。私達にはきみ達特有の感情というものは無い。

傲慢な人間よ。君達は地球上で特別な存在だと思ッているが…そうではない」

 

 異星人は何でもないかのように話す。

 地球人の命に価値などない。虫や塵と変わらない、と。

 何百、何千単位で死んでも彼等から見れば些細な問題で、地球に情報を送ったのもほとんど気まぐれのようなものでしかなかった。

 ただ、何となく地球を残す方を選んだ……それだけだったのだ。

 あるいは本当は地球が残る事すらどうでもよくて、迷惑な巨人が再び自分達の方に来ても面倒だから地球を使って巨人を滅ぼそうとしただけなのかもしれない。

 言ってしまえばこれは、ただの害虫駆除なのである。

 彼等にしてみれば巨人を始めとする星人は家に入って来る害虫で、地球人はどうでもいい虫だ。

 どうでもいいが……しかし、絶滅されても何となく嫌だ。

 困りはしないし、別にどうでもいいのだが、それでも残す事を選んだ。

 人間だって絶滅危惧種の虫がいれば、仮にその虫をどうでもいいと思っていて、絶滅しても生態系に何ら影響しないとしても、とりあえず保護するだろう。それと同じ事だ。

 

(スケールは違えど、それほど人間と違いはなさそうね)

 

 ほむらは、この異星人の言葉に特に何の反発も抱かなかった。

 向こうが地球人を無価値と思っているように、ほむらにとってこの異星人は無価値でどうでもいい相手だ。

 だから、そんな相手に何を言われようと何とも思わない。

 ああ、でかい虫が何か言っているなという感じだ。

 大事なのは自分達がどう思うかで、異星人の意見など最初から求めていないのである。

 それにこの異星人の言葉は、そのままこの異星人自身にも適用される。

 彼は地球人を『特別ではない』。自分達から見れば虫と同じようなもので『傲慢』と言い切った。

 しかしその反面、この異星人はどうやら自分達を特別だと思ってるようだ。

 我々から見れば(・・・・・・・)と言ってちゃっかり自分達をそれより上に置いているのがいい証拠である。実に傲慢なものだ。

 彼は地球人と虫の違いを『より複雑かそうでないかだけだ』と言った。

 しかし、それならば地球人よりも複雑だろうこの異星人はどうなのだろう。

 彼等の言葉をそのまま肯定するならば、彼等自身もまた地球人より複雑なだけで何の価値もない存在という事になってしまう。

 とはいえ、ほむらはそれを口にする気はなかった。

 言い争うのも馬鹿馬鹿しいからだ。

 だから玄野と加藤が余計な事を言おうとしたらすぐに抑えようと思っていた。

 ……だが、余計な事を言う馬鹿は、肩の上にこそいた。

 

「それは大きな間違いだ。

地球人……とりわけ第二次成長期の少女は、宇宙の寿命を延ばすほどのエネルギーを持っている。

彼女達は宇宙全体から見て、極めて有用な資源だ」

 

 ――キュゥべえであった。

 そうだ、忘れていた。地球外生命体はここにもいたのだ。

 今の今まで無言を貫いていたインキュベーターに、ガンツを生み出した異星人も意識を向ける。

 

「お前は……」

「やあ、初めまして。

僕はインキュベーター。君達とは別の星系から来た存在さ。

もっとも、僕は正確にはそのコピーだけどね。

どうやら君達はまだ、感情をエネルギーにする段階までは至っていないようだね」

 

 キュゥべえはそう言い、後ろ脚で耳をかいた。

 いちいち仕草が小動物染みているのが、かえって憎たらしい。

 ほむらは今すぐにこのナマモノを叩き落してやりたい衝動に駆られた。

 

「あッ、暁美! それ! そいつ……」

「ごめんなさい、玄野さん……驚く気持ちは分かるけど、今は静かにしていて」

 

