GANTZ『焔』   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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今回はまどマギ側の残された者達のお話です。


幕間 だから、ここにはもう帰って来ない

 巴マミがその奇妙な魔法少女と出会ったのは、高校受験を間近に控えた中学三年生の時の事であった。

 当時、仲間であり弟子でもあった佐倉杏子と喧嘩別れをして日の浅かったマミは、孤独な日々を送っていた。

 杏子の他に友達がいないわけではなかった。

 だが真に心が通い合う友達はいない。

 何故なら魔法少女の戦いを知っている友達はいないからだ。知らない者と真に心が通い合うはずがない。

 皆が平和を謳歌している中で、町を守る為に孤独に戦う……それは自分で決めた事であったが、それでも辛くないはずがない。

 命を賭けて、痛い思いをして、怖いのを我慢して……なのに、誰もそれを知らない。褒めてくれない。

 決して見返りが欲しいわけではない……と何度も自分で自分を納得させた。

 誰も知らなくても、皆の平和な日々を自分が守っているのだと思う事で必死に自分を保っていた。

 誰も見ていないのに見栄えのいい魔法を使い、優雅に戦い、まるで自分がテレビの中の正義の魔法少女になったかのように演じる。

 それは全て、弱気を隠すための仮面で……本当はいつも、独りで泣いていた。

 そんなマミの前に彼女――暁美ほむらはある日、前触れもなく現れた。

 

 魔法少女の間で、他人のテリトリーに入るのはご法度とされている。

 誰がそう決めたわけでもなく、魔法少女同士の殺し合いを避ける為に自然と決まっていた暗黙の了解だ。

 故に、当初マミはほむらを警戒していた。

 テリトリーを奪いに来る魔法少女というのは、決していないわけではないからだ。

 しかもキュゥべえが言うには、暁美ほむらと契約した覚えすらないという。

 だからマミは、彼女の正体と目的を探るべく夜の公園にほむらを呼び出した。

 

「暁美ほむらさん……だったわね。貴女は何の為にこの見滝原に来たのかしら」

「……今から二週間後、この町にワルプルギスの夜がやって来る。そいつを倒すのが私の目的……貴女のテリトリーを奪う気はないし、貴女と敵対するつもりもないわ」

 

 ほむらの言葉にマミは息を呑んだ。

 ワルプルギスの夜……それは魔法少女たちの間で伝説として語り継がれている最強の魔女だ。

 普通の魔女は結界という自分の世界に籠り、隠れるようにして人々を襲う。

 だがワルプルギスの夜は隠れない。

 一般の人々からは災害としか認識されないこの魔女は結界などに隠れず、大規模な破壊を齎す。

 遥かな昔から延々と、この魔女は世界の各地で破壊の限りを尽くしてきたという。

 歴史に記されるような大災害のうちの半数以上はこのワルプルギスの夜が原因だとキュゥべえは語っていた。

 それが見滝原に近付きつつある……というのは、マミの方でも把握していた事だ。

 しかし正確な時期まで把握していたわけではない。

 だから確認の意を込めてキュゥべえを見ると、彼は『大きな間違いはないね』とだけ答えた。

 

「二週間……ね。どうしてそんな事が分かるの?」

「簡単よ。私はずっと、奴を倒す事だけを考えて生きてきたのだから」

 

 ほむらはそう言い、マミを真っすぐに見た。

 綺麗な瞳だと思った。

 同時に、危ういとも思った。

 それは、たった一つの目的と願いの為だけに生きているような……そんな鋭さと脆さが同居したような瞳だった。

 

「この町の魔法少女である貴女と共闘したい。

私は貴女が知らないワルプルギスの夜の情報を提供する事が出来る。

……敗れはしたけれど、私はワルプルギスの夜との交戦経験がある」

「なっ……」

 

 この言葉には、流石にマミも絶句した。

 ワルプルギスの夜と戦って生きている魔法少女はいない。

 だが、もしもほむらの言葉が本当ならばその定説は覆る。

 何より、本当にワルプルギスの夜と戦った事があるならば、彼女という戦力は確かに魅力的に思えた。

 

「それは妙だね。君のような魔法少女がワルプルギスの夜と戦ったなんていう情報を、僕は知らない」

「でしょうね。それが私の願い……私達の戦いは、この世界の誰も覚えていない。

キュゥべえ、貴方は私と契約した記憶すらないでしょう? それが、誰も私の戦いを覚えていない証拠よ」

「……なるほどね。記憶操作……いや、因果への干渉かい?」

「その質問には答えられないわ。この願いは私だけのもの……誰にも、明かす気はない」

 

