とあるオタク女の受難(戦姫絶唱シンフォギア編)。 作:SUN'S
┌月┘日
私の叩き折った日本刀は護国挺身刀“群蜘蛛”という風鳴家の家宝らしい。
死ぬ気で謝ろうとしたら「あんなもの無くていいんだ」と告げながら車のハンドルを握る手に力が籠っており、人造皮革のハンドルがミシミシと音を立てていた。
これ、壊れないよな?
そんなことを考えていると「あのジジイは犠牲も厭わない頭の狂った男だ、自身さえも国への贄として捧げるつもりだ」と聞かされた。そこまで思考回路の狂ったヤツとは会ったことないぞ。
会ったとしても何百回と殴られても笑い続けてるヤツとかなら殴ったことあるけど。
あのジジイ、十数回も殴ったら私の拳が壊れるんじゃないか?なんて考えていると学生寮の前で車を停止させ、降りるように急かしてきた。
一人で追うつもりなら着いて行きますよ?
そう告げると急速バックで学生寮から遠ざかり、本家へ向かうと教えてくれた。風鳴さん家に行くとは聞いていなかった。
身嗜みは大丈夫だな。
┌月┐日
森の中を突っ走って鎌倉へとやって来た。
何回、崖から落ちそうになったのか。何回、死ぬかと思ったか。マジで数え切れないな。なんて考えながら車のドアを蹴破って日本屋敷の庭へと着地する。
風鳴さんは車の天井を殴って車の中から飛び出してきた。あの人、スーパーマンとか言われても真偽を確かめる方法が無いんだよな。
庭の見える襖を開けて翼さんの特撮衣装を纏うジジイが出てきた。
口元を押さえて吐くのは我慢した。
風鳴さんを見ると「えぇ…っ…」という表情を浮かべていた。なんと言えば良いのか、お父さんの仕事服を着る子供のようなモノだと思えばイケるはずだ…。
別の事を考えたがダメだな。
ダメだ、どこからどう見ても変態にしか見えん。
しかし、翼さんから借りたとは思えないんだよな…。まさか、翼さんが仕事で海外へ行っている間に盗んできたのか!?
やっぱり、変態じゃないか!?
┌月┤日
太陽が山を越えて出てきた。
流石のジジイでも身内からの変態扱いには堪えたのか。動きが鈍くなっていた。好機を逃すことなく真っ正面から徹底的に殴り続ける。
拳の骨が軋む音が聞こえてくる。
風鳴さんのイビツな風切り音と共に上段廻し蹴りを放ち、ジジイを僅かに傾かせたが、仰け反ったような体勢を利用してサマーソルトを顎に叩き込まれた。
実戦で使うとか有り得ないだろうがっ。
無理矢理、ヒールの踵を掴んで引っ張り倒すと風鳴さんに「やれ!」と叫んだ瞬間、ぽっかりと心臓の収まっていた左胸に穴が出来ていた。
心臓が潰れただけだろうが、そんなんで止められると思うなよッ!!
弱まっていく身体の力を強引に引っ張り出してジジイの腰に抱き着いて逃げられないように固定する。