 玄野を始めとした東京チームは、驚きに目を剥いていた。

 それはそうだ。今の今までただの役立たずの変なのと思っていたキュゥべえが突然話し出したのだから驚かない方がどうかしている。こンなのぜッたいおかしいよ。

 ほむらはそんな彼らをなだめつつ、キュゥべえが何を言う気なのかと神経を尖らせていた。

 

「君は人類の感情をただの電気信号と呼んだけど、それは間違いだ。

人類の感情はエントロピーを凌駕する素晴らしい資源になる。

無価値なんてとんでもない。価値のあるものさ」

 

 ほむらは、キュゥべえを撃ち殺してやろうかと本気で思った。

 一見するとキュゥべえは異星人と違って地球人に好意的で価値を認めているように聞こえるがとんでもない。

 キュゥべえが人類に見出している価値は、家畜としての価値だ。

 搾取する対象としか見ていない。

 これならばまだ、無価値と断じて突き放してくれる、ガンツを生み出した異星人の方が遥かにマシだろう。

 

「君達は理由もなく地球を救ったと言っているけど、そうではない。

確かに地球人の大半は君達にとって価値のない塵だろうけど……その中に、君達も知らない未知のエネルギーを持つ個体がいた。

だから君達は観察の為に残そうと考えたんだ。そうだろう?」

「……確かに……三十年前に巨人達が地球に目を付けた時に、我々は地球を調べた。

そして地球人の中に、未知のエネルギーを持つ個体……ただの電気信号であるはずの感情を力に変換している者がいる事を知ッた。

魔法少女……そして魔女……感情をエネルギーに変換する希少な存在……それは我等の知らぬ未知だ」

 

 そう言い、異星人の顔の空洞から覗く過去の偉人を模した顔がほむらを見た。

 彼等から見て地球人類は虫のようなものである。

 だが人類が特定の虫に高値を付けて価値を見出すのと同じように、あくまで人類視点での話になるが虫にも無価値なものと価値のあるものが存在している。

 そして異星人から見て、その『価値ある虫』に該当するかもしれないのが魔法少女という未知の存在であった。

 

「ま、魔法少女……? 魔女? なンだそれ……いきなり話がファンタジーになッてきたぞ……」

「実際はそんないいものじゃないわ。名前とは裏腹に、ただ搾取されて使い捨てられるだけの家畜みたいなものよ」

 

 混乱する玄野に、ほむらが自嘲するように言う。

 すると玄野達の視線がほむらに集中した。

 

「暁美……お前、もしかして……。

その恰好もただのコスプレと思ッてたけど……。

つまり、その……あンまイメージと合わないンだけど……お前も魔法少女ッてやつなのか?」

「……正確には違うんだけど、まあ、そうね……そういうものと思ってくれて構わないわ」

 

 面倒くさそうに言い、ほむらはキュゥべえを掴んで頭を叩いた。

 

「ほら、説明しなさい」

「わけがわから……きゅべっ。わかった、わかったよ」

 

 頭がへこむ勢いでベシベシと叩かれ、キュゥべえは仕方なく玄野達へ説明を始めた。

 自分が遠い宇宙からやってきたインキュベーター……の複製である事。

 インキュベーターは宇宙の寿命を延ばす為に活動しており、感情をエネルギーに変換する仕組みを作った事。

 ところが当のインキュベーターが感情を持たなかったために、地球人に目を付けて魔法少女にしていた事。

 その魔法少女が呪いを溜め込むと、希望から絶望への相転移で莫大なエネルギーが生まれる事……。

 その全てを聞き、玄野は無言でXガンをキュゥべえへ向けた。

 

「暁美……そいつ、撃ち殺した方がいいンじゃないか?」

「こいつはインキュベーターですらない複製よ。殺しても意味がないわ」

 

 そう言いながらほむらはキュゥべえを雑巾のように絞り、手を離した。

 するとキュゥべえはコマのように回転しつつ地面に落下する。

 ようやく解放されたキュゥべえはゆっくりと立ち上がり、「わ、わけがわからないよ」と愚痴を零していた。

 