 キュゥべえの質問にも、ほむらはあらかじめ答えを用意していたように話す。

 彼女の戦いをキュゥべえが知らないのは、それが願いによって齎されたものだから……そうほむらは語る。

 確かに、願いの内容次第では不可能ではない。

 例えば自分の顔を変える願いを叶えたとして、『最初から自分はこういう顔だった事にしてくれ』と願えば、キュゥべえですら元の顔は分からないだろう。

 事実――『契約したはずなのにキュゥべえが覚えていない』という揺るがない現実が、ここにある。

 

「貴女の……仲間は?」

「……皆、死んだわ。守ると誓った大事な友達も、戦い方を教えてくれた師も……ぶっきらぼうだけど優しかった子も、最後まで私の事を嫌っていた子も……関係なく、死んでいった。

……そして……私だけが、今も生きている」

「辛く、ないの……? 貴女は一人で平気なの……誰も貴女の戦いを覚えていないのに!」

「…………」

 

 マミの叫ぶような問いに、ほむらは何か懐かしいものを見るような目を向けた。

 そして夜空を見上げ、黒髪が広がる。

 

「誰も覚えていなくてもいい。それでも、私には果たすべき約束がある」

「……約束?」

「ええ……大事な友達との約束よ。あんな悲劇を繰り返させない……その約束だけが、私に残ったたった一つの道標」

 

 ほむらはそこまで言い、視線をマミへ戻した。

 紫の瞳は、まるで奥に焔でも灯しているかのように熱く輝き、危ういながらも激しい光を秘めている。

 マミはそこに、燃え尽きる寸前の蝋燭を幻視した。

 

「だから……私は戦い続ける。

たとえ出口のない永遠の迷路に閉じ込められる事になろうと、あの日の約束を果たすために」

 

 ほむらの決意の重さに、マミは思わず圧倒された。

 あ、そのフレーズ恰好いいな。今度私も使ってみよう……違う、そうじゃない。

 ほむらの今の言葉はマミの中にある厨二病魂を揺さぶったが、それ以上に心を揺さぶった。

 この少女はきっと、強い。そしてそれ以上に儚い。

 暁に燃える焔は美しくて……しかしそれは、夜が明ければきっと消えてしまうのだろう。

 ワルプルギスの夜を焼き尽くし、朝を迎える為だけに燃え盛る暁の焔。それが彼女だ。

 だからマミは、気付けば口を開いていた。

 

「……ねえ、ところで貴女、ワルプルギスの夜を追って来たって事は一人暮らし?」

「ええ。家族とは離れて暮らしているわ」

「だったら、私とルームシェアしてみない?」

「――は?」

 

 何故そんな事を言ったのかは、マミ自身にも分からない。

 ただ、自分以上に孤独なこの少女を独りにしてはいけないと、そんな風に思ったのかもしれない。

 どちらにせよ……この時のほむらの、鳩が豆鉄砲を食らったような顔は忘れられないだろう。

 

 

 それからマミとほむらの共同生活が始まった。

 ほむらの事は当初こそクールで感情の希薄な少女と思っていたが、共に生活してみると案外感情の起伏が激しく、怒りっぽい性格である事が分かった。

 マミが寝坊をすると、最初の頃は優しく起こしてくれたが慣れるにつれて手荒になり、最後の方はシーツごとマミを床に落としていた。

 他にもマミは、まだ使えそうな物(雑誌の付録やノベルティ、一度行った切りの店のクーポン券、ペットボトルのオマケ、ちょっといいお菓子の空き容器等)を捨てるのが苦手な、所謂『捨てられない女』という駄目な一面があったのだが、ほむらは容赦なくそれらを片付けてしまった。

 更に、マミが杏子と初めて出会った頃の日記も一度だけ見るとすぐに捨ててしまった。

 曰く、『後で絶対死にたくなるから今捨てるべき』らしい。解せぬ。

 

 怒りっぽいだけではなく、案外あれでユニークな面もほむらにはあった。

 何者かによってマミの私生活の写真がバラ撒かれていると知った時には杏子を犯人と疑ってかかったり(いつの間にかほむらと杏子は打倒ワルプルギスの為に手を組んでいた)、ソウルジェムを入れ替えてマミとほむらで中身を交換してみた時には、自信満々にマミを演じるなどの意外な一面を見せてくれた。