「なるほど……お前達が作り出したものだッたか……。

いくら地球を調べても、発生する理由が分からぬわけだ……」

「そうか……セバス、お前が日本の萌えアニメとかを調べていた理由は……魔法少女についての資料を探そうとしていたのか……」

 

 どうやらこの異星人は魔法少女について調査するうちにかなり迷走していたらしい。

 菊池が言う『セバス』という名前は分からないが、察するに地球人に化けるなりして調査していたという事か。

 そしてその過程で、魔法少女を扱う萌えアニメに行き着いてしまったらしい。

 本人的には至って真面目に調べていたのだろうが、この神の如き星人が3畳のアパートの一室でテレビに映った魔法少女アニメを見ている姿を想像すると、この上なくシュールであった。

 

「それに、他にも色々と干渉していたようだね。

僕等インキュベーターは三十年ほど前から、人類の中に不思議な力を使う者達が現れ始めている事を突き止めた。

人類はその力を『超能力』と呼んでいるけど……アレを人類に伝えたのは君達だろう?」

 

 これはほむらも初耳であった。

 超能力というと、スプーンを曲げたりするアレだろうか?

 大半はトリックありきだったり、そもそも本人がトリックである事を明言していたりで『本物』というものをほむらは見た事がないし、仮にいてもそれは魔法少女か、あるいは魔法少女の祈りによって生まれた力だろうと思っていた。

 

「その通りだ。我々は技術の他に、我々が持つ力を地球人へ伝えた……。

だがそれは移民を撃退するほどの力にはならず、地球人には使いこなせなかッた……。

むしろ使えば使うほどに内臓を損傷させ、寿命を縮めるだけだッた。

だが……稀に、感情の暴発によりその力を飛躍的に高める個体もいた……」

「それが感情エネルギーさ。しかしその力を生身の身体のまま使わせるとは酷い事をするね。

生身の人間が耐えられるわけないじゃないか。

ちゃんと魂を肉体と切り離してあげないと」

 

 高度な文明を持つ宇宙人同士の会話はほむらや玄野にとっては雲の上の会話だ。

 だがそれでも分かった事がある。

 それは、こいつ等は本当に地球人の事などどうでもいいと思っていて、実験動物程度にしか見ていないという事だ。

 実験半分に、身に余る力を与える異星人。

 善意のつもりで魂を抜き取ってゾンビに変えるインキュベーター。

 どちらも、ロクなものではない。

 ほむらはとりあえず、肩に登ってきたキュゥべえを無造作に払い落とした。

 キュゥべえは地面にぶつかり、起き上がりながら話を続ける。

 

「まあ、つまり地球人に価値がないというのは間違いだよ。

むしろ僕等にとっては、無価値なのは君達のほうなんだけどなあ」

「どういう事かな?」

「君達の文明は高度だ。しかし宇宙全体から見ればあっても無くても変わらない。

君達の言葉を借りるならば、大きいか小さいか、より高度かそうでないか、それだけのものでしかない。君達が今すぐに滅んだとしても宇宙全体から見れば塵のような変化だ。物の位置が変わるだけだね。

まさに、塵と変わらない存在だ」

「…………」

「むしろ君達の文明は宇宙のエネルギーを著しく消費してしまっている。

エントロピーって知ってるよね? 簡単に言うと木を燃やして得られるエネルギーは育てるのに必要なエネルギーと釣り合わないって話さ。

君達の文明は多くの木を燃やして大量のエネルギーを使ってしまっている。

ブラックボールによる複製……これだってタダじゃない。宇宙のエネルギーの無駄遣いだ。

困るんだよね。いくら僕等が宇宙の寿命を延ばそうとしても、君達のような木を燃やす事しか出来ない文明がそれよりも早くエネルギーを使ってしまう。全く理不尽だ」

 

 煽る。煽る。

 本人にそんなつもりは一切ないのだろうが、ナチュラルに相手の神経を逆撫でするのがインキュベーターだ。

 

「僕らは人類の有史以前からずっと、宇宙の寿命を延ばす為に行動していた。

同時に宇宙の寿命を減らし続けている文明も調査していた。

けど、今回の件で判明したよ。宇宙の寿命を減らしていたのは君達だったんだ。

君が地球に接触した事で、今頃は他のインキュベーターも気付いたことだろう」

「……気付いて、どうする?」

「決まってるじゃないか」

 

 どうしてそんな当たり前のことを聞くんだい?

 そんな風に言いたそうに、キュゥべえは可愛らしく首をかしげた。

 ウザい。この上なくウザい。

 

「暁美ほむらのせいで、僕らは地球人からエネルギーを搾取する事が出来なくなってしまった。

ならせめて、減らしている方に(・・・・・・・・)消えて貰わないと困る(・・・・・・・・・・)じゃないか。

今頃はきっと、他のインキュベーターが君達の星を宇宙から遮断する為の装置を造っている事だろう」

「…………分からん。何故そのような事をする。お前は何がしたいのだ」

「どうしてだい? 宇宙の為に役立てるなら、それはとても栄誉な事だと思うんだけどなあ。

理解出来ないなんて、わけがわからないよ」

 

 両者の間に流れる空気は、落ち着いているようでいて険悪そのものであった。

 互いに感情がない故に怒る事はない。叫ぶ事もない。

 だが感情がないが故に互いに、互いを知ろうとする心がない。

 インキュベーターにとってガンツを生み出した異星人は、ただ宇宙のエネルギーを減らし続けるだけの存在で、それ以外の何物でもない。

 異星人にとってのインキュベーターは、自分達を宇宙から排除しようとしているだけの存在で、やはりそれ以外の何物でもない。

 故に相互理解は決してあり得なかった。

 

「一ついいかしら。コイツは地球とは何の関係もないナマモノよ。

貴方達が喧嘩するのは勝手だけど、やるなら地球以外でやりなさい」

「いいだろう。元より、地球にこれ以上干渉する気はない」

 

 ほむらの言葉に異星人が同意し、そしてキュゥべえと見詰め合う。

 それは決して睨むような鋭いものではないし、互いに相手への悪意はない。

 そもそもそんなものを持ちえない。

 だが、そんな二種族だからこそ……出会った時点で、結末は決まっていた。

 

 

「――宇宙の為に、死んでくれ」

「――証明しよう。インキュベーター(きみたち)がただの“モノ”に過ぎない事を」

 

 

 宣戦布告。

 互いに相手を滅ぼす事を宣言し、そして異星人は姿を消した。

 この後どうなるかは、ほむらには分からないし分かる必要もない。

 ただ、地球には関与も出来ない遥か遠くの何処かで、高度な文明を持つ異星人同士が勝手に喧嘩をするだけだ。

 

(……どうせならインキュベーターの方が滅びてくれないかしらね)

 

 とりあえずほむらは、ガンツを生み出した異星人の方を応援する事にした。




【超高度文明異星人】
ガンツを生み出した宇宙人。通称神星人。
インキュベーター同様に感情がなく、人間の事を塵としか認識していない。
その割に地球を残す事を選択しているが、これもただ絶滅危惧種を何となく保護しているような感覚なのだろう。
セバスチャンという地球人に変装していた。
(作中で明言はされていないがWikipediaでは『正体は、ガンツのシステムを生み出した超高度文明異星種族』と断言されている)
何故か日本の萌えアニメに興味津々だったが、これが何かの目的をもって調べていたのか、そういうキャラ作りだったのか、それとも単純に好みだったからなのかは不明。
このSSでは一応『魔法少女という未知の存在の発生原因を探る為に魔法少女が多く登場する萌えアニメを調べていた』という事にしたが、原作には当然ながらほむらやQBはいないので何故萌えアニメを集めていたかは分からない。
……やっぱ、単純に好きなだけなんじゃないかな……萌えアニメ。

神星人「我々は人類が滅びても何の問題もない。(だが萌え文化がなくなッては困るので助けてやる)」
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