 

 戦いの面でも、ほむらは頼りになった。

 当時、見滝原はマミのテリトリーだったが、一人で担当するには見滝原は広すぎる上に魔女が多すぎた。

 だから以前までは他の魔法少女と担当エリアを分けていたのだが、その魔法少女――名前は確か伊津見尹縫といったか……彼女が消息を絶ってしまった。

 キュゥべえが言うには、他の魔法少女との戦いで死んでしまったらしい。

 なのでマミは今まで以上に負担を強いられていたが、ほむらの登場でその負担が激減したのだ。

 ほむらとマミは使用武器が銃という共通点があり、不思議と戦い方にも共通点が多かった。

 まるで自分が二人になったかのような抜群のコンビネーションで、今までより遥かに安定して魔女を狩る事が出来るようになったし、何より背中を誰かに任せられるというのはマミにとって本当に嬉しい事だった。

 

 更にほむらは、魔女に襲われていたという百江なぎさという少女を連れて帰って来たり、また別の日には呉キリカという少女に懐かれて帰って来たりした。

 何でも、コンビニで彼女が落としてしまった小銭を拾ってあげたのが切っ掛けらしい。

 気付けばキリカも、ほむらの力になりたいという理由で魔法少女となっていた上に佐倉杏子もほむらとの共同戦線を張っていたので、いつの間にか見滝原の戦力は大分増していてマミも戸惑ったものだ。

 しかし……何だかんだでほむらのおかげで杏子とは和解出来た上に仲間も増えた。

 それは、ずっと一人だったマミにとっては、ずっと欲していた家族の温もりだったのかもしれない。

 

 ……ずっと、気を張り詰めて生きていた。

 家族を失ったあの日からずっと、自分が助かる事だけをキュゥべえに願った事を悔いていた。

 だから、罪悪感から逃れるように人を救い続けていた。

 命を繋ぎ止める事が出来なかった両親の分まで人を救えば、それが自分だけが生き残ってしまった事の意味になると信じた。

 それでも本当は誰かと一緒にいたくて、幻滅されるのが嫌で……ずっと完璧な振りを続けていた。

 だが、そんなマミの仮面をほむらが取り去ってくれた。

 彼女の前でだけは演じなくてもいい。素顔のままの巴マミでいる事が出来る。

 本当は弱くて、だらしなくて、寂しがり屋で……そんな自分でも、ほむらは受け入れてくれた。

 だからずっと、こんな日が続けばいいと思った。

 自分がいて、なぎさがいて、キリカがいて……まどかがいて、さやかがいて、杏子がいて……そして、振り返ればいつだってほむらがいて、面倒くさそうにしながらも最後には微笑んでくれる。

 ワルプルギスの夜を倒してもずっと、そんな日が続くと……そう、信じていたのだ。

 

 だが、ワルプルギスの夜を倒した翌日――ほむらは、何も言わずに姿を消した。

 残されたのは一枚の置手紙だけ。

 自分にはまだ使命があるから、それを果たしに行くと……そんな勝手な事だけを言い、暁美ほむらはマミの前からいなくなってしまった。

 彼女の使命とは、全ての魔法少女をこの戦いの運命から解放する事だった。

 その為の方法も手段も既に確立しており、後は魔女を狩り尽くすだけだと……そう手紙に記されていた。

 ならば自分も連れて行って欲しかった、とマミは嘆いた。

 しかしそれでも、マミは希望を持ってほむらを待ち続けた。

 きっと彼女は帰って来る。

 いつも通りの、あの涼し気な顔を崩さずに使命とやらを果たして帰ってきてくれる。

 だからその時に沢山文句を言おう。沢山怒って……そして、『おかえりなさい』と言おう。

 その気持ちはマミだけでなく、他の皆も抱いていたものだった。

 

 そしてある日、マミは魔法が使えなくなった。

 マミだけでなく、杏子やキリカも魔法少女の力を失い……ソウルジェムから離れても、意識を失う事はなかった。

 これに関し、キュゥべえは言った。

 

「やられたよ……どんな手段を使ったかは分からないけど、君達は……いや、世界中の魔法少女が普通の人間に戻ってしまっている。

君達の魂は肉体に戻り、ソウルジェムは今やただの飾りだ。

しかもどういうわけか、新たに契約する事すら出来ない……なんてことをしてくれたんだ、彼女は」

 

 この報せにマミ達は喜んだ。

 ほむらは遂に、やり遂げたのだ。

 今まで誰にも出来なかった事を……魔法少女からの解放を。

 もう戦わなくていい。

 これからは普通の女の子として生きていける。

 だから後は、ほむらが帰って来ればハッピーエンドだ。

 

「あいつやりやがったな! おいマミ、今からパーティーの準備だ!

あいつが帰ってきたら驚かせてやろうぜ!」

 

 杏子が笑いながら、ほむらの帰還を疑いもせずに言う。

 ほむらの帰って来る場所はここだ。

 だから自分達は、疲れて戻って来た彼女を派手に出迎えて、そして怒ってやろう。

 その提案にマミも賛同し、早速ほむらを出迎える準備に取り掛かろうとした。

 だが、その動きは次のキュゥべえの言葉で止まる事となった。

 

 

「暁美ほむらは死んだよ。だから、ここにはもう帰って来ない。

近いうちに遺書も君たちの所に届くだろう」

 

 

 冷水を浴びせられたような、そんな気分だった。

 キュゥべえが何を言っているのか分からない。いや、分かりたくない。

 脳はキュゥべえの言葉を理解しているのに、心がそれを拒絶する。

 

「……ふ、ふざけるんじゃねえ! あの殺しても死にそうにねえほむらが、死ぬわけねえだろ!」

「そうよ! キュゥべえ……あんた、適当言うんじゃないわよ!」

「……殺すよ?」

「僕は本当の事を言っているだけなのに、どうして怒られるんだい? わけがわからないよ」

 

 杏子とさやかと、キリカがキュゥべえに詰め寄っているがマミはそんな気分にもなれなかった。

 心臓の鼓動が五月蠅くて、視界が滲む。

 嘘だ、信じない。だってあの暁美ほむらだ。

 何があっても冷静で、どんな魔女を前にしても余裕を崩さないで……けど、本当は感情的で怒りっぽくて世話焼きな、あの暁美ほむらがそんな簡単に死ぬものか。

 だがマミ達に追い打ちをかけるように、キュゥべえが何かの破片をテーブルの上に置いた。

 ――それは、砕けた……ほむらのソウルジェムの破片だった。

 

 それを見た瞬間、理解してしまった。

 本当に、ほむらは死んだのだと。

 いつだって……そう、本当はいつだって怖かった。不安だった。

 いつかこの日が来ると、心の何処かで分かっていたのかもしれない。

 マミから見てほむらは何処か、死に場所を求めているように見えた。

 ほむらの過去は本人があまり語りたがらない為、謎が多い。

 しかし過去に彼女がワルプルギスの夜と戦い、そして多くの仲間を失った事だけは聞かされていた。

 失った大切な友達との間に交わした約束が最後の道標で、支えなのだと……そう語る彼女は、まるで約束を果たしたら何処かに消えてしまいそうで……。

 もしかしたら約束を果たしたその時こそ、先に逝ってしまった友達の所に行けると思っていたのかもしれない。

 そう――暁美ほむらはきっと…………最初から、自分が生き残るつもりなど、なかったのだ。

 

「……う、あ、ぁぁ……」

 

 涙が零れ、声にならない嗚咽が漏れる。

 杏子とさやかが何かをキュゥべえに叫んでいる。

 キリカは今にも死にそうな顔で呆けている。

 まどかは大声で泣き……マミは、自分も子供のように泣きじゃくっていると気付いた。

 

 酷い、勝手だ。

 突然現れて皆の中心になって、心に居座って。

 この町や魔法少女達を救って、それで大団円を迎えた気になって自分だけ幸せにならずに死んでしまうなんて。

 2週間だけの共闘でなくてもよかったのに。

 これからもずっと、ここにいてくれてよかったのに。

 生きていて欲しかったのに……。

 

 だが暁美ほむらは行ってしまった。

 もう戻って来ない。

 寝坊をしてもシーツを引き剥がして怒ってくれない。

 作った料理を褒めてくれない。

 糖分の取りすぎだと心配してくれない。

 紅茶を飲んで、美味しいと微笑んでくれない。

 

 それを理解し、マミはただ泣く事しか出来なかった。

 

 

 それから一月近くが経った。

 もうじき中学を卒業して高校生になるが、今もマミの時間は停まったままだ。

 部屋の中はほむらがいた時から変わらず……意図的に変えず、いつ彼女が帰ってきてもいいように整理されている。

 もう帰って来ない事など分かっているのに……。

 今日も、ほむらがかつて使っていたベッドの上で僅かな温もりを求めるように布団を抱きしめている。

 彼女によって剥がされてしまった仮面はもう付け直す事も出来ず、虚ろな瞳で失ってしまったものを今も探し続けていた……。




【マミが杏子と初めて出会った頃の日記】
・私にとって衝撃的な出会いがあった。
それは例えるなら―運命の車輪―と呼ぶに相応しい。
速まる命の息吹。魂の半片。……嗚呼、何とこの気持ちを例えればいいのだろう。
所詮大人の階段を片の翼で昇り始めたばかりである今の私にはこの感情を文字という言の葉に喩える事も出来ないのである。
「佐倉杏子」……あの子はそう名乗った。其れが本名であるのか否か、それを確かめる術はないのだが、本名の是非など些細にして希薄な問題であろう。
私は彼女の『火影を宿した瞳』『岩漿を融かした赤絹の髪』……そして、其れ等を包括する『紅蓮を抱きし魂』に惹かれたのだから。
魔法少女という戦役に命を窶す孤独な魂。他人と解り合う事など千夜一夜の夢物語。
孤独の海に浮かぶ一抹の泡は他の泡と触れ合える事もなく消え触れたとて刹那の間に弾け飛んでしまう。
私達は粉砂糖のように容易くも脆い絆でしか繋がれる事はないのだ。
……父と母を喪い、ここまで廻り続ける季節が春告鳥の様に私に教えてくれたと、そう思っていた……若しくはそう思い込もうとしていただけなのかもしれない。
そんな私の悄然な心の垣根を『紅蓮を抱きし魂』は熱く焼き去ろうとしている。
ラストネームでしか呼ばれなかった私を彼女は初めてファーストネームで呼んでくれた。
両親以外呼ぶ事の無かった「マミ」という名で……。
私は彼女の熱き魂に応えられるに相応しい魂を持ち得られるのだろうか。
そして、そして――……
魔法舞台の共演者として。

TI VOGLIO BENE(ティ・ヴォリオ・ベーネ)

(『巴マミの平凡な日常』1巻より抜粋)


ほむら「………………………………」

ほむら(……捨てよう)


【この世界線での魔法少女+α達】

鹿目まどか
・魔法少女にならなかった。
魔法少女の仕組みとキュゥべえの正体をほむらより教えられているので他の少女と違い真実を知っている。
ほむらの死後はかなり落ち込んでいたが、家族に支えられて少しずつ立ち直りつつある。

巴マミ
・原作と違い、ほむらとすぐに共闘関係になり一緒に暮らしていた。
『見滝原アンチマテリアルズ』とマミとほむらの関係に近い。
実はほむら死亡で一番ダメージを受けたのはまどかではなく、この人。

美樹さやか
・魔法少女にならなかった。
ほむらとはそれなりに親しい知り合い止まり。
彼女の死で一番ダメージを受けていない人。

佐倉杏子
・ほむらと共闘関係を結び、馴れ合い過ぎない程度の戦友となった。
しかしマミとの和解などもあって、ほむらには感謝している。
ほむらの死後はマミの家に住んでいる。

・百江なぎさ
母からの愛に飢えていた少女。本来はお菓子の魔女になる運命だった子。
魔女になる前にほむらによって保護された。
年齢の割にしっかりしている。

・千歳ゆま
なぎさと並ぶ幼女枠。
杏子が連れて来る時間軸と連れて来ない時間軸があるが、詳細な出現条件はほむらもよく分かっていない。
さやかを上回るヒーラーでワルプルギス戦ではかなり活躍したらしい。

・呉キリカ
ループを繰り返すうちに、小銭を拾う事でキリカと織莉子と出会う事を知ったほむらが小銭を拾った事で織莉子と出会わなかった。
ほむらとしては織莉子とキリカのタッグ結成さえ阻止出来ればよかったのだが、その後はおりマギで織莉子に依存したように、ほむらの力になる為に魔法少女になってしまった。

・美国織莉子
魔法少女になった時点で共依存関係になるはずだったキリカを取られていたのでソロ活動。
このエンディングを未来視していたのでまどかを抹殺しようとはしなかった。

伊津見尹縫(いつみ いぬい)
マギレコのイベントである『百江なぎさは願いを叶えた』に登場する魔法少女。
見滝原の魔法少女で、マミとは馴れ合う事なく住み分けをしていた。
後に犬の魔女になってしまい、マミは一人で広い見滝原を担当しなくてはならなくなった。

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